「おしっこするのが痛い」
「風邪じゃなさそうだけど…熱が上がっている…」
もしかして膀胱炎かもしれません。
お医者さんが、ママ・パパがとるべき行動を解説します。早急に受診する必要がある場合もあります。
監修者
経歴
公益社団法人 日本小児科学会 小児科専門医
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」の院長として勤務
2020年 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任
子どもの膀胱炎の「原因」
「おしっこに行きたいけど我慢する」という行動は、膀胱炎の発症の原因となります。
女の子の場合は、排便後に後ろから前にふくことでも細菌が侵入します。
子どもの膀胱炎の「症状」
子どもが膀胱炎になると
- おしっこをする時に痛がる
- お腹が痛い
- 頻尿になる
- 食欲が低下する
などの症状がみられます。
小さな子どもは、機嫌が悪い・むずがる・トイレを嫌がるといったサインを出すこともあります。尿意が近いのがわかる年齢だと、外出を嫌がる、機嫌が悪く泣いてばかりといった行動をとることもあります。
小学生くらいになると、学校での授業中にトイレに抜けるのを嫌がって、症状が進んでしまうことがあります。このような場合は、家でもトイレの回数が増えているはずです。落ち着き気がなくしょっちゅうトイレに行っているなどが見られる場合は、膀胱炎を疑います。
小さな子どもの場合は、言葉で伝えられないので、保護者の方から見て「いつもと違う」という感覚は大事にしてください。
おかしいと感じたら、病院受診を検討しましょう。
より重症な「腎盂腎炎」の症状
発熱(38度以上)がある場合、腎盂腎炎に発展しているかもしれません。すぐに病院受診をしてください。
- 発熱
- 冷や汗
- 吐き気
- 嘔吐を繰り返す
- わき腹や背中を触ったり叩くと、強く痛がる
膀胱炎の「応急的な対処」
水分を多く摂らせて、おしっこをたくさん出すようにしましょう。
また、すぐトイレに行ける環境を作り、ストレスなく安静にして過ごすようにしましょう。
膀胱炎の「治し方」は?
膀胱炎を治すためのポイントは2つです。
- 病院に行って、処方薬を最後まで飲む!
- おしっこの量を増やす!
ポイント1.処方薬を最後まで飲む
医療機関(小児科・泌尿器科)を受診して、飲み薬をもらいましょう。尿路にいる細菌を殺すために飲み薬で治療を行います。
お薬を内服すると数日で症状はよくなりますが、ひとつ注意が必要です。処方された薬は最後まで飲んでください。途中でやめると、また細菌が繁殖して症状がぶり返すことがあります。
薬は通常1週間程度処方されます。最後までしっかり飲みましょう。
ポイント2.おしっこの量を増やす
水分補給を行いおしっこの量を増やして、細菌を排出しましょう。
尿に混じって細菌は排出されます。おしっこの排出量が多ければそれだけ、細菌も早く排出されていきます。
お家では、すぐトイレに行ける環境を作り、ストレスなく安静にして過ごすようにしましょう。
自然治癒するの?
子どもの膀胱炎は、自然に治らないのでしょうか?
膀胱炎は、自然に治癒していくことも多くあります。
ただし、膀胱炎かもと思ったら、必ず受診しましょう。悪化していくと、細菌が血流に入り込んで敗血症や急性腎不全、多臓器不全を引き起こし死亡するリスクがあります。
特に、病気の後など免疫が低いときは、体の戦う力が弱くなっているため、細菌の繁殖により症状が悪化する場合があります。日に日に症状が悪くなっている・痛がっている時間が長くなっているような場合は、早急に病院を受診しましょう。
自然治癒するの?
子どもの膀胱尖に効く市販薬はありますか?
膀胱炎に効く市販薬はありません。
膀胱炎を発症する原因は、大腸菌などの細菌です。細菌に有効な抗生物質は、現在市販されていません。必ず、医療機関を受診して、飲み薬をもらってください。
膀胱炎を放置するキケン
放置して、重症化をすれば、腎盂腎炎・敗血症になることもあります。
敗血症になると、細菌が血液によって全身をめぐって、死亡するケースもあります。医療機関は、早めに受診してください。
病院は何科に行くべき?
