「陰部にチクチク刺されるような痛みがある…」
これ大丈夫?
もしかして病気?
陰部が痛い原因を、お医者さんに聞きました。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
陰部にチクチクする痛み…これ大丈夫?
陰部にチクチク刺されているような痛みがあります…。
痛みが一時的なもので、繰り返さないようであれば、一旦様子を見てもいいでしょう。
ただし、
という場合、要注意です。
この痛み、「病気」の可能性は…?
陰部にチクチクする痛みがある場合、
・性器ヘルペス
・バルトリン嚢胞
の可能性があります。
それぞれ詳しく解説します。
原因①性器ヘルペス
陰部に浅い「腫瘍」や「水ぶくれ」ができている状態です。
性交渉などによって、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することが原因で起こります。
こんな人がかかりやすい!
性行為のパートナーが多い人は、感染の機会が増えるため、感染のリスクがあがります。アトピーや皮膚炎などでバリア機能が低下している人もかかりやすいです。
症状の特徴
発症には2パターンあり
- はじめて感染した
- 再発(潜伏していたウイルスの再活性化)
2つのケースがあります。それぞれ症状が少し違います。
1. はじめて感染した場合
- かゆみ・違和感を伴う直径1~2mmの複数の水疱
- 水ぶくれが破れたあとに、痛みの伴う円形の浅い腫瘍
- 足の付け根のリンパ節の腫れ・圧痛
- 強い痛みによる排尿困難・歩行困難
- 38℃以上の発熱・便秘・頭痛
2. 再発した場合
- 初めて感染した時と同じ場所、もしくはおしりやふとももに1~数個の水ぶくれや浅い腫瘍。
- 全身倦怠感
- 足の違和感
- 免疫不全を起こしていると、深い腫瘍ができ、治りにくい。
※はじめての感染の時よりも症状は軽い傾向があります。
自分でできる対処法は?
市販薬はないため、病院での治療が必要です。
病院では、抗ウイルス薬を使用して治療します。ピンポン感染をしないために、パートナーも一緒に治療を受けましょう。
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原因②バルトリン腺嚢胞
膣口の両側にある粘液を分泌するバルトリン腺が詰まり、粘液がたまって腫れ、嚢胞ができている状態です。
(嚢胞:液体が入った風船のような膨れた袋状のもの)
粘液に病原体(ブドウ球菌やレンサ菌、大腸菌、淋菌、クラミジア、トラコマチスなど)が感染すると、圧痛を伴う膿瘍ができます。
バルトリン腺の詰まりの原因ははっきりとしていませんが、淋菌感染症などの性感染症が原因で嚢胞ができることがあります。
こんな人がかかりやすい!
20代で発症することが多いです。
※加齢とともに発症の可能性は低くなります。
症状の特徴
バルトリン腺嚢胞ができても、ほとんどは無症状です。
ただし、以下の条件においては症状があらわれることがあります。
- 嚢胞が大きくなると、性行為や、座ったり歩いたりするときの不快感。
- 腫瘍ができると、皮膚の赤みや強い痛み、発熱、圧痛。
自分でできる対処法は?
症状が軽ければ、陰部を温水に10~15分ほど浸すことで、数日で快方に向かうケースがあります。
治らない場合は、病院で抗生物質や鎮痛剤を使用して治療します。膿瘍ができている場合には、抗菌薬を服用します。
針で刺し、嚢胞の中にたまった粘液や膿を取り除く治療や、レーザーで穴をあけ嚢胞の中の内容物のつまりを解消する治療を行うこともあります。
婦人科を受診する目安
・陰部に違和感がある
・発熱している
・日常生活に支障が出ている
といった場合などは、婦人科・産婦人科を受診しましょう。
特に注意すべき症状
また、次のような症状がある場合は、特に注意です。早めに受診してください。
- 陰部に痛みがある
- 陰部に違和感がある。
- 陰部に水ぶくれや腫瘍がある。
- リンパ節が腫れている。
早期に受診することで、適切な治療を受けることができ、早く治せる可能性が上がります。
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早めの受診がオススメ
また、感染症の場合には、体の奥まで感染が拡大することを防げます。
治療せずに放っておくと、パートナーにうつりたり、妊婦が分娩中に発症すると赤ちゃんに感染し、新生児ヘルペスを起こしたりする可能性があります。
※赤ちゃんが新生児ヘルペスになると20~30%が亡くなります。
婦人科を受診するとき気をつけること
内診や検査をするため、着脱しやすい服装で受診しましょう。パンツよりもスカートがおすすめです。
妊婦さんが受診していることもあるので香水は控えてください。
生理中に受診してもいい?
