人の言っていることが理解できない…これって病気?
人の話が理解できないときに考えられる原因を、お医者さんに聞いてみました。
発達障害のセルフチェックリストも紹介するので、心当たりがないか確認してみましょう。
監修者
経歴
佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。
美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする。
精神科医としても臨床に当たっており、西洋医学から東洋医学に渡って世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発。
「人の言っていることが理解できない」のは病気?発達障害?
「他人の言っていることが理解できない」場合は、発達障害や音を処理する脳機能の異常が原因として考えられます。
発達障害があると、「相手の話を集中して最後まで聞けない」「相手の話に興味や関心を持てない」といった特性により、人の話を理解しづらくなることがあります。
また、脳の機能に何らかの問題があり、音声を脳内で処理できないために、話の内容が理解できていない可能性も考えられます。
考えられる3つの原因
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 聴覚情報処理障害(APD)
上記の障害により、人の言っていることが理解できないことがあります。
それぞれの概要と併せてセルフチェックリストを紹介するので、当てはまるものがないか確認してみましょう。
原因① 自閉症スペクトラム(ASD)
自閉症スペクトラム(ASD)とは、脳機能に部分的な偏りが生じることで、言語的コミュニケーションの障害が発生する発達障害です。
先天的な脳機能の障害が原因と考えられており、人の話を理解することや興味のない話題を聞くことが難しいという特性があります。
自閉症スペクトラムの人が苦手な話
- たとえ話・慣用句・冗談等をまじえた会話
- 想像力を必要とする話
- 自分自身で体験していない内容の話題
- 抽象的な表現をまじえた会話
- 二つ以上の内容について話をする
- 自身が苦手と感じる場所での会話
- 終了時間が決まっていない会話
自閉症スペクトラムのセルフチェック
- 他者とのコミュニケーションが苦手
- 他者の立場になって考えることができない・相手の感情が分からない
- 強いこだわりや限られた特定のことに興味を持つ
- 状況に応じた柔軟な対応が苦手
- 相手の言っていることを理解できない
- 言葉を覚えて使うことが困難
- 目と目を合わせて会話ができない
- 興味がない内容の会話に苦痛を感じる
上記のうち、1個以上当てはまる人は、自閉症スペクトラム(ASD)の疑いがあると考えられます。
原因② 注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、
- 注意力の欠如(集中力がない)
- 多動性(じっとしていられない)
- 衝動性(思いつくとすぐに行動してしまう)
といった症状があらわれる発達障害の一つです。
こういった症状が出てしまうのは、神経伝達が正常に行われておらず、特定の脳領域の活動が低下することが原因の一つだといわれています。
注意欠陥多動性障害の人が苦手なこと
- 興味がない内容の話
- 詳細な理解を必要とする話
- 計画を立てて物事を進行すること
- 雑音が多い環境
注意欠陥多動性障害のセルフチェック
- 集中力が続かずにミスを繰り返す
- じっと座っていられない
- 先のことを考えず行動する
- 話しかけられても気が付かないことがある
- 話を聞いていないように見られる
- 他者の話を聞かずに、一方的に自分だけしゃべる
- 他人の話を遮って発言する
- 外部からの刺激が強いと会話に集中できなくなる
- 自尊心が低い
上記のうち、1個以上当てはまる人は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の疑いがあると考えられます。
原因③ 聴覚情報処理障害(APD)
聴覚情報処理障害(APD)とは、聞こえた音声を脳内で処理できず、会話の内容を理解できない障害です。
聴力に異常はなく、聴いた音を処理する脳の中枢神経に何らかの異常が起きている状態です。
また、聴覚情報処理障害(APD)の人は、注意欠陥多動性障害(ADHD)を併発しているケースが多いです。
聴覚情報処理障害の人が苦手なこと
- 雑音が多い環境
- メモを取ること
- 長時間の会議
- 口頭のみで伝えられること
- 早口や小さい声での会話
- 似たような言葉の識別
聴覚情報処理障害のセルフチェック
- 聴力に異常はない
- 聞き返し・聞き間違えが多い
- ストレスをコントロールすることが苦手
- ADHDを発症している
- 声は聞こえているのに、言葉としては理解できない
- 長い話になると集中して聞き続けられない
- 言葉での指示に対して反応が遅れてしまう
上記のうち、1個以上当てはまる人は、聴覚情報処理障害(APD)の疑いがあると考えられます。
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2023-01-27
言葉が聞き取れないことが多いけど、もしかしたらAPDかもしれない…。
APDが疑われる症状について、お医者さんに聞いてみました。
チェックリストを紹介するので、心当たりがないか確認しましょう。
「聞こえているのに聞き取れない」のはAPD(聴覚情報処理障害)?
