「筋肉が落ちるとどうなる?」
「落ちた筋肉を取り戻すには…どうすれば?」
筋肉量の低下による影響を栄養士さんに聞いてみました。
筋肉を取り戻す方法や筋肉が落ちやすい生活習慣なども解説します。
監修者
経歴
株式会社Luce代表/健康検定協会理事長、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、日本臨床栄養協会評議員、ダイエット指導士、ヨガ講師、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど栄養・美容学の分野で活動をおこなっている。
筋肉が落ちたらどうなる?
筋肉が落ちると、
- つまずきやすい(体を支える筋肉が弱くなるため)
- 疲れやすい(代謝や血液の流れなどが悪くなり、疲労物質が滞るため)
- 太りやすい(基礎代謝が落ちるため)
- 血糖値が上がりやすい(筋肉はブドウ糖を取り込んで、血糖をコントロールする役割があるため)
などの影響が出てくると考えられます。
さらに筋肉が落ちづづけると…
筋肉量が少ない状態が続くと、日常生活に支障をきたし、病気の発症リスクを高める恐れもあります。
例えば、
- 老化に拍車がかかる(寝たきりになる等)
- バランス感覚がなくなり転倒しやすくなる
- 骨折しやすくなる
- 生活習慣病を発症しやすくなる
といったリスクが増えます。
あなたの“筋肉の衰え度”をチェック
▼「筋肉が衰え始めた人」の特徴
▼「筋肉がかなり落ちている人」の特徴
- つまずき、すぐ骨折する
- 血糖値が高い
- 風邪や肺炎など病気にかかりやすくなる
- 手足が冷たい
- 顔色が悪い
- 太りやすい
- 汗をかきにくい
上記に当てはまる人は、筋肉が衰えていると考えられます。
筋肉が少ないと、運動機能だけでなく健康にも悪影響となるため、筋トレ等の対策をおすすめします。
「筋肉がどんどん落ちる」生活習慣の例
次のような栄養・運動・休息不足でバランスの悪い生活習慣は、筋肉がどんどん落ちやすい傾向にあります。
筋肉が落ちるNG生活習慣
- 欠食が多い(朝ごはんを食べない等)
- 食生活に偏りがある
- 運動習慣がない
- ほとんど座って生活している
- 寝る時間を十分に確保できていない
- 不規則な生活を送っている
落ちた筋肉をとり戻すにはどうすれば?
落ちた筋肉を戻すには、“基本的な生活の改善”を行いましょう。
- 「タンパク質」と「糖質」を十分に摂る
- 筋トレを習慣づける
- 十分な睡眠時間を確保する
この3つをバランスよく続けることが大切です。
対策① 「タンパク質」と適度に「糖質」を摂る
栄養素
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豊富に含まれる食材の例
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タンパク質
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- 鶏ささみ肉
- 牛もも肉
- 赤身マグロ
- 卵
- 納豆
- プロセスチーズ
など
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糖質
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など
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食事から「タンパク質」と「糖質」をきちんと摂取しましょう。
タンパク質が不足すると筋肉を作ることができません。
また、糖質が不足すると、タンパク質が体を動かすエネルギー源として使われてしまうため、筋肉の減少につながります。
なお、食事はあくまでも3食とって、栄養のバランスを意識することが前提です。
「朝ごはんを抜く」「タンパク質だけとる」のは控えましょう。脂肪の蓄積につながり、体によくない影響を及ぼします。
対策② 筋トレを習慣づける
落ちた筋肉を戻すには、筋トレが欠かせません。
まずは「スクワット」や「プランク」を続けてみるとよいでしょう。
「スクワット」のやり方
- 足を肩幅ぐらいに広げる
- 背中を伸ばしてゆっくりと腰を落とす(かかとに体重をかける)
- 太ももが床と並行になるまで下げて、戻す
※膝はつま先より前に出さないようにしてください。
※腰に力を入れないようにしましょう。
1セットあたり20〜30回程度続けましょう。
スクワットは、太もも・お尻・ふくらはぎなど複数の筋肉を鍛えられます。
「プランク」のやり方
- うつ伏せの状態になる
- つま先と肘を肩幅程度に開き、床につけて体を支える
- ②の状態で30秒〜1分程度保つ
※体は一直線な状態を意識して、腰やお腹を下げすぎないようにしましょう。
プランクは1セット3回程度行いましょう。
インナーマッスルが鍛えられると、他の運動の効果アップや姿勢矯正にも役立ちます。
対策③ 十分な睡眠時間を確保する
1日7~8時間程度は睡眠時間を確保しましょう。
睡眠時に分泌される「体を作るホルモン」は、筋肉を作るうえで重要です。
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2022-03-31
「筋トレすると体脂肪も増えるの?」
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筋トレをすると脂肪が増えることはあるのか、栄養士さんに聞いてみました。
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「筋トレすると体脂肪も増える」ってウソ・ホント?
