「膠原病ってどんな病気?」
「寿命が短くなるって本当?」
関節リウマチ、シェーグレン症候群など、膠原病にはさまざまな種類があります。
膠原病で起こる症状や寿命との関係性について、お医者さんが詳しく解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
膠原病の「初期症状」
- 発熱(原因がわからないもの)
- 関節痛
- 筋肉がこわばる
- 手足の先の方の色が変わる(白くなる、紫など)
- 手足がむくむ
- リンパ節が腫れる
- 倦怠感や疲労感が続く
- 体重の減少
などがあります。
膠原病ってどんな病気?
自分自身の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のことを、膠原病といいます。
膠原病には約20の病気があり、関節の炎症を起こす「関節リウマチ」、涙腺・唾液腺に炎症を起こす「シェーグレン症候群」などがあります。
発症する原因は不明ですが、膠原病患者の血液中には、自分の体を攻撃してしまう成分(※)があり、これが膠原病を引き起こす要因と考えられています。
(※)自己反応性リンパ球・自己抗体など
膠原病の「寿命」について
膠原病によって「寿命が10年ほど短くなる」という考えもありますが、はっきりとはわかっていません。
現在は、薬でのコントロールが可能な病気となり、この病気が根本的な原因となって命を落とすことは稀です。
難病の全身性エリテマトーデスでも5年生存率は90%以上です。
膠原病は「治る」?
免疫異常によって引き起こされる病気は、治療を続けていれば症状が進みにくく、軽くなりやすい病気でもあります。
薬を自己判断でやめてしまうと進行していくことがあるので、かかりつけ医と相談をしながら治療を受けましょう。
膠原病で「長生き」するために
膠原病は、臓器に悪影響を与えるリスクがあります。
長生きするためには、早期に治療を始めることが大切です。
どの病気でも同じですが、体調がおかしい、関節痛が続いているなど体調に異変がある場合は、放置は禁物です。
膠原病を疑うときは、内科で相談しましょう。
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膠原病に「なりやすい人」
膠原病は「女性」に発症しやすい
膠原病の発症する男女比は1:9となっており、女性に多い病気といえます。
中でも20~40歳代の発症率が高いです。
女性に多い理由としては、女性ホルモンの影響が挙げられますが、詳細はいまだ不明です。
膠原病の「治療方法」
現れている症状によって異なりますが、基本的には対症療法としての薬物治療が中心となります。
薬物治療で使用される薬は、主に「副腎皮質ステロイド」で、出現している病状に合わせて、使用量が決まります。
一般的には、治療開始に多めに処方され、様子を見ながら、徐々に減らしていくケースが多いです。
薬物療法が想像以上の効きを発揮できる場合もありますが、副作用にも十分注意が必要です。
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代表的な膠原病
代表的な膠原病には
- 関節リウマチ
- シェーグレン症候群
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
があります。
その① 関節リウマチ
関節に炎症が起こり、軟骨や骨が徐々に破壊されていく膠原病です。
炎症が肺や血管などに広がることもあります。
病院での治療法
薬物療法、手術、リハビリテーションなどを行います。
日常生活で心がけること
適度な運動や、体を動かすことが必要です。
また、質の良い睡眠をとったり、禁煙をすることなどで体調を管理しましょう。
その② シェーグレン症候群
唾液腺・涙腺などの分泌腺に炎症が起こる膠原病です。
分泌液が減少するため、ドライマウス・ドライアイといった乾燥症状に悩まされます。
主な症状
- 目の乾燥
- 皮膚の乾燥
- 発疹が出る
- 紫斑が出る
- 関節痛、
- リンパ節が腫れる
病院での治療法
薬物治療が中心です。
目の乾燥が強い場合は涙点プラグ治療を行うこともあります。
日常生活で心がけること
水分補給をこまめに行い、乾燥の悪化を防ぎましょう。
その③ 全身性エリテマトーデス
皮膚、関節、消化器、神経など、全身に不具合が起こる膠原病です。
進行すると臓器に悪影響を及ぼし、重い障害が残るケースもあります。
主な症状
- 倦怠感
- 発熱
- 皮膚の異常(赤くなる、角化する、痕に残る、萎縮するなど)
病院での治療法
薬物療法が基本です。
日常生活で心がけること
ストレスを溜めないこと、適度な運動などが必要です。
また、紫外線で皮膚症状が悪化するので、紫外線対策を行いましょう。
これからの膠原病治療への期待
膠原病の治療方法は、まだ確立されたわけではありません。
ステロイドを用いた薬物療法が主流ですが、その他にも、さまざまな症例に合った治療の確立が望まれています。
副作用の問題は、重要な課題です。
起こりうる副作用を予測、発見し、早期介入(※)を可能にする方法を見つけることが急がれています。
(※)早期介入:早期発見・早期支援・早期治療のこと
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2020-09-17
関節が痛いし、なんだか体もだるい…。
これはなぜ?
