「胸がつかえる感じがする…これは更年期のせい?」
更年期による“胸の圧迫感”を、お医者さんが解説します。
改善のための対処法や、「何科で相談すべきか」も併せてチェックしましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
胸のつかえ・圧迫感が気になる…これって更年期のせい?
胸のつかえ・圧迫感は、更年期の女性によくある症状です。
これは、更年期によるホルモンバランスの乱れが、自律神経に影響を与えているためです。
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胸に物が詰まった感じがする…。
げっぷや胸の痛みも…これはなぜ?
その胸の違和感は、ストレスや病気が原因かもしれません。
どう対処すればいいのか、お医者さんに聞きました。
胸に物が詰まった感じがして苦しい…大丈夫?
食べ過ぎたり飲み過ぎたりした翌日に、一時的に症状がでている場合は、一旦様子をみるという選択肢もあります。
しかし、胸が詰まったような感じを何度も繰り返す場合や、原因がはっきりしない場合には、医療機関を受診して相談することをおすすめします。
胸の不快感はこう対処してみよう
まずは、深呼吸をしましょう。
気持ちを落ち着かせて、安静にしてください。
胸に物が詰まった感じがする3つの原因
胸のつかえの原因は
ストレス
胃食道逆流症
食道がん
である場合が多いです。
原因① ストレス(咽喉頭異常感症)
ストレスや不安等により、喉から胸辺りに異物感、圧迫感、違和感等が起こる疾患です。
過剰なストレスや疲労、極度の緊張等が原因で、自律神経のバランスが崩れることで生じると考えられています。自律神経のバランスが崩れると、胃酸が必要以上に分泌されて、胸の辺りに異物感があらわれやすくなります。
また、不安感や緊張感が高まると、交感神経の働きが活性化されて筋肉が収縮しやすくなります。すると、喉から胸周辺の筋肉が収縮して、詰まったような感じ、圧迫感等が生じる場合があります。
この病気になりやすい人
ストレスを感じやすい
更年期の女性(40~50歳代)
抑うつ状態
不安症を抱えている
胸の詰まり以外の症状
喉の違和感、異物感
飲み込みにくい
喉が腫れている感じ
圧迫感を感じて苦しい
吐き気
膨満感
胸やけ
自分でできる対処法
生活習慣を整えましょう。
十分な睡眠時間の確保、1日3食バランスよく食事を摂る、ウォーキングやヨガ等の運動を継続して行うようにしてください。
カフェインやアルコールを控えて、禁煙することも有効と考えられています。
また、ストレスが原因の場合、半夏厚朴湯という漢方薬を使用することで、改善できるケースがあります。
ただし、自分ではストレスが原因だと思っていても、そうではない可能性もあります。できるだけ医療機関を受診して、症状に合った薬を処方してもらうことをおすすめします。
原因② 胃食道逆流症
胃酸が食道に逆流して、胸が詰まるような感じや痛みが生じる状態です。
食道粘膜が荒れてただれる場合もあります。
胃酸の逆流が長期間続くことで、重度の食道炎を発症する可能性があります。
食べた物が消化されずに食道や胃に停滞したり、食道に胃酸が逆流することで生じる不快感によって、胸に違和感が出ると考えられています。
具体的な原因としては、胃や食道の筋力低下、脂肪分やタンパク質の多い食事の過剰摂取、腹部を圧迫するような姿勢(背中が丸まっている)が挙げられます。
この病気になりやすい人
中年以降の男性
肥満傾向
妊娠中
油脂分を多く含む食事が多い
暴飲暴食する
長時間、前傾姿勢をとる
食後すぐに寝る
胸の詰まり以外の症状
胸やけ
ゲップ
胃痛
喉が詰まるような感じ
物を飲み込みにくい
呑酸
胸痛
膨満感
自分でできる対処法
早食いや暴飲暴食をしないようにしましょう。脂肪分やタンパク質を多く含む食品、炭酸飲料、アルコールの摂取は控えてください。
また、胃酸の逆流を防ぐために、朝食を摂るようにしましょう。体を締め付ける下着を使用しない、姿勢を正す(腹部を圧迫しない)といったことも心がけてください。
原因③ 食道がん
食道の内側を覆っている粘膜表面から発生するがんです。
症状が進行すると深層まで拡がり、気管や大動脈、肺、肝臓へと転移する場合もあります。
初期段階では自覚症状がほぼないケースが多いです。
胸の辺りに腫瘍が発生すると、痛みや違和感が生じることがあります。
この病気になりやすい人
・男性に多くみられる(50~70歳代)
・アルコール摂取量が多い
・喫煙者
・日頃から胸やけやむかつきを起こしている
胸の詰まり以外の症状
胸の奥の痛み(食べ物を飲み込んだときにチクチクするような痛みが生じる)
背中の痛み
咳
体重減少
自分でできる対処法
食道がんを疑う場合は、早急に病院に行きましょう。
消化器内科を探す
病院に行く目安
胸に物が詰まる感じが1週間以上続く場合や、睡眠不足・抑うつなどの症状で、日常生活に悪影響が生じている場合は、病院に行きましょう。
「もしかして病気かな…」と不安を感じている人は、一度病院を受診することをおすすめします。
特に注意すべき症状
胸に物が詰まった感じに加えて、
息切れ
ふらつきやめまい
動悸
胸の痛み
呼吸困難
食べ物を飲み込んだとき胸の奥に痛みが生じる
食べ物が飲み込めない
背中の痛み
などの症状を伴う場合は、早急に病院を受診してください。
何科を受診する?