生理中にはできない検査もあるため、可能であれば生理中は避けた方がよいでしょう。
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2022-09-30
デリケートゾーンがヒリヒリ痛い!
原因は?塗り薬は使ってもいい?
女性の「陰部のヒリヒリとした痛みの原因」を、お医者さんに聞きました。
セルフケアの方法や病院を受診する目安についても解説します。
デリケートゾーンがヒリヒリ痛い!よくある4つの原因
性交渉の摩擦による傷
膣炎・外陰部の炎症
カミソリなどの自己処理による肌荒れ
性感染症
デリケートゾーンがヒリヒリ痛い場合、上記の原因が考えられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原因① 性交渉による摩擦での炎症・傷
性交渉時の摩擦により、膣の中などが傷ついて炎症を起こしていると、ヒリヒリと痛む場合があります。
また、傷口から細菌感染しているために痛むこともあります。
どんな人に起こりやすい?
性交渉がある人であれば、誰にでも起こります。
この場合、痛みは性交渉の直後、または数時間後などに感じやすいです。
「性交渉による摩擦の傷」に伴う症状
排尿時にしみる
ひりつき
痛み
少量の出血
セルフケア方法はある?
ワセリンなどで保湿することで下着との摩擦を軽減できます。
病院に行く目安は?
ひりつきや痛みがある場合は、一度病院での受診をおすすめします。
性交渉のたびに痛みが出るという人は、何らかの病気が原因となっている可能性もあります。
病院は「婦人科」を受診しましょう。
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原因② 膣炎・外陰部の炎症
免疫が低下して細菌に感染し、膣や外陰部が炎症を起こしている状態です。
細菌が増えることで、粘膜が炎症を起こします。
どんな人に起こりやすい?
病気や生理前後などで免疫が低下している
更年期でおりものが減り、膣の自浄作用が落ちている
場合にかかりやすいです。
この他、性交渉での感染が原因となることもあります。
「膣炎・外陰部の炎症」に伴う症状
腫れ感
かゆみ
強い痛み
おりものの増加
おりものの臭いが強い
外陰部の赤み
ただし、上記の全てが当てはまらない膣炎もあります。
セルフケア方法はある?
まず、デリケートゾーンを清潔に保ち、蒸れるような衣類はつけないようにします。
痛みが強い場合は、鎮痛剤を飲んで構いません。
病院に行く目安は?
セルフケアで感染自体は治らないので、早めに病院で受診をしましょう。
特に、おりものの増加や変化、膣が痛むという場合は、早めに受診してください。
病院は「婦人科」を受診してください。
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原因③ カミソリなどの自己処理による肌荒れ
カミソリなどによる毛の処理で肌が荒れて、痛みが生じている可能性もあります。
自己処理による摩擦によって肌のバリア機能が低下していると、衣類の刺激や汗などがしみて痛みが生じることがあります。
また、肌荒れを起こした部分から細菌が入り込んで炎症を起こし、痛みを発症させるケースもあります。
どんな人に起こりやすい?
