肋骨にしこりがある…。これは何?
肋骨や脇腹にできる「しこりの正体」を解説します。
良性だけでなく、悪性の病気も考えられるので要注意です。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
肋骨にしこりが…!これ大丈夫?
肋骨や脇腹付近にできるしこりの多くは「良性腫瘍」です。
良性腫瘍は、命に関わることのない病気なので心配いりません。
ただし、「しこりの硬さが増した」「しこりが大きくなった」場合は病気の可能性があり、注意が必要です。医療機関の受診をおすすめします。
押すと痛いのはキケン?
しこりを押すと痛むのは、悪性腫瘍だからでしょうか?
押すと痛いからといって、危険な病気とは限りません。
良性でも、炎症を起こすと痛みが出ます。詳しい検査が必要なので、一度医療機関を受診しましょう。
考えられる3つの原因
原因① 副乳
人間の進化の過程で残った、乳房の痕跡です。
乳腺組織が残存しているため、しこりのように感じることもあります。
生理中や授乳期の女性に発症しやすいです。
ただし、男性にも発生します。
しこりの特徴
ほくろ程度の、できもののような小さなしこりです。
痛み・腫れ・分泌物が出る場合があります。
自然に治る?
副乳自体は消えませんが、しこりのようなものは生理や授乳期が終われば、自然と小さくなるケースが多いです。
放っておくとどうなる?
副乳に乳がんを発症するケースもあるため、放置は危険です。
一度、婦人科を受診することをおすすめします。
原因② 粉瘤
皮膚の下に袋状のもの(嚢腫)ができ、通常では皮膚から剥げ落ちるはずの角質や皮脂が、剥げ落ちずに袋の中にたまってしまうことで、しこりができます。
粉瘤は、女性よりも男性に多く見られます。
生まれつきの体質が関係していると言われています。
しこりの特徴
粉瘤の場合、少し盛り上がっており、放置すると角質や皮脂がたまり、少しずつ大きくなります。
しこりの中央にある黒い点のようなものを強く押すと、臭くてドロドロとした物質が出てくることがあります。
自然に治る?
残念ながら、粉瘤が自然に消えることはありません。
市販薬もないので、皮膚科など医療機関での治療が必要になります。
放っておくとどうなる?
放置すると、徐々に大きくなります。
しこりが破裂し、膿が飛び散る可能性があります。
しこりの中央の開口部から細菌が入りすると、化膿するケースがあります。
原因③ 脂肪腫
脂肪を作る「脂肪細胞」が異常に増殖することでしこりができます。原因は今のところはっきりとわかっていません。
しこりの特徴
皮膚に異常がない滑らかで軟らかいこぶのような見た目をしています。
しこりの境界ははっきりとし、触ると硬いです。
大きさは一般的に7.5cm以下のものが多いです。(ただし、数mm~10cm以上までさまざまです。)
痛みはないことが多いですが、まれに押すと痛むこともあります。
脂肪腫ができやすい人
誰にでも発症する可能性がありますが、遺伝的要因が関係していると考えられています。
自然に治る?
残念ながら、脂肪腫が自然に小さくなったり、消えたりすることはありません。
気になる方は皮膚科で治療を受けましょう。
放っておくとどうなる?
脂肪腫は良性腫瘍なので、放置しても何の問題もありません。
ただし、大きくなると周囲組織を圧迫して違和感、痛み、痺れを伴うことがあります。
おでこなど人目につく気になる部位にできた場合や、違和感がある場合は皮膚科での切除手術をおすすめします。
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みぞおちにしこりがある…。これは脂肪腫?
みぞおちにできる脂肪腫の特徴を、お医者さんが解説します。
悪性腫瘍の可能性もあるため、放置は危険です。
みぞおちにしこりが…これ大丈夫?