ストレス(咽喉頭異常感症)による症状が疑われる場合、まずは内科を受診し、特に異常が見つからなかった場合は心療内科や精神科を受診しましょう。
内科を探す
心療内科を探す
胃食道逆流症や食道がんを疑う場合は、消化器内科・胃腸内科を受診しましょう。
消化器内科を探す
参考
徳島県医師会 胃食道逆流症
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/260-2610
武田コンシューマーヘルスケア株式会社 タケダ健康サイト のどのつかえ感
https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=nodonotsukaekan
日本調剤 「逆流性食道炎」の原因は?
https://www.nicho.co.jp/column/14244/
日本消化器病学会 胃食道逆流症
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/gerd.html
国立がん研究センター がん情報サービス 食道がん
https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/index.html
「更年期障害」はこんな病気です
閉経に伴って起こる“体と心の不調”を、更年期障害と言います。
閉経前後の5年間(併せて10年間)は「更年期」と呼ばれ、女性ホルモンの分泌が大きく乱れる時期です。
この影響によって、発汗やほてり、胸のつかえ、情緒不安定などの症状が起こります。
発症しやすい年齢
発症しやすい年齢は45~55歳です。
ただし、閉経を迎える時期には個人差があるため、する場合もあります。
また、発症には性格やストレスも関係していると考えられています。
更年期障害の「主な症状」
<体の症状>
- 胸のつかえ、圧迫感
- めまい、頭痛
- 肩こり
- 腰、背中の痛み
- 関節痛
- ほてり、発汗
<心の症状>
- 情緒不安定
- イライラする
- やる気がなくなる
- 気分が落ち込む
- 眠れない
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更年期障害ってどんな症状が出るの?
なりやすい人の特徴は?
更年期障害について、分かりやすくまとめました。
普段の生活で心がけたいポイントや、病院に行く目安も紹介します。
更年期障害とは
女性は40代頃から、卵巣から分泌される「女性ホルモン」が急激に減少します。
これに伴ってあらわれる、さまざまな心身の不調を総称して、更年期障害と呼びます。
更年期障害は何歳から始まる?
更年期とは、閉経前後の5年ずつを指します。
50歳前後での閉経が平均なので、ほとんどの女性が45~55歳で更年期を迎えます。
更年期障害はいつ終わる?
更年期障害が、いつ終わるかは断言できませんが、長くても10年ほどです。
更年期障害の症状をチェック
のぼせ・顔のほてり(ホットフラッシュ)
息切れ・動悸
頭痛
めまい
不安を感じやすい、イライラしやすい
など
上記の症状は、更年期障害の主な症状の一例です。
更年期の症状は多岐にわたるため、上記以外の症状があらわれる人もいます。
「更年期の症状が出やすい人」の特徴は?
