なぜ?おしりから血が出る…。
ストレスが原因なの?
おしりの出血とストレスの関係を、お医者さんに聞きました。病院に行くべき症状や、何科を受診すべきかについても解説します。
監修者
経歴
平成14年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科臨床研修医
平成16年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教(院外)
平成18年6月 幕内会 山王台病院 外科
平成19年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教
平成20年6月 関東労災病院 外科
平成21年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科 助教
平成24年10月 横浜旭中央総合病院 外科、昭和大学藤が丘病院 兼任講師
平成29年11月 しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開業、院長に就任
ストレスでおしりから血が出ることがある?
ストレスによって免疫力が低下したり自律神経が乱れたりすることで、腸の炎症や痔を発症し、おしりから血が出ることがあります。
ケース1.ストレスで「免疫力が低下」して…
免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなります。それにより直腸が感染症によって炎症を起こすと、おしりから出血することがあります。
ケース2.ストレスで「腸疾患」が…
ストレスによって、特発性の潰瘍が生じたり、炎症性腸疾患の症状が悪化したりすることもあります。
ケース3.ストレスが「排便」に影響して…
自律神経がストレスによって乱れ、スムーズに排便できず、痔になって出血することもあります。
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なんだか体調が悪い…。ストレスのせいかも…。
ストレスが限界に達すると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
お医者さんの目線から、「心の症状」と「体の症状」、それぞれ解説してもらいました。
ストレスが限界に達した時に出る症状
ストレスが限界に達すると、脳や自律神経の働きに影響が出て「心の症状」と「体の症状」があらわれます。
ストレスの限界サイン「心の症状」
気分が落ち込む
イライラして、怒りっぽくなる
やる気が出ず、集中できない
何に対しても興味が持てない
ストレスの限界サイン「体の症状」
肩こり
頭痛
腹痛、胃痛
胸が苦しい
息苦しい
だるくて体が動かない
食欲不振、または食欲過剰
下痢、便秘
寒気や冷え
涙が止まらなくなる
不眠、または過眠
過度なストレスを受け続けると脳が正常に働かなくなり、気分が落ち込みやすくなります。
さらに、ストレスは内臓など体全体の調子を整える「自律神経」の乱れを引き起こすため、体の不調の原因にもなります。
ストレスが溜まりすぎると起こる「行動の変化」
浪費が激しくなる
ギャンブルが止まらなくなる
アルコール量が増える
喫煙量が増える
ストレスによって心の調子が不安定になると、お酒を飲む量が増えたり、大胆な行動をとったりする方もいます。
「自分らしくない行動が増えた」という場合も、心の状態に注意したほうがよいでしょう。
ストレス限界サインを感じたら、こう対処しよう
質の良い睡眠をとる
好きな物を食べる
気が合う人と会う
などの方法で、ストレスを発散しましょう。
ストレス対処法① 質の良い睡眠をとる
ストレスの解消には、十分な睡眠が大切です。
質の良い睡眠をとれるよう、就寝前には
ゆっくり入浴する
リラックスを設ける
スマホよりも本を読む
の3つの点を心がけましょう。
湯船にゆっくり入浴する
湯船につかって、ゆっくりと温まりましょう。
時間や体力がないときは、熱めのシャワーを首元に数分当ててください。
入浴が終わったら、冷えないように着替え、水分補給をしましょう。
リラックスタイムを設ける
ゆっくりできる場所に腰を掛けて、気持ちを休めましょう。
好きな音楽やテレビを楽しむのもおすすめです。
スマホよりも雑誌や本を読む
就寝直前はスマホではなく、読書が適しています。
インターネットは情報がどんどん入ってくるため、過度な刺激になってしまいます。
眠気を感じたら、電気を消して早めに入眠しましょう。
ストレス対処法② 好きなものを食べる
好きなものを食べると、ストレスが和らぎます。
※ただし、暴飲暴食は控えてください。
食欲がないときは無理せず、食べられるものを食べましょう。
軽く運動すると、食欲が湧きやすくなります。
反対に、カフェインの強いものはしばらく控えてください。
過度のアルコール摂取も、睡眠の質を低下させる原因となるため、注意しましょう。
ストレス対処法③ 気が合う友人と過ごす
悩みを誰かに相談することも、ストレス解消につながります。
こんなときは病院へ!
