自分の都合のいいように嘘をつくのは病気のせい?
「虚言が多くなる病気」について、お医者さんに聞いてみました。
パーソナリティ障害の主な症状も紹介するので、心当たりがないかチェックしましょう。
監修者
平成かぐらクリニック
院長、メンタルアシストプログラム総責任者
伊藤 直
経歴
一般社団法人 健康職場推進機構理事長
医療法人社団 平成医会 理事
専門領域:精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科
著書:精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法
「自分の都合のいいように嘘をつく人」は病気?
自分に都合のいい嘘をつくからといって、必ずしも病気とは言い切れません。
ただし、
- 明らかに分かる大げさな嘘をつく
- 辻褄の合わない嘘をつく
- 注目を集めるために嘘をつく
といった場合は、パーソナリティ障害の可能性が考えられます。
パーソナリティ障害とは?
パーソナリティ障害は、「物事の捉え方や考え方」が周囲と大きく異なることで、周りの人の困惑を招き、本人も困ってしまう状態です。
このような状態が続くことで、人間関係に支障が出るようになります。
パーソナリティ障害にはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。
虚言から考えられるパーソナリティ障害3タイプ
- 演技性パーソナリティ障害
- 妄想性パーソナリティ障害
- 反社会性パーソナリティ障害
虚言から考えられる病気として、上記の3つが挙げられます。
① 演技性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害とは、「注目を集めたい」という欲求で、嘘や感情的なアピールをしてしまい、人間関係が不安定な状態に陥る障害です。
「話の中心にいたい」「すごい人間だとアピールしたい」という感情から、嘘をついてしまいます。
演技性パーソナリティ障害の症状チェック
- 注目を集めていないと不快感がある
- 感情が急激に変化する
- 芝居がかった振る舞いをする
- 注目を集めるために外見を利用する
- 不適切なほどに性的なアピールが強い
② 妄想性パーソナリティ障害
妄想性パーソナリティ障害とは、根拠もなく自分が傷つけられていると思い込む等により、対人関係に支障が出ている状態です。
「他人に対する強い不信感」が背景にあると考えられています。
相手を疑ったり、妄想を信じ込んだりして、都合のいいように嘘をつくこともあります。
妄想性パーソナリティ障害の症状チェック
- 拒否されることに敏感に反応してしまう
- ずっと恨みを抱き続けてしまう
- 他者からバカにされていると感じる
- 浮気や不倫を根拠なく疑ってしまう
- 物事には陰謀があると考えてしまう
③ 反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害とは、他者の権利を踏みにじることに抵抗がない状態です。
自分を正当化し、ルールや約束を守ろうとしないため、罪を犯してしまう人もいます。
自己中心的かつ無責任な考えを持つため、後先を深く考えず、その場しのぎで嘘をついてしまうことがあります。
反社会性パーソナリティ障害の症状チェック
- 法律を軽視している
- 衝動的に行動してしまう
- 他者を傷つけることに抵抗がない
- 仕事を続けられない
嘘をつく病気・障害の人への対応法は?
直接「あなたは病気だ」と伝えることは控えましょう。
相手が悩みや不安を吐露しているときに、病院の受診を提案するとよいでしょう。
本人がパーソナリティ障害を自覚できる可能性は低いため、直接的に指摘すると関係性が悪化する恐れがあります。
パーソナリティ障害による虚言は、治るの?
パーソナリティ障害による虚言は、必ず治るものだとは言えません。
しかし、病気を自覚して向き合うことは軽快への第一歩なので、病院で医師に診てもらうことが大切です。
パーソナリティ障害による虚言は、加齢や環境の変化に伴って落ち着くことがあります。
そのため、通院している間に症状が軽快することも考えられます。
病院に行く目安は?
- パーソナリティ障害の症状に心当たりがある
- 周囲の人に受診をすすめられた
- 日常生活に支障が出ている(仕事をクビになった、家族から縁を切られた等)
上記に当てはまる場合は、医療機関で相談することをおすすめします。
病院は何科?
