「耳から顎の付け根が痛い…なぜ?」
耳から顎の付け根が痛む症状について、歯医者さんに聞いてみました。
考えられる2つの原因ごとに、対処法や病院に行く目安も解説します。
何科に行けば良いかもチェックしましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
耳の前(顎の付け根あたり)が痛い…なぜ?
- 顎関節が前方向にずれている
- 顎の関節部分の骨が変形している
- 耳下腺が炎症を起こしている
などの状態によって痛みが生じている可能性が考えられます。
この状態になると、押すと痛んだり、片方だけ痛むこともあります。
耳から顎の付け根が痛くなる2つの原因
耳から顎の付け根に痛みを感じる場合、
が考えられます。
原因① 顎関節症
顎関節内にある「関節円板」というクッションが前方向にずれている、関節を作っている骨が変形しているなどの状態によって、痛みが生じます。
顎関節症を発症する原因には、
- 精神的ストレス
- 歯ぎしり・食いしばりの癖
- 噛み合わせの悪さ
- うつ伏せで寝る習慣
- 頬杖をつく癖
- 猫背の姿勢
などがあげられます。
症状の特徴
- 顎を動かすと顎関節の周囲が痛む
- 顎を動かすと顎関節から音が鳴る
- 口を大きく開けられない(※目安として、指が3本分入るのが正常な状態)
- 食事の際すぐに顎が疲れる
また、人によっては肩こりや首の痛みがみられる場合もあります。
症状は、片側だけ起こることもあれば、両側に起こることもあります。
自分でできる対処法
顎関節に負担をかけないよう、
- 仰向けで寝る(うつぶせ、横向きで寝ない)
- 柔らかく食べやすい食事を選ぶ
- 頬杖をつく癖をやめる
- 姿勢を正す
といった点を心掛けましょう。
顎関節症の原因となっている生活習慣を変えれば、自然治癒するケースがあります。
また、ガムやスルメなど噛むのに時間のかかる食べ物は避けましょう。
病院に行く目安
- 顎を動かすたびに痛む・音が鳴る
- 顎が痛くて食事ができない
- 口が大きく開けられない
- 顎が痛くて仕事や勉強に集中できない
などの症状がみられたら、医療機関を受診しましょう。
特に「対処法を試してみて2週間以上経っても症状が変わらない」場合や、「日に日に症状が悪くなっている」場合には、早めの受診をおすすめします。
放置して重症化すると、顎関節が固まって戻らなくなり、手術が必要になるケースもあります。
何科で受診すべき?
顎関節症が疑われる場合は、歯科で受診しましょう。
歯科を探す
原因② 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
唾液腺に炎症が起こっている状態で、耳から顎にかけて痛みが生じます。
流行性耳下腺炎を発症する原因は、ムンプスウイルスへの感染です。
- ウイルスの入った咳・くしゃみを吸い込んだ(飛沫感染)
- 感染者の手などに触れた(接触感染)
などにより感染します。
症状の特徴
- 耳下腺(耳の下辺り)の違和感
- 発熱(2~3日)
- 耳の周りや顎の下、舌周りなどが腫れる
- 飲食時・酸っぱいものを飲んだときに耳下腺が痛む
- 痛みは腫れが出てから数日間続く
症状が出るのは、片側だけに起こることもあれば、両側に起こることもあります。
ワクチンを接種していると、発症しても軽度で済むことが多く、発症しても気がつかない人もいます。
卵巣・精巣の病気を招くケースも
女性の場合、「卵巣炎」を合併症で発症する場合があります。
卵巣炎とは、病原体が子宮経管から卵管に感染して炎症が起きる病気で、下腹部痛や吐き気、不正出血などを生じます。
男性の場合、「精巣炎」を合併症で発症する場合があります。
精巣炎は、精巣に炎症が起きる病気で、急激な精巣の痛みや腫れ、発熱、倦怠感などを生じます。
自分でできる対処法
まずは安静にしましょう。疲労やストレスで重症化するケースもあります。
痛みがつらいときは、腫れているところを冷やすと痛みの緩和が期待できます。
腫れている部分を冷やすときは、「水で濡らしたタオル」などを使用しましょう。
病院に行く目安
- 耳下腺の腫れ・痛みが強い
- 38度以上の発熱
- 症状によって水分が取れない
以上の時は、受診しましょう。
何科で受診すべき?
