「なんだか最近風邪をひきやすくなった…」
こんな風に感じている方も多いのではないでしょうか?
風邪をひきやすくなるのは、疲労など生活習慣の乱れをはじめ、隠れた病気の可能性もあるので、注意が必要です。
体質を改善して、風邪をひきにくくする方法もご紹介します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
風邪をひきやすい原因
風邪をひきやすい人の特徴
睡眠不足
睡眠時間が短い場合、免疫グロブリン(IgA)※の分泌量が低下しやすくなると考えられています。
※免疫グロブリン(IgA)
血液中や組織液中に存在している免疫に関わる物質
激しい運動をしている
運動強度が強いほど、免疫グロブリン(IgA)が低下するため、免疫力も低下すると考えられています。
不規則な生活習慣
生活習慣が乱れると、自律神経やホルモン分泌の制御を行っている体内時計も乱れてしまい、免疫力が低下しやすくなると考えられています。
ストレスが溜まっている
過度のストレスを抱えている場合、自律神経のバランスが崩れて、免疫グロブリン(IgA)の分泌が低下して免疫力が弱くなる場合があります。
栄養が偏っている
骨や筋肉等、体の組織を構成しているタンパク質、細胞やホルモンを生成する元となる脂質等と一緒にバランスの良い食べ物を摂るようにしてください。
ドライマウス
口腔内が乾燥し、粘膜も乾燥していると、免疫グロブリン(IgA)の働きが鈍くなり、ウイルスや細菌が侵入しやすくなるため、風邪をひきやすくなります。
冷え性
体温が低下すると免疫力も低下するので、風邪をひきやすくなります。
痩せすぎ
体温維持、身体にビタミンを運ぶ、女性ホルモン調節等の役割を担っている脂肪が少ないと、風邪をひきやすくなります。
腸内細菌のバランスが悪い
腸内細菌のバランスが悪いと、便秘を起こしやすくなる、免疫力が低下する等になり、風邪をひきやすくなると考えられています。
糖質制限をしている
人が生きていくために必要とされているエネルギー源の約半分を糖質が占めています。
その糖質を必要以上に制限すると、身体のエネルギー量が減少します。
すると、体力維持が困難になり、風邪をひきやすくなる等が起こると考えられています。
加齢で免疫細胞が減少している
加齢に伴い、正常に機能してくれる免疫細胞が減少する、新たに生成された免疫細胞の機能も低い等により、免疫力が低下して、風邪をはじめとする感染症を起こしやすくなります。
女性特有の原因
ホルモンの影響
生理前になるとプロゲステロンの分泌が多くなります。
この期間は、免疫力が低下しやすいため、風邪をひきやすくなると考えられています。
妊婦中
妊娠中は、次の理由で免疫力が低下しやすい状態です。
- ホルモンバランスが不安定になりやすい
- つわりがある場合は食事を十分摂取できず栄養不足になりやすい
- ストレスを溜めやすい
- 睡眠不足になりやすい 等
また、お腹にいる胎児を異物として捉えないように、NK細胞やマクロファージ等の細胞性免疫が相対的に減ると考えられています。
産後
産後は、女性ホルモンが減少し、ホルモンバランスが崩れやすくなります。
また、赤ちゃんのお世話に追われ、睡眠不足、疲労、ストレス過多状態になりステロイドホルモン※の分泌が多くなる場合があります。
その結果、免疫力が低下し風邪をひきやすくなります。
※ステロイドホルモン
炎症や免疫を抑制する働きがあるホルモン
赤ちゃんは風邪をひきやすい?
赤ちゃんは、母乳を通してママから免疫をもらっています。(IgA等)
しかし、その免疫が有効に作用する期間は6か月程度と考えられており、それ以降は自力でウイルスや細菌から自分自身を守らなければなりません。
自分を守る免疫力は、いろいろな病原体等に曝されて少しずつ獲得できるものなので、乳幼児はまさに免疫を得る過程にあることで風邪等の感染症を発症しやすいと考えられています。
風邪をひきやすい体質は改善できる?