みぞおちのしこりは脂肪腫など良性腫瘍の可能性が高いです。
良性腫瘍であれば、命に関わることはありません。
ただし、「しこりが大きくなっている」「痛みがない」というような症状がみられる場合は、まれに悪性腫瘍の可能性があります。
ご自身で良性か悪性か見分けるのは難しいので、必ず医療機関で検査を受けましょう。
柔らかい痛くないしこりは「脂肪腫」の可能性大
みぞおちにできた柔らかく、痛みのないしこりは「脂肪腫」かもしれません。
脂肪腫とは、細胞の異常な増殖によって発生した良性腫瘍です。
脂肪腫の硬さ・大きさはさまざまです。(約7.5cm以内のものが多い)で、1個だけできることもあれば、多数できることもあります。
しこりの特徴
滑らかでやわらかいこぶのような見た目
周囲との境界がはっきりとしている
皮膚表面に異常はない
体幹に発生しやすい
通常、痛みはない
押すと痛むことがある
脂肪腫の原因は?
なぜ脂肪腫ができるのか、現在ははっきりとわかっていません。
遺伝的要因が関係していると考えられています。
脂肪腫は、「自然に治る?」
脂肪腫が自然に消えることはありません。
取り除くには手術が必要です。
脂肪腫を「放置するとどうなる?」
放っておいても、体に害を及ぼすことはないですが、大きくなっていきます。
大きくなると周囲組織と癒着して剥がれにくくなったり、周囲組織への圧迫で違和感や痺れを生じたりすることがあります。
大きくなってから摘出した際は、傷が大きくなるので、早めの治療をおすすめします。
病院に行く目安
脂肪腫自体は命に関わることはないですが、脂肪腫と似た悪性腫瘍の可能性もあるため、油断は禁物です。しこりがあるときは、必ず医療機関を受診しましょう。
病院での治療
局所麻酔をした上で、しこりの上からしこりの直径と同じくらいの大きさに切開します。
しこりを包んでいる膜を破らないようにしながら、周りの組織から剥がして取り出します。
目安として、治療期間は1週間〜10日ほどかかることが多いです。
脂肪腫の剥離・摘出用の器具が入る程度の必要最小限の切開で、しこりを取り出す「スクイージング手術」という方法もあります。
治療費はいくらかかる?
治療費は保険適用になります。
しこり大きさでも異なりますが、1万円前後で、薬は1,000円ほどかかります。
治療費は医療機関によって前後するので、医療機関に問い合わせるといいでしょう。
皮膚科を探す
悪性腫瘍と見分けるには?
悪性腫瘍と良性腫瘍を見分けるのは難しく、医療機関での検査が必要です。
みぞおちのしこりは「肝臓がん」「腎臓がん」「胃がん」といった悪性腫瘍の場合があります。
◆肝臓がん
初期には自覚症状がほとんどありません。
お腹にしこり・圧迫感・痛みなどを感じる頃には、がんが進行している状態です。
◆腎臓がん
特徴的な症状がなく、他の病気で検診や検査を受けた時に偶然発見するケースが多いです。
進行すると、お腹のしこり以外に、血尿・背中や腰の痛み・足のむくみ・食欲不振・吐き気・便秘・腹痛などの症状があらわれることがあります。
◆胃がん
初期には自覚症状がなく、進行しても症状がないケースもあります。
症状がみられるとしたら、みぞおちの痛み・みそおちの不快感や違和感・胸やけ・吐き気・食欲不振などです。貧血や黒い便が出ることもあります。ただし、このような症状は、胃炎や胃潰瘍でもみられるため判断が難しいです。
みぞおちのしこりは早めに病院へ
みぞおちのしこりが悪性腫瘍の場合、放っておくと、他の部位に転移するリスクがあります。最悪の場合、命を落とす可能性があるので症状に気づいたら、早めに病院で相談しましょう。
病院は何科?
みぞおちにしこりができたときは、皮膚科を受診しましょう。
※悪性腫瘍が疑われる時は、内科、形成外科を受診し検査を受けてください。
皮膚科を探す
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
MSDマニュアル家庭版 脂肪腫
一般社団法人 日本形成外科学会
独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院
国立がん研究センター がん情報サービス 肝細胞がん
国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん
国立がん研究センター がん情報サービス 胃がん
悪性腫瘍の可能性は?
肋骨や脇腹にできたしこりは、「軟骨肉腫」といった悪性腫瘍の可能性も考えられます。
悪性腫瘍か良性腫瘍かご自身で判断するのは困難なので、医療機関での検査をおすすめします。
軟骨肉腫とは?
