インフルエンザの高熱がつらい…。
市販薬で対処したいところですが、基本的に、インフルエンザには自己判断で市販薬を使用しないほうがよいです。
お医者さんに、「インフルエンザのときに、使ってはいけない市販薬」について聞きました。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
【注意】インフルエンザに市販の解熱剤を使用するリスク
風邪薬や今まで使用していた市販薬を気軽に使用するのはやめてください。
インフルエンザの感染により高熱が出ると、その苦しみや痛みを和らげるために解熱剤を使用することは病院の治療でもありますが、成分によってリスクがあり、インフルエンザ脳症やライ症候群を引き起こす可能性があります。
- インフルエンザ脳症
痙攣・意識障害・異常行動を起こす場合があり、後遺症や死亡する場合もある。
- ライ症候群
急性脳症や、肝臓への脂肪浸潤を起こし、死亡する場合もある。
インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群の罹患や死亡との関連については、結論的なことは言えない状況です。
しかし、インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した事例の内、ジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸が使用された症例では、使用していない症例に比較して、死亡率が高かったという研究があります。
カロナールは?
日本小児科学会でも推奨されているアセトアミノフェンが主成分となるので使用可能。
インフルエンザと思われる症状での高熱には、こちらを使用する。
※市販薬ではタイレノールAが同成分
ロキソニンは?
大人は使用可、子どもは使用不可です。
大人の場合は子供に比べて、ロキソニンによる副作用のリスクが低いですがが、安心なのはやはり現在よいとされているアセトアミノフェン製剤であるカロナール(タイレノールA)です。
イブプロフェン主剤は?
大人は使用可、子どもは使用不可です。
大人の場合は子供に比べて、イブプロフェン主剤による副作用のリスクが低いですが、安心なのはやはり現在よいとされているアセトアミノフェン製剤であるカロナール(タイレノールA)です。
子どもは使用不可の解熱剤
ロキソニンとイブプロフェンはインフルエンザ脳症の発症が高まるリスクがあるとされているので使用不可。
大人も子どもの使用不可の解熱剤
インフルエンザ脳症や合併症のライ症候群の引き金になる危険があるので、
- アスピリン製剤
- ジクロフェナクナトリウム製剤
- メフェナム酸製剤
上記の薬は使用を控えましょう。
飲んではいけない解熱剤を「飲んでしまったら?」
飲んでしまった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
検査を含め、体調管理を行います。
基本的に「自己判断で市販薬は使用しない」
以上の例をあげましたが、基本的にインフルエンザが疑われるような高熱には自己判断で市販薬を使用しない方がいいでしょう。
急を要する場合は、 薬剤師や病院に問い合わせるか、または救急で受診をしてください。
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2020-02-12
「すぐに熱を下げるには、どんな薬を選べばいいの?」
「どこを冷やせば熱が下がるの?」
この記事ではすぐに熱を下げる4つの方法を、医師が詳しく解説します。
大事な予定があってどうしても休めない!という方も、ぜひ参考にしてください。
無理に熱は下げない方がよい
発熱は、体を守るための必要な働きです。
発熱しているということは、何らかの異物と体が戦っている状態です。
ウイルスや細菌が進入すると、熱を上げて退治しようとします。無理に熱を下げれば、逆に異物が優勢となり、体調悪化・症状悪化につながる可能性もあります。
一般的な発熱であまりに熱が高い場合(40度以上)は、体を楽にさせ、脳症や合併症を避けるため、ロキソニンなどの鎮痛剤(※)を使用します。
それ以下の熱の場合は、自然に任せておくのが本来はいいのです。
※インフルエンザの場合は、使用できない鎮痛剤もあるので注意が必要です。
