太ももの皮膚や太ももの内側がピリピリ痛い…。
何も刺さってないのにチクチクする…。
その痛みの正体は、「神経障害性疼痛」かもしれません。
傷や腫れがないのになぜ痛むのか、お医者さんに詳しく聞きました。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
監修者
経歴
上智大学経済学部を卒業し、その後、内科を11年経験した皮膚科医。叶えたいことは決してあきらめない、大事と感じている事柄にはとことんこだわった診療がモットー。
「太ももの皮膚がピリピリ痛い」時に考えられる原因4つ
外傷がないのに太ももの皮膚がピリピリ痛い時に考えられる原因は、
- 大腿外側皮神経痛
- 帯状疱疹(発疹前)
- 血行不良
- 神経障害性疼痛
の4つです
原因① 大腿外側皮神経痛
大腿外側皮神経痛は、太ももの外側を通る「外側大腿皮神経」という神経が圧迫されることで、皮膚にピリピリした痛みやしびれが起こる状態です。
太ももの外側を通る神経が圧迫されることで生じる痛みなので、「外側」にピリピリ感が出るのが特徴。
外傷がなくても発生し、神経が過敏になることで、触っただけで不快感が出ることがあります。
ピリピリ感の特徴
- 太ももの「外側」の皮膚がピリピリする
- ジンジンとした灼熱感、しびれを伴う場合もある
- 触れるとピリピリ感が強まる
- 衣服の摩擦などでも不快感がある
- 動きや姿勢によって症状が変化する
大腿外側皮神経痛になる原因
太もも周辺の神経が圧迫されることで発症します。
- 長時間座る
- 締め付けが強い服装(スキニージーンズやベルト等)
- 体重増加、肥満
- 骨や骨盤のゆがみ、姿勢不良
など
なりやすい人
- 肥満傾向の人
- 妊娠中の女性
- デスクワーク、運転手等
- スキニージーンズやタイトな服をよく着る人
骨盤付近の神経が圧迫されやすくなるため、肥満の人や長時間座った体制になる仕事をしている人、きつめの服をよく着る人がなりやすいと考えられます。
原因② 帯状疱疹(発疹前)
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で起こる病気です。
症状が進むと水ぶくれや赤みが出ますが、初期症状の段階ではまだ見た目の変化はありません。そのため「外傷がないのに皮膚がピリピリする」と感じることがあります。
帯状疱疹の原因となるウイルスは、水ぼうそうのウイルスと同じです。
このウイルスは水ぼうそうの治癒後も神経節に潜伏しているため、普段は特に何もなくても、免疫力の低下などのきっかけで再活性化し、皮膚に症状を引き起こします。
これが帯状疱疹です。
帯状疱疹は水ぶくれや赤みの症状が出るのが一般的ですが、初期段階では目に見える症状がなく、皮膚がピリピリ、チクチクとだけする場合があります。
ピリピリ感の特徴
- 片側だけがピリピリと痛んだり、時々ズキッと走るような痛みが出ることがある
- ジンジンとした灼熱感がある
- 数日後に痛みがある部分の皮膚に赤い発疹や水ぶくれが出てくる
- 触れると強い痛みを感じることが多い
帯状疱疹になる原因
- 水ぼうそうウイルスが神経に潜んでいる(水ぼうそうにかかったことがある人のみ)
- 免疫力の低下が引き金となり、ウイルスが再活性化する
なりやすい人
- ストレスや過労が溜まっている人
- 病気の後などで免疫力が低下している人
- 加齢(50歳以上)
免疫力が低下している時に、ウイルスが再活性化することで発症する場合が多いです。
原因③ 血行不良
血行不良によって血流が滞り、太ももの末梢神経や筋肉がピリピリと異常な感覚になることがあります。
血行不良とは、血液が体の一部に十分に流れなくなり、酸素や栄養が行き渡らなくなる状態です。
血流が滞ることで老廃物が溜まりやすくなったり、神経や組織が一時的に酸素・栄養不足になることで神経が過敏になり、ピリピリとした異常な感覚が起こることがあります。
ピリピリ感の特徴