筋トレを始めたら、体脂肪が増えてかえって太りました…。なぜでしょうか?
体脂肪が増えた原因が「筋トレ」とは考えにくいです。 体脂肪が増える理由は「食べ過ぎ」「有酸素運動をしていない」などが考えられます。
基本的に、筋トレを行うことで、筋肉量を増やして基礎代謝が高まります。
そのためエネルギー消費量を多くする=痩せやすくなる効果は期待できます。
しかし、筋トレを行ったからといって、食事量や摂取エネルギーを増やしてしまうと、体脂肪が増えることがあります。
「測るタイミング」で体脂肪の測定がブレることも
自宅用の体脂肪計は正確でないこともあり、「体内の水分量」で数値が変動することがあります。
体内に水分が多いと、電流を通しやすいため数値が変動します。
体内の水分量
体脂肪率のズレ
多い
体脂肪が“低く”表示される
少ない
体脂肪が“高く”表示される
体重の測定時刻は、
起床後
朝食後2時間以上経過後の昼食前
昼食後2時間以上経過後の夕食前
夕食後2時間以上経過した就寝前
がおすすめです。
※毎回測定の条件を同じにしてください。
“非効率な筋トレ”をしていないかチェック
“筋トレだけで有酸素運動を行っていない”と、体脂肪は燃焼しにくく、非効率なダイエットになってしまいます。
筋トレの主なエネルギー源は「糖質」です。
一方で、有酸素運動のエネルギー源は、「脂肪・糖質」です。
そのため、効率的に脂肪を燃やすなら、プラス「有酸素運動」がおすすめなのです。
筋トレの効果を発揮する「3つの法則」
筋トレのダイエット効果を最大化するためには、
「筋トレ→有酸素運動」の順で行う
栄養バランスのよい食事を摂る
睡眠は7~8時間しっかりとる
を意識することがポイントです。
ポイント① 「筋トレ→有酸素運動」の順で行う
運動は「筋トレ→有酸素運動」の順で行うことで、より効率よく脂肪を燃やすことができるため、ダイエットの効果を上げられます。
有酸素運動は簡単にできる「ウォーキング」がおすすめです。
ウォーキングは1日30分以上、週2日以上行いましょう。
また、 “正しい姿勢で行う”ことで効果アップにつながります。
「正しい姿勢のウォーキング」にする4つのポイント
姿勢は真っすぐ伸ばし、頭を揺らさない
目線は20m程先を見る
肩は、リラックスさせて落とす
腕は、ひじを後ろに引くイメージで大きめに振る
運動時間の確保が難しい人は、移動の際などに上記を意識するだけでも脂肪燃焼につながります。
ポイント② 栄養バランスのよい食事を摂ろう
主食・主菜・副菜の揃った食事を心がけ、欠食せずに1日3食摂るようにしましょう。
しっかり栄養補給して筋肉量を維持することで、筋トレでのエネルギー消費量も多くなり、脂肪燃焼の効果アップが期待できます。
ポイント③ 睡眠は7~8時間しっかりとる
7~8時間を目安に睡眠をとりましょう。睡眠中に成長ホルモンが分泌され、筋トレによって疲労した体の組織が再生されます。また、疲労回復して次のトレーニングも効率よく動けるため、効果アップが期待きます。
また、睡眠の質を向上させるために、寝る環境を整えることも大切です。
