毛嚢炎(もうのうえん)が治らない…。
繰り返してしまうのはなぜ?
毛嚢炎を繰り返してしまう原因を、お医者さんに聞いてみました。
スキンケアなどの対処法も解説しますので、早く治したい人は必読です。
監修者
経歴
札幌医科大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
関東労災病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜市立大学附属病院 形成外科
を経て
平成30年10月より小田原銀座クリニックに勤務
令和2年6月よりよこはま港南台形成クリニックに勤務
なぜ?「毛嚢炎」を繰り返す…
毛嚢炎を繰り返す人は、皮膚の常在菌のバランスが崩れている可能性が高いです。
特に下記に当てはまる人は、常在菌のバランスが崩れやすい傾向があります。
「毛嚢炎」を繰り返しやすい人
- 間違ったスキンケアを行っている
- 皮脂が多い
- 汗をよくかく
- マスクなどで覆っている部分がある
- 紫外線を浴びる機会が多い
- 髭剃りや毛剃りの頻度が高い
- 睡眠不足など、生活習慣の乱れがある
- 免疫機能の低下をきたす病気を患っている(糖尿病など)
毛嚢炎は、細菌によって毛穴が炎症を起こしている状態です。
なんらかの原因で、黄色ブドウ球菌・マラセチア菌といった常在菌が増えすぎると、毛嚢炎を招いてしまいます。
「毛嚢炎」を放置すると…
毛嚢炎を放置して炎症が長引くと、
などが残るリスクがあります。
また、毛穴の細菌感染が悪化すると、全身に細菌がまわって発熱することもあります。
「毛嚢炎」を早く治す方法は?
毛穴の炎症を早く治すには、肌を清潔に保つ・肌に刺激を与えないといった点を守る必要があります。
普段の生活では、以下の4つを意識するようにしましょう。
早く治すための「4つのポイント」
- 髭・ムダ毛の処理を控える
- 不潔な手指で肌に触らない
- 朝と夜に、きちんと肌を洗浄する
- 洗浄後は必ず保湿をする
また、市販の抗菌薬を使用するのもよいでしょう。
抗菌薬を塗ると細菌の増殖を抑えられるため、炎症が治りやすくなります。
ただし、市販薬を使用する際は、必ず薬剤師に相談しましょう。
膿を出すのはNG?
患部から膿が出てきた場合、自分で膿を出してもよいでしょうか?
自分で膿を出すのは止めましょう。
膿を自分で出そうとすると、肌が傷ついたり細菌が侵入したり、と炎症の悪化を招きやすくなります。
炎症が長引き、肌の内部がダメージを受けると、「色素沈着」や「硬いしこり」が残ってしまうこともあります。
合わせて読みたい
2020-06-05
「顔にブツブツができた」
「ニキビじゃないみたいだけど…」
ニキビじゃない顔のブツブツの原因として、
コメド
毛嚢炎・毛包炎
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
単純ヘルペス
蕁麻疹
が考えられます。
それぞれの治し方や、やってはいけないNG対処を解説します。
病院で治療した方がいいケースもあるので、受診目安も紹介します。
1.「コメド」のブツブツ
毛穴にケラチンというたんぱく質や皮脂の塊が詰まることで生じます。
ホルモンバランスの乱れによって男性ホルモンが増えると、皮脂分泌のコントロールが乱れ、皮脂が過剰に分泌されます。肌のターンオーバーが崩れる30代以降にできやすい傾向があります。
<ブツブツの特徴>
白いポツポツ
炎症を起こすと、赤くなってニキビ化する
こんな人は要注意!
生理周期が乱れがち
ストレスを感じている
食生活が乱れている
コメドの対処法
コメドは、生活リズムを整えることでできにくくなります。
また、脂っこいものや甘いものを摂りすぎるとできやすくなります。
食事のバランスも見直し、ビタミンAやビタミンB₁、ビタミンCなどの栄養素は積極的に摂りましょう。揚げ物やお菓子などは控えましょう。
2.「毛嚢炎・毛包炎」のブツブツ
皮膚の毛根を包んでいるところに生じます。
黄色ブドウ球菌などによる感染症です。
カミソリを使用する人は傷口から菌が入りやすいので要注意です。また、風邪やストレスなどで免疫力が低下している人も、「普段はなんともない菌」にも体が抵抗できずに、炎症を起こしてしまうことがあります。
<ブツブツの特徴>
赤や白のブツブツ
かゆみや痛みがでることもある
こんな人は要注意!