声は聞こえているのに、話の内容を理解することができません…。
これってAPDでしょうか?
「声は聞こえているのに話の内容は理解できない」という場合、APD(聴覚情報処理障害)が疑われるケースがあります。
APDは、聴力に異常はないものの、「雑音の多い環境で必要な音を選べない」ため、話の内容を理解することが困難になる障害です。
APDの原因は?
発症する原因は判明していませんが、先天的に「脳の音声処理機能」に問題があるのではないかと考えられています。
APDに気づくきっかけ
上司の指示が理解できず失敗してしまう
他者とのコミュニケーションがスムーズにできない
聞き間違えてしまう(言葉の意味をはきちがえる)
上記の経験を経て、自分がAPDではないかと自覚することが多いと考えられています。
学生時代から、「友人の会話が聞き取れない」「授業の内容が理解できない」等の悩みを感じているケースも多いです。
APDかもしれない…「セルフチェックシート」で確認しよう
言われたことを間違って理解しているケースが多い
「何?」「え?」等の言葉を1日に5回以上口にする
雑音・ノイズがあると気が散る
他者とのコミュニケーションが困難
上記の特徴に該当する場合、APDが疑われます。
なお、子どもの2~3%は、APDの障害があるとされています。
よくある特徴① 言われたことを間違って理解しているケースが多い
APDの特徴として、会話の相手の声が音として聞こえているにも関わらず、言葉としては聞き取れないことが挙げられます。
そのため、言われたことを間違って理解しやすい傾向にあると考えられています。
よくある特徴② 「何?」「え?」等の言葉を1日に5回以上口にする
APDの場合、「うまく聞き取れない」「言葉の意味を理解できない」といった状態になりやすいため、1日のうち何度も聞き返すことがあります。
よくある特徴③ 雑音・ノイズがあると気が散る
APDの場合、雑音が多いと聞こえる情報が多くなり、聞き取ることに疲れて気が散ってしまいます。
雑音がある環境だと人の話が聞き取りにくい、集中できないという人は、APDの可能性があります。
よくある特徴④ 他者とのコミュニケーションが困難
APDの場合、相手の話している言葉を理解できないことが多いため、コミュニケーションをとるのが難しくなります。
APDは何科の病院に行くべき?
APDが疑われる症状によって、
日常生活に支障が出ている
精神的に追い込まれて、生きづらさを感じる
といった状態であれば、医療機関を受診しましょう。
「耳鼻いんこう科」を受診することで、必要な検査や治療を受けられます。
まずは、困りごとの原因が本当にAPDなのかどうか、検査してもらうことが大切です。
どんな治療が受けられる?
APDが疑われる場合、
環境調整
言語障害トレーニング
補聴器具や補助ツールの使用
などによって、症状の改善を目指します。
治療方法
内容
環境調整
雑音を極力軽減させる環境を作ります。
会話をする人との距離を縮めたり、騒音防止用のヘッドホンを使用したりします。
言語障害トレーニング
スムーズで良好なコミュニケーションを行うための「聞き返しの訓練」等を行います。
補聴器具等の使用
補聴器
音声文字変換アプリ
聴覚トレーニング教材
ノイズキャンセリング付きイヤホン
聞き取りやすくするために、上記のような器具を使用します。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
APDマーク公式サイト 聴覚情報処理障害(APD)ってなに?