体の節々の痛みと倦怠感の原因を、お医者さんに聞きました。
対処法と病院に行く目安も解説します。
この関節の痛みとだるさ…大丈夫?
過度の運動など、関節の痛みやだるさに明らかな原因が思い当たる場合は、一旦安静にして様子をみてもいいでしょう。
ただし、体を十分休めても改善されない場合は、医療機関を受診しましょう。
<よくある関節の痛みとだるさ原因>
過度の運動
疲労の蓄積
ストレス過多
風邪のひきはじめ
睡眠不足
栄養バランスの乱れ
この症状は早く病院へ
関節痛と体のだるさに加えて
高熱が続く
むくみ
ひどい倦怠感で動けない
食欲不振
体重減少
不眠
貧血
精神症状
意識障害
などの症状があらわれている場合は、早急に病院を受診しましょう。
病院は何科?
まずは整形外科を受診しましょう。
整形外科を探す
※ひとりひとりの症状や病院の設備などによって、適切な医療機関を紹介されることがあります。
関節痛&だるさを感じる「4つの病気」
関節痛とだるさをもたらす病気は、
①感染症
②膠原病
③慢性疲労症候群
④線維筋痛症
が考えられます。それぞれの症状の特徴や、改善する方法を解説します。
① 感染症
風邪、インフルエンザ、マイコプラズマなど、ウイルスや細菌に感染することで、関節痛や倦怠感が生じます。
免疫力が低下していたり、肉体的・精神的疲労が蓄積していると、感染症にかかりやすくなります。
軽い症状のみで治癒することが多いですが、免疫力が低下していると重篤な状態になるケースもあります。
主な症状
咳、鼻水、腹痛
微熱、高熱
関節痛、筋肉痛
倦怠感
リンパ腺の炎症
対処法
まずは安静にして様子を見ましょう。十分な睡眠をとり、栄養バランスのよい食事を摂るようにしてください。
症状が改善しない、もしくはひどくなっていくようであれば、病院に行きましょう。
受診するのは何科?
内科を受診しましょう。
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② 膠原病
人体を支えている膠原線維という組織に、炎症が生じる病気の総称です。
関節リウマチ、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス等が挙げられます。
原因は明確ではありませんが、免疫システムに異常が生じて、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。
女性に多くみられる病気です。
初期は日常生活に支障は出ませんが、少しずつ悪化し、慢性化していくケースが多いです。
主な症状
微熱や高熱
関節痛や筋肉痛
倦怠感
リンパ腺の炎症
眼や口の渇き
皮膚に赤い斑点が出現する
レイノー現象(寒い冬の朝や冷たい水に触れたとき等に手足の先端が白く変色する)
※膠原病は複数の病気の総称のため、病気ごとに症状が異なります。上記の症状が、全て同じタイミングで出現するわけではありません。
対処法
膠原病の症状は多岐にわたり、発症する疾患によって障害を受ける臓器が異なるため、専門機関を受診して的確な治療を受けるようにしましょう。
その上で、日常生活では十分な睡眠をとり、栄養バランスのよい食事を摂るようにしてください。
アルコールの摂取を控え、喫煙者は禁煙しましょう。また、寒冷刺激や紫外線を避けるようにしてください。
受診するのは何科?
