更年期によくあらわれる症状「ホットフラッシュ」について解説します。
症状の改善が期待できる漢方や薬、サプリメントには、どのようなものがあるのでしょうか。
日常生活で実施できるホットフラッシュ対策もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
ホットフラッシュの症状
ホットフラッシュは、更年期障害であらわれる血管運動神経症状のひとつです。
症状としては、数分間続く発汗とほてり(熱感)が生じて脈拍数が増加すること等が挙げられます。
発汗やほてりは顔から起こり、頭部や胸部へと広がることが多いです。
また、自律神経がスムーズに機能しなくなると、体温調節も上手に行うことができなくなり、通常では不快な気温ではないのに、暑いと感じて放熱指令が出ることがあります
更年期の女性の約60%が経験するといわれており、その中の約10%は日常生活に支障が生じるほど重症化することもあると考えられています。
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2022-12-23
更年期障害ってどんな症状が出るの?
なりやすい人の特徴は?
更年期障害について、分かりやすくまとめました。
普段の生活で心がけたいポイントや、病院に行く目安も紹介します。
更年期障害とは
女性は40代頃から、卵巣から分泌される「女性ホルモン」が急激に減少します。
これに伴ってあらわれる、さまざまな心身の不調を総称して、更年期障害と呼びます。
更年期障害は何歳から始まる?
更年期とは、閉経前後の5年ずつを指します。
50歳前後での閉経が平均なので、ほとんどの女性が45~55歳で更年期を迎えます。
更年期障害はいつ終わる?
更年期障害が、いつ終わるかは断言できませんが、長くても10年ほどです。
更年期障害の症状をチェック
のぼせ・顔のほてり(ホットフラッシュ)
息切れ・動悸
頭痛
めまい
不安を感じやすい、イライラしやすい
など
上記の症状は、更年期障害の主な症状の一例です。
更年期の症状は多岐にわたるため、上記以外の症状があらわれる人もいます。
「更年期の症状が出やすい人」の特徴は?
以下、それぞれの項目ごとに2~3個ずつ当てはまる場合、更年期障害を発症しやすいと考えられています。
▼睡眠
24時以降に眠り、10時以降に起床する日が週に3日以上ある
低血圧で、朝起きるのがつらい
夜中に目が覚めやすい
寝る前にスマートフォンやパソコンを使っている
浅い眠りしかとれず、熟睡感がない
▼食事
1日3食はとらない(よく欠食する)
食事の時間がバラバラ
食事量を過度に制限するなど「極端なダイエット」をしている
暴飲暴食している
好き嫌いがあり「偏った食生活」になっている
▼性格
人に比べて神経質
何事にも真面目
完璧主義
仕事などを頑張りすぎてしまう
怒りっぽく、些細なことでもイライラしやすい
▼その他
疲れやストレスが多い生活を送っている
休みが少なく、心身ともにリラックスできる時間がない
体が冷えやすい
運動する習慣がない
産後うつ・月経前症候群が重かった
※これらの症状に当てはまらない場合でも、更年期障害を発症する可能性はあります。
今からできる!更年期の症状を和らげる「5つの対策」
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
1日7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
週3~4日、有酸素運動を行う
入浴のときは「湯船に浸かる」
こまめにストレスを発散させる
更年期の症状を和らげるには、自律神経を整えておくことが大切です。
上記の点を意識して、生活習慣を見直していきましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
眠れないことで憂うつな気分が続く
強い不安感がある
食欲がなく、体重が減った
息切れ・動悸がする
めまい・吐き気がする
激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
どんな検査を受けるの?
更年期症状で病院を受診した場合は、一般的に、
問診
身長・体重・血圧の測定
検査(血液・子宮・卵巣・甲状腺・心臓等の検査)
を行い、患者さんの症状に合わせて治療が選択されます。
※検査内容等は、受診する医療機関によって異なることがあります。
どんな治療法があるの?
治療法としては、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンを飲み薬・塗り薬・貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、「漢方薬」を使った治療法があります。
うつ症状が強く表れているときは、抗うつ薬や抗不安剤などの「向精神薬」が処方されます。
※飲み合わせの関係でホルモン補充療法や他の薬が使いにくい場合もあります。治療中の病気や飲んでいる薬は医師に伝えたうえで、薬を処方してもらいましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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ホットフラッシュの対処法
① 服のボタンを開けるなどして、通気性をよくする。
② ゆっくり深呼吸(腹式呼吸)をする。
③ 首筋を冷やす。(特に首の頚動脈周辺の太い血管辺りを冷やすと効果が期待できます)
ホットフラッシュの原因
ホットフラッシュは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が減少し、脳の視床下部が刺激され、血管の収縮、拡張をつかさどる自律神経が崩れることが原因で起こると考えられています。
視床下部には、血圧、血管、発汗、体温、皮膚、心拍等の血管運動神経である自律神経を調節する働きがあるため、ホルモンのバランスが崩れると自律神経も乱れてしまいます。
自律神経は、血管を収縮、拡張することで体温調節をしています。
ホットフラッシュの症状はいつまで?