次のことを実践して、体質改善に努めましょう。
- 喉の潤いを維持する(水分をこまめに摂る)
- 加湿する(加湿器、マスク等)
- 体を温める(湯船に浸かる等)
- 適度に運動する(ストレッチ、ヨガ、ウォーキング等)
- 良質な睡眠を十分とる(抗体を作るリンパ球の働きは睡眠時に活発になる)
- 手洗い、うがいを徹底する
- 栄養バランスの良い食事を摂る
体質改善におすすめの食べ物
次の栄養素を積極的に摂りましょう。
- ビタミンB1
豚肉、マグロ、レバー、ゴマ、ほうれん草、卵、海苔等
- ビタミンE
イワシ、サバ(青魚)、たらこ、かぼちゃ等
上記に加え、生姜、にんにく、ねぎもおすすめです。
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2019-11-01
鼻水、咳や喉の痛みなど、つらい風邪の症状をできるだけ早く治すためには、どうすればいいのでしょう。
この記事では、風邪に効く食べ物・飲み物や、市販薬の選び方、控えるべきNG行動まで医師が解説します。
日頃から免疫力をアップさせて風邪を引かないようにするため、ぜひ参考にしてみてくださいね。
風邪を早く治すための「食べ物」
風邪を早く治すには
ネバネバ系の食べ物(水溶性食物繊維・糖たんぱくが豊富)
フルーツ(ビタミン・ミネラルが豊富)
卵・緑黄色野菜(ビタミンAが豊富)
などの食べ物を摂取しましょう。
ネバネバ系の食べ物(水溶性食物繊維と糖たんぱくが豊富)
里芋・なめこ・オクラ・納豆などに含まれています。
おかゆなどに細かく刻んで、入れたり、スープに入れたりして摂りましょう。
風邪といえば、鼻水の症状が出ますが、鼻水は病原体を洗い流し、奥に入れないように働いてくれています。
風邪になってしまってからも鼻粘膜にいい食事を摂ることで、鼻の粘膜の機能が正常に働き、強化することができます。
フルーツ(ビタミン・ミネラルが豊富)
フルーツには、ビタミンやミネラルなど風邪で消耗しやすい栄養素が多く含まれています。風邪のときに食べるといいでしょう。
体を冷やすイメージがあるフルーツですが、かき氷や氷水のようなものでなければ、食べ物で急に体が冷えるということはないので、風邪のときに食べても大丈夫です。
卵・緑黄色野菜(ビタミンAが豊富)
皮膚粘膜を強化、免疫力をアップさせてくれるビタミンAは、卵や緑黄色野菜に豊富です。人参・ほうれん草・かぼちゃなども食べてください。
風邪を早く治すための「飲み物」
ビタミンCの摂取ができる、レモネードが風邪の時にはおすすめです。
ホットで飲めば体も温まります。
ビタミンCは、体の免疫力である白血球の働きを高めてくれます。また、抗酸化の働きがあり、風邪予防にもぴったりです。
市販薬の選び方
辛い症状があると食事が取れない場合もあり、そのような時には、咳や鼻水などの症状を個別で緩和してくれるものを選ぶといいでしょう。
風邪は、多くの症状が現れます。
しかし、結局は、風邪自体を治療することはできません。自分の免疫力でウイルスを撃退する必要があるのです。
また、市販薬は、一概に価格が高い方がいいとは言い切れません。後発品であったり、容量の違いであったり、様々な要因で価格が決められています。
どの市販薬にすればいいのかと悩む場合は、薬剤師に相談しましょう。
漢方薬の選び方
漢方薬も様々あり、風邪のひき始めにいいもの(葛根湯)や長引く風邪のときに飲むといいタイプ(竹茹温胆湯、柴胡桂枝湯など)などがあります。
普通の薬と漢方薬、併用してもいい?→NGです!
漢方薬は、薬です。他の薬と同様に併用しての使用はおすすめできません。
併用の場合は、事前に薬剤師、医師に相談して確認してください。
お風呂は入ってもいい?