以下、それぞれの項目ごとに2~3個ずつ当てはまる場合、更年期障害を発症しやすいと考えられています。
▼睡眠
24時以降に眠り、10時以降に起床する日が週に3日以上ある
低血圧で、朝起きるのがつらい
夜中に目が覚めやすい
寝る前にスマートフォンやパソコンを使っている
浅い眠りしかとれず、熟睡感がない
▼食事
1日3食はとらない(よく欠食する)
食事の時間がバラバラ
食事量を過度に制限するなど「極端なダイエット」をしている
暴飲暴食している
好き嫌いがあり「偏った食生活」になっている
▼性格
人に比べて神経質
何事にも真面目
完璧主義
仕事などを頑張りすぎてしまう
怒りっぽく、些細なことでもイライラしやすい
▼その他
疲れやストレスが多い生活を送っている
休みが少なく、心身ともにリラックスできる時間がない
体が冷えやすい
運動する習慣がない
産後うつ・月経前症候群が重かった
※これらの症状に当てはまらない場合でも、更年期障害を発症する可能性はあります。
今からできる!更年期の症状を和らげる「5つの対策」
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
1日7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
週3~4日、有酸素運動を行う
入浴のときは「湯船に浸かる」
こまめにストレスを発散させる
更年期の症状を和らげるには、自律神経を整えておくことが大切です。
上記の点を意識して、生活習慣を見直していきましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
眠れないことで憂うつな気分が続く
強い不安感がある
食欲がなく、体重が減った
息切れ・動悸がする
めまい・吐き気がする
激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
どんな検査を受けるの?
更年期症状で病院を受診した場合は、一般的に、
問診
身長・体重・血圧の測定
検査(血液・子宮・卵巣・甲状腺・心臓等の検査)
を行い、患者さんの症状に合わせて治療が選択されます。
※検査内容等は、受診する医療機関によって異なることがあります。
どんな治療法があるの?
治療法としては、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンを飲み薬・塗り薬・貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、「漢方薬」を使った治療法があります。
うつ症状が強く表れているときは、抗うつ薬や抗不安剤などの「向精神薬」が処方されます。
※飲み合わせの関係でホルモン補充療法や他の薬が使いにくい場合もあります。治療中の病気や飲んでいる薬は医師に伝えたうえで、薬を処方してもらいましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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更年期の胸のつかえには、漢方薬がいいって本当?
更年期の胸のつかえは、漢方薬で改善することもあります。
漢方薬を服用する場合は、五積散(ゴシャクサン)や、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)をおすすめします。
これらの漢方薬には、血行促進や自律神経を調整する作用があり、更年期の冷え、貧血、むくみがある場合にも使用できます。
更年期の症状を改善させる、2つの「対処法」
更年期の症状を改善させるには
- 適度な運動
- 栄養バランスの良い食事
を心がけることが大切です。
その① 適度な運動
体を適度に動かすと、血流が良くなって自律神経も整うため、更年期の症状が和らぎやすいです。
運動には、1日20〜30分程度のウォーキングをおすすめします。
歩いて買い物に行くなど、無理のない運動を生活に取り入れてみましょう。
特に家にこもりがちな方は、毎日少しでも外出することが大切です。
外の空気を吸うことで、更年期によるイライラ、気分の落ち込みなどの症状が落ち着くこともあります。
その② 栄養バランスの良い食事
更年期症状の改善には、食事による体づくりも欠かせません。
ホルモンバランスの影響で食欲が低下する場合もありますが、できるだけ食事から栄養分を摂るようにしてください。
ただ、食べなければと無理して食べるとストレスになることもあるので、食べたいときに食べるようにしましょう。
食事は和食を中心とした、油分が控えめなメニューが良いでしょう。
タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランス良く摂取してください。
更年期症状には「大豆イソフラボン」がおすすめ
大豆に含まれる“大豆イソフラボン”には、女性ホルモンに似た働きがあり、ホルモンバランスの調整に役立ちます。
更年期症状でお困りの場合は、大豆製品、豆乳を積極的に摂りましょう。
こんなときは、早めに病院で相談を
胸のつかえに加え、
などの症状が強く出ている場合は、早めの受診をおすすめします。
更年期によって自律神経が乱れた状態が続くと、体と精神のバランスが崩れ、うつ症状を発症するケースもあります。
また、胸のつかえや動悸、息切れの症状には、心臓の病気も考えられます。
心臓の病気は悪化すると命に関わるため、放置せずに検査を受けるようにしましょう。
何科で受診すればいい?