流行性耳下腺炎が疑える場合は、耳鼻いんこう科で受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
痛みの悪化を招く「やってはいけないこと」
- 顎を無理矢理に動かす
- 口を大きく開ける
- 長時間のパソコンの使用
- 仕事や勉強中の頬杖
- 激しい運動
などの「顎関節に負担をかける行動」は、痛みの悪化を招く恐れがあるのでやめましょう。
自己判断での「市販薬の服用」もNG!
原因がわからない場合、自己判断で薬を飲むのは避けましょう。
原因がわからないまま市販薬を使用して、効果が感じられない、悪化しているなどが確認できる場合はすぐに使用をやめてください。
痛みを抑えるだけの目的で、製品が年齢に合っていれば「鎮痛剤」は使用できますが、根本的原因を治療できません。
医療機関へ相談しましょう。
原因を判断できないときは何科?
痛みの原因が分からない場合は、まず耳鼻いんこう科で受診しましょう。
耳から顎の付け根に痛みがある場合、耳鼻いんこう科では唾液線に問題がないか確認してもらえます。
耳下腺炎を発症している場合、悪化すると「卵巣炎」「精巣炎」といった合併症によって、不妊を招くリスクもあります。
痛みがなかなか引かないときは、できるだけ早めに受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
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「すぐに病院へ行くべき?」
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放置した場合のリスクや病院に行く目安もお伝えします。
大人の耳下腺炎ってどんな症状?
耳の下あたりの腫れ・痛みの症状がある場合、耳下腺炎が疑われます。
両耳に発症する場合、片側から症状出て1~2日後に反対側に発症するケースが多いです。
<耳下腺炎の痛みの特徴>
腫れている部分を押すと痛む
酸味が強いものを食べると痛みが増す
痛みで口を開きづらい
※耳の下だけでなく、顎の下が腫れて痛むこともあります。
こんな症状を伴うことも
頭痛、めまい
発熱(高熱がでることもある)
耳鳴り、難聴
濃汁が混ざった唾液が出る
耳の下をつまんで押すと膿が出る
「熱が出ない」こともある
「不顕性感染」の場合、感染しても熱が出ないケースがあります。
不顕性感染とは、細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず、感染症状を発症していない状態です。一般に耳下腺炎は、感染しても必ず発症するとはいえず、大部分がこの不顕性感染です。この場合は、一旦はお家で様子をみても問題ないと考えられます。
何が原因で発症するの?
耳下腺にウイルス・細菌が感染することで発症します。
原因となる病原体には、ムンプスウイルス、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、溶連菌などが挙げられます。
こんな人に発症しやすい!
免疫力や体力が低下している人
睡眠不足の人
疲労がたまっている人
高齢者
口の中の衛生状態が悪い人
人にうつる?
耳下腺炎には人にうつりにくいタイプと、うつしやすいタイプがあります。
うつりやすいのは、ムンプスウイルスによる「流行性耳下腺炎(おたふく風邪)」のケースです。おたふく風邪は、基本的には「1度かかったら2度はかからない」ので、過去におたふく風邪にかかったことがある人は、おたふく風邪ではなく、人にうつらない「反復性耳下腺炎」の可能性が高くなります。
※「うつらない耳下腺炎」と「うつる流行性耳下腺炎」は、症状は非常によく似ています。一般の方が症状で判断するのは難しいです。そのため「うつしてしまうかも」という前提で予防の行動をとるようにしましょう。
この症状は「流行性耳下腺炎(おたふく風邪)」かも
耳の下のひどい腫れ
酸っぱいものを食べると痛む
高熱がでる
耳鳴り
難聴
※片方の耳下腺に腫脹が発生して、1~2日後に反対側にも発生する場合が多いです。
おたふく風邪を予防する方法は?
おたふく風邪は二次感染のリスクが高いので、注意したいものです。予防には、マスクの着用・うがい・手洗いも有効ではありますが、感染力がとても強いウイルスなので、積極的な予防には、予防接種が大切です。予防接種を受ければ、万が一発症しても軽い症状で済みます。予防接種1回では免疫がつかない場合があるので、2回接種を行ってください。
どう対処する?病院行くべき?