お風呂に入っていけないことはありませんが、無理をするのはやめましょう。
汗をかくためにと、風邪の時に入浴する人がいますが、熱があるときやふらつく際には、入浴で立ちくらみや貧血を起こす場合も多いです。
普段、貧血症状がない人も、発熱により症状が出る可能性があります。
しかし、身体を清潔に保つためにも、昔言われていたように「風邪だとお風呂に入ってはいけない」という事はありません。
ただし、入浴やシャワーは短めにして、脱水、血圧低下などには注意してください。
これはNG!控えるべき3つの行動
体を冷やす外出
過度の飲酒
喫煙
このような行動はNGです。
風邪を早くよくするには、自己の免疫力が必要です。
体を冷やせば、免疫力が上がらずよくなりません。
また、「冷え」は体を冷やし、風邪にかかりやすくします。肩や首周り、足首などを冷やさないように着るものや服装にも気をつけてください。
過度の飲酒は、眠りを妨げ、体力低下を招きます。
また、風邪で喉に負担がかかっているのに喫煙を行えば、さらに喉への負担がかかります。
風邪をひきやすくなる病気
免疫不全症候群
先天的原因と後天的原因(HIVウイルスによるエイズ)に分けられています。
細菌やウイルス等に対する抵抗力や免疫力がないことで、感染症を繰り返しやすくなる状態です。
糖尿病
血糖値が高いため、白血球や免疫細胞の働きが弱まり病原体等と闘うことができない状態になり、感染症に罹りやすいと考えられています。
自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れると体温調節が困難になり、身体が衰弱して風邪等を起こしやすくなると考えられています。
肝臓疾患、腎臓疾患(亜鉛吸収障害)
肝臓疾患や腎臓疾患等を発症すると亜鉛不足(亜鉛吸収障害)を起こす場合があります。
亜鉛が不足すると、免疫力が低下して風邪をひきやすくなると考えられています。
白血病
正常な白血球が減少することで、風邪(感染症)に罹りやすくなると考えられています。
癌や恒常性疾患
癌や甲状腺疾患の治療で、二次的に風邪をひきやすくなる場合があります。
治療に用いられる薬によって免疫が下がり、風邪をひきやすくなります。
こんな症状があれば病院へ
次のような症状が現れたら、医療機関を受診しましょう。
- 2週間以上せきが続く場合
- 咳をすると胸に痛みが生じる場合
- 血痰がでる場合
- 高熱(38度以上)が3日以上続く場合
- 一回症状が回復しても、数日後にまた体調が悪化した場合
- 体がガタガタ震えて止まらない場合(悪寒戦慄)
上記以外にも、普段と何か違うと感じる場合は、早めに医療機関(内科)を受診してください。
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2020-12-02
37度の微熱が続いている…これはなぜ?
長引く微熱の原因と対処法を、お医者さんに聞きました。
病気の可能性や病院に行く目安も解説します。
37度の微熱が続く…これは大丈夫?
微熱が長引く症状には、
風邪などのウイルス性の感染症
慢性扁桃炎
慢性副鼻腔炎
慢性腎盂炎
膠原病
肺結核
など、さまざまな原因が考えられます。
微熱以外に症状がなく、日常への支障を感じていない場合は、一旦様子を見てもよいでしょう。
ただし、以下の症状を伴うときには、注意が必要です。
だるさ(倦怠感)が続いている
体の節々に痛みがある
手足がこわばる
咳や痰が出る
頭がボーッとする
よくある2つの原因
微熱が続く場合、最も多い原因は風邪です。
女性の場合は、生理前の高温期に微熱が続くことがあります。
風邪の微熱
→倦怠感・寒気・喉の痛み・鼻水・咳などの症状を伴う。
生理前の微熱
→頭がぼーっとするが、鼻水や咳などの症状はない。
原因①「風邪の微熱」はこう対処しよう
風邪を治すには、体を温める必要があります。
水分の多い温かいものをたっぷり食べて、しっかりと睡眠をとってください。
食欲がないときは、水分補給を中心にしましょう。
通常の水よりも経口補水液を飲むと、体への吸収率が高くなります。
部屋を加湿しましょう
風邪の菌・ウイルスの繁殖を抑えるには加湿をしましょう。
加湿器で部屋の湿度を上げ、水分を飲んで喉を潤すと良いでしょう。
こんな症状は病院へ
40度以上の高熱が出てきた
咳や鼻水の症状がひどく、呼吸しづらい
水分を摂れない
という場合は、病院に行きましょう。
内科を探す
原因②「生理前の微熱」はこう対処しよう
楽な服に着替えて、リラックスして過ごしましょう。
無理に体を冷やす必要はありません。
この場合の微熱は、体に必要な生理的な働きです。
ふらつきや集中力低下があるときは、仕事を早退してゆっくりと休みましょう。
この状態になったら病院へ
毎月のように微熱が出て、生活に支障が出ている
頭痛や腹痛、抑うつなど、重いPMSの症状をともなう
という場合は、婦人科に相談しましょう。
婦人科を探す
注意すべき病気の可能性
微熱が7日以上続く安静にしていても回復しない場合は、
慢性疲労症候群
膠原(こうげん)病
がん
といった病気の可能性も考えられます。
それぞれの病気の特徴を、下記で詳しく解説していきます。
病気① 慢性疲労症候群
原因不明の重度の疲労感が生じる病気です。
諸症状の一つに、慢性的な微熱があります。
詳しく検査しても、異常が見つからないのが特徴です。
この病気になりやすい人
受け身な性格の人や、協調性が高く、周りを気にする人は、疲労を溜め込みやすいために発症のリスクが高い傾向にあります。
主な症状
微熱
関節痛
食欲不振
だるさ
倦怠感
頭痛 など
自分でできる対処法は?
