足に力が入らない…。
何科で受診すればいいの?
足に力が入らない原因と受診すべき診療科を、お医者さんに聞きました。
脳卒中など重い病気の可能性もあるので、不安な方はぜひ参考にしてください。
監修者
経歴
平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
足に力が入らないのは何科?
脳神経内科の受診をおすすめします。
脳神経内科を探す
足に力が入らないという症状が出現している場合、脳、脊髄、末梢神経等、筋肉に指令を送る神経系に異常が生じている可能性があります。また筋肉そのものの異常というケースもあります。
脳神経内科は、脳に加えて、脊髄、末梢神経等の神経系についても診察してくれるところです。
そのため、脳に異常がない場合でも、脊髄疾患や末梢神経障害についての診察もしてくれるため、症状が出現している原因をさらに追究してもらえるケースが多いと考えられます。
こんな症状はすぐに病院へ!
「足に力が入らない」という症状に加えて
- 激しい頭痛
- 吐き気・嘔吐
- めまい
- 視覚障害(視野が狭くなる等)
- 手足のしびれや麻痺
- 呂律が回らない
- 意識が朦朧とする
といった症状が出現している場合には、早急の病院を受診してください。
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足に力が入らない原因
足に力が入らない場合
① 脳卒中
② 重症筋無力症
③ 多発性筋炎
④ ギラン・バレー症候群
⑤ 末梢神経障害
の可能性があります。
それぞれの「症状の特徴」と「発症しやすい人」について詳しく解説します。
原因①脳卒中
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血によって、脳に障害が起こると、足に力が入らない症状が出ることがあります。
症状の特徴
- 手足に力が入らない(特に体の片側)
- 歩きにくい
- 足がもつれる
- フラフラする
- 頭痛
- めまい
- 呂律がまわらない
- 意識障害
発症しやすい人の特徴
- 高血圧
- 塩分を過剰に摂取している
- アルコールを過剰摂取している
- 喫煙者
- 運動不足
- 肥満傾向
- 糖尿病を患っている
- 心疾患を患っている
- 脂質異常症を患っている
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原因②重症筋無力症
全身の筋力低下を伴う難病です。
症状の特徴
- 手足に力が入らない
- しゃがみにくくなる
- 眼瞼下垂(まぶたが開きにくくなる)
- 物が二重に見える
- 飲み込みにくくなる
- 倦怠感
- 呼吸がしにくい
発症しやすい人の特徴
- ストレス過多
- 女性(30~50歳代)
- 男性の場合、50~60歳代での発症が多い
- 胸腺異常(胸腺腫、胸腺過形成)がある
原因③多発性筋炎
筋肉の炎症・破壊によって、力が入らなくなったり、痛みが生じます。
膠原病と呼ばれる難病のひとつです。
症状の特徴
- 力が入らない
- 疲れやすい
- 筋肉を動かすと痛みが生じる
- 階段を昇ることが困難
- 立ち上がりにくい
- 関節痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- 発熱
発症しやすい人の特徴
※生まれつきの体質によって外的要因が加わり、発症するケースもあります。
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原因④ギラン・バレー症候群
末梢神経の障害により、顔や手足、呼吸器官が麻痺してしまう病気です。
症状の特徴
- 急に手足に力が入らなくなる(左右対称)
- 手足のしびれ
- 物が二重に見える
- 飲み込みにくくなる
- 血圧変動
- 脈拍異常
発症しやすい人の特徴
- 風邪や腸炎を発症していた
- 手術を受けた
- ワクチンを接種した
- 幅広い世代でみられる
- 男性にやや多くみられる
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原因⑤末梢神経障害
末梢神経がダメージを受けることで、手足に力が入らなくなったり、しびれが生じたりする病気です。
症状の特徴
- 手足に力が入らなくなる
- 手足のしびれ
- 脱力感
- ジンジンするような痛みが生じる
- 歩行困難
- 立ち上がりにくい
- 階段を昇ることが困難
発症しやすい人の特徴
- 特定の薬を使用している(抗ウイルス薬、高脂血症治療薬、抗結核薬、抗悪性腫瘍薬等)
- 糖尿病を患っている
- がんを患っている
- マイコプラズマ等のウイルスや細菌に感染して炎症を起こしている
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早期受診のメリット
早期受診により、重症化や命にかかわるような状態に陥ることを回避できる可能性が高いです。
また、早い段階で原因が判明することで、症状に適した治療や薬を処方してもらえるため、早期改善が期待できます。
発症から治療開始までの期間が長くなると、言語や運動機能に障害が残る恐れがあります。
最悪の場合、命を落とすリスクもあるので、心配な症状がある方は、できる限り早めの受診をおすすめします。
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2022-07-08
高齢者が「急に歩けなくなる」のはなぜ?
