最近、食事が食べられない…
もしかして拒食症…?
「拒食症の判断基準」をお医者さんに聞きました。
拒食症を放置すると、栄養失調によって命に関わることもあります。
診断の目安となる症状・病院に行く目安をチェックしてみましょう。
監修者
経歴
- 横浜医療センター・横浜市立大学病院にて初期研修
- 国立精神・神経医療研究センター病院勤務、tDCS研究に従事
- 都内精神科・心療内科クリニック勤務し心理療法を研修
- さくらライフクリニックにて日中は総合診療に携わりつつ、令和2年11月ライトメンタルクリニック開設・院長就任
悪化する前に気軽な受診を治療指針に掲げるライトメンタルクリニック院長。
朝10時から23時まで診療に没頭しており外来診療経験は都内随一。
精神科や心療内科は、受診の抵抗が高いもの。できるだけ受診したくないという気持ちに寄り添いたいと思っています。
そのために、今すぐ自宅でできるセルフケアを発信していきます。
◆所属学会
日本精神医学会
日本生物学的精神医学会
【セルフチェック】どこからが拒食症(神経性やせ症)?
以下のA項目全てに当てはまったうえで、B項目に2つ以上当てはまっている方は、拒食症と診断される可能性が高いです。
診断テスト
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A項目(全て)
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- BMIが18未満
- 肥満に対する恐怖・痩せ願望がある
- 体重増加を妨げる行動を続けている(嘔吐・食事制限等)
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B項目(2つ以上)
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- 15歳から25歳の間の年齢
- 女性
- もっと痩せたいと思っている
- 無月経がある、または性的関心がない
- 家族の中に拒食症の人がいる
- 自己評価が低い
- 完璧主義
- 学業や仕事において「優秀でなければならない」と思っている
- 不安を感じやすく心配性
- こだわりが強い
- 家庭環境に問題がある(親が過干渉・無干渉等)
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BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
拒食症の人は、一般的には痩せていても「自分は太っている」と確信していることが多いです。
体重の増減が自己評価に大きく関わるため、100g単位の体重の増減で一喜一憂することも珍しくありません。
ダイエットを優先するあまり、自身の健康・対人関係に支障をきたすこともあります。
なお、拒食症のグレーゾーンに入る方も多いです。
上記の診断基準を満たさない場合でも、支援が必要なケースはあります。
こんな行動があったら「拒食症予備軍」かも!
- 人から「痩せている」と言われても、自分では「太っている」と思う
- まったく食べていないのに「お腹がすいていない」と言う
- 体重・体型・カロリーのことで頭がいっぱいになる
- 一日に何度も体重計に乗る
- 食事量を極端に減らしている
- 炭水化物・脂質・糖分が多い食品を全く食べない
- 低カロリー食品を好んで摂る
- 大量に食べた後に吐き出す
- 食べ物をゴミ箱・トイレ等に捨てる
- 痩せようとして過剰に運動する
上記に心当たりがある方は、拒食症になっている(なりかかっている)可能性があります。
拒食症は女性に多く、男女比は1対10〜20となっています。
年代としては、思春期から20代までの発症が多いです。
日常生活の中で、何らかのストレスを受けたことをきっかけに発症するケースがよくあります。
拒食症(神経性やせ症)の重症度
BMI
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重症度
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17以上
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軽症
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16以上
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中等症
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15以上
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重症
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15未満
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超重症
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BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMIの数値で、拒食症の重症度の目安を知ることができます。
ただし、上記の目安は「体重の増加への恐怖がある」場合に限ります。
BMIが18を下回るほど痩せていても、楽しく過ごしている人であれば、拒食症と診断されることはありません。
拒食症かも…自分で改善する方法は?
