背中にしこりができている…!
これは一体なに?大丈夫?
しこりができる原因を、お医者さんが解説します。
「自然に治るのか」「悪性の場合もあるのか」などの疑問にもお答えします。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
よくある2つの原因
原因① 脂肪腫
脂肪を作る「脂肪細胞」が異常増殖することで、触ると硬いしこりが形成されます。
1つの場合もあれば、前腕部・体幹・首など体のあらゆる場所にできるケースもあります。
誰にでも発症する可能性があります。
発症原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝が関係していると言われています。
しこりの特徴
皮膚に異常はなく、滑らかで、やわらかいこぶのような見た目をしています。
押すと痛いことがあります。
しこりの大きさは数mm~10cm以上とさまざまですが、多くが7.5cm以内のものです。
脂肪腫は自然に治る?
脂肪腫が自然に小さくなったり、消えたりすることはありません。
特に体への害はないので、気にならない場合は治療しなくても大丈夫です。
放置するとどうなる?
脂肪腫が大きくなると周囲組織を圧迫して違和感・痛み・痺れを引き起こすケースがあります。その場合は医療機関での切除をおすすめします。
病院での治療法
「通常手術」「スクイージング手術」など、外科手術によってしこりを取り除きます。
通常手術
しこりの上を、しこりの直径と同じくらいの大きさに切開します。そして、しこりを包む膜を破らないように、周りの組織から剥がして取り出す方法です。
スクイージング手術
脂肪腫の剥離・摘出用の器具が入る程度の必要最小限の切開(1~3cm以下)で、しこりを取り出す方法です。
原因② 粉瘤
皮膚の下に、袋状のできもの(嚢腫)ができ、通常は皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が、剥がれ落ちずに袋の中にたまってしまうことで、しこりが形成されます。
粉瘤は女性よりも男性が発症しやすいです。
できやすさには、生まれつきの体質が関係します。
しこりの特徴
しこりの中央に黒い点のような開口部がみられることが多く、強く押すと、臭くてドロドロとした物質が出ることがあります。
粉瘤は自然に治る?
粉瘤は自然に消えたりしません。
粉瘤は、徐々に大きくなります。
市販薬や塗り薬もないので、医療機関での切開手術が一般的な治療法です。
放置するとどうなる?
放置すると角質や皮脂がどんどん蓄積され、時間の経過とともに少しずつ大きくなり、破裂する恐れがあります。
しこりの中央の開口部から細菌が侵入すると、化膿するケースがあります。
膿がたまった場合、皮膚の表面を少し切り開いて、膿を出さなくてはいけなくなります。
病院での治療法
「へそ抜き法」と呼ばれる切開手術で、膿を出すことが多いです。
へそ抜き法(くり抜き法)
皮膚の表面から円筒状のメスを刺し込み、表面の皮膚と一緒に袋状になったできものの一部分をくり抜く方法です。
くり抜いた後は、内容物をもみだしながら、袋自体も可能な限りかきだします。
手術後の傷跡は、最終的にはにきび痕程度のへこみになり、目立ちません。
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悪性腫瘍の可能性は?
背中のしこりは「脂肪肉腫」といった、悪性腫瘍の可能性も考えられます。
放置すると、がん細胞がほかの組織に転移し、命に関わるため、早急な治療が必要です。
脂肪肉腫とは?
脂肪肉腫とは軟部肉腫の1つで、脂肪組織から発生した悪性腫瘍です。
放置すると腫瘍細胞が増殖し、他の臓器への転移のリスクが高まります。
治療を行えば、再発や転移は比較的少ないです。
悪性か良性かを見分けるには?
ご自身で判断するのは難しく、大変危険です。
医療機関で検査を受け、原因を詳しく調べましょう。
一般的に悪性腫瘍は良性腫瘍に比べて、しこりの成長スピードが早く、硬い感触であると言われています。
気になるしこりは、早期受診を!
早めに医療機関を受診することで、症状の悪化を防ぐことができます。
悪性腫瘍だった場合、命を落とす可能性もあるので、しこりが大きくなったり、炎症を起こしたりする前に皮膚科へ相談しましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2021-03-29
皮膚に脂肪腫ができた…。これはストレスのせい?
脂肪腫の原因をお医者さんに聞きました。
医療機関での治療方法や、トータルでかかる費用も併せて解説します。
脂肪腫の原因はストレス?
