毛巣洞(もうそうどう)ができた…。
放っておいたら自然に治る?
毛巣洞を放置したらどうなるか、お医者さんに聞きました。
自分で膿を出すことの危険性や、ガン化するリスクについても解説します。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
毛巣洞をほっとくとどうなる?
毛巣洞は、小さいものであれば、放っておいても自然治癒することがあります。
その場合、1~2週間程度で気にならなくなるでしょう。
「大きくなってきている」場合は放置NG!
毛巣洞がだんだん大きくなっている場合は、症状が進行していると考えられるため、放置してはいけません。
症状が進行しているのに放置してしまうと、毛巣洞に膿がたまり、大きくなってしまいます。
特に、座った際に刺激になる部位にできている毛巣洞には注意が必要です。
放っておくことで腫れや痛みが強くなり、座ったり寝転んだりすることがつらくなってきます。
再発を繰り返し「ガン化」することも
毛巣洞は、一度治っても同じような場所に繰り返し発症してしまうことも多いです。
繰り返し刺激を与えていることで、ガン化してしまうリスクもあります。
「毛巣洞」はこんな病気です
おしりの毛の根元に細菌が入り込み、感染を起こして化膿を起こす病気です。
触ると「膿のしこり」を感じ、皮膚に穴が空いて見えます。
毛巣洞は、おしりの割れ目の上あたりにできることが多いですが、おしり全体・脇の下などにできるケースもあります。
おしりは、衣類や座り姿勢による刺激が多いため、毛巣洞ができやすいです。
座っている時間が長い多毛の男性に多い病気ですが、女性に生じることもあります。
自分で膿を出すのはNG!
毛巣洞の膿を自分で出すことは避けて、医療機関で治療を受けましょう。
皮膚に穴が開いて、再び細菌感染を起こす可能性があります。
膿が出ている毛巣洞は、感染が進み、化膿も進んで膿が内部で増えている状態です。
膿を出すと一時的に楽になりますが、傷口がむき出しになっている状態なので、刺激によって痛みが出たり、傷跡が残りやすくなったりします。
オロナインなどの市販薬は使える?
オロナインなどの抗生物質配合の市販薬を使用することも可能です。
ただし、
- 使用して2日程度経ってもよくならない
- 症状が悪くなっている
という場合は、すぐに使用をやめて医療機関で受診しましょう。
オロナインは殺菌効果があるので、皮膚表面を覆って症状を改善する効果があります。
ただし、症状が進行していて、すでにひどい炎症や化膿を起こしている場合は、市販薬ではよくならない場合もあります。
病院は、「皮膚科」または「形成外科」で受診するとよいでしょう。
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こんな症状が出ていたら、早めに病院へ!
- 腫れて痛みがある
- 痛くて座るのが苦痛
- 触ると痛い
- ズキズキして汗をかいたときや入浴時にしみる
- 炎症が起きている(赤くなっている)
- かゆみがある
- 化膿している
- 化膿はしていないが、水分が出てくる
上記のような症状が出ている場合は、躊躇せずに「皮膚科」または「形成外科」を受診しましょう。
進行してしまうと、膿が出てきて皮膚の中にたまっていき、しこりが大きくなっていきます。
その後、自然に化膿部分が裂けて、皮膚に傷がつき、そこからまた細菌感染を起こす恐れがあります。
また、大きくなってから治療を受けようとすると、再発を防ぐために患部を全体的に切り取る手術が必要になることもあります。
医師に伝えるとよいこと
- 毛巣洞らしきものがいつからできているか
- 痛みの度合い・症状
- 他に、同じようなものができている部分はあるか
- セルケアで何かしたこと
受診時に上記のことを医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
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どんな治療を受けるの?
毛巣洞の穴が小さく、膿もない場合は、切除せずに「内服治療」などで経過を見ることが可能です。
化膿が進み、大きくなっているものは、膿を取り出すために切開する必要があります。
ひどくなると、再発を防ぐために、毛巣洞全体を切り取る手術を行います。
入院が必要になることも
大がかりな手術になる場合は、入院治療になります。
切開した際の傷が大きくなると閉じることができなくなり、植皮(皮膚の移植)などの入院を伴う大きな手術が必要になるためです。
どれくらいの期間で快方に向かう?
▼軽度の場合
症状が軽い場合は、数日で徐々によくなります。
▼手術した場合
症状が進行した状態で「手術した場合」は、1週間程度の入院(植皮したときは最低2週間)が必要です。
その後、経過観察などが行われ3~4週間で元の生活に戻れます。
費用はどれくらい?
毛巣洞の治療費は、2、3千円〜数万円です。
入院した場合は、入院費用として、1日5千〜1万円程度かかります。
治療には、保険が適用されます。
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2022-07-27
鼠径部に違和感が…。
病院は何科を受診すればいい?
