「太股の内側がズキズキと痛い…」
その症状が何日も続く場合、「閉鎖神経痛」かもしれません。
どんな原因が考えられるのか、お医者さんに聞きました。
痛みの特徴や、病院を受診した方がよい症状を解説します。
監修者
経歴
平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
太腿の内側がズキズキ痛い…これ大丈夫?
一時的な筋肉痛だと思われる場合は、様子を見てもいいでしょう。しかし…
- 痛みが何日も続く(目安として3日以上)
- 市販の鎮痛薬を使用しても症状が改善されない
という場合は注意が必要です。
一度、病院(例:脳神経内科・整形外科・ペインクリニック内科など)での受診をおすすめします。
痛みが続く原因は「閉鎖神経痛」かも
神経痛の一種である閉鎖神経痛は、腰椎の上部から出ている閉鎖神経が、骨盤の下方の閉鎖孔と呼ばれる骨盤の穴に刺激・圧迫されることが原因で起こります。
こんな人がなりやすい
- 妊婦
- 骨盤腔内の手術を受けた人
- 乗馬による外傷
- 骨盤内の悪性腫脹、
- 閉鎖孔ヘルニアの人
閉鎖孔ヘルニア:坐骨と恥骨に囲まれた穴である閉鎖孔から、腸が飛び出してしまう病気
痛みの特徴
体を動かしたり、皮膚に触れたりするとヒリヒリ、チクチク、やけるように痛むことが多いです。
痛みの強さは個人差が大きく、チクチクと感じる程度からうずくような痛み、軽く触れただけでも痛む場合があります。
その他にも、鼠径部の痛み、太腿の内側の筋力低下やしびれなどの症状が見られます。
膝から下や膝関節の内側が痛むこともあります。
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2021-02-17
「太ももに針で刺すような痛みがある…」
「何も刺さってないのにチクチクする…」
その痛みの正体は、「神経痛」かもしれません。
なぜ痛むのか、お医者さんに詳しく聞きました。
太ももがチクチク痛むのはなぜ?
太ももがチクチク痛む場合、神経痛を発症している可能性があります。
神経痛の特徴
針で刺すような痛み
焼かれるような痛み
皮膚に触れたときの痛み
考えられる2つの原因
太ももがチクチク痛む場合、
閉鎖神経痛(太ももの内側が痛い)
外側太腿皮神経痛(太ももの外側が痛い)
などの原因が考えられます。
原因① 閉鎖神経痛(太ももの内側の痛み)
「閉鎖神経痛」を発症すると、太ももの内側から膝にかけてチクチク痛みます。
「閉鎖神経」は、腰椎から出ている神経で、太ももの内側の知覚に関係しています。
この神経が刺激や圧迫を受けたときに、痛みが起こります。
閉鎖神経痛の特徴
閉鎖神経痛を発症すると、
針で刺すような痛み
焼かれるような痛み
体を動かしたり、皮膚に触れたりすると痛む
しびれ
といった症状が、太ももや膝関節の内側などに現れます。
また、痛みの感じ方に個人差がある点も特徴です。
軽く触れただけでも痛む、市販の鎮痛薬で痛みが改善しない、というケースもあります。
閉鎖神経痛の原因
肥満
妊娠
骨盤腔内の手術
乗馬による外傷
骨盤内の病気(腫瘍、炎症など)
原因② 外側太腿皮神経痛(太ももの外側の痛み)
太ももの前と外側の皮膚へ走っている外側大腿皮神経が圧迫され傷むために、太ももがチクチクと痛みます。
きつい服や矯正下着などを無理に着用していると起こるリスクがあります。
外側太腿皮神経痛の特徴
痛みとともに、太ももに痺れがでます。
外側太腿皮神経痛の原因
神経を圧迫するようにコルセットを常時キツくしていたり、骨盤が後傾していたりすると、発症することがあります。
これはNG!間違ったケア方法
患部を冷やすのはNGです。体が冷えると、痛みを感じやすくなる可能性があります。
また、過度な運動(長距離の歩行など)も避けてください。
患部に負荷を与え、痛みが増す恐れがあるためです。
早く治すためにできること
ヨガの下半身をゆっくり伸ばすポーズがよいでしょう。
「上を向いた犬のポーズ」、「ガス抜きのポーズ」などがおすすめです。
▼上を向いた犬のポーズ
▼ガス抜きのポーズ
病院行くべき?受診するのは何科?