なかなか寝つけない
就寝中に何度も目が覚める
いつもより寝すぎてしまう
朝だるくて起きられない
といった場合は、早めに病院で相談しましょう。
何科を受診すればいいの?
心療内科・精神科を受診してみましょう。
初診の際は、下記のことを医師に伝えられるように、まとめておくといいですよ。
今までできていたのに、できなくなったこと
特につらいと感じていること
仕事の内容・職場の人間関係
おかしいと感じる体の症状
メモに書いて持っていくのもおすすめです。
心療内科を探す
心が壊れてしまう前に相談しよう
過度のストレスは、うつ病や自律神経失調症を引き起こす恐れがあります。
頑張りすぎは禁物です。
心療内科や精神科に行くとなると、身構えてしまう方も多いかもしれません。
ですが、メンタルの不調で病院にかかることは、内科で風邪を相談することと大きな違いはありません。
一人で抱え込まずに、病院で相談してみましょう。
▼参考
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス うつ病
おしりから血、大丈夫なの…?
病院の受診をおすすめします。
特に、おしりからの出血を繰り返す、ほかに気になる症状がある場合は、早めに病院にかかってください。
※出血が一時的なもので、ほかに症状が見られないときは、一旦様子を見ても大丈夫なことが多いです。
病院に行くべきケース
- おしりからの出血を繰り返す
- 腹痛・肛門痛が続く
- その他の症状がある
(吐き気、下痢、腹部膨満、食欲不振、体重減少、粘液便など)
これらの症状に当てはまる場合は、
- 直腸炎
- 痔(いぼ痔・切れ痔)
を発症している可能性があります。できる限り早く病院に行きましょう。
病気の例①「直腸炎」
「直腸炎」とは、感染症や突発性炎症性腸疾患によって、直腸の粘膜が炎症を起こす病気です。
感染症の例
- 性感染症(クラミジア・単純ヘルペスなど)
- 一般的腸管感染症(赤痢・カンピロバクター・サルモネラ)
突発性炎症性腸疾患の例
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潰瘍性大腸炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
潰瘍性大腸炎の主な症状やなりやすい人、原因なども紹介するので、心当たりがないかチェックしてみましょう。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症ができ、表面が赤く腫れたり、潰瘍ができたりする疾患です。
初期段階は、下痢と便秘を繰り返すことが多いのですが、症状が悪化すると血便や下血が現れる場合もあります。
どんな痛み?潰瘍性大腸炎の症状
下痢
血便(赤黒い色の血便、粘血便)
激しい腹痛
下腹部の違和感
発熱
倦怠感
貧血
脱水
食欲低下
体重減少
下痢と血便を主症状として、激しい腹痛を伴うケースが多いです。
ゼリー状の粘液のような血便が出る場合もあります。
悪化すると、1日10回以上血便が出るようになります。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の発症原因は未だ明確になっておらず、国の指定難病に定められています。
考えられる原因としては、免疫異常・遺伝的要因・環境要因が挙げられます。
潰瘍性大腸炎になりやすい人・性格は?