更年期の“胸のつかえ”が気になる場合は、まず婦人科を受診しましょう。
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どんな治療を受けるの?
「更年期障害」と診断された場合、
- 漢方薬の処方
- ホルモン補充療法
などによる治療が検討されます。
治療法① 漢方薬の処方
医師の診察のもと、体と症状に合った漢方薬を処方してもらえます。
漢方薬で血流や自律神経の調整などを促すことで、更年期の症状が和らぎやすくなります。
自己判断での使用と異なり、リスクの少ない、適切な服用を行える点がメリットです。
治療法② ホルモン補充療法
更年期の症状には、女性ホルモンの減少が関係しています。
この治療では、女性ホルモンを薬で補うことによって症状の改善を図ります。
ホルモン薬には、飲み薬や貼り薬などのタイプがあり、患者さんに合わせたものを使用します。
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2018-10-31
「やる気が出ない」
「イライラがとまらない」
「今までできていたことができなくなる」
これらは心理的なストレス反応です。
もしかして私も…と思った方、簡単にできる「うつ診断テスト」やってみませんか?
何に対してもやる気がでない…
2週間以上も“おっくう感”が続く場合は、うつ病を発症しているかもしれません。
「お風呂に入ってリラックスしてからベッドに入る」という今まで当たり前のように行ってきた習慣を、おっくうに感じるようになっていたら、うつ病を発症しているかもしれません。
たまたま疲れているだけ、という場合もありますが、2週間以上このようなおっくう感が続く場合は、うつ病を発症している可能性があり、治療が必要な場合があります。
ただ、病院に行くのは少し勇気がいりますよね。
まずは、自分でチェックできる「うつ病診断」をやってみませんか?
うつ診断テスト「自己評価法」
うつ病診断には、うつ病発見する手がかりとなる自己検査法がいくつかあります。
今回は質問項目も多すぎず、答えやすい東邦大式の自己診断チェックシートをご紹介します。
うつ病の症状は、疲労感を感じやすい、集中して物事に取り組めない、何をやるにもおっくうに感じるなどの症状があるため、自己評価を行う際は、できる限り負担を感じにくい評価方法を用いる必要があります。
東邦大式の自己診断チェックシートの質問数は18問です。
下記の質問に対し、「いいえ」「ときどき」「しばしば」「つねに」で、お答えください。
からだがだるく、疲れやすい
騒音が気になる
気が沈んだり、重くなることがある
音楽を聴いて、楽しいですか?
朝のうち、特に無気力である
議論に熱中できる
首筋や肩こりが気になる
頭痛もちである
眠れないで朝早く目覚める
事故やけがをしやすい
食事が進まず、味を感じない
テレビを見ていて楽しい
息が詰まる、胸が苦しい
喉の奥に物がつかえているような感覚がある
人生がつまらない
仕事の能率が悪く、おっくうに感じる
以前にも、現在と似た症状を感じていた
本来は仕事熱心で几帳面な性格だ
合計点を計算します。
※ただし、質問2、4、6、8、10、12に関しては加点しない。
いいえ
0点
ときどき
1点
しばしば
2点
つねに
3点
判定方法
10点以下
抑うつはなし
11~15点
境界領域
16点以上
抑うつ傾向あり
このチェックシートで現在の自分の状態を評価でき、うつ病を発見する手がかりにできます。
定期的に行うことで、過去と現在の変化を比較し、今の状況を客観的に見ることができます。今の状態を知り、メンタルケアを早めにスタートするきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
うつ病テストって「正確」なの?
自己評価はそのときの状態に左右されやすく、複数回行うことでより正確に評価が出来ます。
詳しい診断基準はさておき、イライラが続く、眠れない、くよくよと考えこみ、気持ちの切り替えができないなどの症状のため、生活に支障をきたす状態が続くようであれば、一度自己評価法を行ってみましょう。
私は“うつ”なの?
抑うつ気分と意欲低下が2週間以上続く場合は、一般的にうつ病と診断されるケースが多いようです。
ただし、自己評価法の結果、うつ病が強く疑われる場合でも、必ずうつ病と診断されるわけではありません。
適応障害(明確なストレス因が存在し、それから離れると、症状は改善する)と診断される場合もありますし、発達特性による生きづらさに起因した抑うつ状態であれば、発達障害と診断される場合もあるなど、さまざまです。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。