うつ病の人に「やってはいけないこと」ってあるの?
うつ病の人にどのように接すればいいのか、お医者さんに聞いてみました。
家族や職場、友人、恋人など、ケースごとに解説しますので、うつ病にかかっている人が身近にいる場合は、参考にしてください。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
うつ病の人に「やってはいけないこと」は?
うつ病を患っている人が身近にいます。サポートしてあげたい気持ちはあるのですが、どのように接したらいいのか分かりません…。
うつ病の人に「やってはいけないこと」を教えてください。
- 「頑張れ」など励ましの言葉をかける
- 「いつ治るのか」などと問い詰める
- 特別扱いする
うつ病の人に対して、上記のような対応はやめましょう。
間違った対応をすると、本人が「周囲の人に心配をかけている」と思い込み、自分を責めてしまいます。
そもそも、うつ病ってどんな病気?
うつ病とは、ストレスなどが原因で、脳の機能が正常に働かなくなり、精神症状や身体症状があらわれる病気です。
うつ病になると、情報を伝えるのに必要な神経伝達物質が減少し、心や体がうまく活動できなくなります。
原因はさまざまですが、ストレス以外にも遺伝的要因やホルモンバランスの変化など、いくつかの要素が複雑に絡み合って発症します。
うつ病を発症するきっかけ
- 結婚や妊娠・出産
- 親しくしていた人との死別
- 過労
- 引っ越し 等
上記のようなきっかけが精神的・肉体的なストレスとなり、うつ病の発症につながります。
ここからは、「家族」「職場」「友人や恋人」にうつ病の人がいる場合の、3つのシチュエーションごとにNG対応を紹介します。
NG対応1.「家族」にうつ病の人がいる場合
- 無理に話を聞き出さない
- 特別な対応をしない
- なぜ病気になったのか、原因を探ろうとしない
- 「頑張れ」などの励ましの言葉をかけ過ぎない
特別扱いをされると、うつ病患者は焦りや情けなさを感じる場合があるので注意しましょう。
また、気晴らしに旅行や外出をすすめても、逆に疲れがたまって症状が悪化する恐れがありますので、気を付けましょう。
OK対応|家族には、こう接してみよう!
特別扱いをせず、話を聞いたり、一緒に通院したりして、温かい気持ちで接しましょう。
また、家族で家事を分担するなどして、本人がリラックスして過ごせる環境を整えることも大切です。
これらの対応を心がけることで、うつ病患者が負担を感じることなく「受け入れてもらえている」という安心感を得られやすくなります。
NG対応2.「職場」にうつ病の人がいる場合
- 特別扱いする
- 説教をする
- 頻繁に連絡をとる
- 叱咤激励する
上記のような行動は、うつ病患者が「追い詰められたような気分」になり、症状が悪化する恐れがあります。
うつ病の人は、仕事が思うようにできずに、周囲に申し訳なさを感じていることが多いため、追い詰めるような言動は控えましょう。
OK対応|同僚には、こう接してみよう!
過度に気を遣わず、必要に応じて話を聞きましょう。
つらい気持ちに共感しながら、温かく仕事を見守ることが大切です。
NG対応3.「友人・恋人」にうつ病の人がいる場合
- 特別扱いをする
- 「早くよくなってほしい」などの声掛けをする
- 無理に外出させる
上記のような行動は、ストレスや負担を強いることになってしまいます。
うつ病の人は、「頑張りたくても頑張れない状態」ということを理解しましょう。
OK対応|友人・恋人には、こう接してみよう!
うつ病になる前と同じように接しましょう。
無理にイベントや外出に誘わず、本人が病気の話をしてきたら、優しく聞いてあげてください。
うつ病になっても、変わらず接してくれる友人や恋人がいるというだけで、気持ちが救われることがあります。
連絡をとったり、外出したりするのはエネルギーが必要なので、症状に応じて様子を見ましょう。
よくある質問1.連絡しない・放っておく方がいい?
「職場の同僚の場合」や「症状が強く出ている時期」は、あまり連絡をとらない方がよいと考えられます。
家族や親しい人以外と連絡を取ることは、うつ病患者にとって、ストレスや負担になる恐れがあるためです。
ただし、症状が改善傾向にある人や、話を聞いてほしい性格の人には、連絡を取ってもよいでしょう。
連絡を取ることで、うつ病患者が前向きに生きるきっかけになる可能性があります。
よくある質問2.励ましてもいい?