カミソリ・毛抜き・シェーバーなどを使って「ムダ毛の処理をしている人」「処理の後に保湿が足りていない人」に多いです。
また、カミソリの刃が古いと肌を傷つけやすいです。
「カミソリによる肌荒れ」の場合に伴う症状
擦れると痛む
かゆみ
赤み
化膿
腫れ
※ズキズキとした痛みを感じる人もいます。
セルフケア方法はある?
傷口に市販の塗り薬を塗りましょう。
「リンデロンVs軟膏」など、炎症・化膿をしずめる塗り薬を使うとよいです。
※市販薬を選ぶ際は、薬剤師に相談するようにしてください。
病院に行く目安は?
市販薬を塗ってもよくならない
患部が広がって対処できない
日常的に強い痛み・かゆみがある
といった人は、早めに病院で受診しましょう。
膣周辺にも炎症が及んでいる場合は「婦人科」、Vラインの皮膚のみであれば「皮膚科」を受診しましょう。
婦人科を探す
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原因④ 性感染症
性器ヘルペス
性器カンジダ症
などの性感染症にかかると、痛みが出ます。
この場合、デリケートゾーンの痛みだけでなく、腹痛を感じる人が多いです。
どんな人に起こりやすい?
性交渉、またはそれに近しい経験がある人なら、誰でも発症するリスクがあります。
免疫力が下がっている
糖尿病・HIV感染症などの病気がある
デリケートゾーンを清潔に保てていない
などの方に起こりやすい場合があります。
「性感染症」の場合に伴う症状
痛み・かゆみ
発熱
発疹
腹痛
セルフケア方法はある?
痛みや発熱の緩和には、鎮痛剤を使用できます。
しかしあくまでも一時的な対処法なので、早めに病院で受診してください。
市販薬の鎮痛剤を使用する場合は、「ロキソニン」「イブ」などが使用できます。
病院は「婦人科」または「泌尿器科」を受診しましょう。
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泌尿器科を探す
違和感があるときは医師に相談を
デリケートゾーンのヒリヒリ感など、いつもと違う感覚・痛み・腫れなどがあるときは、早めに病院で受診しましょう。
病気が原因の場合は、そのままにしていると病気が進行してしまいます。
炎症や腫れが悪化すると治りにくくなり、そこから新たに感染症にかかるリスクも高まります。
痛みが続く場合は、放置しないようにしましょう。
何科で相談すればいい?
性器や性器に近い部分の異常は、「婦人科」または「泌尿器科」に相談しましょう。
性器に関わらない部分の皮膚(Vライン周辺など)は、「皮膚科」でも相談できます。
医師には、
いつ頃から痛みを感じ始めたか
違和感や痛みの度合い
原因として思いあたること
その他の気になる症状
などを伝えるようにしましょう。
婦人科を探す
泌尿器科を探す
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
東京都福祉保健局 性感染症について
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2020-06-12
多くの女性が経験する“膣炎”についてお医者さんに聞きました。
自然治癒するの?パートナーにうつる可能性はある?こういった疑問にもお答えします。
病院を受診した方がいい症状や検査について、当日の服装なども解説するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
多くの女性が悩む「膣炎」とは
名前の通り、細菌などによって、膣が炎症を起こしている状態のことを「膣炎」と言います。
よくある膣炎の種類は、次の3種類です。
カンジダ膣炎
トリコモナス膣炎
淋菌性膣炎
それぞれ詳しく解説していきます。
①カンジダ腟炎
膣や外陰部の強いかゆみが特徴です。
ヒリヒリとした痛みを伴うこともあります。カッテージチーズ状の白いおりものがでます。
誰にでも発症する可能性のある病気で、膣炎の中で最も発症頻度が高いです。
常在菌※の一種であるカンジダ・アルビカンスという真菌が膣内で過剰に増えることで発症します。
発症しやすい人
免疫力が下がっている方
抗生剤を内服している方
妊婦さん
糖尿病の方
睡眠不足の方
自然に治る?
