「なんだか耳が痛い…」
「音が聞こえづらいのはなぜ?」
大人の中耳炎の初期症状をお医者さんに聞きました。
病院に行く目安や、放置するリスクもご紹介します。
症状が進行すると完治が難しくなるケースもあるので、最後まで読んで対処しましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
大人の中耳炎の初期症状は?
大人の急性中耳炎の初期は、
といった症状があらわれます。
早期受診をおすすめする理由
初期のうちに治療することで、早期改善が期待できます。
軽症のうちに治療することで、簡単な治療(投薬・服薬など)で済むことも多いです。
慢性化・重症化を予防し、入院・手術による治療避けるためにも、早めに受診することをおすすめします。各種検査を受けることで、発見が難しい重篤な疾患を早期に見つけられることもあります。
初期段階の治療例
- 抗生物質(内服薬、点鼻薬)で炎症を抑える
- 鎮痛薬で痛みを緩和
- 膿が溜まっている場合は、鼓膜切開し、滲出液を排出
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なぜ?大人でも中耳炎になる原因
中耳炎は子どもに多いイメージですが、大人でもなります。
原因1.鼻水がたまっている
風邪、鼻炎、花粉症、副鼻腔炎等の場合、ノドに鼻水が溜まりやすくなります。鼻水に含まれている細菌やウイルスが耳まで送られて炎症が起こり、中耳炎になります。
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2023-01-30
副鼻腔炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
副鼻腔炎の主な症状も紹介するので、「副鼻腔炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしましょう。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎とは、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)や鼻の粘膜に、細菌やウイルスが侵入し、炎症が起こる病気です。
副鼻腔に膿が溜まったり、腫瘍が発生したりすることで、目の下の骨に痛みが生じることがあります。
副鼻腔炎の症状
鼻がつまる
黄色や緑色の鼻水(膿性鼻水)が出る
発熱する
痰がからむ咳が出る
ほほ、おでこに痛みが出る
頭が痛い
目が痛い
歯が痛い
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎にかかる原因としては、下記が挙げられます。
風邪
ハウスダスト
花粉
カビ
風邪以外の原因に関しては、それらが鼻から入って副鼻腔にまで侵入し、炎症を起こして鼻水が臭うこともあります。
副鼻腔炎になりやすい人
副鼻腔炎は、誰にでも発症する可能性のある病気ですが、次のような人は特に注意が必要です。
75歳以上の高齢者
糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などにかかっている方
ウイルスや細菌感染による鼻症状を繰り返している方
過去一ヵ月に抗菌薬を使用した方
肥満傾向の方
喫煙習慣のある方
ぜんそくや気管支炎のある方
副鼻腔炎に使える市販薬は?
市販の鼻炎薬を使用することで、回復することもあります。
市販薬の例
アレルギー性副鼻炎の場合…
ナシビンメディ:佐藤製薬
アルガード鼻炎クールスプレーa:ロート製薬
風邪による副鼻炎の場合…
パブロン鼻炎アタックJL:大正製薬
アレルギーによる場合には、副鼻腔炎だけでなく鼻閉(鼻づまり)も併発している可能性があるため、点鼻薬がおすすめです。
また、最近では漢方薬による副鼻腔炎の治療薬も出始めています。
蓄膿症の漢方薬としても用いられている辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)がおすすめです。
こんな症状は早く病院へ
副鼻腔炎が悪化している場合、自然に治りにくいです。症状が2週間以上続いているときは、早めに受診しましょう。
副鼻腔炎が悪化すると、症状の慢性化や中耳炎を発症するリスクがあります。
中耳炎は聴力に悪影響を及ぼす恐れがあるため、注意したいものです。
さらに、重症化して髄膜炎(※)を引き起こすケースも稀にあります。放置しないようにしましょう。
※「髄膜炎」…頭蓋骨と脳の間にある「髄膜」という膜に、細菌・ウイルスなどが感染し、炎症を起こす病気。頭痛や嘔吐、錯乱などの症状が現われ、最悪の場合命に関わることもある。
病院は何科?