軟骨肉腫とは、皮下脂肪や筋肉などにガン細胞ができる悪性腫瘍細胞の一種です。
放置すると、がん細胞がほかの組織に転移し、肺がんなど、ほかの臓器のがんを引き起こします。最悪の場合、命を落とす可能性があるので、早急な治療が必要です。
早期受診をおすすめする理由
乳がんや軟骨肉腫など重い病気が隠れていた場合、早期受診が鍵となります。
ご自身で判断するのは危険なので、肋骨や脇腹のしこりに気づいたら、速やかに医療機関へ相談しましょう。
病院は何科?
肋骨・脇腹にしこりがある場合は皮膚科を受診しましょう。
副乳が疑われる場合には、婦人科を受診すると良いでしょう。
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2020-09-24
肋骨を押すと痛いのはなぜ…?
どのような原因が考えられるのか、お医者さんに聞きました。
対処法や病院に行く目安も解説します。
原因不明の肋骨の痛みは、重い病気の可能性もあるので、不安な方はぜひ参考にしてください。
大丈夫?すぐ病院行くべき?
自分の症状がどちらにあたるのか、確かめておきましょう。
いったん様子を見てもいい症状
一時的な軽い痛み
徐々に痛みが生じてきた
「ここが痛い」と痛みのある範囲を示せる
体を動かすと痛みがでる(下を向いたときや体を捻ったときなど)
早急に病院に行ったほうがいい症状
激しい痛みが続く(20分以上)
肋骨の広範囲で痛みを感じる
痛みがどんどんひどくなる
締め付けられるような痛み
冷や汗が出る
息苦しい
意識障害がある
この場合、心筋梗塞や気胸などの病気が、危険な状態になっている可能性があります。早急に病院を受診してください。
内科を探す
肋骨を押すと痛い理由
主な原因としては
①肋間神経痛
②肋軟骨炎
③肋骨骨折・ヒビ
が考えられます。
それぞれの症状について解説します。
原因① 肋間神経痛
肋骨に沿うように走っている肋間神経が、何らかの影響を受けたために突然痛みが起こることをいいます。
肋間神経痛は、女性に多く見られる病気で、中年以上(40代~50代)に多く見られます。特に、骨粗しょう症などで、骨が弱っていると発症しやすいです。
思い当たる?肋間神経痛の発症原因
激しいせきが長期間続いた
脊髄神経が圧迫された(骨折・打撲・腫瘍・椎間板ヘルニア等)
肋骨神経が圧迫された(背骨が曲がる等)
帯状疱疹ウイルス感染の後遺症
内臓の病気
痛みの特徴
押すと痛みが悪化する
強い痛み(激痛)
せき、くしゃみ、深呼吸、少しの体勢変化などで痛みが悪化する
片側のみに痛むことが多い
肋骨に沿うように痛む
自分でできる対処法
体を横にすることで痛みを緩和できることがあります。
痛みが続き、根本的に治したい場合は病院を受診しましょう。
病院に行くべき?
・激しい痛み
・締め付けられるような痛み
・息苦しい
・発熱がある
という場合は病院を受診してください。
病院では、胸部レントゲン検査、心電図、CT検査、MRI検査など画像診断や血液検査で体の状態を確認します。痛み止め(消炎鎮痛薬、湿布など)を用いた治療が行われることが多いです。
病院は何科?
内科・整形外科の受診をおすすめします。
内科を探す
※症状の状態や、病院の設備によって、適切な医療機関を紹介されることがあります。
原因② 肋軟骨炎
肋軟骨(肋骨と胸骨の間にある軟骨)が慢性的に炎症を起こしている状態です。
成人(特に40歳以上)に多くみられ、比較的女性に多い傾向があります。
風邪などのウイルス感染や、打撲などの外傷によって起こると考えられていますが、原因がはっきりとしないことが多いです。
肋骨の痛みの特徴
圧迫すると痛い
鋭い痛み
くしゃみやせきで痛みが増す
片側だけに痛みが起こりやすい
第2肋骨から第5肋骨が痛みやすい
自分でできる対処法
体を動かさずに安静にしていると、痛みがやわらぎます。
病院に行くべき?
