なんだか口の中が苦い…。これは何?
苦味を感じる原因を、お医者さんに聞きました。
肝臓や腎臓の病気が潜んでいるケースもあるので、注意が必要です。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?口の中が苦い…
自発性異常味覚を生じていると考えられます。
自発性異常味覚とは
口に何も入ってないのに、苦味や酸味、甘味などを感じる症状を指します。
舌にある味蕾(みらい)や、味を伝達する神経などに異常が起こると発症します。
口の中が苦い…これって大丈夫?
以下の原因に心当たりがある場合は、一旦様子を見ても良いでしょう。
- 風邪を引いている
- 刺激物(辛いもの等)をたくさん食べた
- ストレスが溜まっている
- 食生活が乱れがち
ただし、症状が1週間以上続く場合は、重い病気の可能性も考えられます。
倦怠感や吐き気など、他に気になる症状がある方も要注意です。
一度、内科や耳鼻いんこう科で相談してみましょう。
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6つの「よくある原因」
重い病気でない場合、口が苦い症状には次のような原因が考えられます。
原因① 亜鉛不足
亜鉛が不足していると、味蕾(みらい)の数が減少して味覚異常が起こります。
亜鉛は、味蕾の細胞を作るために必要な栄養素です。
亜鉛を多く含む食品を、食事に取り入れましょう。
おすすめ食材
牛肉、レバー、乳製品、かき、イワシ、カニ、海藻類、しいたけ 等
※食物から摂取できる量は限られているため、薬の服用が必要な場合もあります。
原因② 風邪
風邪で鼻が詰まると、味覚に異常が生じやすくなります。
嗅覚が低下すると、味覚の情報を脳内で上手く統合できなくなります。
消化の良い食事を摂り、体をゆっくりと休めましょう。
風邪の回復に伴って、味覚の異常も改善していきます。
原因③ 薬の服用
薬の副作用として、味覚異常が起こる場合があります。
降圧利尿薬、抗ヒスタミン剤、抗生物質などの中には、味蕾(みらい)細胞に障害を与えてしまうものもあります。
原因となる薬の使用を控えるか、薬の種類を変更する必要があります。
担当の医師に相談して、調整してもらいましょう。
原因④ ストレスや疲労
ストレスや疲労による口の乾燥で、味覚異常が起こることもあります。
口の乾燥で細菌が増殖すると、味蕾(みらい)細胞の働きが低下します。
十分な睡眠時間を確保して、体を休めましょう。
ストレスをリフレッシュするには、30分程度の有酸素運動(散歩、水泳など)もおすすめです。
原因⑤ 加齢
加齢によって味蕾(みらい)の数が減少すると、味覚に異常が起こりやすくなります。
加齢による唾液分泌量の低下も、口に苦味を感じる原因となります。
亜鉛を含む食品を積極的に摂取しましょう。
ただし、亜鉛の摂り過ぎは貧血や神経障害を引き起こすので、適量を心がけてください。
亜鉛の摂取推奨量(1日あたり)
18~74歳(男性):11mg
18~74歳(女性):8mg
75歳以上(男性):10mg
75歳以上(女性):8mg
※食事の際は一緒に水分を摂り、口の乾燥も予防しましょう。
原因⑥ 更年期
ホルモンバランスの乱れや変化によって、味蕾(みらい)細胞に異常が生じる場合があります。
まずは亜鉛を摂りましょう。
口を乾燥させないよう、水分をこまめに摂取することも大切です。
注意!「深刻な病気」のケースも
口が苦く感じる病気には
- 肝臓の病気
- 腎臓の病気
- 逆流性食道炎
- 糖尿病
などが考えられます。
これらの病気を疑う場合は、早急に病院で治療を受けてください。
病気① 肝臓の病気
肝臓病になると老廃物が呼気として排出され、苦味を感じる場合があります。
肝機能の低下で老廃物の分解が不十分になるため、この症状が起こります。
肝臓の病気になりやすい人
- アルコール摂取量が多い人
- 肥満傾向な人
- 高齢者
- 食生活が乱れている人
- ウイルス(肝炎ウイルス)に感染した人
主な症状
- 尿の色が濃くなる
- 全身の倦怠感
- 食欲不振
- 吐き気
- 黄疸
病院は何科?
肝臓の病気かも…。何科で受診すれば良いですか?
内科、消化器内科を受診しましょう。
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病気② 腎臓の病気
腎臓病になると体内の亜鉛が不足し、味覚障害を引き起こしやすくなります。
腎機能が低下すると、亜鉛を過剰に尿で排出してしまいます。
腎臓の病気になりやすい人
- アルコール摂取量が多い人
- 喫煙者
- 運動不足な人
- 食生活が乱れている人
- ストレスを溜め込みやすい人
- 睡眠が足りてない人
- 疲労を溜めている人
主な症状
- 夜間頻尿
- 体のむくみ
- 疲れやすさ
- 高血圧
- 食欲低下
- 吐き気
- 貧血
- けいれん
- 意識障害
病院は何科?
腎臓の病気の場合、何科で受診すれば良いですか?