話が理解できないときは…すぐにできる「3つの対策」
相手の話が理解できないときは、
- 簡単な表現に直してもらう
- 集中力を維持できる環境で話をする
- 話を聞き取る能力を高める
といった方法で対策しましょう。
対策① 簡単な表現に直してもらう
話が理解できないときは、簡潔で具体的な表現に言い直してもらいましょう。
相手の話に、
- 難しい言葉
- 比喩表現
- たとえ話
- いろいろな意味を含む言葉
などが含まれると、内容が理解できないことがあります。
できるだけ簡潔な言葉に言い換えてもらえるよう、相手に伝えてください。
対策② 集中力を維持できる環境で話をする
人と話すときは、雑音が多い環境や人混みなどの「刺激の多い環境」をできるだけ避けましょう。
外部からの刺激が多いと、集中力が途切れやすくなるため、会話が頭に入ってこなくなります。
仕事で重要な話をするときは、「静かな会議室に場所を移す」などの配慮をお願いしてもよいでしょう。
対策③ 話を聞き取る能力を高める
- 会話の内容をメモする
- 聞き返し方を練習する
- 注意力や記憶力のトレーニングをする
上記のように、相手の話を聞き取る能力を高める工夫や練習を行いましょう。
話の内容を理解しやすくするために、少しずつ癖づけていくことが大切です。
病院に行ったら改善する?
病院で症状に合った治療を受けることで、改善が期待できると考えられています。
- 対策しているのに、効果が見られない
- 日常生活に支障が出ている
- 精神的苦痛を伴う
といった場合は、一度医療機関で相談してください。
病院は何科?
下記を参考にして、疑われる原因に合わせて診療科を選びましょう。
自閉症スペクトラム(ASD) → 「精神科」または「心療内科」
注意欠陥多動性障害(ADHD) → 「精神科」または「心療内科」
聴覚情報処理障害(APD) → 「耳鼻いんこう科」
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2023-01-27
何度注意されても治らない…もしかして発達障害?
何度注意されても治らない場合に発達障害が疑われるのかどうか、お医者さんに聞いてみました。
セルフチェックリストを紹介するので、心当たりがないか確認してみましょう。
ミスを予防するための対策も紹介します。
「何度、注意されても治らない」のは発達障害?
メモを取る・行動を見直すなどの対策をしても同じ失敗を繰り返す場合は、「ADHD」「ASD(自閉症スペクトラム症)」などの発達障害が疑われます。
こだわりが強くて注意されても伝わらない
注意した内容を忘れている
不注意が多く、同じミスを繰り返す
といった発達障害の特性により、注意されても治らないケースがあります。
発達障害の人が特に「ミスしやすい」作業は?
これまでにやったことのない新しい作業
複数の工程が必要とされる作業
対人の対応
などはミスが起きる確率が上がります。
対人の対応は、マニュアル通りにいかないことが多いため、ミスが起きやすいです。
ADHDによく見られる特徴は?
集中力が持続しない
話の途中で別のことを考える
不注意が多い
忘れ物が多い
スケジュールや仕事の優先順位を忘れる
同じミスを繰り返す
落ち着きがない
人が話していてもじっと聞かずに動いている
待つことが苦手
衝動的な行動が目立つ
目先の利益優先に動いてしまい、長期的な損益を考えられない
整理整頓が苦手
上記のうち、半分以上当てはまる場合はADHDが疑われます。
当人のお悩み|何度注意されても治せないときは、どうする?
