「食べても食べてもお腹いっぱいにならない…」
この症状の原因を、お医者さんに聞きました。
隠れた病気の可能性についても、併せて解説します。
病院に行く目安や、受診すべき診療科をチェックしましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?食べても食べてもお腹がいっぱいにならない…
空腹感は、脳や体の状態に多くの影響を受けて発生するため、単純に食べた分だけ満たされるというものではありません。
不規則な生活習慣やちょっとした体調の変化によって、満腹感が得られないこともあります。
よくある原因としては
- ストレス
- 生理
などが挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
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2022-07-27
「食後4時間しかってないけど、もうお腹が空いた…」
食後すぐ空腹になってしまう原因について、お医者さんに聞いてみました。
異常な空腹感には、糖尿病などの危険な病気も考えられます。
症状に心当たりがないか、チェックしてみましょう。
食後3~4時間でもう空腹…早すぎ?
ご飯を食べて3~4時間経つと、お腹が空いてしまいます…。
これって早すぎますか?体に何か問題があるんじゃないかと、心配です。
食後3~4時間で空腹を覚える際、あまり心配は要りません。
胃での消化は、4時間程度を要するため、一定の時間を経てから空腹を感じるならば、ごく一般的です。
ただし、食事を十分にとっているにもかかわらず、食後3~4時間で強い空腹を覚える際には注意が必要です。
「糖質の多い食べ物」を一気に食べた
睡眠不足
などの原因が考えられます。
空腹の状態で「糖質の多い食べ物」を一気に食べると、血糖値が急上昇します。
その影響で「インスリン」が大量に分泌されると、逆に血糖値が急激に低下して、強い空腹感を引き起こします。
また、睡眠不足が続くと、「食欲を抑えるホルモン」の分泌が抑えられます。
さらに「食欲を増加させるホルモン」の分泌が増えるため、空腹を感じやすくなります。
空腹だけどご飯には早い「我慢する?食べた方がいい?」
この場合は、間食をとった方がよいでしょう。
空腹感があるときは、エネルギーが不足している可能性が高いです。
間食には、糖質が少ない食べ物をおすすめします。
おすすめの間食
無糖ヨーグルト
ナッツ
避けたい間食
ケーキ
和菓子
「体重が減っている」場合は、糖尿病の疑いアリ
糖尿病になると、体が必要とする栄養分が尿で排出されてしまいます。
そのため、体が栄養分を求めて「強い空腹」を感じやすくなります。
糖尿病は、初期だと症状を自覚することはほとんどありません。
症状が目立っている場合、病気の進行が疑われるので要注意です。
糖尿病の症状チェック
空腹感があってよく食べるが、体重は減少している
口が渇く
水分摂取量が増える
トイレの回数が増える
倦怠感が続く
手のしびれ・痛み
足がつりやすい
目のかすみ
糖尿病の放置は禁物
糖尿病は、血糖値をコントロールできなくなり、高血糖状態が続く病気です。
この状態が続くと血管などにダメージが加わり、
心筋梗塞
脳卒中
腎不全
などの発症リスクが上昇します。
「糖尿病かもしれない」と思うときは、内科で診てもらうようにしましょう。
特に健康診断で引っかかったことのある人は、早急の受診をおすすめします。
内科を探す
「異常な空腹感」は、内科の医師に相談を
異常な空腹感が続くときは、一度内科で受診して、病気の有無を確認してもらいましょう。
糖尿病などの病気が隠れていた場合、早めに治療を開始すると悪化を防ぎやすくなります。
受診時に伝えるとよいこと
症状が出現した時期
症状が出現するタイミングや時間
出現する症状
症状が続いている期間
既往歴
使用中の薬剤の有無
上記について説明できると、診察がスムーズに進むと考えられます。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター ホルモンの病気と糖尿病
難病情報センター 内分泌疾患|多発性内分泌腫瘍症
日本糖尿病協会 糖尿病知っとんね
三島市医師会 糖尿病
一般社団法人 日本肝胆膵外科学会 膵臓がん
よくある原因① ストレス
過度のストレスによって、体が通常の感覚を失うと、満腹を感じにくくなる場合があります。