ストレス過多・ストレスを感じやすい
腸内細菌のバランスが崩れている
生活習慣が乱れている
家族が潰瘍性大腸炎やクローン病を発症している
発症に男女差はなく、男性の発症ピークは20~24歳、女性の発症ピークは25~29歳にみられます。
ストレスが潰瘍性大腸炎の直接的な原因となるわけではありません。
ただし、過剰なストレスは腸内環境の悪化や免疫力の低下につながるため、潰瘍性大腸炎の発症に影響するという意見もあります。
「ストレスが溜まっている」「ストレスを感じやすい性格」などの自覚があり、潰瘍性大腸炎の症状が見られる場合は、注意が必要です。
家庭内で発症するケースもあり、遺伝的因子も関与すると考えられています。
そのため、家族に同様の病気の人がいると、発病のリスクが高くなる可能性があります。
▼参考
潰瘍性大腸炎(指定難病97)
潰瘍性大腸炎とは?症状と予防のために気をつけたい注意点を解説
潰瘍性大腸炎について- どのような病気か分かりやすく解説! -
潰瘍戦大腸炎を疑う場合は病院へ
潰瘍性大腸炎は再発しやすく、重症化して手術が必要になる場合もあるため、早めに病院を受診してください。
潰瘍戦大腸炎を疑う場合は、内科・消化器内科・胃腸内科の受診をおすすめします。
内科を探す
潰瘍性大腸炎の治療法
潰瘍性大腸炎の治療では、「薬物治療」や「手術」が行われます。
薬物治療は、大腸の炎症を抑える薬、免疫機能を調整する薬などを使用します。
薬が効かない、症状が重いなど、薬物治療で対処できない場合に、大腸を全摘出する手術が行われることがあります。
どういうときに出血する?
基本的には排便時に出血します。
出血量が多いと、下痢のように血便が出ます。
出血の特徴
鮮やかな赤色や暗赤色の血が混じった便や、粘液と血液の混じった便が出ます。
他の症状
便意があるのに便がでなかったり、出たとしても少量しか出なかったりします。また、排便時に痛みを感じることもあります。
性感染症のヘルペスに感染した場合は、肛門の周辺に水疱ができ、破れると潰瘍が多発します。
一般的腸管感染症では、下痢や腹痛、発熱などの症状がみられることもあります。
何科を受診する?
消化器内科を受診しましょう。
消化器内科を探す
病気の例②「痔」
痔の中でも、痔核(いぼ痔)と裂肛(切れ痔)は、おしりから血が出ることがあります。
どういうときに出血する?
痔核は、排便時に出血することが多いですが、運動しているときや歩いているときにも血が出ることもあります。
裂肛は、排便時に血が出て、その後も出血が続くことがあります。
出血の特徴
痔核は、鮮やかな赤色のことが多く、勢いよく飛び散るように出血することもあれば、トイレットペーパーや便に少し血が付く程度のこともあります。
裂肛は、鮮やかな赤色で、トイレットペーパーや便に少し血が付く程度のことが多いです。
他の症状
痔核は、痛みや不快感、脱出、かゆみなどの症状があります。
とくに痛みは、運動しているときや歩いているとき、しゃがんだときや重いものを持ったときに脱出が起こって、痛みを感じることが多いです。
裂肛は、排便時の強い痛みが特徴です。刃物やガラス片が通るような痛みと表現されます。慢性化すると常に痛むようになります。
何科を受診する?
