生理が始まったのに、PMSのような症状が続く…。
それは、「PEMS(周経期症候群)」かもしれません。
PEMSの主な症状について、お医者さんに聞きました。
症状を緩和するための対処法や、病院に行く目安も紹介します。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
生理中もPMS症状が続くなら「PEMS(周経期症候群)」かも
PEMSとは、生理前から生理中にかけて、精神的に不安定になる状態です。
- 一人で過ごしたい
- 人付き合いが面倒になる
- 物事が面倒になる
など、社会との関わりがわずらわしく感じるようになります。
生理が近づき、女性ホルモンの分泌量が低下することにより、脳・中枢神経系が影響を受け、PEMSの症状を引き起こすと言われています。
また、セロトニン(精神を安定させる働きをもつ神経伝達物質)の分泌低下や食事・生活習慣なども影響すると考えられています。
ただし、詳しいメカニズムは分かっていません。
PMSとの違いは?
PMS |
生理になると症状が軽くなる。
または症状が無くなる。 |
PEMS |
生理中に症状のピークを迎える。 |
PMSは生理1週間前から症状が出始めて、生理が開始すると症状が軽くなったり、なくなったりします。
一方、PEMSは生理1週間前から症状が出始めて、生理中に症状のピークを迎えるという違いがあります。
心当たりは?PEMSのよくある症状
- だるくなる
- イライラする
- 無気力になる
- 人付き合いが面倒になり、一人で過ごしたくなる
- 物事が面倒になる
生理前から生理中にかけて、上記の症状が出ている場合は、PEMSが疑われます。
発症しやすい人は?
- 几帳面で真面目な性格
- 仕事量が多い
- 不規則な生活を送っている
- たばこを吸う
- お酒・カフェインを多くとっている
- 自律神経症状を感じている(倦怠感・頭痛・めまい・動悸など)
PEMSは、ストレスによって発症リスクが高まると考えられています。
脳内のホルモンや神経伝達物質は、ストレスの影響を大きく受けます。
そのため、「日常生活でストレスを感じている」「真面目な性格で、物事が上手くこなせないとストレスを感じやすい」といった人は、PEMSを発症しやすいと考えられます。
また、たばこ・お酒・カフェインも発症リスクを高めると言われています。
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2022-12-23
PMSってどんな症状が出るの?
つらいときはどうすればいい?
PMSの主な症状やセルフケア方法など、分かりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
PMSとは
PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)とは、月経の3~10日前から始まり、月経が始まると解消する心や体の不調のことです。
PMSが生じる原因は明らかにされていませんが、排卵後に起きる女性ホルモンの分泌量の変化や、ストレスなどが影響しているといわれています。
PMSは誰でもなるの?
日本では、月経のある女性のうち約7~8割が月経前に何らかの症状を抱えています。
また、100人中5人程度の人が「生活に支障が生じるほどつらいPMS」であるといわれています。
思春期の女性でPMSを示す割合が多い、という報告もあります。
PMSになりやすい人は?
真面目
几帳面
我慢しがち
上記に当てはまる人は、PMSになりやすいといわれています。
PMSの主な症状
頭痛
腹痛(下腹部痛)
腰痛
めまい・のぼせ
吐き気
乳房の張り感、痛み
食欲低下
倦怠感
イライラする
など
生理が始まると、「症状が軽くなる」「無くなる」という特徴があります
「PMS」と「PMDD」の違いは?