鼠径部の違和感を相談できる診療科を、お医者さんに聞いてみました。
「鼠径ヘルニア」が原因である場合、重症化すると命に関わる恐れがあります。
病気の特徴についても解説しますので、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
鼠径部に違和感「病院は何科?」
鼠径部に違和感がある場合、「外科」、もしくは「皮膚科」の受診をおすすめします。
外科をおすすめするケース
鼠径部に「柔らかい膨らみ」がある
仰向けに寝てしばらく待つと「膨らみ」がお腹に戻る
手で押さえると「膨らみ」がお腹に戻る
お腹に張り感がある
皮膚科をおすすめするケース
鼠径部に「硬いしこり」がある
外科の症状に当てはまる場合、「鼠径ヘルニア」が疑われます。
いわゆる「脱腸」と呼ばれる状態で、重症化すると命に関わるため、手術が必要になることが多いです。
一方、皮膚科の症状に当てはまる場合は、「粉瘤」が疑われます。
こちらは比較的心配いらない症状ですが、自然治癒することはないため、切除治療が基本となります。
医師に伝えるポイント
鼠径部の違和感を自覚した時期
違和感に気づいたときの状況(動作等)
違和感以外の症状(痛み・腫れ・腹部の張り感等)
診察時には、上記の点を聞かれることが多いです。
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“柔らかい膨らみ”がある人は「鼠径ヘルニア」かも
「鼠径ヘルニア」の症状チェック
鼠径部に、「柔らかい膨らみ」がある
仰向けに寝てしばらく待つと、「膨らみ」がお腹に戻る
手で押さえると、「膨らみ」がお腹に戻る
初期は痛みを感じない(※)
お腹に張り感がある
便秘である
排尿障害である
(※)進行すると、次第に痛みを感じるようになります。
鼠径ヘルニアとは、太ももの付け根部分の筋膜(筋肉を包んでいる膜)の間から、内臓の一部が飛び出てしまう状態です。
立ったとき・お腹に力を入れたときに、鼠径部に違和感が生じるケースが多いです。
※腸管が脱出するケースが多いため、「脱腸」とも呼ばれています。
「鼠径ヘルニア」になりやすい人の特徴
立ち仕事・力仕事をしている
肥満
便秘がある
喘息がある
前立腺肥大症
妊婦
鼠径ヘルニアは、加齢に伴い発症しやすくなります。
どの年代でも発症する疾患ですが、特に「中高年世代の男性」に多く見られます。
鼠径ヘルニアが疑われるときは、早めに「外科」へ!
鼠径ヘルニアは、自然に治らない病気です。
症状の悪化を防ぐためにも、鼠径ヘルニアが疑われるときは早めに「外科」で診てもらいましょう。
放置した場合、腸がお腹の中に戻らなくなり、その部分が壊死してしまうことがあります。
この状態になると命に関わるケースもあるため、悪化する前に治療を受けることが大切です。
どんな治療をするの?
鼠径ヘルニアの治療では、一般的に「開腹法」、「腹腔鏡」などの外科手術を行います。
開腹法とは、お腹を切開して行う手術の方法です。
腹腔鏡の手術は、お腹にあけた小さな穴から細長い手術器械を挿入して行います。
手術治療を行う場合は、3日間程度の入院が必要になるケースが多いです。
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“硬いしこり”は「粉瘤」が原因かも
「粉瘤」の症状チェック
鼠径部の「硬いしこり」
しこりの大きさは1~2cm程度
基本的に痛みはない(※)
強く押すと開口部から内容物が排出される
※炎症を起こすと、赤く腫れて痛みが出るようになります。
粉瘤(アテローム)は、皮膚の内部に「垢」や「角質」が溜まっている状態です。
しこりがあることで、鼠径部に違和感が生じる場合があります。
なりやすい人の特徴
鼠径部の粉瘤は、女性に多く見られます。
原因として、
鼠径部を摩擦するような下着の着用
分泌腺の発達
体質
などが考えられますが、はっきりとは分かっていません。
粉瘤が気になるときは、「皮膚科」で相談を
粉瘤は自然に治らないできものです。
放置すると次第に大きくなる可能性もあるため、気になるときは「皮膚科」で相談しましょう。
また、
粉瘤が大きくなっている
強い痛みを伴う
発赤して腫れている
臭いを伴うドロっとしたものが出てくる
といった場合は、早めに受診しましょう。
特に「手術の傷跡を目立たせたくない」という人は、粉瘤が小さいうちに治療を受けることをおすすめします。
どんな治療をするの?
病院では、粉瘤を切除する治療を行うことが多いです。
粉瘤の大きさにもよりますが、手術で除去する場合の所要時間は10~30分程度です。
個人差がありますが、術後3~5日間は出血(血がにじむ等)が見られることもあります。
また、術後の傷(穴)は、1~4週間程度経過すると、ふさがるケースが多いです。
※粉瘤が発生していても、痛みやかゆみといった症状がない場合は、そのまま様子を見ることもあります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
済生会新潟病院 鼡径(そけい)ヘルニア、いわゆる脱腸とは
聖路加国際病院 女性のヘルニア
東京外科クリニック Nuck管水腫
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2021-01-04
腕や顔、首などにできた「押すと痛いしこり」。
これは一体何…?