刺激や体質によって発生しますが、ストレスが脂肪腫の直接の原因となることはありません。
今のところ脂肪腫の詳しいメカニズムは、まだはっきりと分かっていません。
服のスレなどの物理的刺激や体質などが原因となるケースが多いです。女性や太り気味の方に多い傾向があります。
服がすれやすい場所、手が触れやすい場所など、刺激を受ける部位にできることが多いです。
脂肪腫とは?
皮膚の下にある、脂肪細胞が増えてできた脂肪の塊のことです。
脂肪腫は体のあらゆるところにできますが、特に前腕部・体幹・首はできやすい部位です。
脂肪腫の見た目の特徴
滑らかで軟らかいこぶのように見える
周囲との境界がはっきりしている
触れると硬い
皮膚にそのものには、異常が現れない
大きさは数mm~10cm以上までさまざまだが、7.5cm以内のものが多い
1個だけできるケースもあれば、いくつもできることもある
押すと痛むことがある
脂肪腫の発生時期
脂肪腫の発症時期は幼少時が多いですが、少しずつ大きくなっていくため、脂肪腫として発見される時期は遅くなります。
40~50歳代で気になり始める人が多く見られます。
脂肪腫は自然に消える?
脂肪腫が自然に消えることは、残念ながらありません。
ぬり薬を塗っても効果はないです。
大きくなっても体への害はないので、あまり心配はいりません。
病院に行くべき?
まれに脂肪腫だと思っていたしこりが、悪性腫瘍のこともあるので、医療機関での検査をおすすめします。
脂肪腫とわかった場合、放っておいても体への悪影響はないので、特に治療の必要はありません。
どうやって治すの?
しこりが気になる場合や痛みがある場合は、「通常手術」「スクイージング手術」など
外科手術で腫瘍を摘出します。
通常手術
脂肪腫の上を脂肪腫の直径と同じくらい切り開き、腫瘍を包んでいる膜を破らないようにしながら、周りの組織から剥がし取り出していきます。
スクイージング手術
脂肪腫の剥離・摘出用の器具が入るくらいの必要最小限の切開で、腫瘍を取り出す手術法です。
脂肪腫の大きさにもよりますが、この手術法であれば、1~3cm以下の切開で済むため、手術の跡が目立ちにくいのがメリットです。
脂肪腫治療の流れ
問診や触診をした後にエコーやCT、MRIなどの検査を行い、脂肪腫なのか、その他の病気ではないかの確認をします。
脂肪腫だった場合、大きさや部位を見て、医師と相談しながら手術方法を決めていきます。
手術時間は大きさにもよりますが、30分ほどで日帰りのケースが多いです。
手術にかかる費用は?
脂肪腫の手術は、保険適用(3割負担)で受けることができます。
総額で10,000~20,000円程度かかると想定しておくと良いでしょう。
おおよその手術費用一覧
露出部の2cm未満の場合…4,980円
露出部の2cm以上の場合…11,010円
露出部以外の3cm未満の場合…3,840円
露出部以外の3cm以上の場合…9,690円
※露出部…頭や顔、首、肘から先、膝から下
手術費用は、脂肪腫の部位や大きさによって変わります。
手術費用に加え、初診料・再診料・処方料・薬剤料・病理検査代などもかかります。
総額で10,000~20,000円程度かかると思っていてください。
医療機関によって多少前後するので、不安な場合は医療機関に直接問い合わせてみるのがおすすめです。
自己判断は危険!脂肪腫ができたら早めに病院へ
皮膚のできものや気になる症状が現れた時は、見た目で判断するのは難しいので、
自己判断せずに早めに医療機関で相談しましょう。
「脂肪腫と思っていたら悪性腫瘍だった……」というケースもあります。
悪性腫瘍の場合、命に関わるため、早期発見・早期治療が重要です。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
MSDマニュアル家庭版 脂肪腫
独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院
一般社団法人 日本形成外科学会
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2021-01-04
腕や顔、首などにできた「押すと痛いしこり」。
これは一体何…?
体にできる、押すと痛いしこりについて、お医者さんにお聞きしました。
皮膚のしこりは、良性と悪性、両方の可能性が考えられます。
病気とご自身の症状を、照らし合わせてみましょう。
押すと痛いしこり…これ大丈夫?