寝る環境は、寝室に入る音や光を遮る、寝具、パジャマなどの素材を心地よいものにするなどを行うのがおすすめです。
「体脂肪を燃やしたい」人のためのおすすめ筋トレ
体脂肪を燃やすには「太もも・お尻・背中・お腹周りの筋トレ」が有効的で、
スクワット(太もも・お尻)
プランク(背中・お腹周り)
ラットプルダウン(背中)
などがおすすめです。
太もも・お尻・背中などの大きな筋肉を鍛えることで、効率よく筋肉量を増やして、基礎代謝のアップ→脂肪燃焼につながります。
特に、背中の筋トレは、姿勢が良くなり、体幹も鍛えられることで、他の運動も正しいフォームで行いやすくなり、運動効率のアップ→脂肪燃焼につながります。
おすすめ筋トレ① スクワット(太もも・お尻)
「スクワット」の正しいやり方
脚を腰幅~肩幅に開いて立つ
つま先はひざと同じ向きにする
手は胸の前で軽く組む
太ももと床が並行になるように、お尻を下げる
お尻の力を抜かないようにしつつ、ゆっくりと元の位置に戻す
これを10回1セットとして、1日3セット行いましょう。
おすすめ筋トレ② プランク(背中・お腹周り)
「プランク」の正しいやり方
四つ這いになり、床にひじをつく
両ひざを床から離して、まっすぐ伸ばす
頭からかかとまで一直線にする
③の状態のまま、30秒維持する
このとき、呼吸は自然に続けましょう。
これを1日2~3回行いましょう。
おすすめ筋トレ③ ラットプルダウン(背中)
自宅にあるフェイスタオルを用意します。
※短すぎると使用できないため、長さのあるものを用意しましょう。
タオルの両端を逆手で持つ
腕を内側に捻る
2の状態で両腕を持ち上げていく
背筋を伸ばしてイスに座り、視線は真っすぐ前へ向ける
タオルの両端を持って、腕を内側にひねる
タオルを握ったまま、両腕を持ち上げていく
タオルを引っぱりつつ、背中の方にゆっくり腕を下ろす
しっかり両腕を下ろしたら、再度両腕を上に伸ばす
タオルの上げ下げを10回3セット行いましょう。
引っ張る力は左右均等に、肩甲骨から寄せるイメージで行いましょう!
まずは、1ヶ月続けてみましょう!
体脂肪の燃焼は、数日程度では実感できません。
コツコツとまずは1ヶ月続けてみましょう。
また、頻度や強度、体質などの個人差もあり、効果が実感できるタイミングはさまざまです。
焦らずに、気長に取り組みましょう。少しずつ体重や体型も変わってきますよ。
▼ 参考
厚生労働省 成人を対象にした運動プログラム
コナミスポーツ株式会社 お腹の脂肪燃焼にも!? スクワットのダイエット効果と実践方法
コナミスポーツ株式会社 背中の筋肉を鍛える! 3つのメリットと具体的なトレーニング方法
uFitラットプルダウンの正しいフォームを解説!鍛えられる部位や重量設定のコツも紹介
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2022-03-31
「筋肉が落ちてきた…」
「落ちた筋肉を取り戻すには?」
筋肉を取り戻すにはどうすればいいのか、管理栄養士さんに聞いてみました。
おすすめの筋トレ・食事などもご紹介します。
落ちた筋肉を取り戻したい!