もしかして、何かの病気?
高齢者が急に歩けなくなる病気について、お医者さんに聞きました。
歩けないことで寝たきりなってしまうと、余命が短くなる恐れもあります。
心当たりのある症状をチェックして、早めに病院を受診しましょう。
高齢者が「急に歩けなくなる」原因
高齢者が急に歩けなくなる場合、
廃用症候群(筋力の低下)
腰部脊柱管狭窄症(下半身の痛み)
特発性正常圧水頭症(脳の病気)
などの原因が考えられます。
これらは、加齢による「体全体の機能低下」「骨・靭帯の変形」「脳の異常」により引き起こされます。
※急に歩けなくなったときに、無理に歩いたり、運動をしたりすると、転倒するリスクがあるのでやめましょう。
原因
症状の特徴
廃用症候群
長く歩けない
筋力低下
腰部脊柱管狭窄症
足の痛み・しびれ
歩くと痛みが出るので長く歩けない
特発性正常圧水頭症(iNPH)
歩きにくい
物忘れの進行
トイレに間に合わない
原因① 廃用症候群(筋力の低下)
廃用症候群(はいようしょうこうぐん)は、体の運動に必要な筋力が減少してしまっている状態です。
主に、寝たきりで過ごした期間の後に起こります。
高齢者が、ケガ・病気などで一時的に寝たきり状態の生活をしていると、筋力が一気に落ちやすくなります。
寝たきりの生活は、「骨・関節の萎縮」も進みやすいため、歩行する力が落ちてしまうことが多いです。
「廃用症候群」かも…今できる対処は?
家族や周囲の人がサポートして、一つずつ弱っている体の部位を動かしてあげましょう。
再び歩けるようにするには、ゆっくりと筋力をつけていくことが大切です。
必要でないのに安静な状態を継続してしまうと、症状がさらに進みます。
急に改善する方法はないので、少しずつ、時間をかけて取り組みましょう。
病院に行く目安
歩くことが難しく感じて、やる気が起きない
一歩も歩けない
といった場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
内臓疾患が無い場合は、「整形外科」で相談してみましょう。
運動機能の診療、およびリハビリテーションが行えます。
内臓疾患があり治療を受けている方は、まずはかかりつけ医に相談してください。
整形外科を探す
原因② 腰部脊柱管狭窄症(下半身の痛み)
腰には、脊柱管(せきちゅうかん)という神経の束が通る管があります。
その管が狭くなると、神経が圧迫されて、歩くと痛みが出るようになります。
腰椎脊柱管狭窄症の「特徴」
足のしびれ・痛みを感じる
歩いていないときは痛みがない
腰部脊柱管狭窄症を発症すると、痛みが出るため、長い距離を続けて歩くことができなくなります。
この病気は、加齢によって起きやすいので、誰もが発症する可能性があります。
「腰部脊柱管狭窄症」かも…今できる対処は?
痛みが出にくい、「前かがみの姿勢」で歩いてみてください。
杖やカートを使うのもよいでしょう。
また、歩かない時は、筋力をつけるために良い姿勢を保ちましょう。
病院に行く目安
「歩くと痛む」という症状がある場合は、早めに整形外科で受診してください。
放置すると、歩く機会が減ることで筋力が低下し、さらに歩きにくくなる恐れがあります。
整形外科を探す
原因③ 特発性正常圧水頭症(脳の病気)
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、本来一定に吸収されていくはずの「脳の髄液」が溜まってしまう病気です。
特発性正常圧水頭症の「特徴」
歩けない
物忘れが多くなる
トイレに間に合わなくなる
髄液が脳を圧迫することで、上記のような症状が現れます。
特発性正常圧水頭症は、加齢に伴って発症しますが、原因はわかっていません。
症状が、この病気ではない高齢者にもよくみられるものであることから、見逃されてしまうことも多いです。
病院に行く目安
歩行困難に加え、認知症の症状・尿失禁が急に増えてきたら、早めに「脳神経内科」を受診してください。
特発性正常圧水頭症は、病院で治療しないと改善が見込めません。
悪化すると寝たきりになるリスクがあるため、放置は禁物です。
脳神経内科を探す
歩けない・立てない「余命との関係は?」
歩けないことで「寝たきり」状態になると、体の機能が全体的に弱っていってしまいます。
その結果、間接的に余命が短くなってしまうリスクがあります。
症状がつらい場合は、体を動かす気力がなくなり、引きこもりがちになります。
少しずつでよいので、周囲のサポートを受けながら運動して、筋力を戻すのがいいでしょう。
また、早めに医療機関を受診して適切な診断を受け、病気の治療やリハビリを始めることも大切です。
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▼参考
日本整形外科学会 腰椎脊柱管狭窄症
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2020-08-21
「手に力が入らない…。」
こんなとき、何科を受診すればいいの?