副鼻腔炎の症状は、耳鼻いんこう科で相談しましょう。
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副鼻腔炎の治療法
薬の処方、点鼻噴霧ステロイド、鼻洗浄を行います。
処方するお薬には、鼻の中の環境を整える「抗菌薬」、痰を出しやすくする「去痰薬」などがあります。
症状によっても異なりますが、2〜3ヶ月程度で治るケースが多いです。
なお、薬物療法で改善が見られない場合には、内視鏡での手術も検討されます。
原因2.よく鼻をすする
鼻をすすると、鼻水を中へと押し戻してしまうため、中耳炎を発症しやすくなると考えられています。
原因3.リンパ組織が大きい
リンパ組織であるアデノイドが大きいと耳管を圧迫したり、付着した菌が耳まで到達して、中耳炎を起こす場合があります。
原因4.気圧の変化
飛行機に乗った際やスキューバダイビング時にうまく耳抜きができないと、中耳に炎症を起こし中耳炎を発症する場合があります。これを航空性中耳炎といいます。
仕事は休むべき?行ってもいい?
中耳炎は、人から人へと感染することはないと考えられているため、仕事に行っても問題はないでしょう。
しかし、発熱している場合や耳だれが多く出るときはお休みするようにしてください。
自然に治ることもある?
軽症の場合、自然治癒するケースがあります。
しかし、以下の症状がある場合、自然治癒は見込めません。
- 発熱や頭痛がある
- 鼓膜が赤く腫れている
- 中耳内に膿が溜まっている
慢性化や重症化を防ぐために、病院を受診し、症状に合った治療を受けることをおすすめします。
自分でできる、中耳炎の対処法
中耳炎による痛みを軽減する方法として、
- まめに鼻をかむ(強くかみ過ぎない)
- 鼻うがいをする
- 保冷剤等で軽く冷やす
といった対策をすると良いでしょう。
市販薬は?
痛みを和らげるために、市販の鎮痛剤を使ってもいいですか?
症状が軽い場合は、市販の鎮痛薬を使用して一時的に痛みを抑制する方法があります。
しかし、市販薬を使用しても症状が改善しない場合には、使用を中止し、病院を受診してください。
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やってはいけないNG対処法
大人の中耳炎の場合、
- 耳に水が入る
- 鼻を強くかむ
- 鼻をすする
- 耳掃除をする
- プールに入る
といった行為は症状を悪化させる可能性があるので、避けましょう。
病院に行くべき目安
以下のような症状がある場合、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
- 痛み等の症状が2~3日続く
- 難聴
- 耳だれ
- 吐き気
- 頭痛
- 38度以上の発熱
- 顔面神経麻痺の症状を伴う(顔の片側が動かなくなる)
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放置するとこんなリスクも…
中耳炎の症状を放置することで、治療期間が長引いたり、重症化して難聴を起こす場合があります。
細菌が広範囲に拡がり、内耳炎を併発する可能性があります。炎症が悪化した場合、髄膜炎や顔面神経麻痺等の合併症を起こす恐れもがあります。
耳鳴り、耳閉感等の後遺症が残る恐れもあるので、早めに受診しましょう。
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また、急性中耳炎を放置すると、慢性中耳炎や滲出性中耳炎を引き起こすこともあります。
慢性中耳炎
耳の鼓膜から奥が炎症することによって、3か月以上鼓膜に穴が開いている(急性中耳炎が完治していないまま慢性化する)状態です。
慢性中耳炎の場合、細菌が入り込みやすく感染を繰り返します。
急性中耳炎で生じる耳の痛みや皮膚が赤くなり、腫れる等の症状はないケースが多いです。
完治するまでの期間
手術療法(鼓膜形成術)を行う場v合、入院期間は4日~2週間程度です。
特に、真珠腫性中耳炎(※)の場合、完治と認められるまで数年かかる場合があります。
滲出性中耳炎
鼓膜の奥にある中耳に、滲出液(水)が溜まる状態です。