- 一時的なピリピリ感
- 体を動かすと改善することが多い
- 皮膚が冷たく感じる、むくみがある
- 太もも全体、その周りに広がることもある
- 触ると違和感が強くなることは少ない
- マッサージで軽減する場合が多い
血行不良になる原因
- 長時間座るなど同じ姿勢が続く
- 寒さや冷え
- 運動不足
なりやすい人
- 長時間座りっぱなしの仕事をしている人
- 冷え性の人、常に寒い環境にいる人
- 運動不足、喫煙、栄養バランスが悪い生活をしている人
原因④ 神経障害性疼痛
何らかの原因で、神経や脊髄、脳が損傷を受けたり、機能障害になったりすると、神経応答が過敏になり、痛みが生じます。
この神経そのものの痛みの症状を「神経障害性疼痛」と言います。
腰椎から出ている閉鎖神経が圧迫されると、膝から太ももの内側にかけて痛むことがあります。
特に、「閉鎖孔ヘルニア」になると、この症状が起こることが多いです。
ピリピリ感の特徴
- 痛みがずっと続く、繰り返し痛む
- 刺すようなチクチクした痛み
- 焼けるような灼熱感
- 電気が走るようなピリピリ感
- 触るだけで強い痛みを感じる
- 衣服が触れただけでも強い痛みを感じる
神経障害性疼痛なる原因
神経障害性疼痛は神経そのものが傷ついたり、機能が異常を起こすことで発生します。
- 糖尿病性神経障害
- ヘルニアや坐骨神経痛
- 帯状疱疹後神経痛
- 栄養失調による神経障害
- 脳卒中後遺症
- 乳房切除術後
- 神経梅毒
- HIV脊髄症
- 椎間板ヘルニア
- 肋間神経痛
- 悪性腫瘍
- 脳腫瘍
- 腫瘍による神経圧迫
- パーキンソン病
- 自己免疫性神経障害
など、さまざまなきっかけで発症します。
なりやすい人
- 糖尿病患者
- 帯状疱疹にかかった人(特に高齢者)
- 腰や背中の問題を抱える人(ヘルニア、坐骨神経痛)
- 神経にダメージを受けた人(手術や外傷後)
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胸や背中に激痛が走ることがある…。
肋間神経痛と言われたけど、どんな症状なのかよくわからない…。
そんな方のために、肋間神経痛について分かりやすくまとめました。
「治療法」や「予防につながる生活習慣」も紹介するので、肋間神経痛を改善したい人は必読です。
肋間神経痛とは
肋間神経痛とは、肋骨の間を走る「肋間神経」が、打撲などの外傷や帯状疱疹によって損傷したり、何らかの要因で圧迫されたりすることで、痛みが起こる状態です。
どんな症状?肋間神経痛セルフチェック
押すと痛みが悪化する
強い痛み(激痛)
せき、くしゃみ、深呼吸、少しの体勢変化などで痛みが悪化する
片側のみに痛むことが多い
肋骨に沿うように痛む
肋間神経痛の「原因」
骨折
腫瘍
椎間板ヘルニア
変形性脊椎症
帯状疱疹
などによって神経が傷ついたり、圧迫されたりすると発症します。
肋骨を骨折した人の場合、神経損傷によって発症するケースもあります。
肋間神経痛に「なりやすい人」
激しいせきが長期間続いた
脊髄神経が圧迫された(骨折・打撲・腫瘍・椎間板ヘルニア等)
肋骨神経が圧迫された(背骨が曲がる等)
帯状疱疹ウイルスに感染している(後遺症)
内臓の病気を患っている
上記がきっかけで、肋間神経痛を発症することがあります。
肋間神経痛になったら「してはいけないこと」
体を冷やす
重いものを持つ
「猫背」や「背中をそらす姿勢」
などは避けてください。
肋間神経痛は、体を冷やしたり、重いものを持って脊椎に負担をかけたりすると、痛みが強くなることが多いです。
また、体の歪みがあると痛みを発症しやすいので、正しい姿勢での生活を送りましょう。
肋間神経痛の「治し方」
「消炎鎮痛剤」や「湿布」の処方が、一般的な治療法です。
これらの治療と並行して、運動療法やリハビリが行われることもあります。
続発性の場合には、服薬治療、患部固定、手術等、それぞれの症状に適した治療が行われます。
予防方法は?