肛門外科を受診しましょう。
肛門外科を探す
早期受診のメリット
ストレスが原因でおしりから出血している場合は、早めの受診がおすすめです。
医師の診断と治療を受けることで、短期間での症状改善や重症化予防を期待できます。
放っておくと不快な症状が続くだけでなく、入院治療が必要な合併症を引き起こしたり、がんなどの深刻な病気を見逃したりする可能性があります。
気になる症状がある場合には、早めに病院へ行きましょう。
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「下血があるけど痛みなし…これって大丈夫?」
「トイレットペーパーに少しだけ血が付いたけど、もしかして痔?」
「お尻から大量の鮮血が出た…病院は何科に行けばいいの?」
人には聞きづらいお尻のお悩み。
この記事では下血の原因から対処法、考えられる病気まで、医師が詳しく解説します。
考えられる4つの病気
お尻から血が出た場合、
イボ痔
クローン病
大腸憩室出血
大腸がん
上記4つの病気の可能性が考えられます。
原因① イボ痔
目で見えるようなしこりや痛みはなく、少量の出血があります。
直腸や肛門の静脈の血圧が上がることで起こります。イボ痔が肛門の外に突き出ることもあります。
妊娠や排便時、力仕事などでいきむことが多いとイボ痔になることがあります。
女性は要注意!生理中・妊娠中は痔になりやすい…
生理中はホルモンバランスが乱れて便秘になりやすく、イボ痔や切れ痔になることがあります。
また、妊娠中には外痔核になりやすいので、出血しやすいと言えます。
妊娠中は、分娩時の出血を止めやすくするために血液を固まらせる物質が増えます。そのため、血管内で血栓ができやすくなり、これにより外痔核が起こりやすくなります。
原因② クローン病
腸壁に炎症が起こる病気です。下痢・腹痛・発熱・食欲不振・体重減少がみられます。
原因不明で、14~24歳で発症することが多いのが特徴です。
大腸の炎症がひどいと下痢に血が混じります。
原因③ 大腸憩室出血
痛みを伴わない出血が多くみられます。
消化管に、外側に向かい袋状の突起ができるものを憩室といいます。
憩室ができること自体は無症状ですが、大腸憩室そばの血管が破れると、血便や下血になることがあります。
自分では治せないので、治療が必要です。病院を受診しましょう。
消化器内科を探す
原因④ 大腸がん
症状としては、下血や血便、便秘と下痢の繰り返し、残便感・腹痛・体重減少などが起こります。
生活習慣や遺伝により起こると言われています。
自力で治せる?
軽度の痔であれば市販薬で改善が期待できます。
しかし、原因の病気によっては自分では治せないので、病院を受診しましょう。
市販薬で症状の改善が期待できる出血
軽度の痔は、市販薬により症状が改善できます。
しかし、悪化すると外科的処置が必要なこともあります。
自分では治せない出血
クローン病
大腸憩室出血
大腸がん
潰瘍性大腸炎
虚血性大腸炎
早期発見することで重症化を避けられるので、早めに受診しましょう。
おしりに出血…「病院は何科?」
肛門外科や消化器内科を受診しましょう。
消化器内科を探す
どんな治療をするの?
病気によって治療法が異なり、
痔
クローン病
潰瘍性大腸炎
大腸がん
それぞれの治療法を紹介します。
痔の治療法
基本的には食生活の改善やいきみ防止策により、症状の悪化を防ぎます。
座薬や軟膏・飲み薬を用いることもあります。
内痔核には、注射で痔核を縮小させる治療法がありますが、痛みは特にありません。
肛門が切れてしまっている場合や痛みのあるイボ痔は、目で見て診断できます。痛みのないイボ痔は、肛門鏡と呼ばれる細い筒を使い、内部を観察します。
クローン病の治療法
炎症を抑えて症状を緩和する治療法です。薬での治療や食事療法を行います。
手術により炎症部分を切除すると症状はなくなりますが、再度炎症が起こる傾向があります。
検査方法は、血液検査やCT検査で行ないます。
潰瘍性大腸炎の治療法
炎症を抑えて症状を緩和する治療を行います。薬による治療が主ですが、大量の下血・意識不明等の命にかかわる症状がある場合は、手術を行うこともあります。
内視鏡検査で診断されます。
虚血性大腸炎の治療法
入院し、静注輸液をします。口から食べたり飲んだりせずに、腸を休めます。傷跡があれば、手術により治療します。
CT検査や内視鏡で診断されます。
大腸がんの治療法
がんのステージにより治療法は異なります。がんを切除できる場合は、内視鏡治療や手術を行いますが、切除できない場合は主に薬で治療します。
検査方法は、まず便潜血検査をします。大腸がんの疑いがあれば、直腸指診や注腸造影検査を行います。
早期発見することで重症化を避けられるので、早めに受診しましょう。
消化器内科を探す
▼参考
MSDマニュアル家庭版 潰瘍性大腸炎
MSDマニュアル家庭版 クローン病