できるだけストレスを避けてください。朝起きて夜寝るという、規則正しい生活も大切です。
きちんと食事をとって適度に運動しましょう。
病院に行く目安
ベッドから起き上がるのがつらい
仕事に行くのが困難
食欲不振が改善しない
といった場合は、一度病院に相談しましょう。
何科で受診すればいい?
まずは内科を受診し、診察や検査を受けましょう。
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病気② 膠原(こうげん)病
免疫機能の異常によって、自分自身を傷つけてしまう病気です。
体が常に攻撃されるため、微熱が続くことがあります。
この病気になりやすい人
女性に発症しやすいです。
膠原(こうげん)病には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどがありますが、いずれも女性に多く発症しています。
主な症状
微熱
食欲不振
倦怠感
関節痛 など
自分でできる対処法は?
ご自身でできる対処法はありません。
膠原(こうげん)病と診断された場合、医師より治療を受ける必要があります。
病院に行く目安
微熱と倦怠感が7日以上続くときは、一度病院を受診しましょう。
何科で受診すればいい?
内科を受診してください。
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病気③ がん
異常増殖した細胞が、周囲の組織を破壊していく病気です。
正常な細胞が破壊されていく上で、生体反応として微熱が続くこともあります。
この病気になりやすい人
全年齢に発生する可能性があります。
がんの種類によっては、喫煙や飲酒などが要因となる場合もあります。
主な症状
微熱
倦怠感
関節痛
食欲不振 など
自分でできる対処法は?
ご自身でできる対処法はありません。
医師の指示に従い、手術や抗癌剤治療を受ける必要があります。
病院に行く目安
微熱が7日以上続き、倦怠感もよくなる兆候がないときは、一度病院を受診しましょう。
何科で受診すればいい?
まず、内科を受診してください。
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長く続く微熱は病院で相談しよう
長引く微熱は、きちんと原因を特定することが大切です。
検査によって、隠れた病気が見つかるケースもあります。症状に心当たりがある方は、病院に相談してみましょう。
▼参考
難病情報センター 全身性エリテマトーデス
(参考URL)
http://www.nagasaki.med.or.jp/mini_info/index.htm#a_01
長崎県医師会 かぜ対策
https://www.nagahama.jrc.or.jp/care/medical-checkup/himan-yase
日本赤十字社 長浜赤十字病院 肥満と病気、やせと病気
https://www.mcfh.or.jp/netsoudan/article.php?id=1468
公益財団法人 母子衛生研究会 病気・予防接種
http://www.kracie.co.jp/ph/k-kampo/hikihajime_no_hikihajime/results3.html
クラシエ こんなときは早めの対処を!知っておきたいかぜのサイン
https://www.otsuka.co.jp/b240/mechanism/reason2.html
大塚製薬 免疫力低下の原因
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/070/01.html
糖尿病情報センター 糖尿病と感染症のはなし
https://www.mcfh.or.jp/netsoudan/article.php?id=317
公益財団法人母子衛生研究会 病気・予防接種
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO3942922027122018000000/?page=3
日本経済新聞電子版 一見「風邪」だが実はちがう 受診すべき6つの症状