リウマチ科、整形外科など、出現している症状に合う診療科を受診してください。
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③ 慢性疲労症候群
健康状態に問題なく生活していた人が、全身倦怠感や極度の疲労感を感じるようになる状態です。
原因は明確には分かっていませんが、過剰なストレスによる脳神経系の炎症や血流の低下、ホルモン異常などによって発症すると考えられています。
ストレスを抱えている人や、感染症による症状が長引いている人の発症が多いです。
微熱等風邪のような症状が続くことから始まり、その後、日常生活に支障をきたすほどの疲労感、倦怠感、関節痛あらわれるようになります。
主な症状
頭痛
鼻の奥から喉にかけての痛み
疲労感や倦怠感
関節痛
睡眠障害(不眠、眠りが浅い 等)
抑うつ状態
認知症のような症状
対処法
慢性疲労症候群が疑われる場合は、医療機関の受診をおすすめします。
また、倦怠感を緩和させるためには、湯船に浸かる、軽い運動をする、十分な睡眠をとることが有効と考えられています。
受診するのは何科?
内科、心療内科などを受診しましょう。
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④ 線維筋痛症
体中の関節や筋肉等に原因不明の痛みが生じる病気です。
脳機能の異常で生じると考えられていますが、原因は明らかにされていません。
脳の痛みを感じる機能に異常が出ることで、通常では痛みを感じないほどの弱い力でも痛みを感じてしまいます。
精神的ストレスや外傷がきっかけで発症するケースが多いと考えられています。
20~60歳代の女性に好発し、ストレス過多状態の方に多くみられます。
主な症状
体中の強い痛み
全身の倦怠感や疲労感
口や目の乾き
体のしびれ
耳鳴り
睡眠障害
抑うつ状態
対処法
線維筋痛症は、早期に治療を開始することで、症状緩和が期待できる疾患です。疑われる症状がある場合は、早急に病院を受診してください。
線維筋痛症は、すべての患者さんに共通する治療法は確立されていないため、出現している症状に適した治療、薬、改善方法を提示してもらうことが重要です。
受診するのは何科?
リウマチ科や心療内科、整形外科を受診しましょう。
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放置すると…どうなっちゃうの?
関節痛とだるさが続きます。まだ病院には行っていません。このまま症状を放置すると、どういうリスクがあるでしょうか…?
放置すると、症状が悪化して他の疾患を併発したり、重篤な疾患を見逃したりする恐れがあります。
原因によっては、早期に適切な治療が行われないと症状改善が期待できず、日常生活に悪影響を及ぼすようになる可能性があります。
参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 膠原病
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q21.html
公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター 皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4079
一般社団法人 奈良県医師会 膠原病の初期症状
http://nara.med.or.jp/for_residents/1214/
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2022-11-29
健康診断で、白血球の数値が高いといわれた…。
これってストレスが原因?それとも病気?
「白血球が多くなる原因」をお医者さんに聞きました。
数値が万単位の場合は病気の疑いが強くなるため、早めに病院で再検査しましょう。
白血球が多い…これってストレスのせい?
健康診断で、「白血球の数が多い」と指摘されました。ストレスが原因となって、白血球の数が増えることはあるのでしょうか…?
ストレスにより一時的に白血球数が変化することもあるかもしれませんが、指摘を受けるほど病的に増えるとは考えにくいです。
また、現在「ストレスにより白血球が増える」という明確なエビデンスはありません。
ただし、ご自身で「ストレスが溜まっている」と自覚しているのであれば、対策が必要です。
ストレスは自律神経の乱れにつながり、さまざまな心身の不調につながります。
こまめにストレスを発散するように心がけましょう。
「白血球が多い」とされる基準は?
人間ドック学会では、白血球の基準範囲を「3100μL~8,400μL」と定めています。
10,000μL以上になると、異常数値と考えます。
白血球が多いと「いつも指摘される」原因は?
健康診断で毎回「白血球の数が多い」と指摘されます…。
この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか?
