最近、疲れやすい…。
これって脂肪肝のせい?
脂肪肝が悪化して重い肝臓病を発症すると、疲れやすさを感じるケースがあります。
肝炎・肝硬変が疑われる要注意な症状をチェックしましょう。
食事法など「今すぐ実践できる対策」も解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
疲れやすいのは脂肪肝のせい?
最近疲れやすくてだるいです。
脂肪肝は「疲れやすい」といった症状があると聞いて心配です…。
脂肪肝になっているだけでは、「疲れやすい」という症状が現われることはありません。
肝臓は他の臓器と比べると、わかりやすい自覚症状が出にくい部分です。
脂肪肝の人で疲れやすさを感じる場合、日頃の「生活習慣の乱れ」が原因となっているケースが多いです。
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2023-02-28
脂肪肝ってどんな状態?
自覚症状はある?
脂肪肝について、分かりやすくまとめました。
脂肪肝の人に「おすすめの食べ物」や「控えた方が良い食べ物」もご紹介するので、肝臓の数値に不安がある人は必読です。
脂肪肝とは
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が多く蓄積されている状態のことをいいます。
肝臓には、肝細胞の中に脂肪を蓄えて、エネルギー源として利用する機能があります。
しかし、脂肪の量が多くなりすぎると、脂肪が消費しきれずどんどん蓄積されて、脂肪肝になります。
検査でどれくらいの数値が出ると脂肪肝?
ASTとALTは、人間ドック学会の基準によると、30IU/L以下が基準値で、
31~50 IU/L → 「要注意」
51 IU/L以上 → 「脂肪肝の可能性大」
100 IU/L以上 → 「肝炎の疑いあり」
と考えられています。
脂肪肝の症状
脂肪肝はほとんど自覚症状がありません。
人によっては、
疲れやすい
全身の倦怠感がある
お腹が張った感じがする
といった症状が現れるケースもあります。
脂肪肝の原因
文字通り、脂肪を多く含む食事の食べ過ぎが主な原因です。
欧米型の高脂肪な食事が増えてきたことで、脂肪肝の発症率も上昇しています。
その他、
暴飲暴食
過度の飲酒
運動不足
肥満
無理なダイエット
などの原因が挙げられます。
脂肪肝になりやすい人の特徴
肥満傾向
糖尿病・高血圧・脂質異常症を患っている
つい食べ過ぎてしまう
運動不足
お酒をよく飲む
脂肪肝の改善にいい食べ物は?
脂肪肝を改善するには、栄養価が高く低エネルギーな「野菜」「キノコ類」「海藻類」を積極的に食べましょう。
肝臓で栄養を代謝するとき、ビタミンやミネラルが必要となります。
野菜・キノコ類・海藻類には、これらの栄養素が豊富に含まれています。
脂肪肝の人が食べてはいけないものは?
脂肪肝になったからといって、食べてはいけないものはありません。
ただし、
糖質を多く含むもの(ごはん・ジュース・お菓子・果物)
脂質を多く含むもの(揚げ物・お肉)
お酒
はできるだけ控えましょう。
▼摂取量の目安
糖質を多く含むもの
ごはんは1食につきお茶碗1杯程度
(ごはんなどの穀類に含まれる糖質は、肝臓への影響が比較的少ない)
間食は1日200kcalまで
脂身を多く含むもの
週に1〜2回程度まで
お酒
できるだけ禁酒する
我慢できないときは、成人男性の場合、1日に純アルコール20g程度※までとしましょう。女性はさらに少ない量にしましょう。
週2日は休肝日を設けてください。
※1日に純アルコール20g程度の例
ビール・発泡酒:ロング缶1本
酎ハイ:350ml缶1本
日本酒:1合
ウイスキー:シングル2杯
ワイングラス:2杯弱
早く治すために!食事以外で心がける2つのポイント
肝機能の低下が気になるときは、
1日6~7時間の質のよい睡眠をとる
1日30分程度の有酸素運動をする
といった生活習慣を意識しましょう。
肝臓の負担を減らすには、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
運動により消費エネルギー量が増加すると、脂肪肝の予防につながります。
脂肪肝を放置するとどうなる?
脂肪肝が悪化すると、「肝炎」や「肝硬変」を引き起こすリスクがあります。
また、肝硬変から肝がんに進行すると命に関わります。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、無症状で病気が進行することが多く、放置は危険です。
脂肪肝を疑う場合は、早めにお近くの内科・消化器内科を受診しましょう。
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疲れやすさは「運動不足」「食べすぎ」が原因かも!