内科、腎臓内科、泌尿器科を受診しましょう。
内科を探す
病気③ 逆流性食道炎
胃酸が食道まで上昇すると、口の中が苦いと感じることがあります。
寝ているときに症状が出やすいです。
逆流性食道炎になりやすい人
- たくさんお酒を飲む人
- 脂肪分が多い食事が好きな人
- 喫煙習慣がある人
- 肥満傾向な人
- 高齢者
主な症状
- 胸やけ
- 喉の違和感
- みぞおち周辺の痛み
- 胸の痛み
- 咳が出る
病院は何科?
逆流性食道炎かも…。何科で受診すれば良いですか?
内科、消化器内科、胃腸内科の受診をおすすめします。
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2023-01-30
逆流性食道炎とはどのような病気なのか、分かりやすくまとめました。
逆流性食道炎の主な症状や原因、なりやすい人の特徴も紹介するので、心当たりがないかチェックしましょう。
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の中の食べ物が食道に逆流することで食道で炎症が起こり、胸やけなどの症状があらわれる病気です。
逆流性食道炎の症状チェック
胸焼け(空腹時や夜間に多い)
胃もたれ
げっぷ
呑酸(※1)
喉の違和感
咳
声のかすれ
睡眠障害
(※1)胃酸により、口の中や喉が酸っぱく感じること
症状が長く続いている場合、睡眠障害を起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。
症状が一つでもある場合は、早めに受診して、検査をおこなうことが大切です。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎はストレスや肥満、更年期が原因となっているケースが多いです。
原因① ストレス
胃と自律神経系は深い関わりがあり、ストレスを受けるとその刺激が自律神経系に伝わります。自律神経系の働きによって胃酸の分泌が過剰になり、食道に逆流しやすくなります。
胃の粘膜には胃酸から粘膜を守る仕組みがありますが、食道にはその仕組みがありません。
さらに、ストレスによって胃や食道の運動機能が落ちているため、胃酸にさらされる時間が長くなり、炎症が起こりやすいと考えられています。
原因② 肥満
お腹が圧迫されると、胃の中の圧も高くなるため、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
肥満の人は、脂肪でお腹が圧迫されやすいため、逆流性食道炎の原因となる可能性があります。
また、肥満の人は食道裂孔ヘルニアになりやすく、食道裂孔ヘルニアになると胃に圧がかかりやすい状態であるため、逆流性食道炎を発症しやすいといわれています。
原因③ 更年期
更年期になると胃酸や胃の内容物の逆流を防ぐ下部食道括約筋が衰え、逆流性食道炎を発症しやすくなります。
さらに、食道の働きの衰え・唾液の量の減少も加わり、逆流した胃酸を胃へ戻しにくくなるため、逆流性食道炎を起こしやすくなっています。
逆流性食道炎になりやすい人は?
過食
早食い
肥満
脂肪を多く含む食品をとり過ぎている
お酒をよく飲む
炭酸飲料をよく飲む
タバコを吸う
逆流性食道炎は自力で治せる?
脂肪分を控える
酸味の強いものも控える
満腹まで食べない
重いものを持たない(腹圧が強くかかるため)
ベルトを締めすぎない
といったセルフケアで、改善が期待できます。
ただし、上記のケアで改善が見られない、不調が悪化している、といった人は医療機関で相談してください。
逆流性食道炎の治し方|食事・市販薬など
しばらくの間は、油っこくない、さっぱりとした食事を心がけましょう。
また、早食いや食べ過ぎ、食後すぐに横になる行為は控えてください。
調理方法は「蒸す」「茹でる」を中心にすると、油の摂取量を減らすことができます。
食事の際は、一口ずつよく噛んで、ゆっくりと時間をかけて食べてください。
また、就寝の3時間前に食事を済ませるようにしましょう。
食後2~3時間は体を起こしておくと、発症予防になります。
市販薬で治るの?
逆流性食道炎(胸やけ)に向けた市販薬は、医療薬から転用されたスイッチOTC薬※「H2ブロッカー」です。
ただし、H2ブロッカーは完全に胃酸の分泌を抑える処方薬ではないので、あくまで症状を徐々に和らげるものと考えてください。
※処方薬だった成分が、処方箋がなくても一般薬として薬局・薬店で購入できるようになった薬
商品名は各メーカーにより異なりますが、パッケージや添付文書に「H2ブロッカー胃腸薬」「H2受容体拮抗剤」と表記されています。
こんな症状は早く病院へ
胸焼け
酸っぱい液体が上がってくる、ゲップが出る
せき
のどの不快感
上記のような症状が見られる場合は、病院を受診しましょう。
病院は何科?
胃腸内科や消化器内科を受診しましょう。
症状に関しての相談は内科でも行う場合がありますが、検査は胃腸専門の病院が良いでしょう。
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病院での治療法は?
