「体が小刻みに震えるのは、なぜ?」
体の震えは、問題のないケースもあり、震えの原因が病気であるとは限りません。
ただし、本態性振戦やパーキンソン病などの病気も考えられます。
「病院に行く目安」や、受診すべき「診療科」もあわせて紹介します。
監修者
経歴
平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
体が小刻みに震えるのは「これって病気のせい?」
震えだけで病気を判断することはできません。
例えば、なんらかの病気によって脳に異常が起こっていると、体が小刻みに震えることがあります。
その他にも、自律神経の乱れによって生じるケースもあります。
「私は大丈夫?それとも病気?」どう見分けるか
以下に当てはまる方は、特に問題はないと考えられます。
- ストレスや疲れ、眠気があるときの震え
- 不安や恐怖、緊張を感じたときの震え
- 寒さを感じるときの震え
これらは誰にでも起こる「生理的な震え」です。
ほかに体の異常が見られないのであれば、一旦様子を見てみましょう。
こんな症状は病気を疑いましょう
震えだけでなく、
といった症状を伴うときは、病気を疑う必要があります。
病気が隠れていた場合、悪化すると歩行に支障が起こるケースもあります。
心当たりのある方は、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
体が小刻みに震えるときは、脳神経内科を受診してください。
病気が原因となっているケースも考えられるため、気になる場合は早めの受診をおすすめします。
医療機関を受診すると、診察を検査によって震えの原因を調べてもらえます。
病気が発見された場合は、進行を遅らせるための治療も行えます。
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考えられる2つの病気
体が小刻みに震える病気として、
- 本態性振戦
- パーキンソン病
などが挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
※稀にその他疾患により、本能性振戦の症状と似た震えが出ることもあります。心配な場合はかかりつけ医、または内科などにご相談ください。
病気① 本態性振戦
体の小刻みに震える場合、本態性振戦の可能性も考えられます。
この病気は、震え以外に症状が出ることはありません。
本能性振戦は65歳以上の人に発症しやすい傾向があります。
また、加齢とともに症状が悪くなるケースも見られます。
発症には遺伝も関わっていると言われており、どの年齢でも発症する可能性はあります。
震えが出やすいタイミング
- コップを持ち上げるとき
- ボタンを押すなどの動作
- 重力に対して腕や手を維持する姿勢のとき
本態性振戦の原因
発症の原因はよくわかっていません。
なんらかの原因によって、小脳や視床、脳幹など、手足の動きに関係する脳の一部に異常が起こり、震えが生じると考えられています。
自分でできる対処法は?
十分な睡眠をとり、ストレスをため込まないようにしましょう。
リラックスすることで、症状が軽減しやすくなります。
ただし、根本的な改善を目指すのであれば、医療機関での治療が必要です。
病院は何科?
本態性振戦は、脳神経内科で治療を受けられます。
医療機関では、交感神経に働きかけるβブロッカーや抗てんかん薬、精神安定剤などの薬を使って治療します。
薬物療法でも改善しない場合は、震えに関与している脳のエリアに電気で刺激を与える“脳深部刺激療法”を行うこともあります。
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病気② パーキンソン病
安静時に震えが生じる場合は、パーキンソン病が疑われます。
この病気になると、体の運動を上手く調節できなくなり、歩行にも支障をきたします。
50歳以上の人に発症することが多く、年齢の上昇とともに発症リスクが上昇していきます。
なお、発症には食事の内容や地域差もなく、特別な原因となるものはないといわれています。
症状の特徴
- 手を膝に置いているときの震え
- 歩くのが遅くなる
- 小刻みに歩くようになる
- 動きが遅くなる
- 便秘
- 気分の落ち込み
- 幻覚を見る
パーキンソン病の原因
脳から筋肉へと運動の調節を伝える“ドパミン”という神経細胞が減ることで発症します。
ただし、ドパミンが減る原因は、未だよく分かっていません。
近年では、神経細胞の中に異常なタンパク質である“αシヌクレイン”が蓄積して、ドパミンが減るのではないかと考えられています。
自分でできる対処法は?
パーキンソン病には、ご自身でできる対処法はありません。
薬を使った治療が必要であるため、早めに医療機関を受診してください。
悪化すると運動機能が大きく低下し、生活に支障が出るケースもあります。
病院は何科?
パーキンソン病は、脳神経内科で治療を受けられます。
パーキンソン病と診断した場合、症状や年齢に合わせて、ドパミンを補う薬を使用します。
薬での治療が難しい場合は、脳のドパミンに関係する部分に電気で刺激を与える“脳深部刺激療法”を行うことがあります。
また、運動機能を維持するために、治療と併せてリハビリテーションを行うことも大切です。
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※稀にその他疾患により、本能性振戦の症状と似た震えが出ることもあります。心配な場合はかかりつけ医、または内科などにご相談ください。
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2021-06-18
「体がビクッとする」
「これって病気?」
体がビクッとする症状について、お医者さんに聞きました。
考えられる原因や、早急に病院を受診すべき場合も解説します。
体がビクッとなるのは病気?ストレス?
眠っているときや、1日の中で、数回ビクッとなる程度であれば、疲れによる筋肉の収縮なので通常、病気などではありません。
筋肉疲労などの後には、筋肉が萎縮してビクッとなる事があります。
ただし、体を使った後でもないのに、日に、何度も繰り返す場合は、要注意です。
疲れなども無いのに何度も「体がビクッとなる」場合は、何らかの病気の可能性が考えられるケースもあります。
病院は何科?