パーソナリティ障害が疑われるときは、「精神科」または「心療内科」を受診しましょう。
※両方の診療を行っている医院・クリニックもあります。
受診する際は、
- 日常生活においてどのような支障が出ているのか
- いつから・どのくらい・どのような嘘をついているのか
など、具体的なエピソードを伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
パーソナリティ障害の治療法
認知行動療法では、物事をバランスよく考えるトレーニングを行います。
薬物療法では、「睡眠薬」「抗不安薬」など、症状に合わせて薬を処方します。
年齢や症状の程度によりますが、パーソナリティ障害の治療期間は年単位になるケースが多いです。
治療にかかる費用は?
「カウンセリング」や「認知行動療法」の場合、自費診療で1回3,000~10,000円が目安となります。
薬物療法は保険が適用されます。
認知行動療法も、保険適用となるケースがあります。
精神科を探す
心療内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
合わせて読みたい
2022-09-29
いつも自分を責めてしまって苦しい…。
もしかして、何かの病気なの?
常に自分を責めてしまう状態が長期間続いている場合は、「パーソナリティ障害」という病気の可能性があります。
セルフチェックで確認してみましょう。
病院での治療法や普段の生活で心がけたいことについても解説します。
自分を責めてしまう…もしかして病気なの?
「あんなこと言わなければよかった」「自分のせいで、迷惑をかけてしまった」など、いつも自分を責めてしまいます…。
これって何かの病気なのでしょうか?
いつも「自分を責めてしまう」からといって、必ずしも病気であるとは限りません。
ただし、そのような状態が長期間続いていて、仕事や対人関係に支障が生じている場合は、「パーソナリティ障害(人格障害)」などの病気が疑われます。
パーソナリティ障害とは、「自分の考え方や物事の捉え方」が周囲と大きく異なることにより、周りの人の困惑を招き、本人が困ってしまう状態です。
「境界性パーソナリティ障害」「回避性パーソナリティ障害」など、いくつかのタイプに分けられます。
パーソナリティ障害の人は、「あんなこと言うべきじゃなかった」「なんでいつも失敗するんだろう」などと、頻繁に自分の行動・発言を後悔したり、強く自分を責めたりすることがあります。
また、うつ病や依存症、不安障害などを併発して、日常生活に支障が出ることもあります。
パーソナリティ障害セルフチェック
下記に4~5つ以上当てはまる場合は、何らかの「パーソナリティ障害」が原因で、いつも「自分を責めてしまう」状態になっている可能性があります。
否定的なことを言われるといつまでも忘れられない
人に嫌われないように常に考えている(人に評価されるのが怖い)
人から信用されていないと感じる
気分がころころ変わってしまう(感情が不安定・コントロールできない)
ぼうっとしてしまうことが多い
予定通りに物事を運びたいと強く思う
臨機応変に行動できていない
心を開ける人はいない
人に裏切られたことがある
対人トラブルが多い
自傷行為をしたことがある
摂食障害がある
自分は何もできないと感じる
※正確な診断のためには、セルチェックだけではなく、病院で受診する必要があります。
パーソナリティ障害になってしまう原因
遺伝的要因
幼少期のトラウマ
過去のつらい体験・恐怖体験・苦い思い出
発達期の環境的要因(適切な養育を受けられなかった等)
パーソナリティ障害は、遺伝的な要素に加え、幼少期の体験や環境のせいであらわれることが多いです。
トラウマのせいで他者や自分の認知に歪みが生じると、発症しやすくなります。
パーソナリティ障害って改善できるの?
パーソナリティ障害は、治療によって改善することが可能です。
また、一部のパーソナリティ障害は、年齢を重ねるとよくなることもあります。
ご自身の病状を判断するために、まずは一度、医師に診てもらうことおすすめします。
「精神科」を受診する目安は?
自分を責める気持ちが止まらない
いつも失敗する
人間関係が上手くいかない
などの悩みがある場合は、一度「精神科」で相談してみましょう。
万が一、パーソナリティ障害の一種だった場合、「うつ病」や「不安障害」などの他の病気を併発させる(もしくは併発している)リスクがあります。
医師には、普段の生活で困っていることや、症状が気になりだした時期について伝えましょう。
病院でパーソナリティ障害と診断された場合は、心理療法(※)や薬物療法などによって治療を行います。
(※)心理療法…会話や対話を通して、行動や考え方を少しずつ変えていく治療法のこと。
精神科を探す
普段の生活で心がけることは?