カミソリを使っている
免疫力が低下している
肥満、糖尿病
高齢者
毛嚢炎・毛包炎の対処法
ブツブツの数が少なく、症状が軽い場合は自然に治ることがほとんどです。
痛みやかゆみが強い場合は皮膚科の受診が必要です。
ニキビと症状が似ているため、間違えやすいですが、ニキビの治療薬は効果がありません。
使用しても治らなければ皮膚科を受診しましょう。
皮膚科を探す
3.「稗粒腫(はいりゅうしゅ)」のブツブツ
毛穴の奥に老廃物が溜まったり、やけどや深い擦り傷の治癒過程でできたりします。
目の周りや鼻先、顎などにできることが多いです。
<ブツブツの特徴>
1~2㎜の白くてかたいブツブツ
かゆみや痛みはなし
こんな人は要注意!
子ども
若い女性
稗粒腫の対処法
炎症が起きているわけではないので健康被害はなく、放置していても問題ありません。
子どもの場合は、自然に取れることが多いです。
大人も数週間で取れることがありますが、見た目が気になる場合は皮膚科で取ることができます。皮膚科では、注射器の針で取り除いたり、レーザーによる治療を行います。
皮膚科を探す
4.「単純ヘルペス」のブツブツ
ヘルペスウイルスによる感染が原因です。
年齢が高い人ほど、ヘルペスウイルスが潜伏している可能性が高いです。
ヘルペスウイルスに感染していても症状が出ないこともありますが、疲れているときやストレスが過剰になると免疫力が落ちるため発症します。
<ブツブツの特徴>
小さい水疱
ムズムズとしたかゆみ
次第に痛みも生じる
こんな人は要注意!
免疫力が低い人
疲労が蓄積されている人
ストレスを過剰に感じている人
単純ヘルペスの対処法
水疱が小さい場合は、しっかりと休息を取ることで自然と治ることがあります。
水疱が大きい場合や、かゆみ・痛みが強い場合は皮膚科への受診が必要です。
皮膚科を探す
5.「蕁麻疹」のブツブツ
蕁麻疹の場合、その原因は様々です。
例えば、食物アレルギー、薬剤、皮膚のこすれ、寒冷、日光、圧力、運動、入浴、感染症、疲労、ストレスなどが原因となります。
15~20%の人が「人生に一度はできる」とされています。
<ブツブツの特徴>
1~2㎜に盛り上がった赤いブツブツ
強いかゆみ
数時間~半日程度でなくなることが多い
こんな人は要注意!
アレルギー体質の方
蕁麻疹の対処法
数時間で消えることが多いので、放置していても問題ありません。
ただし、半日以上経っても消えない場合や広範囲にブツブツがある場合、かゆみが強い場合は皮膚科を受診する必要があります。
皮膚科を探す
やってはいけない4つのNG
不潔な手でブツブツを触る
かきむしる
無理やり潰す
洗顔フォームをつけての過剰な洗顔
細菌が入りやすくなり、悪化につながる可能性があります。
皮膚科で治療するメリット
病院で治療することで、
治りが早い
跡が残りにくい
などのメリットがあります。
セルフケアでは、治療薬が間違っていることもあります。病院で適切な治療を受けることで、無駄が少なくスムーズに治療を行えます。
早く病院を受診した方がいい症状
ブツブツがしこりのように大きくなる
かゆみが強い
掻いてしまう
症状が治まらない
顔以外にもブツブツができる
何科を受診すればいい?
