インフルエンザの種類にはA型とB型が存在します。この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
「症状がつらいのはどっち?」「両方同時にかかることはあるの?」「同じ型に2回かかることは?」
こういった疑問にお答えします。
さらに、A型・B型に比べると、かなり症状の軽いC型も存在します。
それぞれのインフルエンザの特徴やワクチンについて詳しく説明します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
インフルエンザの種類|A型とB型の違い
A型インフルエンザ
インフルエンザの症状が著しいのが特徴です。
<A型インフルエンザの主な症状>
- 38度を超える高熱
- 頭痛
- 咳
- くしゃみ
- 悪寒
- 関節痛
- 筋肉痛 など
ひどくなると肺炎や脳症といった合併症を引き起こします。
通常人の体は、一度かかった病気に対しては抗体が作られますが、A型インフルエンザは毎年ウイルスが進化して形を変えているため、抗体で防ぐことができません。
そのため、毎年感染してしまう人も多いです。
水鳥、鶏、豚、馬などにも感染します。
動物から人に感染する?
動物から人への感染も報告されています。
しかし、食用の鶏肉や豚肉がインフルエンザウイルスに汚染されていても、正しい調理がされていれば、人へ感染したという科学的な証拠はこれまでありません。
※摂氏70度の温度で調理することで殺滅されます。
B型インフルエンザ
B型インフルエンザは、人と人との間で感染するウイルスです。
<インフルエンザB型の主な症状>
これらの症状の後に咳、くしゃみや鼻水といった症状が現れる場合が多いです。
発熱はするものの高熱にはならずに37度台の熱・下痢や腹痛が現れることもあります。
通常の感染性胃腸炎は、1~2日でほぼ快方に向かうことが多いですが、下痢や腹痛の症状は3日以上続くこともあります。
また、ウイルスが変化しにくいので一度抗体を取得すれば感染しにくくなります。
しかし、ウイルスは不定期に変化するので予防は必要です。
症状がつらいのはA型
38度以上の高熱が出ることや毎年進化して強固なウイルスとなっているという点から考えると、A型インフルエンザの症状は極めてつらいものだと言えます。
感染力や完治するまでの期間の差は?
A型は、ワクチンを接種しても新型ウイルスに変異して流行が広がり、鳥類なども影響して感染が拡大するという点から、感染力が強いと言えます。
感染期間や完治までの期間に大きな差はほとんどみられません。
症状が強い分、A型の方が多少完治までに時間が要することがあります。
C型の症状はかなり軽い
インフルエンザにはC型も存在します。
しかし、他の2種類に比べると症状は鼻水程度でかなり軽いです。
また、一度感染して抗体ができるとその抗体が生涯持続すると考えられています。
幼児が感染することが多いですが、大人も感染する可能性があります。
しかし、大人はほとんどの人がすでに抗体を持っています。
繰り返し感染しますが、感染に気がつく方も少なく、さらに、年齢とともに抗体価が増していきます。
A型とB型、同時にかかることも!
稀ですが、同時に感染してしまう人もいます。
しかし、A型は冬の前半(12月〜2月ごろまで)、B型は冬後半(2、3月〜)に流行る傾向があるため同時にかかる人は少数です。
同時にかかると通常より症状が重くなる
両方のウイルスの症状が出るため、通常より症状は重くなります。
特に、老人や子供、妊婦は注意が必要です。体の免疫力が弱く、重篤化する可能性があります。
免疫不全・喘息といった基礎疾患がある人も同様にインフルエンザが流行する前に予防接種を受けましょう。
もし、感染したとしても症状が軽く済みます。
同じ型に2回以上かかることもある
なぜ何度もかかるの?
同じ型でもウイルスが変異するため、前回かかったインフルエンザと異なれば免疫反応が起こりにくく、1シーズンに何度もかかることがあります。
特にA型は、B型に比べ変異しやすいので、複数回かかる恐れがあります。
1回のワクチンで3種類のインフルエンザの予防はできる?