また、ストレスで過剰に食べる癖がついてしまい、満腹感を振り切ってまで食べないと満足できなくなる人もいます。
ストレスで起こる症状
- 集中力の低下
- 疲れやすい
- 肩こり、首こり
- 頭痛、めまい
- 吐き気、胃もたれ
よくある原因② 生理
生理に伴うホルモンバランスの変化で、満腹を感じにくくなる場合があります。
生理前は、優位の女性ホルモンが「エストロゲン」から「プロゲステロン」に変わります。
プロゲステロンは、妊娠して赤ちゃんを育てるために必要なホルモンですが、空腹を感じやすくなる作用もあります。
そのため、特に生理前に食べ過ぎてしまう人が多いです。
いくら食べても満たされないときの対処法
対処法① 睡眠時間をしっかり確保する
たっぷり睡眠や休息を取ると、ストレスが減り、通常の量の食事で満足するようになります。
また、質の良い睡眠も大切です。
夕食は、就寝の3時間前に終えるようにしましょう。
眠る前にはスマートフォンやPC、テレビの使用を控え、代わりに本や雑誌を読むと、副交感神経が優位になって睡眠の準備を行います。
朝起きたら、カーテンを開けて朝日を浴び、スッキリと目を覚ましましょう。
朝ごはんを食べて交感神経を働かせると、自律神経が整い、ストレス症状が軽減します。
対処法② よく噛んで食事をとる
食事をよく噛むと満腹中枢が働くため、「お腹がいっぱいだ」というサインが脳に送られやすくなります。
固いものや野菜、歯ごたえのあるものをメニューに取り入れてください。
スープや柔らかいものは満腹感を感じにくいため、ほどほどにしましょう。
満腹にならないのは「病気サイン」かも…
食べても空腹感が満たされない場合、
などの病気が隠れているケースもあります。
<過食性障害>
摂食障害の1つで、食べ過ぎて気持ち悪くなるくらいまで食べる、早いペースで食べるなど、明らかにほかの人よりも多く食べすぎてしまう状態で、自分で食事のコントロールが難しくなってしまい、肥満の傾向にあります。
また、似ているものとして神経性過食症がありますが、この場合は食べ過ぎたり、食べ過ぎたものを吐き出したりを繰り返す病気もあります。
両者ともストレスが要因とされていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
<バセドウ病>
甲状腺機能が亢進し、甲状腺ホルモンの分泌が高まって代謝が高くなるため食欲も増進します。
食べても太りにくいのが特徴ですが、消費エネルギー以上に食べ続ければ太ります。
こんなときは病院へ
- 週1回以上過食を続けているのが3ヶ月続いている
- 食べ過ぎた後、嘔吐や下剤などを使って排泄している
- 明らかに食べ過ぎているのに体重が増えない
- 日常生活に支障がでている
といった症状があるときは、医療機関を受診しましょう。
病気が隠れていた場合、悪化すると重い合併症を起こしたり、手術が必要になるケースもあります。
負担の少ない治療を避けられるよう、早めの受診をおすすめします。
何科で受診すればいい?
食べてもお腹いっぱいにならない症状は、まず内科で相談しましょう。
内科を受診すると、検査・診察によって体に異常がないか調べてもらえます。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-09-28
夜中に、どうしても食べ過ぎてしまう…。
これって夜食症候群?
「夜食症候群」の主な症状をお医者さんに聞きました。
症状リストをチェックして、当てはまるものがないか確認しましょう。
普段の生活で実践したい改善策や、病院を受診する目安も解説します。
夜食症候群の症状チェック
夕食後に大量に食べてしまう
夕食後の過食を何日も続けている
夜に時間があると、つい何か口に入れてしまう
意識しないうちに大量に食べている
夜の過食を自分で止められない
不眠気味
食べると落ち着き、眠れることがある
朝は食欲が出ない
夕方から気分が落ちる
上記に2~3つ当てはまると、「夜食症候群」の可能性があります。
特に、日中には「夜は食べないようにしよう」と思っているにもかかわらず、夜になると食べるのを止められないスパイラルに陥っている人は、夜食症候群の疑いが強いです。
健康な人であれば、1~2日そのような食生活を送っても、自然に元に戻すことが可能です。
しかし、夜食症候群に陥ってしまうと悪循環を断ち切ることが難しく、夜に食べることをやめられずに毎日続けてしまいます。
夜食症候群ってどんな病気?
