「最近、音に敏感になった…」
「聴覚過敏が起こるのはなぜ?」
ストレスやうつ病が原因の可能性があります。
対処法や考えられる病気を医師が解説します。
病院での治療が必要なケースもあるので要注意です。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
音に敏感になるのは病気サイン?
音に敏感になる症状(聴覚過敏)が、耳や心の病気のサインとなっているケースもあります。
ただし、ストレスや疲労による一時的な症状の可能性もあるため、一概に病気であるとは言い切れません。
この症状は大丈夫?病院行くべき?
など、疲労やストレスに心当たりはありませんか?
他に不調がない場合は、しっかり休息を取りつつ一旦様子を見てみましょう。
しばらく様子を見て、症状が落ち着いてくるようであれば、問題ありません。
ただし、こんな症状は病院へ!
聴覚過敏に伴って
- めまいがする
- 音が聞こえにくい
- 体調不良が続いている
という場合は、耳や心の病気を発症している可能性があります。
早急に医療機関で相談してください。
耳鼻いんこう科を探す
音に敏感になる2つの病気
音に敏感になるのは、
といった原因が考えられます。
病気① うつ病
うつ病になると自律神経のバランスが乱れるため、音に敏感になることがあります。
うつ病の「症状」
- 気分が重い
- 何をしても楽しくない、興味がわかない
- 眠れない、もしくは一日中眠い
- イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
- 自分を責め、自分には価値がないと感じる
- 思考力が落ち、反応が遅くなる
- 涙もろくなる
- 食欲がなくなる
- 体がだるく、疲れやすい
- 頭痛や肩こり、めまいがある
- 動悸がする
- 胃の不快感がある
- 便秘がちになる
- 口が渇く
どんな人に多い?
10代半〜30代までの女性が発症しやすいです。
妊婦・産後の女性・家族にうつ病の人がいる人はなりやすい傾向にあります。
うつ病の発症には、
- 遺伝的要因
- つらい出来事(特に喪失体験)
- 特定の薬の副作用
- ホルモンバランスの変化
などが関係していると考えられています。
自分でできる対処法は?
応急的には
- 大きな音が鳴る環境を避ける
- 耳栓を使って音を遮断する
といった対処が行えます。
残念ながら、うつ病による聴覚過敏を自分で対処することは困難です。
はやめに医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
まずは耳鼻いんこう科で相談し、耳に問題がないか調べてもらいましょう。
うつ病が原因の場合は、心療内科や精神科での治療が必要になります。
うつ病の治療を受けずに放置すると、半年ほど症状が続き、2年以上続くケースもあります。
病院で治療すると3〜6ヶ月で回復するケースが多いです。
(しかし、約6割が再発し、その多くは、回復後2年以内に再発すると言われます。)
重症化すると入院治療を行わなくてはならない場合もあるので、医療機関を受診しましょう。
病院での治療方法
- 軽度のうつ病…精神療法や支援(頻繁な受診と指導など)をします。
- 中等度から重度のうつ病…薬物療法・精神療法・電気けいれん療法を行います。
- 季節性うつ病…光療法を用います。
精神療法
不安な気持ちが生まれる原因や思考等について、医師や心理士などと一緒に理解していく治療方法で認知療法や対人関係療法などがあります。
薬物療法
「抗不安薬」によって不安な気持ちを緩和させたり、「抗うつ薬」でセロトニンを調整したり、時には睡眠薬などを使います。
電気けいれん療法
頭部を電気で刺激し、脳のけいれんを誘発します。
精神疾患によって障害を受けた脳機能に回復を促す治療法です。
光療法
毎朝、高照度光器具をつかい、2500ルクス以上の光を浴びる治療方法です。
体内時計を整えることができ、適した睡眠時間に矯正します。
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2021-02-19
聴覚過敏はうつ病のサイン…?
聴覚過敏とうつ病の関係について、お医者さんに詳しく聞きました。
「自分で対処する方法はある?」「病院へ行くべき目安は?」
やってはいけないNG行動についてもご紹介します。
「聴覚過敏」と「うつ病」の関係
うつ病になると自律神経のバランスが乱れ
音や声が気になる
音や声をうるさく感じる
耳鳴りがする
といった聴覚過敏の症状が起こることがあります。
その他にも、耳の痛み・頭痛・首の違和感・めまいなどの症状が生じることもあります。
うつ病に聴覚過敏、どう対処する?