手に力が入らない原因を、お医者さんに聞きました。
“すぐに病院に行くべき”危険な症状も解説しますので、不安な方はぜひ参考にしてください。
手に力が入らないのは何科?
手に力が入らない場合
内科
整形外科
脳神経内科
脳神経外科
を受診するケースが多いです。
特に疲れているわけでもないのに手に力が入らない場合、体の神経や筋肉、脳疾患、背骨に何らかの異常が起きていると考えられるからです。
内科を探す
※症状や各医療機関の設備によって、別の診療科を紹介されることがあります。
一時的になる場合でも…病院行くべき?
念のため、病院を受診することをおすすめします。
何らかの疾患が原因であるにもかかわらず、一時的に症状が出た後に改善するケースもあるので注意が必要です。
すぐに病院に行くべき症状
手に力が入らない症状に加えて、次の症状があらわれている場合は、特に危険な状態です。早急に病院に行きましょう。
手が動かない
強いしびれが生じる
手の感覚がなくなる
グルグル回るようなめまい
激しい頭痛
半分視野が欠ける
ものが二重に見える
筋力がどんどん低下していく
会話が困難になる
ろれつが回らない
呼吸困難
手に力が入らなくなる病気
手に力が入らない場合
一過性脳虚血発作
脳卒中
多発性筋炎
ギランバレー症候群
重症筋無力症
の可能性があります。
それぞれの「症状の特徴」について、詳しく解説します。
原因① 一過性脳虚血発作
脳への血流が一時的に悪くなることで、脳梗塞のような症状が短時間あらわれて消失する発作です。
症状があらわれた2日以内に脳梗塞を起こすことが多く、大変危険な状態です。
症状の特徴
手足に力が入らない
手足にしびれが生じる
物が飲み込みにくくなる
物が二重に見える
言語障害
※上記の症状が出現した5~15分後(遅くても24時間以内)には、一旦症状が改善されます。
この病気を発症しやすい人
肥満傾向
塩分摂取量が多い
アルコールの過剰摂取
喫煙者
生活習慣が乱れている(睡眠不足等)
ストレス過多
運動不足
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原因② 脳卒中
脳の血管が詰まる、破れることにより脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが起こり、脳が障害を受ける病気です。
症状の特徴
急に手足に力が入らなくなる
手足に麻痺が出てくる
頭痛
ふわふわと感じるめまい
言語障害
しびれ
この病気を発症しやすい人
肥満傾向
塩分摂取量が多い
アルコールの過剰摂取
喫煙者
運動不足
ストレス過多
生活習慣が乱れている(睡眠不足等)
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原因③ 多発性筋炎
筋肉に炎症が起こることで筋肉が破壊されてしまう難病です。
症状の特徴
筋肉に力が入りにくくなる
疲労感
痛みを伴う場合がある(関節痛)
物が飲み込みにくくなる
この病気を発症しやすい人
女性に多くみられる
中年世代の発症が多い
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原因④ ギランバレー症候群
抹消末梢神経に障害が生じて、手足や顔、呼吸器に麻痺がおこる病気です。
症状の特徴
急に手や足に力が入らなくなる(筋力の低下)
手のしびれ
物が二重に見えるようになる
口や目を閉じることができない
物をスムーズに飲み込めない
血圧変動や脈拍異常が起こる
この病気を発症しやすい人
40歳代前後での発症が多い(高齢者まで幅広い年代で発症する可能性あり)
男性にやや多い
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原因⑤ 重症筋無力症
全身の筋力が低下してしまう難病です。
症状の特徴
手を動かすと、すぐに筋肉疲労で力が入らなくなる
筋力低下
疲労感
眼瞼下垂
物が二重にみえる
この病気を発症しやすい人
女性に多くみられる
5歳未満に発症年齢のピークがある
女性では30~50代、男性では50~60代の発症者が多い
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早期受診のメリット
早めに受診して病気を発見することで、症状の改善がスムーズに進み、後遺症や合併症を予防できます。
また、重篤な疾患を早期に発見できれば、重症化を防ぐことにもつながります。
手に力が入らない症状を放置していると、治療が長期に及び、身体麻痺や言語障害等の症状が残ってしまうリスクが高まります。
また、命に関わるような重篤な状態に陥る恐れもあるため、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
参考
一般社団法人 日本神経学会 うまく力がはいらない(脱力)
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50)
一般社団法人 大阪府医師会 脳梗塞
健康の森 日本医師会 脳卒中
一般社団法人 日本血液製剤機構 重症筋無力症とは
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)