現在のインフルエンザワクチンは4価といい、ワクチンに入っている病原体が4種類のものです。
入っているのは、A型2種類・B型2種類のワクチンでC型のワクチンは入っていません。
まとめ
インフルエンザの予防には、予防接種とウイルスを体に入れない手洗い・うがいの徹底です。
特に小さな子どもや老人、妊婦のいる家庭では、家族全員が感染予防をする必要があります。
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2022-02-28
「もしかしてインフルエンザ?」
「風邪かな、インフルエンザかな?」
インフルエンザの初期症状の特徴と、インフルエンザにかかったらとるべき対処法をお医者さんが解説します。
子どものインフルエンザの初期症状
インフルエンザにかかった場合、以下のような初期症状が出ることがあります。
<よくある初期症状>
発熱
頭痛
関節痛
倦怠感
咳・くしゃみ
鼻水
吐き気・嘔吐
下痢
インフルエンザと風邪の違い
「インフルエンザ」と「よくある風邪」の症状の違いは、いったいどういったことがあるのでしょうか?
インフルエンザ
風邪
症状
発熱、頭痛、咳、喉の痛み、鼻水、関節痛、倦怠感等
発熱、喉の痛み、鼻水、くしゃみ等
進行の早さ
急激に進行する
(A型は特に)
緩やかに進行するケースが多い
発熱
38度以上の高熱
微熱
または37度台の発熱
症状がでる体の部位
全身に症状が現れる
主に上気道炎症状喉(喉、鼻)
「インフルエンザ」と判断するポイント
38度以上の高熱が出る
激しい悪寒
強い倦怠感・疲労感
頭痛
関節痛
地域の学校、幼稚園、保育園、会社等でインフルエンザが流行しているかどうか
上記は目安なので、気になる症状がみられる場合は医療機関を受診してください。
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インフルエンザ初期の対処法
インフルエンザにかかったら、どう対処すればいいのか。インフルエンザ感染初期の過ごし方と自宅ケアの方法を解説します。
早く治すための過ごし方
安静にする。
睡眠を十分とる。
水分補給をこまめに行う。
高熱が出ている場合はお風呂に入らない。
食欲がある場合は、免疫力を高めるため食事を摂る。
部屋が乾燥しないように注意する。
家族にうつさない方法
家庭内パンデミックを防ぐために、以下のことを気をつけましょう。
手洗い、うがいをこまめに行う。
マスクを付ける。
手指をアルコールで消毒する。
感染者とは違う部屋で寝るようにする。
免疫力を高めるために、十分な栄養と睡眠をとる。
部屋の中は適度な湿度を保つようにする。
インフルエンザは自然治癒する?
インフルエンザを発症しても、症状が軽い場合は自然治癒するケースがあります。
検査のタイミング
(症状や病状にもよりますが)発熱などの症状が出てから12時間以上~48時間以内の受診が適しているといわれています。
インフルエンザが疑われる場合、迅速判定キット等を用いることで診断できます。
近年、迅速判定キットの性能が向上したため、以前より正確に診断できるようになったようですが、基本的には、インフルエンザの症状が現れてから12時間ほど経過していないと正確な診断ができない場合があります。
すぐに病院を受診した方がいい場合
以下のような症状がある場合は、すぐに時間外でも病院を受診してください。
息苦しそうにしている
水分を摂れない
呼びかけても反応が薄い
顔色が悪い
嘔吐や下痢が治まらない
排尿量が少ない
けいれん
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2022-02-28
1歳の子どものインフルエンザの予防接種のスケジュール(時期や間隔)や費用などを紹介します。
そもそも1歳児に予防接種は必要なのか、発熱や卵アレルギーの場合はどうすべきなのかも解説するので参考にしてくださいね。
1歳児に予防接種は必要?
1歳になったら、インフルエンザの予防接種を受けた方がいいのでしょうか?
乳幼児は、病気に対する免疫が未熟なため、インフルエンザ等の病気に感染すると、重症化(インフルエンザ脳症や肺炎など)したり、命の危機に晒されたりする恐れがあります。
そのため、病気を予防し、子どもの健康を守るという観点から、予防接種を受けることが推奨されています。
予防接種を受けるか受けないかは、それぞれの家庭により考えが異なるため一概には言えませんが、重症化のリスクも下げられる等を考慮したうえで決めるケースが多いです。
予防接種のスケジュール(時期・回数・間隔)
予防接種の時期や回数、2回目を受けるまでの間隔など解説します。
予防接種をうける時期
10月以降~12月前半までに2回の接種を終わらせておくのが望ましいです。
インフルエンザの流行期は、12月~4月頃で、ピークが1月~3月頃です。
予防接種の回数
生後6か月以上3歳未満の場合は、2回接種が推奨されています。
予防接種の間隔
接種の間隔は、2~4週間が目安ですが、免疫力を考慮すると4週間後が望ましいと考えられています。
2回目のタイミングを逃した場合
2回目接種のタイミングで子どもが発熱してしまい、予防接種に行けませんでした。もういちど最初から受けなおすべきですか?