体にできる、押すと痛いしこりについて、お医者さんにお聞きしました。
皮膚のしこりは、良性と悪性、両方の可能性が考えられます。
病気とご自身の症状を、照らし合わせてみましょう。
押すと痛いしこり…これ大丈夫?
ごくまれに悪性腫瘍のケースがあり、検査をしない限り大丈夫とは言いきれません。
ただ、皮膚の押すと痛いしこりは、良性腫瘍がほとんどです。痛みがあるのは、細菌が感染して、炎症を起こしている可能性があります。
よくある「押すと痛いしこり」の3つの原因
皮膚にできる、押すと痛いしこりは
粉瘤(アテローム)
石灰化上皮腫
神経鞘腫
の可能性があります。
原因① 粉瘤(アテローム)
アテロームとは、皮膚の下にできた袋状のもの(嚢腫)に、皮膚の角質や皮脂がたまってできた腫瘍のことです。
押すと痛いのは、しこりに細菌が侵入して、化膿しているためです(炎症性もしくは化膿性粉瘤)。その場合、しこりは赤く腫れ、痛みを伴います。
発症しやすい人に特徴はありませんが、体を清潔に保っていても、できやすい体質の人がいます。
しこりの特徴
角質や皮脂は袋にどんどん蓄積していき、時間とともに徐々に大きくなっていきます。アテロームは、数mm~数cmの半球状で、強く押すと、臭いのするドロドロとした物質が出てくることがあります。顔や首、耳のうしろ、背中などに発生しやすいです。
1個~数個できるのが一般的ですが、たくさんできることもあります。
自然に治る?
アテロームは、放置したり、市販薬を塗ったりしても消えません。
放っておくと、さらに大きくなることがあります。
粉瘤は、良性腫瘍なので、切除するかどうかは本人の自由ですが、取らない限りはなくなりません。
しこりに細菌が侵入して化膿することがあり、赤く腫れ、痛みを生じます。
さらに化膿すると、しこりの内容物が破壊されて膿がたまり(膿瘍)、膿を出す必要があります。
病院での治療法
メスを使って粉瘤を表面の皮膚ごと切り取り、縫いあわせる手術を行います。
大きくなってから切除すると傷跡も大きくなるので、小さいうちに切除するとよいでしょう。
原因② 石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)
皮膚の一部が石灰のように硬くなる病気です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、毛根にある毛母細胞が原因となっていると考えられています。
細菌感染により、炎症を起こしていると、痛むことがあります。
子どもや若年者が発症しやすいです。
しこりの特徴
しこりは石のように硬く、表面は少しゴツゴツとしています。無症状のことが多いですが、かゆみを感じたり、押すと痛んだりすることがあります。
しこりの上の皮膚が薄い場合は、しこりが透けて、青黒い色や黄白色に見えることがあります。境界がはっきりとしていて、皮膚の表面から触って動かすことができます。
しこりは、顔や首、腕にできやすいです。細菌に感染した場合には、赤く腫れることがあります。
自然に治る?
放っておいても、自然に消えることはありません。
病院での治療法
皮膚を木の葉状に切り取り、しこりを取り除き、縫い合わせる手術を行います。
原因③ 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
神経の近くにできる良性の腫瘍です。
神経細胞は束になっていますが、主にその中のひとつに形成されます。
発症する原因は、はっきりとわかっていません。
神経のそばなので、腫瘍ができることで痛みを感じる場合があります。皮膚表面にできた場合は、押したときだけ痛む、押すと神経のある方向へ痛みを感じることがあります。
しこりの特徴
皮膚表面に発生すると、膨らみがわかることがあります。
頭、手、足、顔など、様々な場所に発生します。
発症する人の多くは大人ですが、子供が発症することもあります。
自然に治る?
自然にはなくなりません。
ただ、大きくなることも少ないので、気になる症状がなければ、経過観察となります。
病院での治療法
手術による摘出が主な治療法です。
大きくなり、神経を圧迫して痛みや痺れがある場合は、摘出されます。完全に摘出が行われれば、基本的に再発はありません。
こんなしこりは要注意!悪性腫瘍(がん)の特徴
悪性腫瘍が疑われるしこりは、成長スピードが速い、皮膚の表面から触って動かそうとしても動かないことが多いなどの特徴があります。
また、直径5cmをこえる大きさで硬いしこりや、表面が凸凹しているしこりは、悪性腫瘍の可能性があります。
悪性腫瘍ができやすいのはどこ?
悪性腫瘍は手足にできやすいです。
病院に行く目安
しこりが赤くなってきたり、痛みが強くなってきたりしたら、すぐに受診しましょう。
しこりは小さいうちに対処したほうが、傷が小さくて済むことが多いです。早めの受診をおすすめします。
悪性腫瘍が疑われる場合も、早急に受診してください。
何科を受診する?
皮膚のしこりが気になるときは、皮膚科や形成外科を受診しましょう。
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▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 アテローム(粉瘤)
一般社団法人 日本形成外科学会 石灰化上皮腫
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。