個人差があります。4割の方は経験しない方もおり、長い方では閉経前後5年(計10年)の更年期の間続く方もいます。
更年期障害の後半、つまり50歳後半になると和らいでくる方が多いです。
病院で処方される薬や漢方
ホットフラッシュは、更年期障害の治療法である「HRT」(ホルモン補充療法)や漢方薬、精神症状を抑える抗うつ薬等が処方されることが多いといわれています。
特にHRT(ホルモン補充療法)は、女性ホルモン薬を補充する治療法で、ホットフラッシュのような血管運動神経症状に非常に効果的といわれています。
HRTには月経の有る無し、子宮の有る無しによって投与法が異なります。
- 周期的併用投与法
エストロゲンを毎日(定期的ニ)服用して、12~14日間のみ連続でプロゲステロンを併用するという治療方法。
- 持続的併用投与法
エストロゲンとプロゲステロンを毎日服用する治療方法。
- エストロゲン単独投与法
エストロゲンのみを毎日服用する治療方法。
気分が落ち込む、焦燥感や不安感が強いような場合には、抗不安薬、抗うつ薬等の向精神薬も有効といわれています。
漢方薬は、副作用が少なく安全性が高いと考えられていますが、体質や症状によっては合わない場合もあるので医師としっかり相談したうえで使用することが大切です。
ホットフラッシュを予防・軽減|運動やサプリ
下記を意識すると、多少症状が軽くなる方がいます。
- できるだけ通気性のよい服装にする。
- ウォーキングを習慣化する。(しかし体調に合わせて無理のない範囲で行うようにする)
- 香辛料等の刺激が強い物、カフェイン、塩辛い物は血管を収縮させやすいため控える。
- 生野菜や果物、冷たい物の摂り過ぎは体を冷やすのでほどほどに。
- ミントは気の流れをスムーズにして、イライラ感を落ち着かせる効果が期待でき、また急に出てくる汗や多汗、のぼせにも効果的といわれているので、アロマを活用する。
- 血流改善や冷えの緩和等の効果が期待できるので、カルシウムや大豆イソフラボンを積極的に摂取する。
大豆イソフラボンは、市販のサプリメントからも摂取できます。※サプリメントの働きには個人差があります。
この他にも、ブラックコホシュというハーブも市販でありますが、効果があるかはまだ研究結果に結論の一致をみていません。
まとめ
更年期障害の症状のひとつであるホットフラッシュですが、自己判断で決めつけることは危険です。
時期や症状の内容でホットフラッシュではないかと思っていても、実は何らかの疾患が隠れている可能性があるからです。
そのため、ホットフラッシュの症状に加えて、頭が重い感じ、手足のしびれ、動悸、息切れ等の症状や、頻脈、体重減少、イライラ感等の症状も生じている場合には、高血圧や甲状腺機能亢進症等の病気を発症している恐れもありますので、医療機関を受診することをおすすめします。
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2020-06-12
「生理が止まらないのは更年期のせい?」
「大量に出血していて心配…」
お医者さんに、更年期(閉経前後の5年)に生理が止まらなくなる原因を聞きました。
病院へ行った方がいい症状や受診のタイミングも解説します。
もしかして病気?どんな治療をするの?
止まらない出血にお困りの方は、参考にしてください。
なぜ?更年期に生理が止まらない原因
更年期になるとホルモンバランスが乱れ、月経不順がおこり、生理が止まりにくいことがあります。
子宮内膜がはがれにくくなることから、少量の出血が長く続いたり、一度に大量に出血したりする場合もあります。
この対処はNG!
