「大人の発達障害」は診断を受けたほうが良いのか、お医者さんに聞いてみました。
「仕事でミスが多い…」
「人間関係が上手くいかない」
といった悩みがある方は、症状リストをチェックしてみましょう。
発達障害だと診断される基準、診断を受けられる診療科も併せてご紹介します。
監修者
経歴
福島県立医科大学卒業
「働く人を支える」薬に依存しない医療を展開する「BESLI CLINIC」を2014年に協同創設、2030年を基準に医療現場から社会を支える医療経営を実践しています。
産業医視点からビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。生薬ベースの漢方内科での経験を活かし、腹診を含めた四診から和漢・井穴刺絡などの東洋医学を扱い、ホルモン、生活習慣をベースに身体から心にアプローチする診療を担当。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了。TMSをクリニックへ導入、日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っています。
発達障害かも「診断を受けるべきか」
「自分は発達障害かもしれない」と思うことがよくあります。
大人の場合でも、病院で診断を受けた方が良いのでしょうか?
今後のトラブルを防いでいくためにも、まず「発達障害か否か」を明らかにすることが大切です。「脳のエラー」が原因の場合、薬の服用などで改善を図れます。
- 人間関係が上手くいかない
- 同じことで注意されても直らない
- 仕事でミスを繰り返す
など日常生活で困ることが多い人は、一度医療機関で相談してみましょう。
うまくいかない理由がわかることで「気持ちが落ち着いた」というケースもあるので、気になる方は受診してみると良いでしょう。
【体験談】私が受診を決めたキッカケ
昔からずっと人見知りで中々グループに馴染めませんでした。ある日知り合いから「発達障害じゃないか」と指摘を受けたので受診を決意しました。
(30代男性)
何個か仕事を頼まれた時にどれから手をつけていいかわからずパニックになってしまいました。
頼まれた業務内容を書き出すことで順調に進められたため、「もしかして」と思い受診をしました。
(20代女性)
新卒で入社してから事務仕事で、ケアレスミスばかりしていて、同僚や上司に怒られることが多々ありました。
何度教えてもらっても覚えが悪いので、上司から大人の発達障害を疑われて精神科に行くように言われたのがキッカケです。
(50代女性)
大人の発達障害の症状チェック
発達障害の症状には以下のようなものがあります。
当てはまる数が多いほど、発達障害の疑いが強くなるといえます。
▼「日常生活」で起こりやすい症状
- 物音に敏感
- 数字や時刻表などに意味なく惹かれる
- 集中すると他のことが目に入らない
- スケジュール通りに動くのが苦手
- 衝動買いをしてしまう
▼「仕事」で起こりやすい症状
- 臨機応変な対応が苦手
- 物事を最後までやり遂げられないことが多い
- 作業を順序立てて考えられない
- 長時間座っているのが難しい、体を動かしてしまう
- 不注意が多い
- 同じ間違いを繰り返し、指摘されることが多い
▼「人間関係」で起こりやすい症状
- 人と関わることが苦手
- 考えたことをすぐに口に出してしまう
- 「おしゃべりが多い」と言われる
- 丁寧に話していても他人から注意される
- 他人の考えていること想像できない、同調できないことが多い
- 約束や用事を忘れやすく、「物忘れが激しい」と注意される
- 子供の頃から人とのトラブルが多い
医師が「発達障害だ」と診断する基準目安
ASD(自閉症スペクトラム)のケース
- 対人関係を上手く築けない
- 興味がパターン化する
- こだわりが強い
- 感覚の偏りがある
などが見られる場合、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されることがあります。
※上記は特徴的な症状の例です。診断は、診察・カウンセリング・検査(スクリーニング検査、評価や診断の検査、認知機能検査)を通して行われます。
ASD(自閉症スペクトラム)ってどんな発達障害?
対人関係が苦手である、興味・行動のこだわりが強いといった傾向を持つ先天性の脳機能障害のことです。
多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こります。
ADHD(注意欠如多動症)のケース
- 不注意(ミスを繰り返す・物忘れなど)
- 多動(落ち着きのなさ)
- 衝動的な行動
などが見られる場合、ADHD(注意欠如多動症)と診断されることがあります。
ADHD(注意欠如多動症)ってどんな発達障害?