「パーソナリティ障害」が疑われる場合は、自分自身をスッキリとクリアな思考で見つめ直す必要があります。
そのためには、しっかりと休息をとり、疲労・ストレスを溜め込まないことが重要です。
疲労やストレスの対策として、普段から6~8時間程度の睡眠時間を確保しましょう。
また、適度な運動も大切です。
脳や筋肉の刺激になり、質のよい眠りにもつながります。
ウォーキングやストレッチなど、手軽で続けやすい運動を取り入れてみましょう。
一日の中で、趣味や自分の好きなことをする時間を設けて、リフレッシュすることも心がけてください。
精神科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 パーソナリティ障害
合わせて読みたい
2022-07-11
精神科に行くべきか悩む…。
自分でチェックする方法ってある?
「精神科に行った方がいい」と判断する目安をお医者さんに聞きました。
うつ病の場合、気持ちの落ち込みがひどくなるため、放っておくと命に関わることもあります。
心当たりのある症状がないか、チェックリストを確認してみましょう。
セルフチェック「精神科に行った方がいい」目安
気持ちの落ち込み・元気が出ない
気分に波がある
意欲・集中力の低下
喜びを感じなくなった
強い不安感
一日中、倦怠感が続く・疲れやすい
イライラしやすい
ネガティブな妄想が多い(監視されている・悪口を言われている等)
悪いことをしていないのに、自分が悪いと罪の意識を感じる
自信喪失(自分には価値がないと感じる)
人の前に出ると過剰に緊張する
些細なことにこだわる
よく眠れない(疲れていても眠れない)
幻覚・幻聴がみられる
食欲不振
過食
もの忘れが増えた
外出が億劫
自殺を考えることがある
上記の症状に3個以上あてはまる場合、心の病気の疑いが強くなります。
早めに精神科を受診しましょう。
正常な範囲での心の不調であれば、気分転換をしたり、ゆっくり休んだりすることで改善するケースが多いです。
しかし、休んでも改善が見られないときは、心の病気を疑った方がよいでしょう。
特に「気持ちの落ち込み」「不安感」「イライラ」等が2週間以上続くときは、我慢せず病院を受診してください。
すぐに病院へ!危険な症状
自傷行為をする(体を傷付ける等)
他者への暴力・暴言
食べられなくなり、栄養失調状態になっている
周囲の人が「自分の悪口を言っている」と感じる
眠れない
ネガティブな考えで頭がいっぱいになる
何事も集中できない
生きることがつらいと感じて「死にたい」と思ってしまう
上記のような症状には、「重いうつ病」などが疑われます。
放置すると命に関わる恐れもありますので、すぐに精神科を受診してください。
精神科を探す
セルフチェックは、どれくらいあてになるの?
セルフチェックは、受診の目安を確認したり、現状を把握したりする上で有効とされています。
リストにある症状を照らし合わせることで、うつ病など「病気の傾向」を知ることができます。
ただし、病気を診断できるものではないため、当てはまるものが多い方は医師の診察が必要です。
精神科で行われる診断方法
精神科では、丁寧な問診を行ったのち、
心理検査
身体検査
血液検査
などを実施し、検査結果を参考にしながら診断を行います。
精神科では、どんな治療をするの?
薬を使った治療
精神療法(症状の元になったことについて話し合う治療)
TMS治療(磁気による脳の治療)
精神科では、患者さん一人ひとりの症状に応じて、上記のような治療が行われます。
また、これらに加えて十分な休養をとることも大切です。
治療に使われる薬の種類
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
など
薬物治療では、上記のような抗うつ薬が使用されることがあります。
治療の際は、患者さんの症状に合わせて薬を処方します。
治療期間の目安
個人差はありますが、早くても3~12ヶ月の治療期間が必要になることが多いです。
長引くと1年以上治療するケースもあります。
「うつ病」の場合、症状が治まるまでの治療期間は、「発症から受診までの期間と同じくらい」と考えられています。
そのため、早く改善させたい場合は、できるだけ早めに治療を開始する必要があります。
また、心の病気は悪化させないことが第一です。
死という最悪の事態を回避するためにも、放置しないようにしましょう。
精神科を探す
▼参考
厚生労働省 こころもメンテしよう 精神科ではどんな治療をするの?
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 精神疾患の早期発見・治療の重要性
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。