免疫力が回復すれば自然に治ることもあります。
しかし、病院に行かずに自然治癒を待っていると、症状の悪化を招いたり、他の病気を見逃す可能性もあります。
パートナーにうつる?
パートナーにうつる可能性は低いですが、ゼロではありません。
治るまでは性交渉を行わないようにしましょう。
また、カンジダ膣炎は、再発の場合であれば、市販薬の購入も可能です。一度病院で治療を受けたことのある方は、薬局やドラッグストアで薬剤師に相談してみるのもいいでしょう。
②トリコモナス膣炎
細かい泡が混じったおりものが出たり、出血したりします。生臭いにおいがすることもあります。陰部のかゆみや性交時の痛みを感じる場合もあります。
トリコモナス原虫に感染することで発症します。性交渉による感染が多いですが便器や浴槽、下着、タオルを介して感染することもあります。
発症しやすい人
年代に関係なく、発症します。
性交経験のない女性や幼児にも感染者がみられます。
自然に治る?
自然に治る可能性は低く、再発も多い病気です。
上記した症状があるようであれば、早めに病院を受診しましょう。また、再発予防のためにも、パートナーといっしょに治療する必要があります。
パートナーにうつる?
トリコモナス膣炎はパートナーに感染することがあります。
治るまでは性交渉を行わないようにしましょう。
③淋菌性腟炎
自覚症状がないことも多いです。
感染が進行すると、黄色っぽいおりものやかゆみの症状が出たり、性交時に出血する、下腹部や右上腹部が痛む場合があります。
淋菌に感染することで発症します。性交渉による感染が多いです。
また、妊婦が感染すると、出産の際に赤ちゃんに感染して、結膜炎を引き起こします。
発症しやすい人
20代の方に多く見られる病気です。
自然に治る?
患者さんの半数は無症状です。自然に治る可能性は低いです。
上記した症状があるようであれば、早めに病院を受診しましょう。
パートナーにうつる?
パートナーに感染する可能性が高いです。
治るまでは性交渉を行わないようにしましょう。また、再発予防のためにも、パートナーといっしょに治療を行ってください。
自分でできる対処法はある?
デリケートゾーンを清潔に保しましょう。
膣内を過剰に洗うと自浄作用が低下しますので、洗いすぎには注意してください。
病院を受診する目安
おりものの状態がいつもと異なる。
かゆみや痛みがある。
パートナーが感染している。
不正出血がある。
早期受診のメリット
膣炎は、病院で適切な治療を受ければ、すぐに治ることが多い病気です。
その他にも、早期受診には以下のようなメリットがあります。
炎症が拡がるのを防ぐ
再発を防ぐ
出産時の赤ちゃんへの感染を予防
放置すること悪化してしまうのはもちろんのこと、パートナーに感染させてしまったり、不妊やより重篤な病気につながったることもあります。
「おかしいな」と思ったら、早めに受診するようにしましょう。
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診察時、お医者さんに伝える5ポイント
どんな症状があるのか
いつから症状があるのか
どんな時に痛むのか
おりものに変化がある場合、どんな色・におい・状態・量だったか
妊娠の有無
受診の際に気をつけること
内診や検査をするため、着脱がしやすい服装・靴がよいでしょう。
パンツスタイルよりもスカートがおすすめです。また、妊婦さんに配慮して、香水は控えてください。
内診や検査は痛くない?
痛みの感じ方には個人差があるので一概には言えませんが、内診の際、あまり緊張せずにリラックスして臨めば、痛みを感じることは少ないです。
顕微鏡検査や培養検査は、綿棒で膣内を軽くこするだけなので、ほとんど痛みはありません。
生理中に受診してもいい?
生理中にはできない検査もありますので、避けたほうが良いでしょう。
参考
NIID 国立感染症研究所 淋菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ra/gonorrhea/392-encyclopedia/527-gonorrhea.html
婦人科診療ガイドライン2017
日本産科婦人科学会