15分に一回程度体を動かす
ウォーキングなどの適度な運動を継続する
日頃からストレスを抱え込み過ぎない
肋骨神痛を予防するには、上記のような対策を日頃から意識してみましょう。
病院に行く目安
痛みが2~3日続いている
痛みが強い
といった場合には、隠れた病気の可能性があります。
腫瘍や帯状疱疹が原因の場合、治療しなければ痛みは治りません。
また、膵炎や心筋梗塞など、命に関わる病気も疑われるため、放置は危険です。
痛みが続くときは医療機関を受診し、原因を調べてもらいましょう。
病院は何科に行けばいい?
肋間神経痛がずっと痛いときは、まず整形外科で相談してみましょう。
ただし、帯状疱疹が疑われるときは、皮膚科を受診してください。
また、膵炎など内臓の病気が疑われるときは、内科を受診しましょう。
肋間神経痛を放っておくとどうなるの?
痛みをそのままにしていると、脳にその記憶が刻まれてしまい、痛みに過敏になってしまうことがあります。
これにより、余計に強く痛みを感じてしまう人もいます。
長引く痛みは放置せず、早めに受診して治療を受けましょう。
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帯状疱疹ってどんな病気…?
放っておいてもいいの?
帯状疱疹という病気について、分かりやすくまとめました。
発症する原因や初期症状、治療方法についても解説します。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹とは、過去に感染した「水ぼうそうのウイルス」が再活性化することが原因で発症する感染症です。
帯状疱疹になると、体の片側に痛みやチクチクとした感覚、かゆみが生じます。
その後そこに、まわりが赤い小さな水ぶくれがたくさんできます。ピリピリとしたしびれを感じることもあります。
帯状疱疹の症状
体の片側のかゆみ
体の片側の発疹・水ぶくれ
発熱
頭痛
※かゆみ・発疹等は、腕・胸・顔に出ることもあります。
症状の経過
帯状疱疹は、「①かゆみや痛み→②発疹→③水ぶくれ」と症状が変化していきます。
① 痛みやかゆみが出る
体の左右どちらか片側に、はじめは皮膚の痛みやかゆみなどの症状があらわれます。
胸から背中など、上半身に症状が出ることが多く、顔や目の周りに発症することも多いです。
② 紅斑・発疹ができる
痛みやかゆみなどの症状がある箇所に、赤い斑点(紅斑)が出てきます。
その後、虫に刺されたような発疹ができます。
発疹は神経に沿って帯状にあらわれ、数日から1周間ほど続きます。
③ 水ぶくれができる
発疹ができた部分にみずぶくれができます。発疹の中央の部分が膿のようになり、ただれたり、潰瘍のようになったりします。
やがて、かさぶたとなり、自然に枯れて剥がれ落ちます。
皮膚の症状は、一般的には1~2周間から1ヶ月ほどで良くなります。色素沈着が残る人もいます。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹は、体内に潜んでいる「水痘ウイルス(水ぼうそうのウイルス)」が原因です。
免疫力が低下しているときにウイルスが活動を再開すると、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹になりやすい人は?
40~50代以上
疲労やストレスがたまっている
睡眠不足
免疫力が低下していると、神経細胞に潜んでいた「水ぼうそうのウイルス」が活性化して、帯状疱疹を発症しやすくなります。
※水ぼうそうに感染した人全員が、帯状疱疹を発症するわけではありません。
帯状疱疹は人にうつるの?