急性中耳炎が慢性化すると、中耳に滲出液が溜まってしまい難聴が起こります。
風邪、鼻炎、副鼻腔炎等、鼻やのど周辺に炎症が生じて、耳管機能が衰退することが原因と考えられています。
急性中耳炎とは違い、滲出液に感染が生じない限り、痛みが生じるケースはないと考えられています。
治療方法
- 保存的治療として、抗炎症薬や抗菌薬(マクロライド系)を用いた治療
- 内服薬を用いた治療のみでは治癒が難しい場合は、鼓膜の切開を行う
完治するまで期間
早くても2週間、長期化すると6か月以上かかる場合もあります。(個人差あり)
また、しっかり治療を行わないと、再発を繰り返し、完治が難しくなる場合があります。
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2022-05-31
大人の「中耳炎による発熱」の対処法を、お医者さんに聞きました。
「発熱はいつまで続くの?」
「熱が上がったり下がったりするのはなぜ?」
といった疑問にもお答えします。
「大人の中耳炎」を早く治すために
基本的に、「中耳炎で発熱している」場合は、耳鼻いんこう科で治療を受けましょう。
大人の場合、重症化すると症状が数ヶ月続くことがあります。
その上で、早く治すためには
こまめに鼻をかむ
十分な睡眠をとって免疫力を高める
といった点を心がけましょう。
特に鼻水には細菌がいるため、鼻水が溜まった状態では、耳に細菌が侵入しやすくなります。
また、耳に水が入ったり、体が温まったりすると耳の痛みが悪化するリスクがあります。
中耳炎がひどいときは、耳に水が入らないよう気をつけ、入浴はシャワーで済ませるなどしましょう。
仕事は休んだ方がいい?
中耳炎は他の人に感染するわけではないため、体に負担がかからないのであれば、仕事に行っても良いでしょう。しかし、発熱して体がつらいとき場合は、2~3日ほど休んで熱が下がるのを待ちましょう。
一時的な対処として「市販薬」を使うのはOK
症状
市販薬の例
「発熱」と「耳の痛み」
ロキソニン
イブ
バファリン
などの解熱鎮痛薬
「発熱」+「鼻水・咳」
ルル
パブロン
などの風邪薬
※風邪薬と解熱鎮痛薬をあわせて飲まないようにしてください。
(風邪薬には解熱鎮痛の成分も入っていることが多いため)。
症状がつらいときは、上記を参考に市販薬を服用してみましょう。
ただし、あくまでも「受診するまでの応急処置」です。できるだけ早めに耳鼻いんこう科で診察を受けてください。
「大人の中耳炎の発熱」早めに病院に行くべき理由
大人の中耳炎は重症化するケースもあるため、自己判断せずに早めに受診することをおすすめします。
中耳炎が疑われる症状がある場合は、まず耳鼻いんこう科へ受診しましょう。
治療せずに放置すると、中耳の部分に「浸出液」という液体が溜まってしまうことがあります。この状態になると、耳の聞こえが悪くなったり、治療に何年もかかったりするリスクがあります。
中耳炎は、大人の場合はなかなか症状が良くならない傾向があるため、早期治療で慢性化させないことが大切です。
症状が消えても油断は禁物!
熱や耳の痛みなどの症状がなくなっても、中耳炎が完全によくなったとは限りません。
慢性化したり再発したりするリスクがあるため、症状が落ち着いた場合も一度診察を受けるようにしましょう。
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中耳炎による発熱は、いつまで続く?
適切な治療を受ければ、2~3日、長くても1週間ほどで熱は治まるでしょう。
熱が上がったり下がったりするのはなぜ?
仕事や学業などの疲れで「抵抗力が低下している」
鼓膜の奥のほうにまで「膿が溜まっている」
といった原因によって、熱が上がったり下がったりすることがあります。
膿が鼓膜の奥のほうにまで溜まっている場合、「鼓膜を切開する手術」が必要になることもあります。
病院では、どんな治療を受けるの?
治療例
発熱・痛みがある
「鎮静剤」や「抗菌薬」などの処方
鼻水の症状を伴う
(鼻水がたまると症状が悪くなるため)大人では「点鼻薬」や「鼻閉改善薬」、「抗ヒスタミン剤」で治療
鼓膜に膿が溜まっている
鼓膜を切開して溜まった膿を出す
完治するまでにどれくらいかかる?