なぜ?「熱が出る理由」
発熱は、体の中にウイルスや細菌などの異物が侵入してきたのを倒そうとする免疫反応で起こります。
そのため、熱が上がり切るまではウイルスや細菌も大量に増殖しているので、体は辛い症状を多く感じます。
熱が下がる頃には、ウイルスたちを押さえ込み、体調が徐々に快方に向かい始めます。
なぜ?「震え」がおきる理由
体温が上昇すると血液や他の部位も一緒に熱を作ろうと、体熱の放散を減少させ、体全体の熱産生を増やそうとします。
その際、皮膚の血流を少なくしたり、筋肉を震わせて熱を作ったりします。
方法①お薬を飲む
解熱鎮痛剤を使いましょう。
すぐに熱を下げたい場合、風邪薬に解熱剤が入っていれば、そちらを使用していただいても構いません。しかし、熱に関して対処するのであれば、解熱鎮痛剤を使います。
解熱剤・鎮痛剤は、一時的に熱を下げ、体を楽にすることはできます。
※インフルエンザの場合は、使用できない鎮痛剤もあるので注意が必要です。
風邪のひき始めなら漢方薬もおすすめ
風邪のひき始めであれば葛根湯(カッコントウ)がおすすめです。
生姜やクズの根配合で、体を温めて早く熱をさげる作用が期待できます。
ただし、葛根湯にも解熱作用があるため、解熱剤との併用は避けましょう。
成分によっては重複して思わぬ副作用が生じることがあります。
漢方薬を使用する際は、薬剤師、登録販売者に相談をしましょう。
方法②首・鼠径部・ワキの下を冷やす
血流が多い部分を冷やすと早く熱は下がります。冷やす場所としては、首・鼠径部・ワキの下などがおすすめです。
熱が出ると、額を冷やす方法をイメージする方が多いかと思いますが、 これには熱を下げる働きはあまりありません。
また、冷却シートは、熱を下げるというよりも、頭を冷やすことで気持ちがよくなり、すっきりして気分が落ちつくという働きが期待できるものです。
方法③食べ物・飲み物
温かい食事や、冬が旬の野菜・果物で体を内部から温めて発汗を促せば、 汗で熱は下がりやすくなります。
ココアや生姜湯、チャイ等(温かい飲み物)
加熱したトマト、にんにく等(温かい食べ物)
かぼちゃ、かぶ、りんご、ブドウ等(冬が旬の野菜や果物)
また、いちごやスイカは、薬膳の世界では熱冷ましとしての働きもあるようです。薬のようにはいきませんが、水分補給ができるので体が楽になるでしょう。
方法④ツボ押し
首の後ろ側にある、髪の生え際あたりに位置する左右二つのツボ「風池」 は、熱っぽい・咳などの症状を和らげる働きがあると言われています。
お風呂で汗をかくのは有効
発汗を促すことで解熱効果が期待できます。
ただし、熱が上がっている途中で入浴しても、熱を下げる働きは期待できません。
熱が上がりきった後に汗が出始めているのであれば、入浴や岩盤浴などで発汗を促すことで解熱効果が期待できます。
その際は、水分が急激に失われるので十分に水分補給をしてください。
逆効果!「発熱症状を悪化させる行動」
寒気を感じた時に、余計に体を冷やすのは避けましょう。体を冷やすと熱はどんどん上がり、体調も悪くなっていきます。
寒気を感じたら、体を温めましょう。
熱が上がりきって熱く感じるようになったら、衣類を脱ぎ体温を調節してください。
熱が下がっても「数日は安静」にしましょう
熱が下がっただけでは、まだ体は本調子ではありません。
熱が下がっても、数日は安静にして過ごすのがいいです。
熱が下がったからといって急に動くと、体力が落ちている体はすぐに疲れてしまい、症状をぶり返す原因になります。
熱が下がった後は、栄養を摂って快方に向かいます。
免疫力をつけるためにも、抗酸化作用のあるビタミンC、体力をつけるためにたんぱく源などを中心に、スタミナ補給を行いましょう。
ビタミンC…緑黄色野菜、果物 等
タンパク源…卵、豆腐 等
ただ、風邪のときは胃腸も弱っていることがあるので、消化をよくするためにも、加熱して柔らかく煮込んだものがいいです。
基本的に、熱は無理に下げる必要はありません。
何らかの病気にかかった信号と受け止め、病院を受診し、安静にできる場所・スケジュールを確保して体を休めましょう。
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2019-11-26
インフルエンザがうつる期間はいつからいつまでなのでしょうか?