耳下腺炎が疑われる場合は、医療機関の受診をおすすめします。
診断を受けて症状に合った治療を受けることで、より早い改善が期待できます。
すぐ病院に行けないときは…
安静にして患部を軽く冷やすことで、痛み・腫れの症状が緩和される場合があります。
また、こまめな水分補給を行い、硬い食べ物や酸味がある食べ物は控えてください。
こんな症状は早めに病院へ
高熱が出ている
痛み、腫れがひどくなっている
腹痛、頭痛を伴う
吐き気・嘔吐
首の後ろが硬くなる
体の麻痺、けいれん
意識障害を起こす
といった症状が出現している場合は、早急に医療機関を受診してください。
特に流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が悪化すると、音を感知する神経が破壊され、難聴を引き起こす恐れがあります。
また、ウイルスが血流やリンパに入って体中に広がり、髄膜炎・膵炎・脳炎・卵巣炎・精巣炎といった重い合併症を患うケースも稀にあります。
高熱が3~5日ほど続く場合は、合併症の疑いが強くなるため、必ず受診するようにしましょう。
病院は何科?
大人で耳下腺炎が疑われるときは、内科を受診しましょう。
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どんな治療を受けるの?
飲み薬(鎮痛解熱剤や抗生物質など)で治療することが多いです。
口の中の衛生環境の悪さが原因の場合は、虫歯の治療や口の中のクリーニングを行い、清潔な状態にするケースもあります。
流行性耳下腺炎の場合、特効薬がないため、出現している症状を緩和させる鎮痛解熱剤などで対症療法が行われます。
細菌感染が原因で発症している場合には、抗生物質を用いた治療が行われるケースがあります。
どのくらいの期間で治る?
完治までの期間には個人差がありますが、1~2週間程度で症状が改善していくケースが多いと考えられています。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 大人がなると危険!!おたふくかぜ ~感染症~
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子どもが「片方の耳の下が痛い」と訴える。
腫れているけど、熱はないみたい…これは何?
もしかして「反復性耳下腺炎」もしくは「おたふく風邪」になっているかもしれません。
それぞれ、症状が似ていますが、対処法が異なります。注意しましょう。
考えられる、2つの原因
反復性耳下腺炎
おたふく風邪
特徴
何度も発症する
耳下腺の腫れのみで、発熱しないことが多い
基本的に、1度かかったらもうかからない
耳下腺の腫れに加え、発熱や倦怠感がある
うつるか
うつらない
うつる
登園登校
可能。
激しい運動やプールは、疲労が大きいので、腫れが引きまでは休ませた方が良い
不可。
耳下腺の腫れ発生から5日経過し、さらに全身症状が良くなるまでは登園・登校不可
発熱がない場合は、「反復性耳下腺炎」だと考えられます。
ただしおたふく風邪と症状がよく似ているので、慎重に行動する必要があります。
ケース1.「反復性耳下腺炎」
「反復性耳下腺炎症」は、風邪をひいたり、病気をしたり、体が弱った時に発症する場合もあります。
乳幼児期から10歳ごろの子ども(2〜5歳で初めて発症するケースが多い)に多いです。
耳下腺(耳の下にある唾液腺)が腫れます。
1度かかったら終わりではなく、何度も繰り返し発症します。
年に何回も耳下腺が腫れる人もいます。免疫がつき、体が強くなってくると頻度は少なくなります。
原因
はっきりとした原因はわかっていませんが
ストレス・疲労の蓄積
ウイルス・細菌の感染
虫歯や口の中での雑菌感染
などで、免疫力が低下していることが要因だと考えられます。
症状の特徴
発熱はないことが多い(高熱になることはほぼない)
耳下腺が腫れる(片耳、もしくは両耳)
食べ物を飲み込むときに痛む
早く治す方法が知りたい!
体の免疫が下がっているときに発症しやすいので、ゆっくり安静にして過ごしましょう。
痛みがつらいときは、濡れタオルなどで冷やすと楽になります。基本的には、2~3日で自然治癒します。
ケース2.「おたふく風邪」
「おたふく風邪」は、3〜6歳くらいの子どもに多いです。
おたふく風邪のワクチン接種前におたふく風邪の患者と接触すると感染しやすくなります。
潜伏期間(2~3週間)ののち発症します。
子どもの場合、症状が軽いことが多いですが、「髄膜炎」や「難聴」、「膵炎」などの合併症を引き起こすことがあります。
ワクチンを接種していると発症しても軽度で済むことが多く、発症しても気がつかない人もいます。
原因
ムンプスウイルスによって発症します。
症状の特徴
発熱する
倦怠感
耳下腺が腫れる(片耳、もしくは両耳)
食べ物を飲み込むときに痛む
早く治す方法が知りたい!
