パニック障害の治療方法をお医者さんに聞きました。
「完治するまでの期間は?」
「薬なしでも治るの?」
治療に関する疑問をはじめ、日常生活の注意点まで詳しく解説します。
監修者
経歴
福島県立医科大学卒業
「働く人を支える」薬に依存しない医療を展開する「BESLI CLINIC」を2014年に協同創設、2030年を基準に医療現場から社会を支える医療経営を実践しています。
産業医視点からビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。生薬ベースの漢方内科での経験を活かし、腹診を含めた四診から和漢・井穴刺絡などの東洋医学を扱い、ホルモン、生活習慣をベースに身体から心にアプローチする診療を担当。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了。TMSをクリニックへ導入、日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っています。
パニック障害の「治療を受けるまでの流れ」
- まず、問診を行います。
- その後、他の病気が疑われる場合は検査をします。(血圧の測定や血液検査など)
- 最終的に「パニック障害」と診断された場合、治療の方針について相談します。
病院は何科?
パニック障害が疑われる時は心療内科、精神科を受診してください。
また、かかりつけ医院がある場合は、一度相談してみるのも良いでしょう。
初診ではどんなことを話す?
初診では
- 今、困っている症状
- いつから症状があるのか
- どんな時に症状が出るのか
などをお話します。
うまく話せるかご心配な人はメモしていくことをおすすめします。
家族との関係や、生活の状況について聞かれることもあります。
話しにくい時は無理しなくて大丈夫です。「今はお話しできません」と正直にお伝えください。
受診の際の「持ち物」は?
- 健康保険証
- お薬手帳(持っていれば)
- 現在服用しているお薬(持っていれば)
- 自立支援医療受給者証など各種医療受給者証(持っていれば)
- 他の医療機関からの紹介状(持っていれば)
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パニック障害の「治療方法」
パニック障害は、薬を使う治療と精神療法を併用して行います。
その他、動悸や発汗など身体から始まる不安の場合、「タッピング法・別名EFT(Emotional Freedom Techniques)」を行うこともあります。
「精神療法」とは
精神療法には発作の原因となっているものに敢えて向き合う「暴露療法」や、受け取り方・考え方をコントロールして発作に対応する力をつける「認知行動療法」などがあります。
「薬を使う治療」とは
セロトニンを調整する「抗うつ薬」と、不安な気持ちを緩和させる「抗不安薬(安定剤)」の2種類の薬を使用します。
1ヶ月間などの短期間、薬を服用して症状を軽減し、精神療法とあわせて再発を予防していきます。
徐々に薬の量を減らしていくことを目指します。
「タッピング法(EFT)」とは
タッピング法は、ネガティブな感情に意識を集中させながら、顔・胸周辺・手など14個所のツボを軽く刺激します。
薬なしで治療はできますか?
現在の日本ではお薬での治療がスタンダードになっています。
ですが、「薬を使用したくない」とご自身の希望を医師に伝え、一緒に治療方針を検討するとよいでしょう。
漢方や鍼灸などもありますが、薬の方が効果的なケースもあります。
信頼できる医師のもとで、よく相談することが大切です。
治療にかかる費用は?
一般的に、初診の費用は保険診療で2000円~3000円前後であることが多いです。
その後は治療方針によっても異なりますが、1回につき1000円~2000円程度となります。
治療の内容や、保険の種類によっても費用が異なるので、事前に電話等で問い合わせておくと良いでしょう。
治るまでの期間は?
症状が良くなるまでの期間は、個人差が大きいですが、数ヶ月~2年ほどかかることが多いといわれています。
早くから治療を始めることで慢性化を避けることができます。
パニック障害克服のために心がけること
医療機関での治療のほかに、「食べ物」「禁酒」「生活習慣の見直し」を意識して、パニック障害の克服を目指しましょう。
食べ物はどう選べばいい?
栄養バランスの良い食事を3食摂り、カフェインやアルコールは控えてください。
生活習慣が悪いと自律神経が乱れ、パニック障害の症状を悪化させます。
おすすめの食材
抗酸化作用がある「ビタミンC」、神経の興奮を落ち着かせる「カルシウム」などの栄養素を意識して摂りましょう。
ビタミンC
- みかん・キウイ・レモン・グレープフルーツ・パプリカ・ブロッコリーなど
カルシウム
- 牛乳・チーズ・ヨーグルト・しらす・ひじき・干しえび・豆腐など
治療中だけどお酒が飲みたい…どうする?
お薬を飲んで治療している時は、お酒は控えてください。
「抗うつ薬」や「抗不安薬」などの薬を服用している時にアルコールを摂取すると、意識が朦朧とし、大変危険です。
寝不足はパニック障害につながる?