拒食症を改善するには、まず本人が「治す必要がある」と自覚することが大前提です。
その上で食事方法を見直したり、心の状態の改善を図ったりすると、「食べることへの恐怖」が薄れていくことがあります。
セルフケアの方法としては、
- 「太らない程度の食事」から食べ始める
- 乳製品・大豆製品・ナッツ類を積極的に摂る
- 自信をつける行動を増やす
などが挙げられます。
対処法① 「太らない程度の食事」から食べ始めてみよう
下の表を参考にカロリーを計算し、「必要最低限の栄養が摂取できる食事」から摂ってみましょう。
慣れない場合は、1日3〜5食、少量ずつ食事をするのもおすすめです。
\1日当たりの必要カロリー目安/
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男性(18~49歳)
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女性(18~49歳)
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活動量が少ない
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2300kcal
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1700~1750kcal
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活動量が標準的
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2650~2700kcal
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2000~2050kcal
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活動量が多い
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3050kcal
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2300~2350kcal
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▼活動量が「少ない」
1日の歩行時間が25分程度。座り仕事が多い人。
▼活動量が「標準的」
座り仕事が多いが、職場内での移動がある。または適度に運動をしている
1日の歩行時間が50分程度。
▼活動量が「多い」
立ち仕事をする人、もしくは積極的に運動する人。
1日の歩行時間が60分程度。
「これだけのカロリーならば食べても安全だ」という学習を定着させることで、「食べること」と「太ること」を切り離して考えられるようになっていきます。
対処法② 「乳製品」・「大豆製品」・「ナッツ類」を積極的に食べよう
拒食症の場合、乳製品・大豆製品・ナッツ類を積極的に摂るのもおすすめです。
これらに含まれる「トリプトファン」という必須アミノ酸には、拒食症の改善効果が期待されています。
トリプトファンの摂取は、うつ病や不安障害に対しても一定の効果が認められています。
対処法③ 自信をつける行動を増やそう
など、自分に自信をつけるための行動を増やしていきましょう。
自分に自信がついてくると、痩せることへのこだわりが軽減されていくことが期待できます。
ただし、無理のない範囲で行うことが大切です。
悩んでいるなら一度病院へ
「拒食症かも…」と不安に感じるなど、少しでも悩んでいるのであれば、躊躇せず病院を受診してください。
拒食症は心の病気であり、正常な状態から段階的に進行していくものがほとんどです。
症状が進行する前に治療が開始できれば、病気の長期化を防ぎやすくなります。
※体重回復後も肥満恐怖などの心理的な症状が続くことが多いので、再発には注意が必要です。
放置していると命に関わることも
拒食症が疑われる状態を放置し、栄養状態が極端に悪化すると、最悪の場合は死亡することもあります。
拒食症の死亡率はおよそ10%で、他の精神疾患と比較しても、死亡に至る確率が高い病気です。
栄養失調の状態は、電解質異常・肝機能障害・心不全・脳の萎縮など、体にとってさまざまな悪影響を及ぼします。
拒食症に心当たりがあるときは、早急に受診するようにしましょう。
病院は何科?
拒食症が疑われるときは、心療内科で相談しましょう。
心療内科を探す
合わせて読みたい
2020-05-21
初めて心療内科に行くけど…実際には何を話すの?
心療内科で初診を受ける際の流れについて、お医者さんに聞きました。
当日準備していくことをはじめ、初診でかかる料金、診断書はもらえるのかどうかも解説します。
心療内科の初診の流れ
初めてで緊張する方もいらっしゃるかと思いますが、基本は一般の内科などと変わりません。
問診→診察という通常の病院受診と同じ流れで行われます。
<治療開始までの流れ(一例)>
電話やウェブで予約
来院、問診表を書く
診察を受ける
必要であれば検査
治療の開始
心療内科の予約のしかた
電話予約が一般的かと思われますが、最近ではウェブ予約ができるところも増えてきています。
時間がなくて電話ができない、電話が苦手という方でも予約することができます。初診は日時が決まっているところが多いため、調べてから行くのがよいでしょう。
心療内科を探す
受診前に準備しておいたほうがいいことはある?