「運動不足」の人は、筋肉の緊張・心肺機能の低下によって疲れやすくなります。
また、「食べすぎ」による消化器への負担・血糖値の急上昇も、倦怠感を引き起こします。
脂肪肝の人は、日頃から運動不足だったり、食べすぎたりする人が多いです。
これらの生活習慣は肝臓の状態を悪化させやすいため、早めに見直しを図ることをおすすめします。
脂肪肝が悪化して「肝炎」・「肝硬変」を発症しているのかも…
要注意な症状
- 足のむくみ
- 食欲低下
- 吐き気
- 発熱
- 皮膚・白目が黄色くなっている
脂肪肝の悪化によって「肝炎(※1)」や「肝硬変(※2)」を発症していると、疲れやすくなることがあります。
倦怠感に加えて上記の症状がある場合は、早めに「消化器内科」で診てもらいましょう。
(※1)肝炎 … 肝臓に炎症が起こっている状態。炎症によって肝臓の細胞が破壊され、次第に肝機能が低下していく。
(※2)肝硬変 … 度重なるダメージによって、肝臓が硬く小さくなっている状態。重い合併症を引き起こすケースがあり、肝臓がんを発症するリスクも上昇する。
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脂肪肝を予防する「おすすめの食事法」
脂肪肝を改善・予防するには、「食生活の改善」が重要です。
- 1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
- 糖質・脂質の多い食品は控える
- 野菜・キノコ類・海藻類を積極的にとる
- 副菜→主菜→主食の順に食べる
- お酒を飲みすぎない(場合によっては禁酒)
などを実践しましょう。
おすすめ① 1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
基本の食事例
- 主食(ご飯・パンなど):1品
- 主菜(魚・肉・大豆製品・卵など):1品
- 副菜(野菜・海藻類・キノコ類等):2品
欠食せず、1日3食(朝・昼・夜)、主食・主菜・副菜が揃った食事を食べましょう。
また、脂肪の蓄積を抑えるために、夕食は就寝の3時間前までに済ませるようにしましょう。
栄養バランスのよい食事をとることで、肝臓を健康に保ちやすくなります。
おすすめ② 糖質・脂質の多い食品は控える
糖質や脂質を多く含む食品は肥満の原因になるため、できるだけ控えましょう。
間食は1日1回にする・果物も食べすぎないなど、制限を設けるようにしてください。
特に、「糖質」の過剰摂取は脂肪肝を誘発しやすいため要注意です。
「果物」は、ビタミン等を豊富に含むため栄養価は高いですが、体内への吸収率がよく、肝臓で中性脂肪に変わりやすいです。
おすすめ③ 野菜・キノコ類・海藻類を積極的にとる
低エネルギーで栄養価が高い、野菜・キノコ類・海藻類を積極的にとりましょう。
肝臓で栄養を代謝する際に、ビタミンやミネラルが必要となります。
野菜・キノコ類・海藻類には、これらの栄養素が豊富に含まれています。
おすすめ④ 副菜→主菜→主食の順に食べる
- 副菜(サラダ・汁物など)
- 主菜(肉・魚など)
- 主食(ご飯・パンなど)
順番で食べると、血糖値の急激な上昇を抑制され、脂肪肝の予防になります。
また、「早食い」も血糖値を上昇させやすいので、よく噛んでゆっくり食事をとりましょう。
食後に血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げるために「インスリン」が多く分泌されます。
インスリンには余分な糖を中性脂肪として蓄える作用があるため、脂肪肝を予防するには、急激な血糖値の上昇を抑える必要があります。
おすすめ⑤ お酒を飲みすぎない(場合によっては禁酒)
お酒を飲みすぎないように注意しましょう。
アルコールの過剰摂取は、脂肪肝を引き起こす大きな要因の一つです。
お酒の種類
|
1日あたりの目安量
|
ビール
|
500ml以下
|
日本酒
|
180ml (1合)以下
|
缶チューハイ
|
500ml以下
|
ウイスキー
|
60ml以下
|
ワイン
|
200ml以下
|
※アルコールが原因で脂肪肝ができていると診断された場合は、原則禁酒です。
「疲れやすさ」の改善には、運動もおすすめ!
おすすめの「有酸素運動」
- ウォーキング
- ストレッチ
- ジョギング
- サイクリング
- 水泳
体を動かす習慣をつけると代謝がよくなるため、疲れやすさが改善されやすいです。
脂肪肝と診断されている方には、1日30分程度・週5回の有酸素運動をおすすめします。
肝臓を健全な状態に戻すには、有酸素運動によって脂肪を燃焼することが大切です。
「筋トレ」も組み合わせよう
筋トレで筋肉量を増やすと、代謝機能が向上して脂肪が燃焼されやすくなります。
大きい筋肉は下半身に集中しているので、「スクワット」や「片足立ち」などのメニューがおすすめです。
筋トレ① スクワット
- 足を肩幅程度に開き、背筋を伸ばして両手を前方に伸ばす
- 5秒数えながら腰をゆっくり落として、お尻を後方に突き出す
- 太ももに力を入れながら5秒で元の位置に戻す
- ①~③を5回ほど繰り返す
筋トレ② 片足立ち
- 右足を地面から5~10cmほど離す
- 片足で立って、1分間キープする
- 左足も右足と同じように行う