皮膚科を受診しましょう。
皮膚科を探す
参考
公益社団法人日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/index.html
毛嚢炎を繰り返すときは、皮膚科の受診を
毛嚢炎を繰り返していると、肌へのダメージが蓄積されて、綺麗に治りにくくなります。
皮膚科では、塗り薬・飲み薬の処方などを通し、毛嚢炎の悪化・再発の防止を図ってもらえます。
毛嚢炎を繰り返している人は、一度医師に相談してみるとよいでしょう。
肌に跡が残る・硬いしこりが残るといったリスクを避けるためにも、できるだけ早めに治療を受けることをおすすめします。
皮膚科を探す
毛嚢炎の再発を予防するには
「毛嚢炎」を再発させないためには、体の内側と外側からケアをする必要があります。
そのためにも、
- バランスのよい食事を心がける
- 生活習慣を整えて、規則正しく生活する
- 体調が優れないときは、無理をしないで休む
- 肌の基礎ケアを怠らない
といった対策をおすすめします。
予防法① 栄養バランスのよい食事を心がける
1日の3食、副菜・主菜・主食が揃ったバランスのよい食事をとるようにしましょう。
毛嚢炎を予防するには、食事から「ビタミン」「ミネラル」「タンパク質」などをしっかりとることが大切です。
食事から栄養分を摂取していると、肌のターンオーバーが促進されてバリア機能が高まり、毛嚢炎が再発しにくくなります。
予防法② 生活習慣を整えて、規則正しく生活する
- 夜更かししないで、たっぷり睡眠をとる
- 朝は早めに起きて、日中は活動的に行動する
といった点を心がけて、一定のリズムを保った生活を送るようにしましょう。
体のリズムを整えると、ターンオーバーが乱れにくくなり、肌のバリア機能強化につながります。
続けていくと毛嚢炎だけでなく、肌荒れ・肌老化にも強い肌になりやすいです。
予防法③ 体調が優れないときは、無理をしないで休む
「少し疲れたな」「体調が悪いな」というときは、ゆっくり休息をとりましょう。
また、ストレスもためないように、こまめにリフレッシュすることも大切です。
疲労やストレスで免疫が低下していると、肌の機能も低下して、肌荒れを起こしやすいです。
毛嚢炎の再発にもつながるので、体調が悪いときは無理せず休むようにしましょう。
予防法④ 肌の基礎ケアを怠らない
- 1日2回洗顔する
- 肌を洗浄した後は、必ず保湿する
- 髭・ムダ毛処理の際は、「処理前の保湿」と「処理後の保湿」を行う
- 日中は日焼け止めを塗る
毛嚢炎の再発を防ぐには、日頃から上記のようなスキンケアを行うことが大切です。
肌が清潔に保たれ、保湿が行き届いていると、毛嚢炎を起こしにくくなります。
紫外線も皮脂や汗の酸化を招き、肌荒れを促進させるので、日中は日焼け止めを塗って肌を守りましょう。
また、髭・ムダ毛処理の際には、清潔なシェーバーを使うようにしてください。
自己処理によって毛嚢炎を繰り返す人は、医療脱毛をして自己処理の回数を減らすというのも対処法の一つです。
合わせて読みたい
2020-06-05
「顔の湿疹が治らない!」
湿疹の原因と対処法をお医者さんに聞きました。
早く治す方法をはじめ、やってはいけない対処法も解説します。
病院へ行った方がいい症状もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
なぜ?顔の湿疹が、なかなか治らない!
顔の湿疹がなかなか治らない場合、アレルギー反応の可能性があります。
また、肌状態は健康状態にも左右されます。ストレスや疲れ、食生活の乱れなどでも湿疹が治らないがあります。
<アレルギーの原因の例>
花粉
ハウスダスト
乾燥
メイク
シャンプー
ボディソープ
金属
ずっと治らないと…どうなっちゃうの?
湿疹が慢性化すると、皮膚が硬くなり、黒ずみや跡が残ることがあります。
先生教えて!早く治す方法は?