「体がビクッとなる」場合は、脳神経内科、脳神経外科を受診しましょう。
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考えられる2つの病気
体がビクッとなる病気として
頭部外傷
ハンチントン病
が考えられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
病気① 頭部外傷
頭部外傷により、脳の機能障害を起こしている可能性があります。
事故や転倒・転落、暴行、などで頭部を強く打ち付けると発症することがあります。
頭部外傷による脳の機能障害では、自分では意識していないときに体が動きます。
特に、顔や手足などがビクッとすることが多いです。
ボクシングなどの頭を打つスポーツをしている人にも発症します。
頭を打った後には、体の変化に注意してください。
こんな症状もでるかも!
頭部外傷は、他にも次のような症状が現れます。
頭痛
めまい
ふらつき
嘔吐
吐き気
自分でできる対処法はある?
頭部外傷による体のビクつきは、自分でできる対処法は特にありません。自己判断はせずに医療機関を受診しましょう。
また、脳出血、脳梗塞が原因となっている可能性もあるので注意が必要です。
特に、
急なビクつき
ビクつきが1日に何度も起きる
吐き気
頭痛
などがある場合は、早急に医療機関を受診してください。
「頭部外傷」の症状がある場合は、脳神経外科・脳神経内科を受診しましょう。
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病気② ハンチントン病
ハンチントン病により、脳の動作をつかさどる部分に変性が起きていることで、ビクッとした動き(引きつり)・痙攣を発症している可能性があります。
ハンチントン病は、特に前触れなく、急に体が動き、同じ場所の痙攣を繰り返すこともあります。特に、顔、手足、体幹などに起こります。
ハンチントン病は、遺伝性の病気です。
遺伝が原因となり、約50パーセントの確率で発症します。
男女差はほとんど無く、発症時期は、様々で30代からの場合もあれば小児期や老齢の場合もあります。
こんな症状もでるかも!
ハンチントン病は、他にも次のような症状が現れます。
しかめ面
腕や足などが弾む・弾むように歩く
瞬きが増える
イライラする
怒りやすくなる
衝動的になる
徘徊
鬱症状
自分でできる対処法はある?
自分でできる対処法は特にありません。医療機関を受診して検査を受けましょう。
「ハンチントン病」の症状がある場合は、脳神経内科を受診しましょう。
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放置はNG!病気を疑う場合は必ず病院へ
「頭部外傷」「遺伝性のハンチントン病」ともに、早期治療が必要です。放置すれば、病気の進行によって死期が早まることもあります。
また、体のビクつきには、自律神経が関与していることもあります。
疲れやストレスが溜まっている
倦怠感が強く体を動かせない
更年期の時期などにビクビクと動く
ことがある場合は、自律神経失調症の可能性も考えられます。
病気が疑える場合や少しでも心配な場合は、早めに医療機関を受診をしましょう。
病院は何科?
「頭部外傷」の症状がある場合は、脳神経外科、脳神経内科を受診しましょう。
「ハンチントン病」の症状がある場合は、脳神経内科を受診しましょう。
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▼参考
MSDマニュアル ハンチントン病
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2020-12-16
「全身の震えの原因は、もしかして病気…?」
体の震えが起こる病気について、お医者さん聞きました。
当てはまる症状がないか、チェックしてみましょう。
全身が震えるのは病気のせい?
寒くないのに震えている
症状を止められない
といった場合は、病気による震えも考えられます。
病院に行く目安
全身の震えが2日以上続く場合は、病院を受診してください。
日常生活に支障がある場合はすぐに受診しましょう。
受診するのは何科?
まずは内科、脳神経内科を受診しましょう。
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考えられる3つの病気
全身が震える症状がある場合、
本態性振戦(ほんたいせいしんせん)
パーキンソン病
バセドウ病
の可能性があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
病気① 本態性振戦(ほんたいせいしんせん)
交感神経の過剰な働きによって、震えが起こる病気です。
病気が進行すると震えが多少強くなりますが、麻痺することはありません。
震え以外に症状がないのも特徴です。
体の力を抜くと震えは起こりません。緊張や興奮にともなって、症状が強くなります。
本態性振戦になりやすい人
40歳以上の人に多く発症します。
主な症状
手が震える(指先や腕)
声が震える
頭が横向きに揺れる
文字がうまく書けない
自分でできる対処法は?
震えが気になる場合には、受診が必要です。
病院では、症状の改善のために投薬治療を行っています。
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病気② パーキンソン病
運動機能が少しずつ失われていく病気です。
脳の神経伝達物質が減少することで発症します。
全身の震えも症状の一つです。何もしていないときに震えが起こります。
眠っているときは震えません。
パーキンソン病になりやすい人
65歳以上の人に多く発症します。
主な症状
全身の震え
歩くときに足が出にくい
転倒しやすい
素早い行動ができない
話し方に抑揚がなくなる
膝や肩、指などの痛み
顔の筋肉がこわばる
方向転換ができない
自分でできる対処法は?
病院で医師に相談しましょう。
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病気③ バセドウ病
バセドウ病は、全身の新陳代謝が活発になりすぎる病気です。
症状の一つに手足の震えがあり、疲労を感じるのが特徴です。
バセドウ病になりやすい人
女性に多く、妊娠・出産を機に発症するケースもあります。
症状は徐々に出るのではなく、突然発症します。
また、ストレスが多い人も発症リスクが高まります。
主な症状
長時間の手足の震え
体重減少
下痢
疲労感
食欲増進
発汗
動悸
眼球が出る
イライラして落ち着かない
月経不順
自分でできる対処法は?
バセドウ病は、病院での治療が必要です。
症状に心当たりがある場合は、内分泌内科を受診しましょう。
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▼参考
日本臨床内科医会 本態性振戦
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。