小児科・泌尿器科で治療が可能です。
膀胱炎かもと思ったら、必ず受診しましょう。
痛みがひどくなると、動けなくなったり、発熱したりすることもあるので早めに病院を受診しましょう。
特に、腎盂腎炎を発症している可能性がある場合(発熱・冷や汗・吐き気・嘔吐・わき腹や背中を触ると強く痛がる)はすぐに病院受診をしてください。医療機関では、尿検査を行います。
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2020-12-07
発熱や結膜炎など「アデノウイルス感染で症状がつらい」とき、病院では、どんな治療をするの?
お医者さんに聞いてみました。
受診目安や治療期間の目安についても解説します。
アデノウイルスの「症状」
アデノウイルスは何種類もあります。
そのため、何度でも感染することがあり、目・喉・発熱など、どの症状が強く出るかが異なります。
目に出る症状
目やに
充血
など
目が真っ赤になる「結膜炎」を発症します。
喉にでる症状
腫れ
痛み
など
喉が真っ赤に腫れます。
痛みがあるため、食事を飲み込まない子どもも多いです。
全身に出る症状
高熱がでます。
3~4日程度高熱が続くことが多いです。
アデノウイルス感染症「治療法」
医師が診察をして、お薬を処方するケースが多いです。
アデノウイルスに感染したら、症状を緩和する「対症療法」を行います。
お薬で対処することが一般的なので、“痛い”“怖い”治療は基本的にありません。
目の症状に対する治療
目やに・結膜炎の治療には、点眼薬(目薬)を使用します。数滴を目の中に入れます。
※抗菌薬は市販されていません。医師に処方してもらいましょう。
喉の症状に対する治療
痛みを緩和する鎮痛剤を処方します。
全身症状に対する治療
発熱症状がつらい時は、解熱剤を処方します。
アデノウイルス「治療薬」
アデノウイルス感染症に効く「特効薬」はありません。
通常は、「症状を和らげるお薬」を医師が症状を判断して処方します。
目の症状の治療薬
アデノウイルスに感染し、結膜炎を発症すると目の免疫も落ちています。そのため、他の目の病気に感染しやすくなるので、感染しないように抗菌薬、炎症を抑えるためにテロイド点眼薬などが処方されます。
喉の症状の治療薬
痛み止めの鎮痛薬を処方します。
子どもの場合は、「アセトアミノフェン」がよく使用されます。
全身症状の治療薬
解熱剤を処方します。
こちらは、子どもの場合は、「アセトアミノフェン」が多いでしょう。
治療期間はどれくらい?
一般的に、1週間程度で快方に向かいます。
病院行くべき?行かなくてもいい?
意識がはっきりして元気がある場合や40度以下の熱であれば、通常は自宅療養してもらいます。
ただし、次のような症状が出ている場合は、病院を受診してください。
「目の症状」の受診目安
結膜炎による充血・痛み・目やにがひどいという状況が2日以上続く場合は受診しましょう。
また、痛みが強い場合は、他の病気の疑いもあるので早急に受診してください。
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「喉の症状」の受診目安
喉が腫れて飲むことができないということが半日〜1日あれば、すぐに受診してください。
脱水症状を引き起こす可能性があります。
保護者の方は、スプーンに水や飲み物をのせ、口に含ませるだけでもこまめに行ってください。体が小さな子どもほど、脱水が進むのは早いです。水分補給はこまめに行います。
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全身症状の受診目安
40度以上の発熱が2日以上下がらないときは、病院で診察を受けましょう。
小児科を探す
子どもの様子は、こまめに確認しましょう。
子どもの年齢・体格・体調によっては、急変する場合もあります。
通常、アデノウイルス感染は、数日〜1週間程度でよくなりますが、元々の体調が悪いとウイルスに体が負けてしまう場合があります。
病院は、何科に行けばいい?