「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつです。
※上記は特徴的な症状の例です。
診断は、診察・カウンセリング・検査(スクリーニング検査、評価や診断の検査、認知機能検査)を通して行われます。
受診時に伝えるとよいこと
初診では医師に、
- 現在悩んでいること(実際にあったトラブルや悩みの事例)
- 今までの事故や注意された事柄
- 成長過程で悩んでいたこと(幼少期や思春期など)
などを伝えるとスムーズに診察が進行します。
大人の発達障害って…何科?
大人の発達障害は、精神科で相談できます。
また、「発達障害の専門外来」を設けている医療機関もあります。
※医療機関により専門が異なる場合があるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診をすることをおすすめします。
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もし「発達障害だ」とわかったら?
発達障害の症状はお薬を服用したり、トラブル回避のために対策を立てたりすることで改善を図れます。
主治医と相談しながら、ご自身に合った改善策を考えていきましょう。
「日常生活での対策」の例としては、
- 忘れ物を防止するために必ずメモを取る
- 人の話を最後まで聞き、よく考えて行動する
などが挙げられます。
うまく対処できるようになると、次第に対人関係や仕事でのトラブルが減り、自信を持って生活できるようになります。
「診断を受けるべきか」迷っている方へ
発達障害は脳の障害であり、性格ではありません。
トラブルを避けるためには、まず診断を受けて原因を明らかにすることが大切です。
発達障害の人は周りから理解されないことが多く、普通の生活を送るだけで精一杯になってしまう人もいます。
最近では発達障害の医療体制もすすみ、「どのように行動すれば良いか」をアドバイスする医療機関や施設も多数あります。
人生をより自信を持って歩めるよう、自分自身を深く理解して少しずつ対応手段を身につけていきましょう。
精神科を探す
合わせて読みたい
2022-07-04
「周りと比べて仕事のミスが多い…」
女性のADHDはどういった症状があるのか、お医者さんに聞いてみました。
男女別で出やすい症状も紹介するので、「ADHDかもしれない」と不安な人は必読です。
ADHDは、女性と男性では何が違う?
ADHDの症状の特徴として、「不注意」・「多動」・「衝動性」が挙げられます。
この中でも女性は「不注意」を特徴とする症状が強く出るケースが多いです。
「不注意」は、発達障害か否かを見分けにくい症状なので、女性はADHDだと気付かれにくい傾向があります。
一方で男性の場合は、「多動」や「衝動性」の症状が強く出やすいと言われています。
多動・衝動性は周囲に分かりやすい行動のため、発達障害だと気付かれやすいです。
不注意
(女性に出やすい)
指示内容を把握できない
周囲の反応を気にせず話し続ける(おしゃべり)
多動・衝動性
(男性に出やすい)
じっと座っていられない
言わなくていいことを言ってしまう
ADHDが発覚しやすいシーン
ADHDは、幼少期だと見過ごされてしまうことが多いです。
そのため、大人になってから、職場・学校・家庭で発覚するケースがよく見られます。
例:会社で仕事の指示を受けても、周りの人のようにスムーズにこなせない等
「大人の女性のADHD」3つの特徴
大人の女性のADHDによくある特徴として、
衝動買いをしてしまう
予定を詰め込みすぎる
単純なミスや失くし物、忘れ物が多い
といった点が挙げられます。
これらの特徴に一つでもあてはまればADHDの疑いがあります。
ただし、上記の内容はADHDではない人にも見られるため、最終的な判断は専門医による診断が必要です。
心療内科を探す
特徴① 衝動買いをしてしまう
ADHDの特徴として、計画的に購入せず、衝動的に買い物をしてしまう癖があります。
衝動買いが頻繁に起こり、
経済的に困難な状況に陥っている
お金の問題で、人間関係にトラブルが起こっている
といった状態は、ADHDが疑われます。
衝動買いは、「我慢がきかない」「イライラが強くなる」「注意深く考えない」といった状態に陥るのが原因と考えられます。
これは、前頭前野の機能調節に偏りがあるために起こります。
特徴② 予定を詰め込み過ぎる
ADHDの場合、処理できないほどの仕事を受けたり、予定を詰め込み過ぎたりすることがあります。
特に、
引き受けた仕事の提出を先延ばしにする