相手の状況や性格に応じて、慎重な判断が必要です。
励まされると焦燥感や不安感が強くなり、余計に症状が悪化するケースも考えられます。
一方で、うつ病にかかっている人が
- 以前に比べて前向きな言葉を発するようになった
- 通常通りの生活リズムで過ごせるようになってきた
といった場合には、症状が改善してきている目安だと考えられます。
そういった時期であれば、励ますことで「行動しなければならない」と本人が前向きに捉えることができるかもしれません。
【体験談】大切な人がうつ病に。私はこうやって接しました!
身近な人がうつ病になった経験のある方に、うつ病の患者さんと接するときに「気をつけたこと」や「どのようにサポートしたのか」を教えてもらいました。
夫が鬱になったときは、とにかく自分の心に余裕を持つことを心掛けました。
夫から思ったような反応が返ってこない状態が続くと、私もイライラしてしまうため、外出して一人の時間をつくるなどの気分転換をしました。(30代女性)
どんなことが気に触ってしまうのか事前に話を聞くようにしました。
また、つらそうな表情をしているときは、何がつらいのか素直に言いやすいように、こちらから聞いていました。(30代男性)
無理に励ますことはせず、明るい方向へ無理やり持って行かないようにしました。「ふんふん」と傾聴するだけでも良いと思うんです。(50代女性)
こちらがいくら良いことだと思って話をしても、本人には全く響かなかったり、逆に否定されてしまったりすることがあります。
そのため、こちらの気持ちを伝えるというより、相手の気持ちを引き出すような言葉かけが必要だと感じました。(30代女性)
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2022-12-16
うつ病とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
うつ病の主な症状も紹介するので、「うつ病かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしましょう。
うつ病って、どんな病気?
うつ病とは、心身のストレスによって、脳がうまく働かなくなっている状態です。
「一日中気分が落ち込む」「何をしても楽しめない」といった精神症状とともに、不眠・動悸・倦怠感などの体の不調があらわれます。
うつ病の「身体面の症状」と「心の症状」
身体面にあらわれる症状
食欲が低下する(または急に食欲が増える)
食べ物を美味しいと感じない
体重が減る(または増える)
寝付きが悪い
眠りが浅い・夜中に目が覚めてしまう
眠り過ぎてしまう
体がだるい・疲れがとれない
頭が重い感じがする
疲れやすい
首・肩・腰が凝りやすい
動悸がする
胃やお腹に不快感がある
めまいがする
口が渇く感じがある
便秘が続く
下痢が続く
月経不順がある
性欲がなくなる
勃起しにくくなる
精神面にあらわれる症状
気分が落ち込む日が続く
何に対しても悲観的である
何に対しても興味を持てない
喜ぶ・楽しむことができなくなる
今まで楽しいと思っていたことが、楽しめなくなる
やる気が出ない
口数が減る
見た目や服装などを気にしなくなる
集中できなくなる・ミスが増える
落ち着きがなくなる
イライラしやすい
不安感がある
涙もろくなる
自分を責めてしまう
お酒を飲む量が増える
うつ病の原因
うつ病が発症する原因ははっきりと分かっていません。
近年の研究では、過度のストレスで脳の一部の「神経細胞」の形状が変化し、その結果、考え方や感情に歪みが生じるのではないかと指摘されています。
発症しやすいのはどんな人?
うつ病は女性に多く見られます。これは妊娠、出産、更年期といったライフステージで、多くのストレスを抱えやすいからだと考えられています。
また、親族の中にうつ病を発症した人がいると、発症リスクが上昇する傾向があります。
その他、
真面目な人
几帳面な人
努力家で目標が高い人
何事も全力投球で手を抜かない人
自責の念が強い完璧主義な人
気遣いができる人
は発症リスクが高い傾向があります。
うつ病のキッカケとなる出来事
精神的・身体的ストレス
悲しい出来事、つらい体験
人生の転機(引っ越し、就職、進学、結婚等)
病気の治療薬の副作用 など
うつ病かも…と思ったら
症状に心当たりがあるときは、一度病院で相談するようにしましょう。
うつ病を放置すると、自分を責める気持ちが強くなり、自殺願望を抱いてしまうケースもあります
病院は何科?