ホルモンバランスの乱れによって生理が止まらないと思われる場合も、市販薬やサプリを使用して対処することは避けましょう。
病気により出血している可能性もあるので、8日以上生理が続くようであれば、一度医師に相談することをおすすめします。
病院を受診する目安
特に下記の状態のときには、早めに病院へ行きましょう。
大量の出血がある
レバーのような血液の塊がたくさん排泄される
耐え難い月経痛
8日間以上月経が続く
月経時以外にも出血がみられる
排尿障害がでた
腹部にしこりのようなものがある
この他にも、気になる症状がある場合には、婦人科の受診をおすすめします。
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受診のタイミング
できれば、出血している時に受診しましょう。
(生理の出血が止まったあとに受診しても構いません。)
基礎体温を記録している場合は、ぜひ持参してください。
また、受診する際には、以下の5ポイントを医師に伝えると良いでしょう。
出血の増加が始まった時期
出血量
月経の周期(月経期間)
出血の状態(例:レバーのような塊が出る等)
他の症状の有無
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生理が止まらないのを放置すると…
「これくらいなら大丈夫」と自己判断して、病院に行かずそのままにしておくことは、避けましょう。
子宮や卵巣の疾患を見逃してしまい、症状が悪化したり、妊娠が困難になったりする可能性があります。ガン化する恐れもあります。
過多月経や過長月経の場合は、貧血を併発しやすく、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
注意!こんな病気の可能性も
大量出血や激痛がある場合は病気の可能性もあります。
月経期間が8日以上続く状態を「過長月経」、出血量が増えたり、月経痛が酷いなどの症状が見られる状態を「過多月経」といいます。
更年期の過長月経や過多月経の症状は、
機能性子宮出血
子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮内膜ポリープ
子宮内膜増殖症
子宮頸がん
といった病気の可能性があります。
それぞれの症状を詳しく解説します。
原因1. 機能性子宮出血
出血の要因(妊娠・腫瘍・外傷・炎症など)が見当たらない場合、機能性子宮出血と診断します。不正出血の約30%を占めるため、頻度の高い症状と言えます。
※様々な原因によって起こる子宮内膜からの不正出血の総称です。厳密には病気の名前ではありません。
<主な症状>
不規則に、頻繁に出血がみられます。
原因2. 子宮筋腫
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。
子宮筋腫ができると、経血を排出する際の子宮の収縮機能に異常が出たり、子宮内膜が厚く形成されて、月経時に剥がれ落ちる量が増えることが影響して、生理が止まらなくなると考えられます。
<主な症状>
経血量の増加が起こり、レバーのような血液の塊が出てきます。月経が7日以上ダラダラと出血が続きます。
また、月経痛、腰痛、貧血、排尿異常などが起こります。
原因3. 子宮腺筋症
女性ホルモンの影響を受け、子宮の筋肉の層に子宮内膜と似た組織が増殖し、正常な子宮内膜と同様に出血をするため、生理が止まらなくなると考えられます。
また、子宮腺筋症により子宮内膜が変形したり、拡張したりすることで、経血を排出する際の子宮の収縮のバランスが崩れるため、出血しやすくなります。
症状が重い場合は、子宮全摘手術などを考慮することも必要な病気です。
<主な症状>
月経痛、過多月経や過多月経による貧血、骨盤痛などがみられます。痛みはかなり強く、月経が終了しても数日続く場合もあります。女性ホルモンの分泌が減少して閉経するころを境に、症状は治まります。
原因4. 子宮内膜ポリープ
子宮内膜の細胞が何らかの原因で異常増殖し、ポリープができる病気です。突出したポリープで子宮内の表面積が大きくなるため、経血の量が増えて、生理が止まらなくなると考えられます。
子宮内膜ポリープができるのは、女性ホルモンであるエストロゲンも原因の一つとされていますが、明らかになっていません。
<主な症状>
経血量が多く、月経期間が長くなります。また、月経時以外の出血(閉経後にも性器出血)や貧血になることもあります。
原因5. 子宮内膜増殖症
子宮内膜が異常に分厚く増殖し、月経時に剥離される子宮内膜の量が多いため、生理が止まらない症状が現れます。
<主な症状>
経血量が多い、月経期間が長い、月経時以外の出血がある、貧血などの症状が現れます。
原因6. 子宮頸がん
性交渉などでヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸部に感染することで起こる病気です。物理的刺激により、出血を起こすことがあります。
<主な症状>
子宮頸がんは、まだ細胞ががん化していない初期段階では、症状がありません。進行すると、生理以外での出血、特に性交時の出血がみられます。出血量は多く、繰り返すのが特徴です。おりものの色や状態に変化があらわれたりします。さらに悪化すると、下腹部や腰が痛くなることもあります。
初診ではどんな検査をするの?
一般的に、初診は次のような流れで行われます。
問診
月経周期、月経の日数、最終月経日、初潮の年齢、妊娠・出産歴、既往歴、アレルギーの有無等の確認が行われます。
内診
子宮、卵巣の状態、圧迫による痛みの有無等を確認します。
超音波検査(必要な場合)
経腟プローブ(棒状の器具)を膣内に挿入して、子宮や卵巣の状態を確認する検査を行います。
細胞診(必要な場合)
子宮頸部細胞をヘラ、ブラシ、綿棒等で採取して、異常細胞の有無を確認する検査を行います。