病院では、薬物療法や外科的治療を行います。
薬物療法では、胃酸の分泌を抑制する薬、胃や食道の運動を高める薬、粘膜を保護する薬を使用する場合が多いです。
薬物療法で改善が見られない場合、手術により逆流を防止する治療を行うケースもあります。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
病気④ 糖尿病
糖尿病による神経障害を発症すると、苦味を感じることがあります。
また、糖尿病で腎機能が低下すると、亜鉛不足による味覚障害も起こりやすくなります。
糖尿病になりやすい人
- 太っている人
- アルコール摂取量が多い人
- 40歳以上の人
- 糖尿病を患う家族がいる人
- 運動不足な人
主な症状
- 尿量の増加
- のどが渇きやすい
- 疲れやすい
- 体重減少
- 空腹感が強い
- 皮膚が乾燥する
病院は何科?
内科、糖尿病内科を受診しましょう。
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味覚の異常は早めに病院へ
口が苦くなる症状には、重い病気の可能性も考えられます。
早めに受診して検査を受けることで、悪化を防ぎやすくなります。
症状が続く方には、早期受診をおすすめします。
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2020-05-01
「味がわからない…」
「何を食べても味気なく感じてしまう…」
もしかして味覚障害を発症しているかもしれません。
セルフチェックリストを使って、味覚障害かどうかをご自身で確認してみましょう。
お医者さんが味覚障害の原因から対処法まで解説しますので、気になる症状がある方は、ぜひ参考にしてください。
味覚障害のセルフチェックリスト
ご自身で味覚障害の症状をチェックしてみましょう。
何を食べても全く味がしない
甘みや酸味など、特定の味が分からない
いつもと違う味がする
食べていない時でも口の中に苦味などを感じる
調味料をいつもより多く使うようになった
塩味が美味しく感じない
チェック項目が1つでも当てはまれば、味覚障害の可能性があります。
2タイプの味覚障害の特徴
味覚症状は、主に2種類に分けられます。
タイプ①味の感覚が鈍感になる
(例)「塩を付けたのに全く味がしない」
タイプ②味の感じ方が変化してしまう
(例)「レモンが苦く感じる」
ほとんどの場合、タイプ①の味の感覚が鈍感になる味覚障害が多いです。この場合、ゆっくり進行するため、味覚障害に気づきにくいことがあります。
味覚障害はなぜ起こる?
味覚障害が起こる5つの原因を解説します。
思い当たる節がないか、確認してみましょう。
原因①栄養素の不足
亜鉛が不足すると舌の味細胞の働きが阻害されてしまいます。
そのため、ミネラルの1つである亜鉛の不足が味覚症状の異常を起こしている可能性があります。
原因②ストレス
味を感じる器官である味蕾は、顔の神経を通じて脳の味覚中枢に伝わっています。ストレスを感じることで神経のトラブルが起き、味を感じにくくなることがあります。また、人はストレスを感じると亜鉛を多く消費してしまいます。
原因③風邪やインフルエンザ
風邪やインフルエンザにより、鼻水・鼻づまりの症状が出て、味覚機能を低下させることがあります。
この場合は、風邪の症状が治まれば、味覚機能も回復します。
原因④薬の副作用
抗がん剤などの薬剤と亜鉛が相互作用を起こし、亜鉛の吸収を阻害している場合があります。
また、抗がん剤以外にも、解熱剤や抗アレルギー剤などの薬剤も相互作用を起こしている場合があります。
原因⑤ドライマウスやマウスウォッシュの使用
マウスウォッシュの中には強い抗菌力がある商品もあります。マウスウォッシュの中に含まれるラウリル硫酸ナトリウムなどにより、味覚障害が起こる可能性があると言われています。
その他にも、貧血や糖尿病、肝不全、腎不全、甲状腺疾患、脳梗塞などで味覚障害が起こる場合もあります
味覚障害は自分で治せるの?
症状が軽い場合は、食事療法や市販薬で治すことも可能です。
しかし、
原因が分かっていない場合
原因を取り除いても改善しない
といった場合は病院へ行きましょう。また、全く何も味がしない場合は重症の可能性があるので、病院へ行くことをおすすめします。
耳鼻いんこう科を探す
味覚障害になったら…どう対処する?
味覚障害の原因によって、対処法は変わります。
対処①食事・サプリで改善
食事では、亜鉛を十分に摂ることが大切です。
牡蠣やアサリ、卵黄やチーズなどを取り入れましょう。また、食事で十分に摂れない場合は、サプリメントなどで補うことも有効です。
対処②市販薬を使う
風邪が原因の味覚障害の場合は、風邪薬を服用して、風邪を治すことを優先してください。
鼻の粘膜が炎症を起こしている場合は、市販の薬で症状を和らげることで、改善されることもあります。
私、病院に行くべき?
次のような場合には味覚障害が進行している可能性があります。
早めに病院を受診しましょう。
味覚障害のセルフチェックに1つでも当てはまる
味覚障害の原因がわからない
風邪や鼻づまりが治っても味がしない
症状が1〜2週間ほど続く
耳鼻いんこう科を探す
何科で受診すればいい?
耳鼻咽喉科を受診してください。
舌の状態の確認や中耳炎などの検査を行います。
また、血液検査や味覚の検査で亜鉛不足ではないかを検査します。
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