太ももの痛みが一時的なものであれば、あまり心配はありません。
ただし、痛みが3日以上改善しない場合には、悪化する恐れがあるため要注意です。
慢性的な痛みや痺れとなり、座っていても、動かしていなくても痛んだりし、日常生活に支障をきたします。
心当たりのある方は、早めに整形外科を受診しましょう。
受診時にお医者さんに伝えること
医師には
いつから痛いか
どんなときに痛くなるか
どの辺りが痛いか
どのように痛むのか
を伝えましょう。
病院では、どんな治療をするの?
まずは原因となっているものを除去します。
痛みに対しては、対症療法で鎮痛剤やブロック注射を行ったりします。
整形外科を探す
▼参考
一般社団法人 日本ペインクリニック学会 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版
MSDマニュアル家庭版 神経障害性疼痛
閉鎖神経痛はどう治す?

「閉鎖神経痛かな…」と思ったら、まずは痛みが引くまで安静にして過ごしましょう。
痛みが引いてきたら、ペインクリニック内科・整形外科・脳神経内科を受診してください。
ストレッチやマッサージをしてもいい?
痛みが軽い場合は、ストレッチをしてもよいでしょう。
2つのストレッチ方法を紹介するので、参考にしてみてくださいね。
脚の裏を伸ばすストレッチ

- 床に座り両脚を大きく開く
- 伸ばした足先に向かって、体を倒す
- 足の裏側が伸びるのを感じながら、10秒間キープ
※左右交互1セットとして、1日10回程度行ってください。
足が開脚できない場合は、片側の膝を曲げて行ってもかまいません。
股関節を伸ばすストレッチ

- 床に座り、両足の裏をくっつける
- 足の裏を、体の方に引き寄せる
- 床に膝をくっつけるようにして押し、筋肉を伸ばす
湿布を使ってもいい?
湿布をしても症状が改善されない可能性が高いので、あまりおすすめできません。
痛みが強い場合は無理をせず、安静にして楽な姿勢をとるようにしましょう。
やってはいけないこと
症状の悪化や痛みの感度が高まる可能性があるので
- 長距離を歩かない
- 重いものを持たない
- 体を冷やさない
- ストレスを溜めない
ことを心掛けてください。
受診する病院は何科?
数日たっても痛みが一向に改善しない場合、安静にしていても激しい痛みがある場合は、ペインクリニック内科・整形外科・脳神経内科などを受診しましょう。
ペインクリニック内科を探す
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2020-09-17
太ももの皮膚や太ももの内側がピリピリ痛い…。
何も刺さってないのにチクチクする…。
その痛みの正体は、「神経障害性疼痛」かもしれません。
傷や腫れがないのになぜ痛むのか、お医者さんに詳しく聞きました。
「太ももの皮膚がピリピリ痛い」時に考えられる原因4つ
外傷がないのに太ももの皮膚がピリピリ痛い時に考えられる原因は、
大腿外側皮神経痛
帯状疱疹(発疹前)
血行不良
神経障害性疼痛
の4つです
原因① 大腿外側皮神経痛
大腿外側皮神経痛は、太ももの外側を通る「外側大腿皮神経」という神経が圧迫されることで、皮膚にピリピリした痛みやしびれが起こる状態です。
太ももの外側を通る神経が圧迫されることで生じる痛みなので、「外側」にピリピリ感が出るのが特徴。
外傷がなくても発生し、神経が過敏になることで、触っただけで不快感が出ることがあります。
ピリピリ感の特徴
太ももの「外側」の皮膚がピリピリする
ジンジンとした灼熱感、しびれを伴う場合もある
触れるとピリピリ感が強まる
衣服の摩擦などでも不快感がある
動きや姿勢によって症状が変化する
大腿外側皮神経痛になる原因
太もも周辺の神経が圧迫されることで発症します。
長時間座る
締め付けが強い服装(スキニージーンズやベルト等)
体重増加、肥満
骨や骨盤のゆがみ、姿勢不良
など
なりやすい人
肥満傾向の人
