突然、右肩甲骨に痛みが…これは大丈夫?
ひょっとするとその痛みは「内臓の不調のサイン」かもしれません。
急な痛みの原因と対処法を詳しく解説します。
突然痛くなって不安…大丈夫?
肩甲骨に痛みがあったとしても、痛みが一時的なもので、そのほかの不調がない場合は、一旦様子を見ても大丈夫です。
ただし、痛みが続いたり、激しい痛みで日常生活に支障が出たり、ほかに心配な症状がある場合は、病院に行きましょう。
なぜ?右肩甲骨が痛い理由
右肩甲骨が突然痛むときは、
①筋肉・骨・関節の不調
②内臓の不調
が原因となっているケースが多いです。
原因① 筋肉・骨・関節の不調
肩甲骨付近の筋肉・骨・関節に不調が生じると痛くなります。
よくあるのは、
です。
ぎっくり背中…背中にある関節や筋肉が炎症を起こすことをいいます。呼吸をすると痛みを感じます。
頚腕症候群…首や肩、腕に痛みある症状の総称のことです。痛みだけでなく、しびれなどの症状があります。
胸郭出口症候群…首と胸の間にある神経が圧迫されて起こり、痛みのほか、チクチクとする感覚があります。
痛みの特徴
- しびれるような痛み
- 引っ張られるような痛み
- 急な激痛
揉むと症状がやわらぐ場合は、内臓が原因ではなく、筋肉などの痛みであることが多いです。
痛みを和らげる方法
体の血流を良くすることで、痛みをやわらげ、症状を改善できることがあります。
痛みのある場所に蒸しタオルをのせる、肩まで入浴する、などが有効です。
肩甲骨を動かすストレッチもおすすめです。
背中で両手を組み、上下にゆっくり動かすと、肩甲骨まわりをほぐせます。
治すにはどうすればいい?
- 同じ姿勢を長時間とらない
- 重いものを持たない
- 体を冷やさない
- しっかり睡眠をとる
などを心がけてください。
病院に行く目安
症状を改善する生活をしても痛みが治らない、痛くて日常生活に支障出る場合は、病院に行きましょう。
何科を受診する?
整形外科を受診してください。
整形外科を探す
<病院で受ける治療>
牽引療法や理学療法のほか、消炎鎮痛剤や血流改善薬、湿布・坐薬の処方をします。痛みの原因が、頚腕症候群や胸郭出口症候群の場合は、手術が必要になることもあります。
原因② 内臓の不調
右肩甲骨付近に位置する胆のうや膵臓に何らかの不具合が生じている可能性があります。
よくあるのは、
です。
胆石…体質や食生活などが原因で胆のうや胆管に結石ができる病気で、強い痛みを感じます。
膵炎…膵臓が炎症を起こす病気のことです。過度のアルコール摂取で働きが弱り、食べ物を消化するために分泌する酵素で膵臓自身がダメージを受けます。
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膵炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
膵炎の主な症状も紹介するので、「膵炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしてみてください。
膵炎とは
膵炎とは、膵臓の消化液が漏れて、臓器を傷つけてしまう病気です。
この膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分かれます。
「急性膵炎」とは、消化酵素によって膵臓自体がダメージを受けて、炎症が起こっている状態です。
「慢性膵炎」とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」それぞれの症状
急性膵炎
▼軽度~中等度の症状
みぞおち周辺から左上腹部の痛み
背中の痛み
吐き気、おう吐(吐いても症状が改善しない)
発熱(37度~38度程度が多い)
食欲不振
腹部膨満感
▼重度の症状
血圧低下
皮膚が黄色っぽくなる
呼吸困難
精神が錯乱してしまうほどの激しい痛み
失神
慢性膵炎
腹痛を5〜10年ほど繰り返す
急にお腹や背中が痛くなることがある
下痢や便秘の症状がある
みぞおちを押すと痛い
だるい
食欲不振
吐き気、嘔吐
お腹の張り(膨満感)
体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
膵炎の原因
膵炎の原因には、「お酒の飲み過ぎ」「胆石が胆管で詰まる」などが挙げられます。