精神的な症状が強い → 精神科
体の不調を伴う → 心療内科
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
精神科・心療内科は、患者さんが気持ちを楽に保てるようにサポートしてくれる診療科です。
心身の不調に詳しい医師・スタッフが対応してくれるので、リラックスして受診してください。
精神科・心療内科の受診に気が進まない方は、まずは「内科」を受診して体に不調がないかを確認してもらうのもよいでしょう。
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病院で「うつ病」と診断される基準は?
病院で「うつ病」の診断を行う際は、以下の基準を用いることが多いです。
▼以下の症状のうち、少なくとも1つある。
抑うつ気分
興味または喜びの喪失
▼以下の症状をあわせて、合計で5つ以上該当する。
食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
不眠あるいは睡眠過多
精神運動性の焦燥または制止(じっとしていられない・話し方や動作が遅い等)
疲労感または気力の減退
無価値感または過剰な罪責感(自分は価値のない人間だと感じる・自分の言動に対して過度に罪悪感を覚える等)
思考力や集中力の減退または決断困難
死についての反芻思考・自殺念慮・自殺企図
上記の症状がほとんど1日中、ほぼ毎日ある状態が2週間以上続いていて、他の病気や薬物、アルコールなどの影響では説明できない場合に、「うつ病」と診断されます。
うつ病の治療法
医療機関では、
薬物療法
カウンセリング
認知行動療法※
生活指導
などによって、症状の改善を図ります。
薬物療法では、気分の落ち込みをよくする薬や、睡眠薬などを使用します。
※認知行動療法…医師やカウンセラーと面談する中で、自分の考え方や物事の捉え方の癖に気付き、修正していく治療法。
うつ病が治るまでの期間は?
症状が治まるまでの治療期間は、「発症から受診までの期間と同じくらい」と考えられています。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-12-27
「うつ病がなかなか治らない…」
「このまま一生治らなかったらどうしよう…」
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病や適応障害の症状が長引く理由を解説します。
うつ病や適応障害が治らず焦りを感じている方は必見です。
※動画による解説は記事末尾から
うつ病・適応障害が治りにくい4つの原因
うつ病・適応障害がなかなか治らない場合
生活習慣の乱れ
環境がよくない
考え方のクセ
躁うつ病(双極性障害)を発症している
などの原因が考えられます。
原因① 生活習慣の乱れ
昼夜逆転した生活
過度な飲酒
ほとんど家から出ない
上記に当てはまる場合は、うつ病が治りにくくなる可能性があります。
「不規則な生活リズム」「お酒の飲みすぎ」「外出せずほとんど体を動かさない」などの習慣が続くと、心身の調子が悪くなり、うつ病・適応障害の改善の遅れを招きます。
【対処法】一定の生活リズムを習慣化しよう
うつ病や適応障害を改善するためには、「どういう行動習慣を積み重ねていくか」ということが重要です。
睡眠や食事の時間を一定にする
お酒を控える
日中は外出して体を動かす
上記を習慣化して、治療にとってプラスになる行動を積み重ねていきましょう。
生活習慣を整えることで、心身の調子が整いやすくなります。
また、その行動の積み重ねが脳への刺激になり、うつ病や適応障害の改善につながると考えられます。
原因② 環境がよくない
職場に相性のよくない上司がいる
家に居場所がない
子育て・介護などでストレスを感じている
上記のように、職場や家庭の環境がよくない人は、うつ病や適応障害が治りにくくなることがあります。
うつ病・適応障害の症状は、日々の行動だけでなく、環境からも大きな影響を受けます。ストレスの多い環境で過ごす時間が積み重なると、症状の改善が遅れる原因となります。
【対処法】「転職・異動」「支援サービスの利用」を検討しよう
環境がよくないと感じる場合、
転職・異動の相談をする
家族と話し合いをする
自治体のサポート窓口を利用する
といった方法で、環境を変えることが選択肢の一つとなります。