妊娠中の女性
デスクワーク、運転手等
スキニージーンズやタイトな服をよく着る人
骨盤付近の神経が圧迫されやすくなるため、肥満の人や長時間座った体制になる仕事をしている人、きつめの服をよく着る人がなりやすいと考えられます。
原因② 帯状疱疹(発疹前)
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で起こる病気です。
症状が進むと水ぶくれや赤みが出ますが、初期症状の段階ではまだ見た目の変化はありません。そのため「外傷がないのに皮膚がピリピリする」と感じることがあります。
帯状疱疹の原因となるウイルスは、水ぼうそうのウイルスと同じです。
このウイルスは水ぼうそうの治癒後も神経節に潜伏しているため、普段は特に何もなくても、免疫力の低下などのきっかけで再活性化し、皮膚に症状を引き起こします。
これが帯状疱疹です。
帯状疱疹は水ぶくれや赤みの症状が出るのが一般的ですが、初期段階では目に見える症状がなく、皮膚がピリピリ、チクチクとだけする場合があります。
ピリピリ感の特徴
片側だけがピリピリと痛んだり、時々ズキッと走るような痛みが出ることがある
ジンジンとした灼熱感がある
数日後に痛みがある部分の皮膚に赤い発疹や水ぶくれが出てくる
触れると強い痛みを感じることが多い
帯状疱疹になる原因
水ぼうそうウイルスが神経に潜んでいる(水ぼうそうにかかったことがある人のみ)
免疫力の低下が引き金となり、ウイルスが再活性化する
なりやすい人
ストレスや過労が溜まっている人
病気の後などで免疫力が低下している人
加齢(50歳以上)
免疫力が低下している時に、ウイルスが再活性化することで発症する場合が多いです。
原因③ 血行不良
血行不良によって血流が滞り、太ももの末梢神経や筋肉がピリピリと異常な感覚になることがあります。
血行不良とは、血液が体の一部に十分に流れなくなり、酸素や栄養が行き渡らなくなる状態です。
血流が滞ることで老廃物が溜まりやすくなったり、神経や組織が一時的に酸素・栄養不足になることで神経が過敏になり、ピリピリとした異常な感覚が起こることがあります。
ピリピリ感の特徴
一時的なピリピリ感
体を動かすと改善することが多い
皮膚が冷たく感じる、むくみがある
太もも全体、その周りに広がることもある
触ると違和感が強くなることは少ない
マッサージで軽減する場合が多い
血行不良になる原因
長時間座るなど同じ姿勢が続く
寒さや冷え
運動不足
なりやすい人
長時間座りっぱなしの仕事をしている人
冷え性の人、常に寒い環境にいる人
運動不足、喫煙、栄養バランスが悪い生活をしている人
原因④ 神経障害性疼痛
何らかの原因で、神経や脊髄、脳が損傷を受けたり、機能障害になったりすると、神経応答が過敏になり、痛みが生じます。
この神経そのものの痛みの症状を「神経障害性疼痛」と言います。
腰椎から出ている閉鎖神経が圧迫されると、膝から太ももの内側にかけて痛むことがあります。
特に、「閉鎖孔ヘルニア」になると、この症状が起こることが多いです。
ピリピリ感の特徴
痛みがずっと続く、繰り返し痛む
刺すようなチクチクした痛み
焼けるような灼熱感
電気が走るようなピリピリ感
触るだけで強い痛みを感じる
衣服が触れただけでも強い痛みを感じる
神経障害性疼痛なる原因
神経障害性疼痛は神経そのものが傷ついたり、機能が異常を起こすことで発生します。
糖尿病性神経障害
ヘルニアや坐骨神経痛
帯状疱疹後神経痛
栄養失調による神経障害
脳卒中後遺症
乳房切除術後
神経梅毒
HIV脊髄症
椎間板ヘルニア
肋間神経痛
悪性腫瘍
脳腫瘍
腫瘍による神経圧迫
パーキンソン病
自己免疫性神経障害
など、さまざまなきっかけで発症します。
なりやすい人
糖尿病患者
帯状疱疹にかかった人(特に高齢者)
腰や背中の問題を抱える人(ヘルニア、坐骨神経痛)
神経にダメージを受けた人(手術や外傷後)
【対処法】太もものピリピリ感じをおさえるには?