ただし、はっきりと原因が分からないケースもあります。
膵炎になりやすい人
お酒をよく飲む
タバコを吸う
暴飲暴食している
脂肪分を多く含む食品のとり過ぎ
就寝直前に食事をとることが多い
刺激が強い飲食物を好む
急性膵炎を疑う場合はすぐ病院へ
膵炎が疑われる場合は、「内科」で受診することをおすすめします。
急性膵炎を発症すると、命に関わるケースもあります。
特に毎日飲酒している方は、腰・背中あたり痛みを感じたら早めに受診しましょう。
内科を探す
慢性膵炎も放置はNG
慢性膵炎は症状が進行すると、インスリンの分泌量が低下し、糖尿病を発症する恐れがあります。
また、症状が悪化すると、膵臓ガンを発症する恐れもあるため、早めに受診してください。
膵炎の検査・治療法
医療機関では、必要に応じて血液検査、内視鏡、エコーなどを行います。
そこまで痛い検査はありません。
膵炎の治療は、
鎮痛剤の投与
輸血
絶食
などをおこなって症状の改善を図ります。
安定するまで集中治療の管理が行われるため、入院が必要になるケースが多いです。
痛みの特徴
- 差し込むような痛み
- 鋭い痛み
- 重い痛み
- 食後に腹痛、背部痛
骨や筋肉の痛みと違って、痛みの場所がはっきりとわからないことが多く、吐き気などの症状を併発しやすいです。
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「お酒を飲みすぎている自覚がある…」
「膵臓が悪いと治療が大変だって聞いて心配…」
膵臓が悪いと出る症状をお医者さんに聞きました。
慢性膵炎の初期症状を確認できるチェックシートも掲載しています。
放置するとどうなるのか、病院を受診すべきなのかも解説します。
「膵臓が悪いと出る症状」チェックシート
「膵臓が悪いのかも」と思っている方は、膵炎の初期症状リストをチェックしましょう。
下記のチェック項目のうち、4つ以上当てはまる場合は早急に医療機関を受診してください。
◎みぞおち周辺の痛み(激痛)
◎背中にまで拡がる持続な痛み
◎黄疸がある
◎へそ周辺の皮膚が暗赤色
●吐き気(吐いても吐き気が止まらない)
●嘔吐
●発熱
●腹部膨満感
●食欲不振
特に、◎の項目が当てはまる場合は要注意です。
膵炎の初期症状には個人差があります。
気になる症状がある場合は早めに病院を受診することをすすめます。
内科を探す
「膵臓が悪いのかも…」と思ったら
膵臓が悪い症状に当てはまったら、早急に病院を受診してください。
早期発見、早期治療開始により、症状進行の抑制や合併症予防が期待できます。
その上で、次の3点を守りましょう。
アルコールの摂取はNG!
膵炎が悪化する原因になります。
膵炎を起こすメカニズムは明確にはわかっていませんが、アルコールによって膵管が狭窄しやすくなったり、膵液の分泌が過剰になったりする等が原因ではないかと考えられています。
暴飲暴食はNG!脂肪分の多い食品をとりすぎない
脂肪分が多い食品は消化が良くないため控えましょう。また、慢性化を予防するためにも脂肪分が多い食品の摂取は控えましょう。
食物繊維を多くとる
コレステロール等の体外への排泄がスムーズになります。
放置するリスク
治療をせずに放置すると、回復が遅れ社会復帰が困難になることもあります。
さらに、免疫機能の低下や、さまざまな深刻な病気のリスクが高まります。
深刻な病気の例
糖尿病
膵臓がん
膵のう胞
膵石
多臓器不全 等
短命になるってホント?
膵炎は、がん等の重篤な疾患を併発するケースが多いと考えられており、慢性膵炎を患った場合の平均寿命は、日本人の平均寿命よりも10年以上短いとされています。
長期にわたる生活習慣の乱れや、過度の飲酒が大きな原因と考えられています。
こんなときは検査に行こう!
膵炎には、早期受診が肝心です。
次のような症状がある場合はできるだけ早めに受診しましょう。
上腹部に激しい痛みが生じている
吐き気と嘔吐を繰り返す
尿が出なくなった
黄疸がみられる
日頃からアルコールを多量に摂取しているという自覚がある
重症の急性膵炎の場合は、48時間以内に特定診断される必要があります。
早期検査のメリット
早期発見により、痛む部分の拡大を抑えることが期待できます。
日常生活が困難になる前に発見できれば、社会復帰が早くなる可能性があります。
治療したらよくなるの?