睡眠不足や過労は発作を起こす要因となるため、最低7時間の睡眠時間を確保し、疲れやストレスを溜めないようにしてください。
規則正しい生活を送り、焦らずに一歩ずつ治療していきましょう。
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2022-07-11
精神科に行くべきか悩む…。
自分でチェックする方法ってある?
「精神科に行った方がいい」と判断する目安をお医者さんに聞きました。
うつ病の場合、気持ちの落ち込みがひどくなるため、放っておくと命に関わることもあります。
心当たりのある症状がないか、チェックリストを確認してみましょう。
セルフチェック「精神科に行った方がいい」目安
気持ちの落ち込み・元気が出ない
気分に波がある
意欲・集中力の低下
喜びを感じなくなった
強い不安感
一日中、倦怠感が続く・疲れやすい
イライラしやすい
ネガティブな妄想が多い(監視されている・悪口を言われている等)
悪いことをしていないのに、自分が悪いと罪の意識を感じる
自信喪失(自分には価値がないと感じる)
人の前に出ると過剰に緊張する
些細なことにこだわる
よく眠れない(疲れていても眠れない)
幻覚・幻聴がみられる
食欲不振
過食
もの忘れが増えた
外出が億劫
自殺を考えることがある
上記の症状に3個以上あてはまる場合、心の病気の疑いが強くなります。
早めに精神科を受診しましょう。
正常な範囲での心の不調であれば、気分転換をしたり、ゆっくり休んだりすることで改善するケースが多いです。
しかし、休んでも改善が見られないときは、心の病気を疑った方がよいでしょう。
特に「気持ちの落ち込み」「不安感」「イライラ」等が2週間以上続くときは、我慢せず病院を受診してください。
すぐに病院へ!危険な症状
自傷行為をする(体を傷付ける等)
他者への暴力・暴言
食べられなくなり、栄養失調状態になっている
周囲の人が「自分の悪口を言っている」と感じる
眠れない
ネガティブな考えで頭がいっぱいになる
何事も集中できない
生きることがつらいと感じて「死にたい」と思ってしまう
上記のような症状には、「重いうつ病」などが疑われます。
放置すると命に関わる恐れもありますので、すぐに精神科を受診してください。
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セルフチェックは、どれくらいあてになるの?
セルフチェックは、受診の目安を確認したり、現状を把握したりする上で有効とされています。
リストにある症状を照らし合わせることで、うつ病など「病気の傾向」を知ることができます。
ただし、病気を診断できるものではないため、当てはまるものが多い方は医師の診察が必要です。
精神科で行われる診断方法
精神科では、丁寧な問診を行ったのち、
心理検査
身体検査
血液検査
などを実施し、検査結果を参考にしながら診断を行います。
精神科では、どんな治療をするの?
薬を使った治療
精神療法(症状の元になったことについて話し合う治療)
TMS治療(磁気による脳の治療)
精神科では、患者さん一人ひとりの症状に応じて、上記のような治療が行われます。
また、これらに加えて十分な休養をとることも大切です。
治療に使われる薬の種類
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
など
薬物治療では、上記のような抗うつ薬が使用されることがあります。
治療の際は、患者さんの症状に合わせて薬を処方します。
治療期間の目安
個人差はありますが、早くても3~12ヶ月の治療期間が必要になることが多いです。
長引くと1年以上治療するケースもあります。
「うつ病」の場合、症状が治まるまでの治療期間は、「発症から受診までの期間と同じくらい」と考えられています。
そのため、早く改善させたい場合は、できるだけ早めに治療を開始する必要があります。
また、心の病気は悪化させないことが第一です。
死という最悪の事態を回避するためにも、放置しないようにしましょう。
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▼参考
厚生労働省 こころもメンテしよう 精神科ではどんな治療をするの?
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 精神疾患の早期発見・治療の重要性
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2022-07-04
仕事のストレスで、涙が止まらない…。
この精神状態は大丈夫?
仕事で「涙が止まらない」ときの精神状態を、お医者さんに聞きました。
うつ病や適応障害の場合、症状が悪化すると社会復帰が難しくなることもあります。
心を守るための具体的な対処法・病院を受診する目安を確認しましょう。
【体験談】仕事のストレスで「涙が止まらない…」
仕事のストレスで涙が止まらなくなった経験がある方に、その時どのような状況だったのかお聞きしました。
叱られることが多く、仕事がつらかったです。
家に帰っても「上司がお叱りの電話をしてこないだろうか」と思い、部屋で怯えていました。
そんな自分が惨めになって泣けてきて、涙が止まりませんでした。(30代男性)
お休み明けの出勤日、朝起きて着替えたり、弁当を作ったりしていると、急に涙が出て止まらなくなりました。
「仕事に行きたくない」という気持ちはそこまで強くなかったけど、心以上に身体にストレスがかかっていたのだと思います。(20代女性)
仕事の重圧に押しつぶされそうになって、突然涙があふれ出たことがあります。
主任に昇進してから休むこともできなかったので、精神的に追い詰められていたのだと思います。(30代女性)
今、私はどんな精神状態?