筋肉をつけるために最初にやるとよいのは、
立ったまま靴下をはく
なるべく階段を使うようにする
椅子に座ったときは「両足をくっつけて」座る
など、日常生活の中で少しずつ筋肉に負荷をかけることです。
「少しキツイ」と感じる動きで負荷をかけると、日常動作も筋トレになります。
逆に楽な動きばかりしていると、どんどん筋肉は衰えていきます。
落ちた筋肉はすぐには戻りません。
“継続”して徐々に取り戻していきましょう。
筋肉を取り戻す「筋トレの方法」
生活で体を動かす習慣がついてきたら、次はしっかりと筋トレしてみましょう。
筋トレによるケガ防止のために、STEP①~STEP③の順で取り組んでみてください。
STEP① 筋トレ前は「ストレッチ」しよう
まずは
膝を伸ばす
肩・腰など、凝り固まった部分をほぐす
などのストレッチを行いましょう。
使っていなかった筋肉をストレッチでほぐすと、スムーズに動くようになるため、ケガ防止につながります。
STEP② まずは「軽めの筋トレ」から
日常の動きにプラスして
椅子スクワット
もも上げ運動
などの軽い筋トレを行いましょう。
急に負荷をかけすぎないよう、軽く負荷のかかる動きからはじめ、徐々に強度を高めていきます。
日常の動きよりも筋肉に負荷をかけることで、筋肉がつきやすくなります。
「椅子スクワット」のやり方
肩幅くらい足を広げ、椅子の前に立つ
ゆっくり膝とを曲げ、椅子に座る
椅子から立ち上がる
※これを5〜10回ほど繰り返す
「もも上げ運動」のやり方
腰に手を当て、背筋を伸ばして立つ
一定のリズムで片方ずつ太ももを持ち上げ、同時に腕もしっかり振る
※30回ほど繰り返す。
STEP③ 慣れてきたら、負荷を上げてみよう
余裕が出てきたら、
スクワット
プランク
など、強度の高い筋トレも取り入れていきましょう。
筋肉に多く負荷をかけることで、筋肉はより丈夫になろうとするため筋肉が太くなっていきます。
「スクワット」のやり方
足を肩幅ぐらいに広げる
背中を伸ばしてゆっくりと腰を落とす(かかとに体重をかける)
太ももが床と並行になるまで下げて、戻す
※膝はつま先より前に出さないようにしてください。
※腰に力を入れないようにしましょう。
1セットあたり20〜30回程度続けましょう。
「プランク」のやり方
うつ伏せの状態になる
つま先と肘を肩幅程度に開き、床につけて体を支える
②の状態で30秒〜1分程度保つ
※体は一直線な状態を意識して、腰やお腹を下げすぎないようにしましょう。
プランクは1セット3回程度行いましょう。
筋肉を増えやすくする「食事」
食事の中で「たんぱく質」を多く含むもの(肉・魚・卵・大豆製品)を意識して摂るようにしましょう。
目安は体重1㎏あたりたんぱく質1~1.2gです。
(※)しっかり運動している場合は、これよりも多いたんぱく質が必要となります。
たんぱく質は“筋肉を作る材料”です。
筋トレで負荷をかけても材料がなければ、筋肉を作ることはできません。
筋肉を取り戻すために…まず1週間続けてみよう
筋肉を取り戻すために、まずは1週間を目標に続けてみましょう。
この期間で体が動かしやすくなり、習慣化されていくでしょう。
筋肉がついたと実感するまでにはもっとかかりますが、まずは習慣化させることが大切です。
「筋肉がついた」と実感できるのはいつ頃?
個人差がありますが、約3ヶ月間続けていると実感してくる人が多いでしょう。
特に下半身の筋肉は筋トレによる変化を実感しやすい部分です。
「継続できないかも…」そんな人へ!
いきなり負荷の大きい筋トレなどを行わず、簡単にできる動きからはじめ、徐々に強度を上げていくと、少しずつ変化を感じて続けるモチベーションにつながります。
また、筋肉をつけることよりも、まずはトレーニングを継続させることを目標にすると、継続しやすくなります。
▼参考
e-ヘルスネット