太もものピリピリした感じを治したい時には、原因に応じた対処法をするのが望ましいでしょう。「神経圧迫」や「血行不良」の場合は、特に
軽いストレッチを行う
マッサージ
などで改善することが多いです。
原因ごとの主な対処法を詳しく説明します。
大腿外側皮神経痛など「神経圧迫」の対処法
服装の見直し
締め付けの強いジーンズや下着を避け、ゆったりした服を着る
姿勢改善
腰や太ももへの圧迫を減らすよう、姿勢を正す
休憩
長時間の座り仕事や運転中は定期的に立ち上がる
「血行不良」の対処法
姿勢を変える
長時間同じ姿勢でいる場合は、立ち上がったり、ストレッチを行う
軽い運動
ウォーキングや屈伸運動で血流を促進する
温める
太ももや全身を温める(カイロ、温かい飲み物、入浴など)
マッサージ
軽く揉んだり、さすったりして血流を良くする
「帯状疱疹」や「神経障害性疼痛」の対処法
「帯状疱疹」や「神経障害性疼痛」は専門医の受診が望ましいです。
帯状疱疹の場合は抗ウイルス薬、神経障害性疼痛の 場合は神経に特化した薬などを処方してもらえます。
帯状疱疹や神経障害性疼痛におすすめの市販薬
神経の圧迫や神経が一時的に過敏になった場合、痛みやピリピリ感を和らげるために、市販の鎮痛剤を応急処置として使用できます。
イブプロフェン
アセトアミノフェン
などの成分が入った鎮痛剤を選ぶのがおすすめです。
イブプロフェンが入っている市販薬の例
イブ シリーズ
バファリンプレミアム など
アセトアミノフェンが入っている市販薬の例
タイレノールA など
これはあくまでも応急処置です。
痛みがひどい場合には自己判断で市販薬に頼らず、絶対に病院を受診するようにしてください。
病院は何科?行く目安は?
痛みの原因が分らない時は、ペインクリニック内科を受診しましょう。
その他、皮膚に異常が現れている時は皮膚科、皮膚の内部の神経に違和感がある場合には神経内科を受診するのが望ましいです。
帯状疱疹など皮膚の異常の場合は、皮膚の赤みや水ぶくれなどの症状があることがあります。かゆみなどを感じたら皮膚科を受診しましょう。
その他、ピリピリ感とともにしびれや麻痺があったり、ピリピリとした症状が強くなったり、態勢を変えるたびに痛むようであれば、神経系の問題の可能性があります。
一度神経内科を受診してみるのがよいでしょう。
病院に行く目安は?
ピリピリ感が1週間以上続く場合
皮膚に発疹や赤みが出てきた場合
痛みや不快感が強くなってきた場合
しびれや麻痺、筋力の低下が伴う場合
などは、早めに病院を受診しましょう。
軽度であっても、ピリピリ感が長期間続く場合は神経に問題がある可能性があり、専門的な診察を受けることが重要です。
また、痛み以外に
睡眠障害
不安や抑うつ
食欲不振
などの症状がある場合、神経障害性疼痛の可能性があるため、一度医療機関を受診するといいでしょう。