夜食症候群とは、摂食障害の一種です。
ストレスや疲労の蓄積、自律神経・ホルモンバランスの乱れなどが影響して、夕食後の夜にたくさん食べてしまいます。
朝は胃もたれから食欲がなくなり、食事時間が徐々に遅くなっていきます。
夜間になると、お腹がいっぱいになった時の感覚を思い出して、また食べてしまいます。
このような状況を続けていると、質のいい睡眠がとれない、深夜まで起きているという日が多くなり、不眠気味になります。
不眠が続くと食欲を抑えてくれるホルモンが出にくくなり、食べ過ぎてしまうことが多くなり、悪循環から抜け出せなくなります。
夜食症候群になる原因
夜食症候群の発症の原因は人それぞれですが、ストレス・疲労過多、睡眠不足などにより、発症しやすいです。
ストレスや疲労、不眠などで不健康な状態だと、食欲をコントロールするホルモンの分泌が少なくなり、食べ過ぎてしまうことが多くなります。
夜食症候群になりやすい人の特徴
ストレス・疲労が溜まっている
ストレスを発散する方法を持っていない
イライラしている
食事をよく噛まないで食べる
睡眠時間が短い
寝酒をする癖があり、夜におつまみを食べてしまう
日中体をあまり動かさない(運動不足)
生理前のPMSが強い
イライラやストレスを「食べること」で解消しようとする傾向がある人は、夜食症候群になるリスクが高いです。
また、日中に体を動かすことが少ない人は、眠気が起きづらいので夜更かしになりやすく、その結果、夜食症候群につながる可能性が高くなると考えられます。
放置しているとうつ病や糖尿病のリスクも…
「夕食後にたくさん食べてしまう」状態を放置していると、肥満・糖尿病・高血圧症・脂質異常症・うつ病などの病気の発症リスクが高まります。
精神面の不調も起こしやすいです。
胃腸に負担をかけて眠るので、眠りの質が低下することにより、
集中力が低下する
怒りっぽくなる
イライラしやすくなる
などのリスクがあります。
夜中の過食を止める!自分でできる改善方法
夜中の過食を止めるには、生活リズムを整えて、ストレスや疲労を溜め込まないことが基本です。
そのために、普段から以下のことを実践しましょう。
早寝・早起きを心がける
朝日を浴びる
朝食・昼食をしっかり食べる
日中に適度な運動を行う
改善策① 早寝・早起きを心がける
夜更かしをせず、早寝・早起きを心がけましょう。
睡眠時間は6〜8時間を目安にして、できるだけ起床時間・就寝時間が毎日一定になるよう心がけてください。
夜中に起きていると、つい食べてしまうことがあるので、早い時間に寝てしまうことをおすすめします(軽い夕食をとった後2~3時間程度空けてから眠りましょう)。
なお、ストレス・疲労を溜め込まないためには、質のよい睡眠が大切です。
夜にぐっすりと眠れるよう、以下のことも意識しましょう。
“深い眠り”を得るためのポイント
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は11時(遅くとも12時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
夕食後にストレッチする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
改善策② 朝日を浴びる
過食や寝不足が原因で、「朝起きてもだるい」「体が動かない」という人は、朝日を浴びましょう。
目や体が日の光をとり込むと、交感神経が目覚めて体が起きてくれます。
朝日を浴びながら、ストレッチや軽い運動をするのもおすすめです。
血流が良くなり、さらに目覚めが良くなります。
体が目覚めてくれると、朝から活動的になり、徐々に朝食も食べられるようになっていきます。
朝食を食べて、朝方に戻していき、夜食を食べる癖をなくしましょう。
改善策③ 朝食・昼食をしっかり食べる
食事は、日中の活動的な時間にしっかりとりましょう。
朝・昼に食事の比重を戻すことで、夜食を食べてしまう生活を改善します。
朝・昼は、すぐにエネルギーになる炭水化物・糖質を多少食べ過ぎても問題ありません。
一方で、夕食は眠る前の食事なので、重いものを食べると消化に時間がかかり、朝の胃もたれにつながります。
夕食は糖質・油分のとり過ぎを避け、野菜・タンパク質などを中心にしましょう。
夜のタンパク質は、脂質が低い「鶏肉」がおすすめです。
改善策④ 適度な運動を日中に行う
日中や夕食前に、
ジョギング
散歩
ヨガ
筋トレ
などの運動をしてみましょう。
体を動かすことは、ストレスの発散につながり、夜食の食べ過ぎを防止します。
また、運動は睡眠にも良い影響を与えます。
適度に体を動かしていると、日中に交感神経が働き、夜は副交感神経に切り替わりやすくなります。
副交感神経が強く働くと、眠くなりやすくなり、夜更かしの防止につながります。
なお、眠る直前に激しく体を動かすと体が目覚めてしまうので、日中や夕食前の運動をおすすめします。
こんな行動はNG!
夜更かし
寝酒
朝遅くまで寝る
上記の行動はおすすめしません。
夜更かしや寝酒は、深夜の“どか食い”につながりやすいです。
また、朝遅く起きると、昼夜逆転生活になりやすく、自律神経が乱れやすくなり、過食につながります。
病院で相談する目安
自分ではやめたいと思っているのに、深夜の過食を止められない状態が何日も続いている場合、症状が深刻化している可能性が高いです。
病院で相談してみましょう。
夜食症候群の場合は、「心療内科」または「精神科」に相談しましょう。
病院では、問診で症状の聞き取りなどを行い、夜食症候群になっているかどうかを総合的に判断します。
現時点で体に問題が生じていなくても、不安がある場合は受診して構いません。
「将来の病気が心配」など、健康に意識を向けられている人は、改善しやすいです。
病院ではどんな治療をするの?
夜食症候群の治療は、心理療法・薬物療法が中心です。
栄養指導を行うケースもあります。
ストレスが原因と考えられる場合は、症状を改善するために、食事以外のストレス解消方法を見つけていくことが重要です。
そのため、心理療法の中でも「認知行動療法」がメインとなります。
医師や公認心理士のもとで、ものの受け取り方・考え方に働きかけて、ストレスを「食べること」によって発散させてしまう行動パターンの見直しを図ります。
また、うつ病など他の病気を併発している場合には、合わせて治療を行います。
心療内科を探す
精神科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 摂食障害