生理周期に伴う心と体の不調をまとめて、PMS(月経前症候群)と呼びます。
その中でも心の不調が強く出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)と診断されます。
PMSの対処法
1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
お腹を温める
ストレッチや軽い運動をする
PMSの症状には、上記の方法で対処するとよいでしょう。
対処法① 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
PMSの症状は、ホルモンバランスの乱れにより悪化しやすくなります。
主食・主菜・副菜の揃った食事をとることで、栄養をバランスよく摂取でき、ホルモンバランスが整いやすくなります。
和定食のイメージで食事をとると、栄養バランスが整いやすいです。
食事を抜くと、体のリズムが乱れやすくなり、エネルギー不足になる可能性があるので、きちんと3食とるようにしましょう。
対処法② 1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
ホルモンバランスを整えるためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
毎日6~8時間程度、質のよい睡眠をとることを心がけましょう。
ただし、理想の睡眠時間には個人差があります。朝目覚めたときに疲れがとれていて、日中に眠気を感じない状態になるように心がけましょう。
「深い眠り」を得るためのポイント
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は11時(遅くとも12時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
対処法③ お腹を温める
お腹を温めると腹痛の緩和につながります。お腹にカイロをあてて患部を温めるとよいでしょう。
温かい飲み物を飲んで、体の中から温めることもおすすめです。
対処法④ ストレッチや軽い運動をする
PMSによる頭痛には、肩や首回りの筋肉をほぐし、血流をよくすることがおすすめです。
ストレッチや軽い運動で、体をほぐしましょう。
ただし、体を動かしていて、ズキンズキンと血流に合わせて頭痛が起きたら、体を動かすのをやめて楽な姿勢で休みましょう。
病院に行く目安
体や精神面の不調によって「つらい」と感じているときは、医療機関の受診をおすすめします。
特に、
PMSのつらい症状が毎月起こる
日常生活や対人関係に支障が出ている
痛みや倦怠感が重く、仕事や学校を休むことがある
といった場合は、早めの受診をおすすめします。
PMSが悪化すると、脳機能のバランスを崩し、うつ病を発症するケースもあります。
心当たりのある方は、放置しないようにしましょう。
PMSの治療法
PMSで受診した場合、病院では飲み薬・低用量ピル・漢方薬などを用いて治療をします。
低用量ピルを使うと、生理前と後のホルモンの量の差を軽減できるため、PMSの症状がかなり楽になります。
ただし、妊娠を望んでいる場合には、低用量ピルが使用できないため、生活指導を中心とした治療になります。
婦人科を探す
自分でできる5つの対処法
- 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
- 6~8時間程度の睡眠時間を確保する
- 37~39度くらいのお湯で「半身浴」をする
- ウォーキングなどの軽い運動を習慣にする
- こまめにストレスを発散する
生理前から生理中にかけて不調を感じる人は、普段から上記の習慣をとり入れてみましょう。
対処法① 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
生理前や生理中は、甘い物を食べたくなりやすい時期ですが、お菓子でお腹を満たすのではなく、食事から栄養をとりましょう。
食事は、主菜・副菜・主食の揃った「和定食」をイメージすると、栄養のバランスがとれやすいです。
朝食を食べる時間がないときは、スティックタイプの栄養補助食品やプロテインなどを利用してもよいでしょう。
甘いお菓子を食べたくなったときは、代わりに果物やヨーグルトを食べることをおすすめします。
食事の際は、ゆっくりとよく噛んで食べると、少量でも満足感を得られます。
また、カフェインやアルコールはPEMSに影響すると言われているので、生理前・生理中の時期は、普段よりも控えめにしてください。
対処法➁ 6~8時間程度の睡眠時間を確保する
睡眠不足が続くと、自律神経が乱れやすくなり、生理前・生理中の不調が起こりやすくなります。
毎日、6~8時間程度の睡眠時間を確保しましょう。
必要な睡眠時間には個人差がありますが、
かどうかを目安にするとよいでしょう。
対処法③ 37~39度くらいのお湯で半身浴をする
バスタブに心臓よりも下くらいまでお湯を入れて、半身浴を行いましょう。
37~39度程度のぬるめのお湯に、10分以上ゆっくりと浸かりましょう。
ぬるめのお湯に浸かることがポイントです。
肩が冷えてきてしまう場合は、
を繰り返すとよいです。
半身浴を行うことで血管が広がって血流がよくなり、体が温まります。
また、副交感神経が優位に働き、リラックス効果が期待できます。
対処法④ ウォーキングなどの軽い運動を習慣にする
ウォーキングなどの継続しやすい運動を習慣にしましょう。
負荷が大きな運動ではなく、軽く体を動かすことが大切です。
体を動かすことで、
- 血流がよくなる
- リフレッシュできる
- 自律神経が整う
などの効果があります。
ヨガやストレッチは、就寝前に行うとリラックスできるのでおすすめです。
対処法⑤ こまめにストレスを発散する
ストレスは、脳や中枢神経に影響して、PEMSの発症リスクを高めたり、症状を悪化させたりする恐れがあります。
こまめにストレスを発散して、溜め込まないようにしましょう。
おすすめのストレス解消法
- 寝る前にマッサージする(リンパマッサージなど)
- 趣味に没頭できる時間を作る(読書・映画・音楽鑑賞など)
- 友人とおしゃべりする
- 生活の中に、好きな香りをとり入れる(アロマ・お香など)
こんな症状が出たら病院へ
生理前・生理中の不調により、仕事や日常生活に支障が出る場合は、病院を受診することをおすすめします。
放置すると、精神症状が悪化していくリスクが高まります。
病院は何科に行けばいい?