健康診断のたびに白血球が多いと指摘される場合は、
肥満傾向にある
喫煙している
といった原因が考えられます。
これらの原因による白血球数の変化を「生理的変動」といいます。
生理的変動によって白血球が多いこと自体は問題ではありません。
ただし、肥満や喫煙は、生活習慣病のリスクを上昇させ、動脈硬化を引き起こす要因となるため、改善する必要はあります。
生活習慣を改善しよう
肥満や喫煙習慣がある人は、体重を落とし、禁煙しましょう。
肥満の人は、まず、食生活を見直すことが大切です。
特に、糖質・油分のとりすぎを避けてください。
また、ウォーキング・ジョギングなどの運動習慣をつけて、体重を適正にしましょう。
喫煙する人は禁煙が必要です。タバコは体に害ばかりで良いことはありません。
肺ガンのリスクも上がります。
肥満を解消し、禁煙することで、白血球が通常の数値に近づいていくと考えられます。
一時的に白血球が増えることも
喫煙・肥満傾向のほか、高タンパクの食品をとった後や運動後などに、一時的に白血球が増加することもあります。
また、「朝は少なく夕方ごろから増加する」「夏場よりも冬場の方が増加する」など、検査を行う時間帯や季節によっても白血球の数値は変動します。
このほか、生理や出産、風邪などの感染症が原因で、一時的に白血球が増えることもあります。
【数値が20,000以上は要注意】病気が隠れているケースも
白血球が20,000μL〜30,000μLなどの万単位の数値は、病気が隠れている可能性があります。
この場合に疑われる病気は、下記の通りです。
白血病
膠原病
肝硬変
要注意な病気① 白血病
白血病は、血液のガンです。正常な血液細胞が作られなくなり、貧血や肺炎などを起こします。
白血病は、原因不明のことも多いですが、加齢・喫煙・抗ガン剤治療などにより発症する場合があります。
進行すると、重度の貧血で動けなくなったり、肺炎・敗血症などを起こしたりして、命を落とすこともあります。
こんな症状があらわれることも
疲れやすい
顔色が悪い
めまい
息切れ
動悸
発熱
鼻血
歯肉からの出血
皮下出血
要注意な病気② 膠原病
膠原病とは、体の免疫が正常に働かなくなる病気です。
関節のこわばり・腫れ・痛みなどの様々な症状があらわれます。
膠原病は、「関節リウマチ」「全身性エリテマトーデス」「シェーグレン症候群」など、共通した特徴を持つ病気を総称したものです。
本来は病原菌に対して働く免疫が、自分自身を標的にしてしまうことで、様々な症状を引き起こすと考えられています。
ストレス・疲労などが原因として考えられますが、まだ解明されていません。
病気が進行すると、体調不良の日が続き、日常生活に支障をきたすこともあります。
こんな症状があらわれることも
関節のこわばり・腫れ・痛み
発熱
倦怠感
体重の減少
※人によって、あらわれる症状は異なります。
要注意な病気③ 肝硬変
肝硬変とは、肝臓が炎症を起こし、働きが低下して肝臓自体が硬くなってしまう病気です。
ウイルス感染・アルコール摂取過剰・薬物などが原因で発症すると考えられています。
病気が進行すると、黄疸・腹水(お腹が膨れる)・むくみなどの症状があらわれたり、肝臓ガン・肝性脳症などの合併症を発症したりします。
こんな症状があらわれることも
むくみ
黄疸
腹水(お腹が膨れる)
手のひらが赤くなる
倦怠感
髪の毛が抜ける
尿回数の異常
※初期の段階では、症状がありません。
「白血球が多い」と指摘されたら、病院で相談しよう
検査の数値が20,000〜30,000μL付近で、「白血球が多い」と指摘された際は病院で詳しい検査を受けましょう。
何らかの病気が潜んでいる可能性があります。
命に関わる病気が隠れていることもあるので、早めに受診しましょう。
何科で相談すればいい?
病院は「内科」または「血液内科」に相談しましょう。
病院では、再度の血液検査を行います。
また、尿検査や超音波検査、CTなども行われることが多いです。
再検査を受けるときに「心がけること」
白血球の値が変動するリスクがあるため、前日は、アルコールは控えて早めに就寝しましょう。
また、過度の運動や体に負担がかかる活動は控えましょう。
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血液内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本消化器病学会ガイドライン 肝硬変の原因や病体にはどのようなものか?