仕事を溜め込んでしまう
ことが頻繁に起きる場合はADHDが疑われます。
ADHDの方は、前もって計画を立てられない・優先順位を考えて行動できないといったことが多いです。
この症状は、脳内の神経伝達物質の働きが上手くいっていないことが原因と考えられています。
特徴③ 単純なミスや失くし物、忘れ物が多い
こんな「不注意」はADHDかも
単純なミスを何度も繰り返す
物を置いた場所を忘れる
物を失くしやすい
約束したことを忘れる
ADHDは、上記のような「不注意」の症状が強く出ることが多いです。
不注意の症状は、「気持ちのコントロールが困難になる」「注意力・記憶力・学習能力が低下する」といった状態に陥ることで生じます。
これは、脳内神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン)の機能低下が原因だと考えられています。
【体験談】私が「ADHDかも」と気づいたキッカケ
職場で何度もケアレスミスを繰り返したり、忘れ物が多かったり…日頃から悩んではいました。ある日ネットでADHDのことを知り、自分に当てはまる箇所が多いと気づきました。(40代)
自分の子どもに発達の偏りがあっため病院に行った際、親のあなたも病院にいってみてはと診断を促され、調べた結果ADHDでした。確かに昔から忘れ物が異常に多かったです。(30代)
もしかしてADHDかも…どうしよう?
日常生活や社会生活を送る中で「生きづらい」と感じる
自己肯定感が低い(自分に自信が持てない)
周囲からのネガティブな反応に耐えられない
といった状態であれば、医療機関の受診をおすすめします。
ADHDを放置すると、二次障害(※)を引き起こすリスクが高まり、より強く生きづらさを感じるようになります。
(※)適応障害・社交不安障害・あがり症・パニック障害・強迫性障害・うつ病など
ご自身の特性を深く理解するためにも、一度医師の診察を受けるようにしましょう。
ADHDの検査・治療方法は?
医療機関では、
問診
心理検査
知能検査
頭部CT
MRI
脳波検査
などの方法で診断を行います。
ADHDと診断した場合は、「薬物療法」・「心理・行動療法(カウンセリング)」による治療を行います。
▼薬物療法
ADHDは脳内の神経伝達の乱れによって、神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン)の機能が低下している状態です。
この状態を改善するために、「中枢神経刺激薬」・「選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬」等の抗ADHD薬が用いられるケースが多いです。
▼心理・行動療法(カウンセリング)
普段の行動パターン・考え方の癖を見直す治療方法です。
感情のコントロール・スケジュール管理などを上達させ、日常生活でのトラブル回避につなげます。
ADHDを根本的に改善させるには「薬物療法」だけでなく、「心理・行動療法」も並行して行う必要があります。
何科で相談する?
ADHDが疑われるときは、心療内科で受診しましょう。
心療内科を探す
▼参考
公益社団法人 日本精神神経学会 今村明先生に「ADHD」を訊く
内閣府 ひきこもりと発達障害
たわらクリニック 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
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2022-11-24
HSPかもしれないけど、病院に行くべき?
何科で相談できる?
HSPが疑われる人は病院に行くべきか、お医者さんに聞きました。
受診の目安となる症状や、おすすめの診療科も紹介します。
HSPかもしれない…病院に行くべき?
HSPは、その人が生まれ持った気質であり、治療する対象ではありません。
そのため、自分が「HSPかもしれない」というだけで、病院を受診する必要はないでしょう。
HSP(Highly Sensitive Person)とは、「非常に敏感な人」を意味しており、生まれ持った「気質」を表す心理学の言葉です。
病気や障害を表す医学的な診断名ではありません。
最近では、書籍やネット上のチェックリストによって、自分を「HSP」だと自己診断されている方も多いですが、それらには明確な根拠がないケースもあります。
一方で、自分がHSPであると認識して安心感を得たり、同じように悩む人の存在を励みにできたりするという価値もあると考えられます。
「HSP」には、どんな特徴があるの?