ごくまれに悪性腫瘍のケースがあり、検査をしない限り大丈夫とは言いきれません。
ただ、皮膚の押すと痛いしこりは、良性腫瘍がほとんどです。痛みがあるのは、細菌が感染して、炎症を起こしている可能性があります。
よくある「押すと痛いしこり」の3つの原因
皮膚にできる、押すと痛いしこりは
粉瘤(アテローム)
石灰化上皮腫
神経鞘腫
の可能性があります。
原因① 粉瘤(アテローム)
アテロームとは、皮膚の下にできた袋状のもの(嚢腫)に、皮膚の角質や皮脂がたまってできた腫瘍のことです。
押すと痛いのは、しこりに細菌が侵入して、化膿しているためです(炎症性もしくは化膿性粉瘤)。その場合、しこりは赤く腫れ、痛みを伴います。
発症しやすい人に特徴はありませんが、体を清潔に保っていても、できやすい体質の人がいます。
しこりの特徴
角質や皮脂は袋にどんどん蓄積していき、時間とともに徐々に大きくなっていきます。アテロームは、数mm~数cmの半球状で、強く押すと、臭いのするドロドロとした物質が出てくることがあります。顔や首、耳のうしろ、背中などに発生しやすいです。
1個~数個できるのが一般的ですが、たくさんできることもあります。
自然に治る?
アテロームは、放置したり、市販薬を塗ったりしても消えません。
放っておくと、さらに大きくなることがあります。
粉瘤は、良性腫瘍なので、切除するかどうかは本人の自由ですが、取らない限りはなくなりません。
しこりに細菌が侵入して化膿することがあり、赤く腫れ、痛みを生じます。
さらに化膿すると、しこりの内容物が破壊されて膿がたまり(膿瘍)、膿を出す必要があります。
病院での治療法
メスを使って粉瘤を表面の皮膚ごと切り取り、縫いあわせる手術を行います。
大きくなってから切除すると傷跡も大きくなるので、小さいうちに切除するとよいでしょう。
原因② 石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)
皮膚の一部が石灰のように硬くなる病気です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、毛根にある毛母細胞が原因となっていると考えられています。
細菌感染により、炎症を起こしていると、痛むことがあります。
子どもや若年者が発症しやすいです。
しこりの特徴
しこりは石のように硬く、表面は少しゴツゴツとしています。無症状のことが多いですが、かゆみを感じたり、押すと痛んだりすることがあります。
しこりの上の皮膚が薄い場合は、しこりが透けて、青黒い色や黄白色に見えることがあります。境界がはっきりとしていて、皮膚の表面から触って動かすことができます。
しこりは、顔や首、腕にできやすいです。細菌に感染した場合には、赤く腫れることがあります。
自然に治る?
放っておいても、自然に消えることはありません。
病院での治療法
皮膚を木の葉状に切り取り、しこりを取り除き、縫い合わせる手術を行います。
原因③ 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
神経の近くにできる良性の腫瘍です。
神経細胞は束になっていますが、主にその中のひとつに形成されます。
発症する原因は、はっきりとわかっていません。
神経のそばなので、腫瘍ができることで痛みを感じる場合があります。皮膚表面にできた場合は、押したときだけ痛む、押すと神経のある方向へ痛みを感じることがあります。
しこりの特徴
皮膚表面に発生すると、膨らみがわかることがあります。
頭、手、足、顔など、様々な場所に発生します。
発症する人の多くは大人ですが、子供が発症することもあります。
自然に治る?
自然にはなくなりません。
ただ、大きくなることも少ないので、気になる症状がなければ、経過観察となります。
病院での治療法
手術による摘出が主な治療法です。
大きくなり、神経を圧迫して痛みや痺れがある場合は、摘出されます。完全に摘出が行われれば、基本的に再発はありません。
こんなしこりは要注意!悪性腫瘍(がん)の特徴
悪性腫瘍が疑われるしこりは、成長スピードが速い、皮膚の表面から触って動かそうとしても動かないことが多いなどの特徴があります。
また、直径5cmをこえる大きさで硬いしこりや、表面が凸凹しているしこりは、悪性腫瘍の可能性があります。
悪性腫瘍ができやすいのはどこ?
悪性腫瘍は手足にできやすいです。
病院に行く目安
しこりが赤くなってきたり、痛みが強くなってきたりしたら、すぐに受診しましょう。
しこりは小さいうちに対処したほうが、傷が小さくて済むことが多いです。早めの受診をおすすめします。
悪性腫瘍が疑われる場合も、早急に受診してください。
何科を受診する?
皮膚のしこりが気になるときは、皮膚科や形成外科を受診しましょう。
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▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 アテローム(粉瘤)
一般社団法人 日本形成外科学会 石灰化上皮腫