接種間隔が4週間以上あいてしまっても、ワクチンの効力はあります。
1回目から受けなおす必要はないと考えられています。子どもの体調がよいときに予防接種を受けてください。
予防接種の料金
費用目安は、1回あたり3000円以上~4000円未満です。
※各医療機関により異なります。
※インフルエンザ予防接種は、健康保険適用外です。
予防接種の副反応
予防接種後は、どんな副反応がありますか。
インフルエンザ予防接種の副反応は、一般的に軽いと考えられています。
子どもも大人も、副反応に大差はありません。
<代表的な副反応の症状>
ワクチン接種部分の腫れ、発赤、痛み
発熱
頭痛
倦怠感
悪寒
アレルギー反応(湿疹、蕁麻疹、かゆみ)
ごく稀に、予防接種後30分以内に、アナフィラキシーショック(発疹、発赤、蕁麻疹、かゆみ、呼吸困難等)が起こるケースがあります。予防接種後30分は、急な副反応が生じる可能性があるので、医療機関やその付近で待機して、子どもの様子を観察しましょう。
発熱・風邪気味の場合は?
子どもが体調不良の場合、予防接種はどう判断したらいいのか解説します。
発熱中は受けられる?
予防接種時の注意事項には、37.5度以上の発熱時には受けられないと記されています。
しかしご自身での判断が困難な場合は、小児科等での相談をおすすめします。
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風邪ひき中は受けられる?
体温が37.4度以下で元気がある場合、多少の鼻水・せきが出ていても接種するケースが多いようです。
しかし、前日に38度以上の発熱があった場合や、かぜをひきやすい体質等、心配な場合は、医師に相談してから決めてください。
下痢中は受けられる?
子どもが下痢をしています。予防接種を受けても大丈夫でしょうか…?
少しの下痢程度であれば、予防接種を受けるケースが多いようです。
しかし、37.5度以上の発熱を伴う場合や、その他の症状も見られる場合には、医師にその旨を説明し、状態を確認してもらいましょう。
卵アレルギーの場合は?
子どもが卵アレルギーです。予防接種を受けられますか?
卵アレルギーの程度によりますが、ほぼ問題なく接種できることが多いです。
近年ワクチンの精製が高度になり、卵の卵白の残存成分がほとんどないためと考えられています。
ただし、重篤な卵アレルギーの場合は、稀にアレルギー反応が生じるケースがあるため、予防接種を受ける医療機関で相談してください。
他の予防接種も受ける場合
おたふく風邪やMRワクチン、水痘ワクチンなど、他のワクチンと同時に接種することはできますか?
同時接種の組み合わせや本数に制限はありません。
予防接種の同時接種の安全性は高いと考えられているため、デメリットは特にありません。
注意点としては、予防接種を受ける間隔を把握しておきましょう。
原則として、生ワクチン接種後は4週間(中27日)以上、不活化ワクチン接種後は1週間(中6日)以上間隔をあける必要があります。
予防接種後の生活で気をつけること
お風呂や保育園への登園など、日常生活で気をつけるポイントを解説します。
お風呂の入浴はOK?
予防接種の後、お風呂に入っても大丈夫でしょうか?
予防接種後の入浴は問題ありません。接種後2時間程度あけるようにしてください。
また、接種部位をこすり洗いしないでください。
保育園の登園はOK?
予防接種の後、保育園に登園させても大丈夫でしょうか?
体調や機嫌がよければ、保育園に登園させても大丈夫です。
ただし、予防接種後(接種後30分間は様子を観察する必要がある)保育園に登園する場合は、接種した医療機関の医師から注意事項を確認したうえで保育園にその旨を伝えてください。
※保育園によっては、予防接種後の登園は認めないところもあるため、事前に確認してください。
その他の注意点
<予防接種後に日常生活で気をつけること>
予防接種当日は激しい運動はしない。
接種後、1週間は副反応に注意して様子を観察する。
接種した部分に何らかの異常が見られる場合は、早急に医療機関を受診する。
▼参考
インフルエンザQ&A|厚生労働省
公益財団法人母子衛生研究会
予防接種Q&A |公益財団法人東京都医師会
<参考>
厚生労働省 インフルエンザQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html