目の症状は、眼科を受診しましょう。
喉の症状は、耳鼻いんこう科、小児科を受診しましょう。
発熱などの全身症状は、小児科を受診してください。
眼科を探す
小児科を探す
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入院基準は?
高熱が下がらない
食事が入らない
全身症状が強い
という場合は、入院で経過を見ることもあります。
高熱は、急な体調変化や脳症を発症することがあります。急変に備えて入院してもらい、いつでも治療が受けられるようにします。
▼参考
Dr.365こどもの病気相談室
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2020-04-09
アデノウイルスに感染したかも?
検査はどこで受ければいいの?
検査タイミングや、検査の流れ、費用や時間まで、まるごと解説します。
アデノウイルス感染したらどんな症状が出る?
子どもの間で流行するアデノウイルス感染で有名なのは、咽頭結膜炎熱(通称:プール熱)です。
プール熱の症状は、
発熱
喉の炎症(腫れ・赤み・痛み)
目やに
目の充血
だるい
食欲不振 など
が現れます。
通常、4~5日で程度症状が続きます。
プール熱以外にも、肺炎や上気道炎、咽頭炎、胃腸炎、膀胱炎、流行性結膜炎などの多くの病気をアデノウイルスは引き起こします。
また、アデノウイルスは50種類以上もあるため、何度も感染することがあります。
検査を受けるタイミング
発熱症状
喉の腫れ
目の充血
がある場合は、プール熱(咽頭結膜炎)の可能性があり、検査が推奨されます。
ただし、アデノウイルスは何種類もあります。また検査で確定されても、治療は対症療法です。
そのため、アデノウイルスの検査は、診察をした医師に「検査を受けましょう」と勧められてから受けてもよいでしょう。
発熱や喉の痛みによって、子どもが飲んだり食べたりできなくなることもあります。その場合、ウイルスの種類を知るために検査を受けたほうがいいこともあります。
検査は何科で受けられる?
主に小児科・内科で受けられます。
目の症状があると眼科でも検査される場合があります。
特に、
症状が悪化している
喉の痛みや発熱で水分補給が難しい
呼吸がおかしい
ぐったりしている
といった場合は、早めに医師に相談しましょう。
小児科を探す
検査費用はどのくらい?
医師が「検査が必要だ」と判断すれば保険適用(咽頭・眼のみ)になります。
保険適用の場合、未就学児は2割負担なので、600円ほどです。
ただし、自治体によってによって乳幼児医療費助成制度があり、支払い額には差があります。病院によっても料金は異なります。心配な方は事前に確認しておくとよいでしょう。
患者もしくは家族の希望で検査を受ける場合は、基本的に保険適用外となります。その場合は診察料と合わせて6,000〜8,000円程度かかるでしょう。
アデノウイルスの検査の方法
アデノウイルス感染の検査は、主に2タイプあります。
病院を受診した際に行われるのは「迅速検査」が一般的です。
「迅速検査」
喉にアデノウイルスがいるか検査をします。のどを綿棒でこすって、ぬぐった液を検査します。
15分程度で結果が出ます。
「血液検査」
採決して、その血液を検査します。白血球の多さや炎症の反応などで総合的に判断されます。
通常、結果が出るのは数日後です。
治療方法も知っておこう
アデノウイルス感染の場合、症状を和らげる対症療法がとられます。
アデノウイルスは、抗ウイルス薬がありません。対症療法が基本です。
高熱には解熱剤、喉の痛みには炎症を抑える薬が処方されます。目の症状がある場合は、眼科で抗生剤やステロイド点眼薬などが使われる場合があります。
早く治すために親ができること
栄養と水分補給を行い、部屋の環境(湿度や室温)を整えてあげましょう。
自己免疫力でウイルスをやっつける必要があります。
喉が痛いと、飲食ができない子がいるので、ゼリーやプリンなど、飲み込みやすいものを用意しましょう。また脱水には十分注意しましよう。
参考
“Dr.365”のこどもの病気相談室 著/白岡亮平