帯状疱疹は、周囲の人に帯状疱疹として感染することはありません。
しかし、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが帯状疱疹の原因なので、乳幼児など水ぼうそうにかかったことがない人には、水ぼうそうとして感染することがあります。
帯状疱疹かもと思ったら…
時間をかければ自然治癒しますが、早めにウイルスや痛みを抑えるのがよいため、帯状疱疹の疑いがあったら、皮膚科にいくのがよいでしょう。
病院で処方される抗ウイルス剤を飲めば、自然治癒を待つより早い回復が期待できます。
また、免疫力が低下している状態です。まずは安静にして、食事をしっかりとりましょう。
お家では、お風呂に入ったりホットタオルをあてたりして、体を温めて痛みを和らげましょう。帯状疱疹による痛みは、血行が悪いと強く感じます。
治療内容
抗ウイルス剤の点滴や内服を行います。痛みに対しては鎮痛薬を使用することもあります。水疱には軟膏を塗ります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
【対処法】太もものピリピリ感じをおさえるには?
太もものピリピリした感じを治したい時には、原因に応じた対処法をするのが望ましいでしょう。「神経圧迫」や「血行不良」の場合は、特に
などで改善することが多いです。
原因ごとの主な対処法を詳しく説明します。
大腿外側皮神経痛など「神経圧迫」の対処法
締め付けの強いジーンズや下着を避け、ゆったりした服を着る
腰や太ももへの圧迫を減らすよう、姿勢を正す
長時間の座り仕事や運転中は定期的に立ち上がる
「血行不良」の対処法
長時間同じ姿勢でいる場合は、立ち上がったり、ストレッチを行う
ウォーキングや屈伸運動で血流を促進する
太ももや全身を温める(カイロ、温かい飲み物、入浴など)
軽く揉んだり、さすったりして血流を良くする
「帯状疱疹」や「神経障害性疼痛」の対処法
「帯状疱疹」や「神経障害性疼痛」は専門医の受診が望ましいです。
帯状疱疹の場合は抗ウイルス薬、神経障害性疼痛の 場合は神経に特化した薬などを処方してもらえます。
帯状疱疹や神経障害性疼痛におすすめの市販薬
神経の圧迫や神経が一時的に過敏になった場合、痛みやピリピリ感を和らげるために、市販の鎮痛剤を応急処置として使用できます。
などの成分が入った鎮痛剤を選ぶのがおすすめです。
イブプロフェンが入っている市販薬の例
アセトアミノフェンが入っている市販薬の例
これはあくまでも応急処置です。
痛みがひどい場合には自己判断で市販薬に頼らず、絶対に病院を受診するようにしてください。
病院は何科?行く目安は?
痛みの原因が分らない時は、ペインクリニック内科を受診しましょう。
その他、皮膚に異常が現れている時は皮膚科、皮膚の内部の神経に違和感がある場合には神経内科を受診するのが望ましいです。
帯状疱疹など皮膚の異常の場合は、皮膚の赤みや水ぶくれなどの症状があることがあります。かゆみなどを感じたら皮膚科を受診しましょう。
その他、ピリピリ感とともにしびれや麻痺があったり、ピリピリとした症状が強くなったり、態勢を変えるたびに痛むようであれば、神経系の問題の可能性があります。
一度神経内科を受診してみるのがよいでしょう。
病院に行く目安は?
- ピリピリ感が1週間以上続く場合
- 皮膚に発疹や赤みが出てきた場合
- 痛みや不快感が強くなってきた場合
- しびれや麻痺、筋力の低下が伴う場合
などは、早めに病院を受診しましょう。
軽度であっても、ピリピリ感が長期間続く場合は神経に問題がある可能性があり、専門的な診察を受けることが重要です。
また、痛み以外に
などの症状がある場合、神経障害性疼痛の可能性があるため、一度医療機関を受診するといいでしょう。