応急的な対応としては、
なるべく大きな音のある場所を避ける
音の刺激がない静かな場所で休む
耳栓や防音保護具(イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン)を活用する
といったことがあげられます。
ただし、耳栓や防音保護具を長時間使用すると、音量の認知機能が悪化する可能性があります。緊急避難的に使用してください。
聴覚過敏を「根本的に治したい」
うつ病による聴覚過敏を自分で改善することは難しいです。
根本的に治すには、病院で治療を受ける必要があります。
早めの受診をおすすめする理由
早めに病院で検査を受けることで、聴覚過敏を改善することができます。
うつ病である場合、重症化すると入院治療を行わなくてはならないケースもあります。
聴覚過敏など気になる症状がある時は、速やかに医療機関を受診しましょう。
病院は、何科を受診する?
聴覚過敏を起こしている場合、まずは耳鼻いんこう科を受診しましょう。
聴覚過敏の原因がうつ病だとわかった場合は、精神科や心療内科の併科診療が必要になるケースもあります。
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どんな治療を受けるの?
病院治療の基本的な流れは
病状の説明
治療理論の説明
治療目標の設定
適切な音環境の提示
音響療法などの治療
の順番で行います。
具体的な治療方法としては
音響療法(音の感じ方に対する治療)
薬物治療(お薬で治療)
認知行動療法(行動・思考に対する治療)
などがあります。
ご自身の症状に合う治療方法を医師と相談しながら、行っていきましょう。
①音響療法
耳鳴りとは異なるノイズ音を流し、脳に耳鳴りの音を気にならなくさせる治療方法です。
半年から1年半程度で耳鳴りの改善を感じ、最終的に気にならなくなるケースもあります。
補聴器やサウンドジェネレータ(音源治療器)という器具を使い、耳鳴り再訓練療法(TRT療法)を行います。
最初は短時間の使用からスタートし、最終的には1日約6時間を目安に延長します。
耳鳴りや難聴を合併する場合、この方法は導入しやすいです。ただし、音声に対して恐怖感が生じている場合や強い痛みを誘発する場合は難しいです。
②薬物治療
不安を和らげる向精神薬や、憂鬱な気分などを改善する効果がある、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)のデュロキセチンを使用します。
③認知行動療法
ご自身の考え方や行動パターンを振り返り、患者自身が思考の偏りなどに気付いて、正していけるよう支援する方法です。
考え方や習慣を変えるために、医師と手段や目標を考えていきます。音響療法が難しいケースでは、重要な治療方法となります。
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▼参考
聴覚過敏の診断と治療
日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会 日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
病気② メニエール病
内耳の中のリンパ液が過剰に溜まり、聴覚障害が起こることで音に敏感になることがあります。
メニエール病の症状
- めまいがする
- 音が聞こえにくい
- 吐き気、嘔吐
- 耳の詰まり感がある
どんな人に多い?
30代〜50代の女性に多いです。
ストレスを抱えている人・不規則な生活を送っている人はなりやすい傾向にあります。
なお、内耳の中のリンパ液が過剰に溜まる原因は、今のところわかっていません。
自分でできる対処法は?
メニエール病は、自分で対処できない病気です。
早めに医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
メニエール病が疑われるときは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
病院での治療方法
医療機関では尿を出す薬を服用し、治療していきます。
難聴の症状が強くあらわれている場合には、ステロイドホルモンを併用することがあります。
すみやかに治療を行うためには、入院での治療が望ましいです。
早めに治療を開始すると1~2カ月で症状が落ち着くケースもありますが、再発することも多いです。
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メニエール病ってどんな病気?
どうしたら治るの?
メニエール病について、分かりやすくまとめました。
症状のセルフチェックや発症しやすい人の特徴も解説するので、メニエール病の可能性がある人は必見です。
メニエール病とは
メニエール病とは、耳の中にある「内耳」という平衡感覚を司る器官に、リンパ液が溜まっている状態です。
平衡感覚に異常が生じ、自分や周囲がぐるぐると回っているような「回転性のめまい」が起こります。
メニエール病の症状チェック
自分や周囲がぐるぐる回るようなめまい
めまいの長さが、「数十分〜数時間以上」
何度もめまいを繰り返す
耳鳴りがする
難聴発作(突然、耳が聞こえにくくなる)
耳の閉塞感
吐き気・嘔吐
上記の症状に当てはまる場合、メニエール病の可能性があります。
一旦治まっても再発することが多く、症状が繰り返しあらわれます。
▼参考
MSDマニュアル
メニエール病について
メニエール病の原因は?どんな人がなりやすい?