HSPの人は、脳の扁桃体(恐怖・不安などの感情に関わる部位)が過剰に働くことで、恐怖や不安を感じやすいと考えられています。
そのため、大きな音や光が苦手であったり、他人の気持ちに振り回されて人間関係に疲れやすかったりすると言われています。
ただし、こんな症状が出たら病院へ
夜、眠れない状態が2週間以上続いている
職場や学校に通えなくなった
1日中、気分が憂うつ
他人の言動に左右されやすく、極度に対人関係に疲れを感じている
家以外の場所では、常に緊張状態である
刺激から逃げたくなり、引きこもりたくなることがある
上記の症状に心当たりがある場合は、病院で相談してみましょう。
HSPの繊細な特性が原因で、疲れやストレスが蓄積することで、これらの症状が現れている可能性があります。
この状態を放置していると、本来持っている能力を仕事や日常生活で発揮できなくなり、「うつ病」「適応障害」「不安障害」などの病気につながる可能性があります。
また、ストレスが蓄積した状態が慢性化するため、体の不調が続く恐れもあります。
精神科と心療内科、行くならどっち?
精神的な症状が強い 場合は「精神科」、体の不調を伴う(頭痛・腹痛など) 場合は「心療内科」で受診するとよいでしょう。
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
精神科は、心の病気そのものを治療する診療科です。
一方、心療内科は、さまざまなストレスに対して現れる体の症状に対して治療を行います。
症状がなくても、HSPの相談はできる?
先に挙げた症状がない場合でも、HSPの相談ができる病院はあります。
最近では、HSPに特化した外来診療や、臨床心理士・公認心理士によるカウンセリングを行っている病院も増えています。
ただし、これらの対応はどこの病院でも受けられるわけではないので、事前に病院に問い合わせておくといいでしょう。
精神科を探す
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病院ではどんな治療をするの?
病院では、まず「うつ病」や「不安障害」などの病的な要因がないかを見極めます。
その上で、症状に応じて、
カウンセリング
薬を使った治療
TMS治療(磁気刺激治療)
といった治療を行うことがあります。
治療法① カウンセリング
うつ病や不安障害などの病的な要因がない場合は、カウンセリングを通して、自身の繊細な特性を知ったり、自分の強みを見つけたりしていきます。
特に、自己肯定感が低下しているために、生きづらさを感じている人を対象に行われることが多いです。
自分自身のことを見つめ直し、繊細な特性を受け入れることで、生活が送りやすくなるため、症状の緩和につながります。
保険は適用される?
保険は適用されません。
病院にもよりますが、カウンセリングの費用は1万円~1万5千円前後であることが多いです。
治療法➁ 薬を使った治療
HSPによって、
過度な緊張・不安・不眠を生じている
「うつ病」などの病気を合併している
場合には、それらの症状を和らげる薬を使って治療します。
薬はあくまで補助的に使い、心理療法も併せて行われることが多いです。
なお、薬を飲むことに不安を感じて、さらに不安感やうつ症状が現れる人もいます。
また、薬の副作用を感じることもあります。
保険は適用される?
保険は適用されません。
自由診療の場合、薬を使う治療の費用は5千円~6千円前後であることが多いです。
※「うつ病」の治療として薬を使用する場合には、保険が適用されることもあります。
治療法③ TMS治療(磁気刺激治療)
脳に、磁気による刺激を与える治療法です。
病院にもよりますが、1回5~20分程度、週に2~5日継続して行います。
TMS治療は、副作用がほとんどないため、薬の副作用を受けやすい人に特に向いています。
磁気の刺激により脳の血流を増やすことで、脳の機能を活性化させ、うつ症状やHSPの特性による諸症状を和らげます。
保険は適用される?
保険は適用されません。
自由診療の場合、病院にもよりますが、20~30回の治療で、10万円~60万円程度の費用がかかります。
※「うつ病」の治療として磁気刺激治療が行われる場合は、保険が適用されることもあります。
診察時の症状の伝え方
自分をHSPだと思うようになったキッカケ
どのような方法で、自分はHSPだと判断したのか
特に、どのような症状に悩んでいるか
症状が出始めた時期
どんな時に、症状が強くなるのか
食事や睡眠の状況について
これまでにかかったことがある病気の有無
喫煙・飲酒の状況について
受診の際は上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
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心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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