熱や耳の痛みなどの症状自体は、2~3日で治まります。
ただし、重症の場合には1ヶ月~4ヶ月ほどかかると言われています。
重症の場合、鼓膜の奥に膿が残ってしまうことが多く、それがぶり返す原因となるため、完全に膿を取り除く必要があります。
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▼参考
医療法人社団順誠会 妙典さいとう耳鼻咽喉科:大人の中耳炎
戸塚はなむら耳鼻咽喉科:中耳炎
一般社団法人千葉市医師会:確実に治療したい「中耳炎」
日本耳鼻咽喉科学会広島県地方部会:急性中耳炎
医療法人社団千葉厚生会どい耳鼻咽喉科:急性中耳炎 大人
MSDマニュアルプロフェッショナル版:中耳炎(急性)
MSDマニュアル家庭版:かぜ(感冒)
たかはし耳鼻科:耳鼻科の病気について
あやせ耳鼻咽喉科:治りにくい中耳炎
戸田ファミリア耳鼻咽喉科:耳の症状(中耳炎)
竹村耳鼻咽喉科クリニック:耳の病気
いとう耳鼻咽喉科:耳の病名
おおた耳鼻咽喉科:急性中耳炎
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2022-05-31
中耳炎になったときの「寝る向き」について、お医者さんに聞いてみました。
「耳が痛くて眠れないときの対処法は?」
「耳鼻いんこう科に行くタイミングは?」
といった疑問にもわかりやすくお答えします。
中耳炎になったら、寝る向きはどうすればいい?
症状
寝る向き
耳から浸出液が出ている
浸出液が出ている耳を下に向けて寝ましょう。
浸出液を排出すると耳の中で液が固まるのを防ぐことができます。
また、浸出液を出してしまった方が、中耳炎がより早く治まります
耳が痛い・耳が腫れている
中耳炎になっている方を上に向ける方が、患部を圧迫しないので楽になることが多いです。
滲出液がでている場合は、耳に滲出液を溜めないように、中耳炎になっている方を下にしましょう。
滲出液がでておらず耳が痛い場合は、中耳炎になっている方を上にすると痛みが和らぐことがあります。
※浸出液とは:中耳炎になると出てくる「透明・やや黄色い液体」のことです。さらさらのタイプ・粘っこいタイプがあります。
耳が痛くて眠れないときの対処法
痛みで眠れないときは、鎮痛剤を使用すると痛みがだいぶ楽になります。
ただし、あくまでも「一時的な対処」として使用してください。
中耳炎を放置すると難聴を引き起こす場合もあります。
悪化のリスクを防ぐためには、耳鼻いんこう科での適切な処置が必要です。
病院に行くタイミングは?
中耳炎には抗生剤を使った治療が必要です。
そのため、基本的に中耳炎を発症したら、耳鼻いんこう科で治療を受ける必要があります。
特に「症状が出てからまだ一度も医療機関に行っていない」という場合は、早めに受診しましょう。
早めに治療を受ければ、お薬の服用のみで症状が快方に向かいます。
しかし症状が進行していると、鼓膜の切開などの処置が必要になるケースもあります。
中耳炎が慢性化したり、悪化して難聴になったりするリスクを避けるためにも、放置しないようにしてください。
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どんな治療を受けるの?
「鎮痛剤」「抗生剤」を処方し、痛みを楽にする治療を行います。
浸出液や膿が多い場合は、吸い取ったり切開をしたりして、排出する治療も行います。通常、膿を出すと痛みは引いていきます。
早く治すために心がけること
中耳炎を早く治したい方は、医師の指示通りに通院してください。
また、風邪で鼻水がひどいときは「こまめに鼻をかむ」ことで中耳炎の悪化を予防することができます。
中耳炎は、細菌・ウイルスが耳に回ることで発症するので、鼻水をすする行為は避けてください。
仕事は休んだ方がいい?
人にうつる病気ではないので、必ずしも休みを取る必要はありません。
ただし、体調が思わしくないときは安静にしましょう。
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