「スキンケアのコツは?」「市販薬を何を選べばよいの?」
自宅でできる顔湿疹のセルフケア方法をご紹介します。
洗顔方法
皮脂の表面についた汚れをしっかりと洗い流すことが大切です。
<スキンケアの4ポイント>
低刺激の石けんを使う
優しく洗う(こすりすぎない)
石けんは少量を泡立てて使う
石けんが残らないように、しっかりすすぐ
スキンケアの方法
しっかり石鹸を洗い流した後は、乾燥を防ぐため保湿をします。
乾燥がひどくないときはローションタイプ、乾燥がひどい時はクリームタイプがおすすめです。まずは手を清潔にして行いましょう。こすらずに、力を入れず塗ります。傷口がある場所は避けましょう。
<ローションの場合>
適量を手のひらにとり、その後、手のひらで皮膚に馴染ませるようにやさしく伸ばします。
<クリームの場合>
人差し指でクリームをとって、肌に点在させ、その後、手のひらで皮膚に馴染ませるようにやさしく伸ばします。
皮膚の乾燥は湿疹や痒みの悪化につながります。保湿剤は刺激の少ないものを選び、優しく全体に伸ばすように塗りましょう。
市販薬の選び方
皮膚の炎症を抑えるもの:ステロイド外薬
痒みを伴うもの:抗ヒスタミン薬
原因にもよりますが、基本はステロイド外薬を使用します。
しかし、自己判断はせずに病院を受診することをおすすめします。
皮膚科を探す
やってはいけない“絶対NG”ケア
皮膚を清潔するために、強い力で顔を洗うと皮膚を傷つけてしまい、逆効果になります。
また、1日のうちに何度も洗顔を行うと、皮膚が乾燥してバリア機能が低下してしまうため、注意しましょう。洗顔は、1日2回~3回ほどでよいでしょう。
セルフケアでは治りにくいことも!
セルフケアでは湿疹の原因がわかりません。
そのため、皮膚科を受診して、原因にあった薬を処方してもらうことをおすすめします。
肌荒れで、皮膚科に行ってもいいの?
肌荒れで皮膚科を受診しても大丈夫です。
肌荒れの原因は、人によって様々です。
そのため、原因を突き止めて正しい治療をすることが、早く治すためには必要になります。
また、合わない市販薬を使い続けるより、症状に合った薬を使う方が、金銭的にも安く済みます。
皮膚科を探す
湿疹が出る病気の場合も…
湿疹がでる「病気」のケースもあります。
病気1. 光線過敏症
日光アレルギーとも呼ばれます。
日光に皮膚が過敏に反応して、炎症が生じることをいいます。
<湿疹の特徴>
日光にあたると、赤くなり炎症を起こす
皮膚が腫れる
水ぶくれができる
かゆみを伴う
病気2. 帯状疱疹
水疱瘡のウイルスによって発症する感染症です。水疱瘡にかかったことのある人なら、誰でもなる可能性があります。
体の片方だけ(右半身だけ、左半身だけ)に症状が出ている場合は、帯状疱疹の可能性が高くなります。
水疱瘡は、治癒してもウイルスが体内に残っています。
ストレスや疲れ、加齢などが原因で免疫力が低下した際に、潜伏していたウイルスが活性化し、皮膚に発疹が起こります。
<湿疹の特徴>
数日間、神経痛のような痛みがある
水ぶくれのような赤い発疹が現れる
強い痛みが起こる
病気3.アトピー性皮膚炎
肌のバリア機能が低下し、皮膚が炎症を起こし、かゆみや湿疹を繰り返す病気です。
<湿疹の特徴>
かゆみがある
赤みやささくれだって皮が剥ける
良くなったり、悪くなったりを繰り返す
病気4.全身性エリテマトーデス
原因が不明な難病です。
自分の体を自分の免疫が攻撃をし、自己免疫反応により自分の体に様々な炎症が起こる病気です。
38度以上の発熱や全身倦怠感、関節痛などの症状が現れます。
<湿疹の特徴>
顔や耳、首の周りなどに蝶の羽のような紅斑がでる
痛みやかゆみはない
こんな症状なら皮膚科へ
基本的に、湿疹が出たら早めに皮膚科を受診しましょう。
跡が残ってしまったり、早く治すのを予防するためにも、早期受診が大切です。
特に、
湿疹が増える
湿疹に痛みがある
発熱
疲労感
全身倦怠感
食欲不振
という症状を伴う場合は、悪化していたり、深刻な病気の可能性もあるのですぐに受診するようにしましょう。
病院での治療法
塗り薬や飲み薬で治療を行います。
皮膚科を探す
参考
公益財団法人 日本皮膚科学科会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q05.html
第一三共ヘルスケア ひふ研
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/symptom/shisshin/
かゆみナビ
https://www.kyowakirin.co.jp/kayumi/
東京医科大学病院 お薬のしおり
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/yakuzai/data/138.pdf