おたふく風邪に感染したら、ゆっくり休ませるようにしましょう。
症状が耳下腺の腫れのみで軽く済む人もいますが、体はウイルスに感染し、戦っています。安静にしてゆっくり休まないと、疲労やストレスで重症化する場合もあります。
痛みがつらいときは、濡れタオルなどで腫れているところを冷やすとよいでしょう。
現在、おたふく風邪に対する特効薬はありません。基本的に1週間~2週間で自然治癒します。医療機関では対症療法(つらい症状を緩和する治療)がとられます。
見分け方は?「反復性耳下腺炎」と「おたふく風邪」
発熱がなく、耳下腺の腫れのみであれば、「反復性耳下腺炎」の可能性が高いです。
発熱・倦怠感があるときば、「おたふく風邪」の可能性が高いです。
おたふく風邪を発症した人と接触があった場合は、おたふく風邪が濃厚です。
ただし、おたふく風邪は一度かかれば抗体ができ、2度は感染しません。過去におたふく風邪にかかった子どもは、「反復性耳下腺炎」だといえるでしょう。「反復性耳下腺炎」の場合は、何度でも感染します。
ただし、自分ではどちらかわからない場合は「おたふく風邪」だと思って行動しなければいけません。
保育園や学校に行ってもいい?
「おたふく風邪」はうつるため、休む必要があります。
登園・登校ができるようになるのは、「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になってから」です(厚生労働省による感染症対策ガイドライン)。
どっちかわからないときは…どうすれば?
「反復性耳下腺炎」はお休みする必要はありませんが、「おたふく風邪かどっちかわからない」ときは休まなければいけません。この場合、医療機関で血液検査をして「おたふく風邪の免疫を既に持っている」とわかったら、お休みしなくてもよくなります。
どっちかはっきりさせたいときは、病院で検査しよう!
医師は、発熱の有無や子どもの体調、季節や流行など複合的に見て判断します。血液検査で確定することが可能です。はっきりさせたい場合は、医療機関で血液検査を受けましょう。
「反復性耳下腺炎」は何度も繰り返すことがあるので、次腫れたときに休まなくてもすむように、血液検査を受けておくことをおすすめします。
ホームケアの方法
どちらの場合も、安静にしながら水分摂取をして、やわらかいものを食べましょう。
食事は、消化のよいおかゆ・うどん・ゼリーなどがよいでしょう。
発熱していて、食欲がないときは、無理に食べさせなくても大丈夫です。水分補給を行い、脱水を避けてください。
避けたほうがよい食べ物
よく噛まないといけない硬い食べ物は、痛みを感じたり、腫れを悪化させるので避けてください。しょっぱいものや酸っぱいものも避けましょう。
お風呂ははいってもいい?
高熱でふらついていなければ入浴可能です。
ただし、体が温まると、腫れが悪化したり、痛みが増す場合があります。シャワー浴がおすすめです。
腫れが痛いときは…
痛みがあるときは、保冷剤などをタオルにくるんでで冷やすと楽になります。
腫れている部分を無理に押したり、触ったりしないでください。
負荷がかかると腫れがおさまりにくくなります。
病院に行く目安
「反復性耳下腺炎」か「おたふく風邪」かはっきりさせたいときは、医療機関を受診しましょう。
その他にも
40度以上の高熱
脱水症状
意識低下
ぐったりしている
などの症状があるときは、早急に医療機関を受診しましょう。
高熱を放置すると、脳症や後遺症が出ることもあるため、医療機関で治療を受けましょう。
受診の際は、おたふく風邪の可能性を考え、マスクをして受診しましょう。
受診の際に、お医者さんに伝えること
診察時は、お医者さんに
症状が出始めた時期
症状の経過
症状の特徴
服用している薬の有無
などを伝えましょう。
どんな治療をするの?
「反復性耳下腺炎」も「おたふく風邪」も、どちらも対症療法(つらい症状を和らげる治療)が主体です。痛み止めや解熱剤の投与が行われます。
病院は何科にいけばいい?
子どもの場合は「小児科」、大人の場合は「内科」を受診しましょう。
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▼参考
NIID国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)