「婦人科」または「産婦人科」を受診しましょう。
病院では、問診や血液検査・超音波検査などにより、PEMSの症状に似た疾患(※)になっていないかを確認します。
※貧血・うつ・腎臓病・甲状腺疾患・婦人科疾患など。
治療は、ホルモン補充療法や、低用量ピル・漢方薬の服用などを行うことが多いです。
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医師に伝えるとよいこと
悩んでいる症状・症状が出る時期を、生理周期とともに記録しておき、受診時に医師に伝えましょう。
症状の内容や症状が現れる時期によって、PMSやPMDDの可能性もあります。
正確な診断のためにも、上記のことを伝えてください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2020-10-06
生理中、涙が止まらない…。
これってもしかして病気?
生理に伴う不安定な心の症状は「PMDD」の可能性もあります。みんなが実践している対処法や、病院に行く目安もご紹介します。
なぜ?生理中に涙が止まらない…
生理前~生理中の期間は、ホルモンバランスの変動によって精神的に不安定になりやすく、急に涙が出たり、怒りっぽくなったり、イライラしたりするといった情緒面も不安定になりやすい時期です。
特に、「常に気が張っている状態」で生活をしている人は、生理中の腹痛や頭痛などの痛みも重なり、情緒的にもろくなることがあります。
生理前〜生理中は、体の免疫力も低下して病気にかかりやすく、ホルモンバランスの影響で落ち込みやすい時期です。
女性はこの時期は、体と気持ちをいたわり、ゆっくり過ごせるようにスケジュールを調整しておくとよいでしょう。
生理の情緒不安定「皆どう対処してる?」
「生理中、涙が止まらない」という女性に「どうやって乗り切ってる?」と聞いてみました。
「思いっきり泣く」派
友達と連絡して話を聞いてもらったり、その後は「泣ける映画」をみて、目一杯泣いて心を落ち着かせるようにします。
(31歳女性)
「思う存分リラックスする」派
温かい飲み物を飲んで、テレビを1日ぼーっと見たりして気持ちが落ち着かせたり、好きなだけ眠って気持ちをリラックスさせたりする。
(24歳女性)
とにかく「好きなことをする」派
好きなことをしたり、好きなものを食べる。
それでも悲しければ無理に涙を止めようとしないで、思いきって泣いてしまう。
(31歳女性)
「笑える」ように気分を盛り上げる派
全く違うことを考えようとします。動けるなら音楽を聴きながら散歩をしたり、明るいお笑い番組などを観て笑うようにしています。
(37歳女性)
生理中の症状に個人差があることと同じように、乗り切り方も人それぞれ。
あなた自身が「気持ちが楽になる」「つらいのが和らぐ」と思える方法をとれたらいいですね。
生理中つらい…それは「PMDD」かも
生理中に精神的不調が際立ってあらわれる重症例を「PMDD」といいます。
PMDDの主な症状
気持ちの落ち込みがひどい
鬱な気分になる
否定や不安の感受性が強くなる
イライラする
怒りっぽくなる
物事に集中できない
今まで興味があったものに興味がなくなる
通常時より疲れやすい
異常に眠くなり、長い時間睡眠を必要とする
眠れない
死にたくなる
頭痛
など
生理のたびに、上のような症状が強く現れる・自分では抑えられないという場合は、一度病院へ相談しましょう。
こんなときは病院で相談してみよう
感情面の起伏が激しくなってしまい、パートナーや仕事・学校関係の人間関係に影響が出てしまうという人は、一度病院に相談してみましょう。
生理の度に自身がつらい思いをする、また他の人にきつく当たってしまうという悩みがあれば、医師の診察や薬の服用によって、症状をよくできる可能性があります。
また、鎮痛剤を服用してもあまり痛みが変わらない、毎回の生理のたびに我慢できなくて薬が必要という人も、一度、診察を受け、異常がないか調べましょう。
生理時期の症状には個人差があります。
痛み・メンタル面で「おかしい」と感じた際は、病院を受診しましょう。早い段階での受診は、病気の早期発見につながります。
受診するのは何科?
一度、婦人科か産婦人科に相談しましょう。
主に卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤や低用量ピルの処方等、漢方薬薬物療法やなど行います。
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※生理中~生理前に関係なく、症状が現れる場合は、心療内科や精神科へ相談をしましょう。主にカウンセリングや生活指導、抗不安薬による薬物療法が行われます。
参考
公益社団法人 日本婦人科学会 5.月経困難症