何度注意されても忘れてしまったり、失敗を繰り返してしまったりする場合は、下記の方法を試してみましょう。
注意を受けたらメモを取る
自分用のマニュアルを作る
ToDoリストを作る
対策① 注意を受けたらメモを取る
注意を受けた内容をメモに残しましょう。
同じ仕事を行う際に、メモを見返すことでミスを予防できることがあります。
また、ミスをした際にメモをとることで、反省の気持ちや再発防止に努めている姿勢を相手に伝えられます。
対策② 自分用のマニュアルを作る
後で見返せるように、作業ごとに注意点や過去のミスをまとめたマニュアルを作成しましょう。
写真を使って見やすくしたり、過去のメモをまとめたりするとよいです。
マニュアルを作ることで、過去の失敗を思い返し、再発を防ぐことができます。
対策③ ToDoリストを作る
その日に行う仕事をまとめた「ToDoリスト」を作りましょう。
流れをあらかじめ決めておくことで、落ち着いて仕事を進めることができます。
ToDoリストを作っておけば、急な仕事を振られてもスケジュールに組み込みやすいです。
周囲のお悩み|部下・家族に何度言っても治らない…対処法は?
発達障害の疑いがある人に注意するときは、下記の3点を意識するとよいでしょう。
簡潔に注意点をまとめる
注意した後は声がけをする
注意した次の日は明るく接する
ポイント① 簡潔に注意しよう
指摘や指示は短く簡潔に伝えましょう。
注意する際は、「どのようにしたらよかったか」を本人に考えてもらうとよいです。
注意するときに、感情的にならないようにしてください。指摘したい内容が伝わらない可能性があります。
特に、スケジュールが忙しくなると感情的になりやすいので、余裕をもって仕事を振ることも大切です。
ポイント② 注意の直後は声がけを
注意をして相手が落ち込むと、さらなるミスを招く恐れがあります。
過度に落ち込んでいないか確認して、声がけしましょう。
ポイント③ 翌日は明るく接しよう
仕事が終わったら気持ちを切り替えて接するとよいです。
注意した翌日は、笑顔で挨拶をしましょう。
何度もミスを繰り返して注意を受けると、人間的に否定されている気分に陥りやすいです。
過度な負担を与えないように、何度もミスを責めたり、緊張感のある空気を引きずったりしないようにしましょう。
ADHDを疑う場合、病院に行くべき?
頑張っているのにミスが続く
同じミスが多くて自信が持てない
といった場合は、医療機関で相談してもよいでしょう。
ADHDの人は集中力を多く使うため疲れやすく、怠けていると誤解されやすいです。
人に認められないストレスから、精神障害を発症する恐れもあります。
生きにくさを感じている人は、一度病院で相談することをおすすめします。
身近な人に受診を勧めたい場合は?
「身近な人がADHDの症状で受診したら仕事がスムーズになった」など、間接的に前向きな話を出してみましょう。
ADHDの人は活動的な一面もあるので、興味が出たら行動に移しやすいです。
病院は何科?
大人の発達障害は「精神科」または「心療内科」で相談できます。
※発達障害の診断を行っていない医療機関もあるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診することをおすすめします。
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【体験談】ADHDの診断を受けて変わったこと
小さい頃からADHDかもしれないと感じていて、大人になってから仕事がうまくいかずに生きにくさを感じていました。
診断書をもらってからは、自分の得意なことや苦手なことが再確認できたので、どのように生きればいいか考えやすくなりました。(22歳女性)
自分は他人よりも劣っているという考えが根強くありましたが、診断を受けて、これは特性の一つだと知って気が楽になりました。(39歳男性)
ADHDの診断を受けてから、障害者手帳をもらいました。福祉サービスの支援員の指導を受けて、特性を理解してもらいながら仕事ができるようになりました。(52歳女性)
自分自身は診断を受けてから気が楽になりました。ただ、親からは「ADHDだから~ができないだろう」と決めつけられるのでつらい面もあります。(18歳女性)
ヘルプマークを付けるようになって、周りの人から助けてもらいやすくなりました。精神的にも気持ちが軽くなった気がします。(26歳女性)
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 「発達障害」とは・