次のことが伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
今、何に困っているのか
受診に至った経緯
いつから困っているのか
どのようなときに、どのような症状がでるか
思い当たるストレス要因 等
初診で聞かれること
(症状や状態にもよりますが)ストレス要因に関連するような質問をされる可能性があります。
例えば、家族との関係や本人の職業・仕事内容、交友関係や休日の過ごし方、趣味などの話です。あくまで関連のある事柄に対してなので、あまり言いたくないことは言わなくても大丈夫です。
いずれにしても専門家がお話を聞くので、安心して相談してみてください。秘密は守られます。
初診で持っていくもの
心療内科の初診には、次のものを持参すると良いでしょう。
保険証
お薬手帳(あれば)
現状「困っていること」や「医師に相談したいこと」を受診の経緯をスムーズに話せるようにメモを持っていくのもよいでしょう。
初診の費用目安
自己負担3割の方で、初診時は約2,500円~3,000円、2回目以降は1,500円程度です。
薬を処方された場合、診察とは別に薬代が5000円前後かかります。
検査を行った場合には別途1,000~3,000円かかりますが、検査の種類にもよります。
こんなときは、悩まず心療内科に相談してください
「ストレスで胃が痛い」「悩み事があり夜眠れず、不眠気味だ」「ストレスが多く髪が抜ける」「イライラが収まらない」などの症状がある場合は、早めに専門医に相談してみましょう。
心配事や悩み事、ストレスがあり、気持ちや情緒が不安定で「いつもと違う」と感じられているのであれば、受診することをお勧めします。
辛い、苦しい、不安な状態を長く我慢してしまうと、症状がより重いものになる可能性もあります。
早期受診のメリット
早期に治療を始めることで、治療期間が短く済む、正常な状態に戻るのも早くなる、通院の回数や医療費も安く済むというメリットがあります。
ストレスが要因の病気は特に、放置し続けることで症状が悪化してしまうケースが多く、うつ病もそのうちの一つです。
何よりも、軽い症状のうちに治療を受けた方が心身の負担もあまりかからずに済みます。
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はじめての心療内科「よくある質問」
「診断書はもらえるの?」「心療内科に行ってはいけないと言われるのはなぜ?」
心療内科に関するよくある質問にお答えします。
質問1.診断書が欲しいのですが…
休職等の申請に診断書が必要な場合、すぐにもらえるものなのでしょうか?
診断書は本来診断がついて初めて発行されるものです。しかし診断書は医師に申し出れば、比較的速やかに発行されるところも多いです。
休職や職場に提出が必要な書類として、すぐに必要な場面が多いためです。病院によっては別に窓口が設けられている場合もあるため、受診の際に確認すると良いでしょう。
質問2.よく「心療内科に行ってはいけない」と言われるけど…
「行ってはいけない」「行ったら最後」と言われているのは、なぜなのでしょうか?
「行ったら最後」ということはありません。
そう言われるのは、精神科や心療内科のお薬を服用すると、患者さん自身の判断で勝手にやめることができず、飲み続けなければならないことが要因となっている可能性があります。
もしくは、薬の副作用が強くて日常生活により支障が出るなどという想像での発言かもしれません。
また、精神科・心療内科に行って診断を受けた時に、自分が精神病患者なのだと認めてしまうのが怖いと思ったり、周りの目を不安に感じる方もいらっしゃいます。
精神科や心療内科は、重い精神疾患を持つ人が行く場所というネガティブなイメージが少なからずあるというのが背景にあるようです。
つらい時は我慢せずに病院に行った方が良いのでしょうか?
ネット上でも多くの情報が錯綜していますが、自分の体の声を聞き、本当に辛い、苦しいと感じていて、日常生活に支障が出ているのであれば、相談だけでもいいので受診してみてください。
実際に、精神的な症状や心身症が現れているにも関わらず、受診を躊躇している方が多くいらっしゃいます。
しかし、自己判断で市販の漢方薬などの薬を飲み続けていたとしても、根本的な治療にはなりません。その点、専門の医師に相談することで、症状の要因をふまえた治療を受けることができます。
一人で抱え込まずにまずは相談してみましょう。
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参考URL
・心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやすく解説!/ひだまりこころクリニック栄院
https://hidamarikokoro.jp/sakae/blog/心療内科で初診を受ける場合の流れを分かりやす/
・精神科・心療内科の診察料金 | こころみ医学
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/other/psychiatry/cost/
・診察にはどれくらいの費用がかかりますか? | 心療内科・精神科
https://namba-minato.com/faq/faq09/
・心療内科に行くべきかどうか迷う。受診すべき兆候とは?/神楽坂こころのクリニック
https://www.kagurazaka-mc.com/colum/psychosomatic-medicine/
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2022-07-11
精神科に行くべきか悩む…。
自分でチェックする方法ってある?