原因やきっかけは今のところわかっていませんが、疲労・ストレス・睡眠不足などで発症しやすいといわれています。
30〜50歳代の女性
自分をおさえ、熱心に仕事をする人
ストレスを溜め込みやすい人
忙しい生活をしている人
に多い傾向があります。
メニエール病を疑う場合の対処法
ゆっくり休養を取ることが大切ですが、まずは医療機関で原因を確認しましょう。
メニエール病は、治療しないと治らない病気です。
放置すると、最初は片方の耳のみだった症状が、もう一方の耳にも発症してしまう恐れがあります。
病院で受ける治療法
メニエール病は、薬を使って治療することが多いです。
浸透圧利尿薬・循環改善薬・抗不安薬などを使用します。
「内耳へ直に薬を投与する治療」や「手術療法」を行うこともあります。
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治るまでの期間は?
早期に治療を開始できれば、2週間程度で快方に向かう人も多いです。
※治療を受けても完全には治らないケースもあります。
早く治すためにはセルフケアも大切!
ストレスを溜めない
6~8時間の睡眠をとる
水分補給をする
上記3つを心がけましょう。
水を多く飲むことで、内耳の水はけがよくなると考えられています。
男性は1日2リットル、女性は1日1.5リットルほどの水分をとりましょう。
一度に大量に水分を補給するのではなく、こまめに水分をとることが大切です。
病院は何科?

音に敏感になる症状があらわれたときは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることで、症状を改善しやすくなります。
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2021-02-19
周囲の音がうるさくてイライラ…。どうしたらいいの?
音に過敏になってしまう原因と対処法について、お医者さんに聞きました。
聴覚過敏は、うつ病や自律神経失調症の可能性も考えられます。
ご自身の症状を確認し、改善につなげましょう。
なぜ?音に過敏でイライラする…
自律神経の乱れが原因で、聴覚過敏を引き起こしている可能性があります。
ストレスの多い生活や昼夜逆転の生活などで、自律神経は乱れます。
自律神経が乱れると交感神経が優位になり、アドレナリンが過剰に分泌されるため、聴覚過敏を引き起こします。
どう対処すればいい?
次の5つの対処法を実践してみましょう。
耳栓・イヤホン・イヤーマフなどを使用し、不快な音が耳に入るのを避けてください
好きな音楽を聴きましょう
自分なりのストレス発散方法を見つけましょう
栄養バランスの良い食事を摂りましょう
規則正しい生活を心がけてください
治らない場合は“病気サイン”かも
6つの対処法を行っても改善しない場合、自律神経失調症やうつ病の症状として、聴覚過敏が生じている可能性があります。
また、病気ではないですが、HSP(※)という繊細な気質を持っている人も聴覚過敏を発症しやすいです。
※HSP(Highly Sensitive Person)
生まれつき脳の扁桃体の働きが強く、脳内の神経が高ぶりやすい体質です。
思慮深い・刺激に敏感・人の気持ちに共感しやすい・感覚が敏感などの特徴があります。
病院に行く目安
次の症状に当てはまる場合、自律神経失調症やうつ病を発症している可能性が高いです。できるだけ早く病院に行って相談しましょう。
めまい、耳鳴りが頻繁にある
立ちくらみが頻繁にある
息苦しいことがある
胸が締めつけられる感じがする
心臓が急に早くなったり、脈拍が飛んだりする
夏でも手足が冷たい
手足がだるい時がある
顔だけ、もしくは手足だけ汗をかく
食欲不振や胸やけなど、胃の調子が悪いことが多い
下痢や便秘が頻繁にある、もしくは繰り返す
肩こりや腰痛がある
気候の変化に弱い
まぶしく感じることがある
たくさん寝ても、寝足りない
眠れなかったり、眠りすぎたりする
怖い夢を見る、もしくは金縛りにあう
朝起きた時に疲労感がある
咳が頻繁に出る
喉に違和感がある、呂律が回らない
気分が落ち込む
胸がザワザワする
今まで興味があったことや楽しいと感じたことが、そうでなくなった
自分を責めたり、価値がない人間だと思ったりする
自分の体を傷つけたり、死にたいと思ったりする
食欲や体重が減った、もしくは増えた
(体重減少の目安は、1ヵ月のうちに5% 以上)
行動が遅くなったり、焦りを感じたりする
疲れやすい
集中力が下がった
特に多く当てはまった場合は、一度受診するのが安心です。
受診するのは何科?
音に敏感になっている場合、まずは耳鼻いんこう科を受診しましょう。
自律神経失調症やうつ病の症状がある時は、精神科や心療内科を受診してもよいでしょう。
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重症化すると「入院治療」になることも
うつ病や自律神経失調症の場合、悪化すると日常生活に支障をきたす可能性があります。
特にうつ病は注意が必要で、重症化すれば入院治療を行わなくてはならないケースもあるからです。
聴覚過敏やうつ病などの症状に心当たりがある方は、一人で抱え込まずに医療機関を受診しましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。