仕事のストレスで涙が止まらないときは、心身のバランスが不安定になっています。
うつ病など、「心の病気」の発症リスクが高い状態とも考えられます。
涙が出るのは、精神的な負担・苦痛を少しでも和らげようとする「生理現象」です。
涙が出ると、ストレスホルモンが低下したり、副交感神経が優位になったりするため、リラックス効果があります。
しかし、急に涙が出て止まらなくなる症状は要注意です。
この場合、「これ以上のストレスには耐えられない」と、心が悲鳴を上げている可能性が高いでしょう。
「精神的に追い詰められている」ときの症状例
眠れない、もしくは寝すぎる
疲れやすい・疲れがとれない
動悸・息苦しさ
頭痛・頭が重い
集中力の低下・注意散漫・考えがまとまらない
何をするのにもやる気が起きない・興味が湧かない
ネガティブなことばかり考えて、自分を責める
憂うつな気持ちが続いている
下痢・便秘を繰り返す
涙が止まらないことに加えて、上記の症状は出ていませんか?
心当たりのある方は、「精神的に追い詰められている状態」だと考えられます。
この状態を放っておくと、うつ病・適応障害・不安障害を引き起こすリスクが高いです。
症状が悪化すると、社会復帰が難しくなるケースもあるため、早めの対処が必要です。
うつ病を発症する前に「今、あなたができること」
「心が限界かもしれない」と感じるときは、まず休暇をとって心身を休ませることをおすすめします。
心が壊れないようにするためにも、一度ストレスの原因から離れましょう。
「なかなか休めない」という方は、以下の方法でストレスの軽減を図るのもよいでしょう。
「ストレスを減らす方法」の例
上司に相談して、仕事の部署を変えてもらう
今の状況を文章に書き出してみる
友人・家族に相談してみる
部署を変えることで、状況が好転するケースもあります。
特に「仕事の内容」や「人間関係」がストレスとなっている場合は、一度上司に相談してみましょう。
また、文章にしたり、誰かに相談したりして、自分の気持ちを理解することも大切です。
ただし、出来事を振り返るときに、自分を責めることはやめましょう。
心が弱っているときに自分を追い詰めてしまうと、心の状態がさらに悪くなってしまいます。
私が「精神科の受診を決めたキッカケ」
心がつらいときは、精神科で相談するのもおすすめです。
以下では、実際に受診を決めた方々の体験談を載せています。
精神科に行こうか迷っている方は参考にしてみましょう。
会社に行くのが億劫になっていき、出社するために電車に乗っても途中下車することがありました。
出社しても動悸が治まらなくなってきたので、精神科に行きました。(40代男性)
自宅にいるときでも涙が止まらなくなったことがきっかけです。
職場にいなくてもふとしたときに泣いてしまうので、精神科に行ってみようと思いました。(20代女性)
ある日を境に、朝起きようとしたら体が全く動かなくなりました。
焦れば焦るほど余計にだめだったので、受診しようと決めました。(30代女性)
「涙が止まらない」くらいで病院に行ってもいいの?
「涙が止まらない」のは、心と体が悲鳴を上げている状態です。
躊躇せず、病院を受診してください。
つらい状態を無理して我慢することは、症状の悪化につながります。
精神科・心療内科では、カウンセリングや薬の処方を通して、症状の改善を図ってもらえます。
当日に診断書を出してもらえるケースも
「仕事へ行くことが困難」
「このままでは症状が悪化する」
と判断された場合は、当日に診断書が出ることがあります。
まずは「仕事がつらい」という旨を、医師に伝えてみるとよいでしょう。
※休職の必要性を判断するために、発行までに2日以上かかる場合もあります。
こんな症状はうつ病サインかも。併せて相談を
眠れない・朝起きられない
疲れやすい・やる気が起きない
気持ちが不安定で、イライラする
原因不明の体調不良が続いている
考えがまとまらない
上記の症状が2週間程度続いている場合、心の病気が強く疑われます
該当する方は、医師に併せて伝えましょう。
病院は精神科?心療内科?
精神的な症状が強い → 「精神科」
体の症状が強い(頭痛・下痢など) → 「心療内科」
で受診するとよいでしょう。
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
「精神科」は、心の病気の治療を専門としています。
うつ病・適応障害・睡眠障害・精神症状・認知症状などの治療をします。
「心療内科」はストレスなどが原因で体に出てきた症状を治療します。
頭痛・吐き気・腹痛など、心理的なことがきっかけで起こる症状を治療します。
精神科を探す
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▼参考
かつみ医院
南港クリニック
おりたメンタルクリニック