激しい痛みで日常生活に支障が出ている場合や、発熱がある場合は病院に行きましょう。
病院の治療では、超音波検査、胸部レントゲン検査、血液検査を行い、内科的な病気でないかを確認します。その後、痛み止めの薬(非ステロイド系抗炎症薬等)を処方することが多いです。
病院は何科?
病院を受診するときは、内科か整形外科をおすすめします。
内科を探す
※症状の状態や、病院の設備によって、適切な医療機関を紹介されることがあります。
原因③ 肋骨骨折、ヒビ
転倒して胸部をぶつけた
ゴルフで体を捻った
激しい咳やくしゃみが続いている
といったときに起こります。
肋骨の痛み以外にも、皮下出血・腫れといった症状があります。また、痛みのある部分を圧迫すると、骨がきしむような音がします。
肋骨の痛みの特徴
くしゃみ、せき、深呼吸により痛みが増す
体を反らす、肩を動かすなどの動作で痛みが増す
自分でできる対処法
呼吸だけでも痛むような場合、応急処置として、患部に厚めのタオルを当てて上から軽く圧迫すると痛みが緩和することがあります。
病院に行くべき?
痛みが強くて日常生活に支障が出る場合は、病院を受診してください。
病院では、胸部触診、胸部レントゲン検査などを行います。体の状態が確認できたら、痛み止め(消炎鎮痛剤、湿布など)を処方して様子を見ます。
また、大きな力が加わったことで肋骨骨折やヒビが発生した場合、複数の肋骨が折れていることがあります。そういった場合、折れた骨によって、心臓、肺、血管などが損傷している可能性があるため、早急に病院を受診してください。
病院は何科?
整形外科の受診をおすすめします。
整形外科を探す
痛みに加えて「しこり」も…もしやガン?
肋骨あたりにしこりがある場合、ガンと断言はできませんが、その可能性はあると考えられます。
肋骨あたりにしこりがあるガンには、胆のうガン・胆道ガン、成人原発性肝ガンが考えられます。
ガンの主な症状
<胆のうガン・胆道ガン>
上腹部の痛み(鈍痛)
右肋骨下周辺の痛み(鈍痛)
背中まで拡がる痛み
黄疸
食欲低下
体重減少
白っぽい便が出る
<成人原発性肝ガン>
腹部腫脹
右上腹部の不快感
右側の背中や肩甲骨周辺の痛み
黄疸
尿の色が濃くなる
発熱
筋力低下
倦怠感、疲労感
吐き気、嘔吐
体重減少
ガンの場合の対処
ガンが疑われる場合は、内科・消化器内科・消化器外科の受診をおすすめします。
内科を探す
原因がわからなくて、何科に行くか迷う
肋骨に痛みがあり、原因がよくわからないときは、内科を受診して相談することをおすすめします。
内科を探す
心配な痛みは早めに受診を
早く病院を受診することで、肋骨の痛みの原因が判明し、症状に合った治療が受けられます。そのため、早い症状の改善が期待できます。
また、深刻な病気の見逃しを防ぐこともできます。
肋骨の痛みの原因が、深刻な病気だった場合、放置によって症状の悪化、症状改善の遅れ、命に関わる状態に陥るなどの恐れがあります。
これまで解説した以外にも、次のような病気の可能性があります。
虚血性心疾患:極端に痛みが強い、発汗、左腕の痛み、吐き気を伴う
化膿性疾患(肺炎、気胸):発熱(高熱)、腫れ、赤くなる、息苦しさを伴う
胆石症:お腹の右上部に激痛が起こる
急性膵炎:みぞおちから肋骨下部周辺に持続して激痛が起こる
急性胆のう炎:右側のみぞおち、右上部肋骨あたりに痛みが起こる(主に食後)
▼参考
公益社団法人 臨床心臓病学教育研究会 胸部の症状
https://www.jeccs.org/general/symptom/chest/
東京内科医会 急に胸が痛くなったら
http://www.topa.jp/tokyo/2007-4.html
一般社団法人 日本骨折治療学会 肋骨骨折
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip09.html
日本医師会 医療と健康 すい炎
https://www.med.or.jp/chishiki/suien/003.html
癌治療情報センター 胆のうがん・胆道がん特有の症状
http://cancerjp.com/archives/278
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。