「精神科に行った方がいい」と判断する目安をお医者さんに聞きました。
うつ病の場合、気持ちの落ち込みがひどくなるため、放っておくと命に関わることもあります。
心当たりのある症状がないか、チェックリストを確認してみましょう。
セルフチェック「精神科に行った方がいい」目安
気持ちの落ち込み・元気が出ない
気分に波がある
意欲・集中力の低下
喜びを感じなくなった
強い不安感
一日中、倦怠感が続く・疲れやすい
イライラしやすい
ネガティブな妄想が多い(監視されている・悪口を言われている等)
悪いことをしていないのに、自分が悪いと罪の意識を感じる
自信喪失(自分には価値がないと感じる)
人の前に出ると過剰に緊張する
些細なことにこだわる
よく眠れない(疲れていても眠れない)
幻覚・幻聴がみられる
食欲不振
過食
もの忘れが増えた
外出が億劫
自殺を考えることがある
上記の症状に3個以上あてはまる場合、心の病気の疑いが強くなります。
早めに精神科を受診しましょう。
正常な範囲での心の不調であれば、気分転換をしたり、ゆっくり休んだりすることで改善するケースが多いです。
しかし、休んでも改善が見られないときは、心の病気を疑った方がよいでしょう。
特に「気持ちの落ち込み」「不安感」「イライラ」等が2週間以上続くときは、我慢せず病院を受診してください。
すぐに病院へ!危険な症状
自傷行為をする(体を傷付ける等)
他者への暴力・暴言
食べられなくなり、栄養失調状態になっている
周囲の人が「自分の悪口を言っている」と感じる
眠れない
ネガティブな考えで頭がいっぱいになる
何事も集中できない
生きることがつらいと感じて「死にたい」と思ってしまう
上記のような症状には、「重いうつ病」などが疑われます。
放置すると命に関わる恐れもありますので、すぐに精神科を受診してください。
精神科を探す
セルフチェックは、どれくらいあてになるの?
セルフチェックは、受診の目安を確認したり、現状を把握したりする上で有効とされています。
リストにある症状を照らし合わせることで、うつ病など「病気の傾向」を知ることができます。
ただし、病気を診断できるものではないため、当てはまるものが多い方は医師の診察が必要です。
精神科で行われる診断方法
精神科では、丁寧な問診を行ったのち、
心理検査
身体検査
血液検査
などを実施し、検査結果を参考にしながら診断を行います。
精神科では、どんな治療をするの?
薬を使った治療
精神療法(症状の元になったことについて話し合う治療)
TMS治療(磁気による脳の治療)
精神科では、患者さん一人ひとりの症状に応じて、上記のような治療が行われます。
また、これらに加えて十分な休養をとることも大切です。
治療に使われる薬の種類
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
など
薬物治療では、上記のような抗うつ薬が使用されることがあります。
治療の際は、患者さんの症状に合わせて薬を処方します。
治療期間の目安
個人差はありますが、早くても3~12ヶ月の治療期間が必要になることが多いです。
長引くと1年以上治療するケースもあります。
「うつ病」の場合、症状が治まるまでの治療期間は、「発症から受診までの期間と同じくらい」と考えられています。
そのため、早く改善させたい場合は、できるだけ早めに治療を開始する必要があります。
また、心の病気は悪化させないことが第一です。
死という最悪の事態を回避するためにも、放置しないようにしましょう。
精神科を探す
▼参考
厚生労働省 こころもメンテしよう 精神科ではどんな治療をするの?
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 精神疾患の早期発見・治療の重要性