「インフルエンザの症状がだいぶ落ち着いたからもう人に会っても大丈夫!」
こんな風に、自己判断をしてしまうのはとても危険です。
この記事では、インフルエンザウイルスが感染力を持つ期間、また、A型とB型ではうつる期間に違いがあるのかについて、詳しく解説します。
インフルエンザがうつる期間
インフルエンザが人にうつるのはいつからいつまで?
インフルエンザウイルスを含んだ咳やくしゃみに触れ、そのウイルスが鼻や口から侵入して感染します。
症状が現れるまでは平均1日程度空くのですが、実はインフルエンザウイルスは、感染したらすぐに体内で爆発的に増え、感染力を発揮します。一般的に潜伏期間と呼ばれる期間にも感染する力を持っているので、感染を防ぐためには感染者が出てから気をつけるのではなく、インフルエンザ流行期の秋〜春先までは常に気をつけている必要があるのです。
一番感染力が強いタイミングは…
症状が現れて一気に体調が悪くなっていく時が、感染力が最も強いと考えられます。
インフルエンザを発症すると、急激に全身の悪寒・関節痛や筋肉痛・喉の痛み・発熱など症状が現れます。
その後3日間程度、38度を超えるような高熱が出ます。
このタイミングが最も感染のリスクが高いです。
うつる期間はインフルエンザA型・B型も同じ
どちらも同様に潜伏期間から感染力があります。
その後、症状が重く出る数日間が感染力も強くなります。
薬で感染力は弱まるの?
「ゾフルーザ」と「タミフル」のウイルス排出時間の違い
インフルエンザの薬は、体の中からインフルエンザウイルスを排出して早い体調の快方が期待できます。
現在の研究では、インフルエンザの発症後に薬を服用した場合、体からインフルエンザウイルスの排出が始まるのが最も早いのが「ゾフルーザ」の約24時間後からで、「タミフル」は約72時間後からでした。
ゾフルーザの方が今までの薬よりも早くウイルスを排出させてくれるので、感染期間も平均48時間ほど短くできるということになります。
また、ゾフルーザは細胞内で増殖したインフルエンザウイルスの拡散をさせないという今までの薬の働きとは大きく異なり、細胞内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑えてしまうので、さらに早い快方が期待できる場合があります。
うつる確率|潜伏期間、発症後、回復期
インフルエンザウイルスに感染する確率は、感染する人の年齢や体力、体質、部屋の大きさや湿度など、様々な状況によって変わります。
そのため、うつる確率を数字で解説するのは難しいですが、感染する可能性が高い順に並べると、下記となります。
① 発症後
② 潜伏期間
③ 回復期
インフルエンザの感染率は発症の1日前から上昇するので、潜伏期間の方が回復期より感染しやすいということになります。
感染率を下げる方法
インフルエンザウイルスは、くしゃみや咳の場合、2メートル範囲内にいるとウイルスを含んだ唾液が飛び、感染しやすくなります。
感染者とは2メートル以上の距離を取るようにしましょう。
2メートル以上離れていても、密閉された空間では空気中をウイルスが飛び回り空気感染しやすくなります。
職場や家庭内でも定期的な換気が感染率を下げる方法と言えるでしょう。
出席・出勤停止期間を過ぎても人にうつる可能性は?
インフルエンザウイルスは、発熱がおさまっても2日程度はうつす可能性があります。(幼児は、3日間)
出席停止期間は、発熱がおさまってから2日間を確認して、解除されます。
そのため、感染力はなくなっていると考えられます。
家族・周りの人にうつさないように気をつけること
インフルエンザウイルスの症状を感じたらすぐに病院を受診しましょう。
インフルエンザの薬は、発病から48時間以内に使用した場合に働きを発揮します。
なるべく部屋から出ないようにして、無理に会社や学校へ行かないようにしてください。家の中でもマスクを着用し、他の家族への感染を食い止めましょう。
また、うがい手洗いを忘れずに行い、触ったものにウイルスが付着するのを少しでも減らしましょう。
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まとめ
インフルエンザウイルスは、発症前から感染力があり、さらに熱が下がった後も2日間ほど感染力をもちます。家族間での感染を抑えるためにも早い段階で受診しましょう。
<参考>
https://www.fnn.jp/posts/00385580HDK
(FNNPRIME 1回飲めばOK インフルエンザに注目の新薬登場)