環境の変化には良い面も悪い面もあるため、一概に「環境を変えるべき」というわけではありません。
ただし、「どうしても今の環境と相性が悪い」と感じる場合は、選択肢の一つとして考えてみるといいでしょう。
職場の環境が合わないと感じる場合は、「転職を検討する」「上司や人事部に異動の相談をする」などの方法もあります。
家庭内でストレスを感じている場合は、まずは家族と話し合うことが必要なケースもあります。
子育てや介護などでお悩みの場合は、自治体のサポート窓口を活用してみるのもいいでしょう。
子育てや介護に関するお悩みは、お住まいの自治体の子育て支援センターや、地域包括支援センター※などの機関で相談可能です。
※地域包括支援センターとは
主に自治体が設置する高齢者の健康や生活をサポートする施設。
▼参考
地域包括ケアシステム(厚生労働省)
原因③ 考え方や性格のクセ(完璧主義・人と比べる)
自分を責めてしまう
完璧主義
他人と自分を比べる
上記のような考え方・性格のクセがある人は、うつ病や適応障害の治療が遅れる可能性があります。
「考える」ということも一種の行動です。自責や他人との比較など、自分にダメージを与える思考を繰り返すことも、病気の改善を妨げる行動を積み重ねる行動になります。
【対処法】「前向きになれる考え方」を練習しよう
自分にダメージを与える考え方のクセがある人は、「自分も他人も責めない」「前向きになれることを考える」といったことを意識するといいでしょう。
ただし、考え方が根強いクセになっている場合、すぐには変えにくいこともありますよね。
その場合は、
出てきた考えを真に受けすぎず、なるべく受け流す
否定のクセを薄めて、成功体験を徐々に積み重ねる
この2つを心がけてみてください。これらの思考を積み重ねていくことが、結果として、否定的な考えが出てくる頻度を減らすことに繋がります。
原因④ 躁うつ病(双極性障害)を発症している
抗うつ薬などによる治療を続けていて、生活習慣・環境・考え方などの見直しを行っているにもかかわらず、症状の改善が見られない場合は、躁うつ病(双極性障害)を発症している可能性があります。
躁うつ病ってどんな状態?
躁うつ病とは、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、気分が沈んで意欲がなくなる「うつ状態」を交互に繰り返す状態です。
人によっては、躁状態の症状が軽くて期間が短く、うつ状態が長く続く「双極性障害Ⅱ型」のケースもあり、この場合は一般的なうつ病との区別がつきにくいです。
うつ病と躁うつ病は使う薬が違うので、この見極めができていないと、病気が長引く恐れがあります。
躁うつ病かを判断する4つのヒント
過去を振り返って、躁気味な時期があった
家族に躁うつ病の人がいる
周期的にうつ病を繰り返している
抗うつ薬を使うと躁状態になる傾向がある
躁うつ病かどうかを判断するヒントとして、上記の4つが挙げられます。
「ある時期だけ妙に活動的だった」「ある時期だけ妙にお金を使っていた」など、過去に躁気味な期間があった場合は、躁うつ病である可能性が出てきます。
自分ではわからなくても、『ちょっといつもと違う』『いつもより妙に元気だね』などと、周りの人から言われる時期があったかどうか、ということも参考になります。
また、家族に躁うつ病の人がいると、発症の可能性が少し高くなると言われています。
その他、周期的にうつ病の症状を繰り返す場合や、抗うつ薬を使ったときに躁状態になる傾向がある場合も、躁うつ病を発症している恐れがあると考えられます。
躁うつ病を疑う場合は主治医に相談を
躁うつ病の発症を疑う場合は、早めに主治医に相談しましょう。
うつ病と躁うつ病では、治療に使う薬が違います。そのため、うつ病か躁うつ病かを的確に判断することは、症状を早く改善するために、非常に重要であると考えられています。
▼動画による解説はこちら
※本記事は、チャンネル運営者の許可を得て作成しています。
≪チャンネル紹介≫
こころ診療所チャンネル【精神科医が心療内科・精神科を解説】
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病・適応障害・パニック障害など、こころの不調やその対策について、わかりやすく解説。
こころの不調を抱える方が、少しでも症状を改善するヒントとなるような情報の提供を目指しています。