治療を継続し、生活習慣を改善できれば、症状の悪化や進行を抑えることができると考えられています。
慢性膵炎の完治は非常に困難と考えられています。
膵臓が広い範囲で壊死してしまった場合は、後遺症(糖尿病、消化吸収障害等)が発生する恐れもあります。
検査費用はどれくらい?
医療機関により異なるため断言はできませんが目安としてご紹介します。
内視鏡検査:およそ4000円~
超音波検査:およそ3000円~
CT検査:およそ4500円~
何科に行けばいいの?
膵臓疾患が疑われる場合には、内科、消化器内科の受診をおすすめします。
内科を探す
知っておこう!慢性膵炎の治療例
慢性膵炎になっている場合、次のような治療を行います。
生活習慣の改善
禁酒、禁煙、食生活、ストレスを避ける
食事のコントロール
1回の食事量を少なくし、1日4~5回食にする
投薬治療
腹痛がある場合は、鎮痛剤、蛋白分解酵素阻害薬等を用いた治療が行われる。膵臓機能が低下している場合は、インスリン注射、消化酵素薬等を用いた治療が行われる
手術
痛みが改善されない場合は、膵管ドレナージ手術、膵切除術が行われる場合もあります。
「膵管ドレナージ手術」拡張した膵管を切り開いて腸管と接合し、膵液を腸管に送り膵管内圧を低下させる際に行われる術式。
「膵切除術」膵管の拡張がない場合に行われる術式で、膵管狭窄が特に強い部分の膵切除術。
その他
膵管が細い場合は、内視鏡を使用して膵管を拡張する。
膵臓に結石が生じている場合は、内視鏡を使用して除去する等の治療が行われる。
▼参考
福岡市民病院 膵臓
中外製薬 からだとくすりのはなし すい臓
一般社団法人 日本肝胆膵外科学会 急性膵炎と慢性膵炎
福山市医師会 アルコールと膵臓―膵炎について
日本医師会 医療と健康 すい炎
同友会グループ 慢性膵炎についてご存知ですか?
一般社団法人徳洲会 肝臓・膵臓内科の病気:慢性膵炎
国立がん研究センターがん情報サービス 膵臓がんの検査
痛みを和らげる方法
痛みの原因が膵炎の場合は、お腹を丸めると痛みがやわらぐ場合があります。
※しかし、根本的な解決策ではないので、病院で治療を受けてください。
治すにはどうすれば?
日常生活の中でできる方法には、食生活の改善があります。
魚や豆腐などのたんぱく質や、豆類や海藻類、いも類などの水溶性食物繊維が多い食べ物を摂るようにしましょう。
動物性の脂質や、魚卵や肝などのコレステロールが多いものを控えましょう。お酒も控えてください。
病院に行く目安
上腹部・背中の激しい痛み、嘔吐、下痢などの症状がある場合や、痛みが激しく日常生活に支障をきたすような場合は、病院に行きましょう。
何科を受診する?
消化器内科を受診してください。
消化器内科を探す
<病院で受ける治療>
胆石の場合、胆のうを腹腔鏡下手術で取り除くことが多いです。
体の外から胆石に衝撃波を当てて、石を砕くこともできますが、再発するという問題があります。
急性膵炎や慢性膵炎は、まだ膵臓が機能している場合、絶飲食で膵臓を休めるほか、薬を点滴します。それでも痛みが治まらないときは、膵臓を切除するなどの手術を行うことがあります。
痛みの「原因が判断できない」ときは…
原因がわからなくて、痛みのほかに嘔吐や発熱があるときは、早急に受診してください。
ぶつけたり、重いものを持ったりなど、痛みの理由に心当たりがあるときは、まずは安静にして様子を見てください。
病院は何科に行けばいい?
肩甲骨付近が痛む原因がよくわからない場合は、内科を受診してください。
お医者さんに症状を説明するときは、いつから痛むのか、痛みの特徴、痛む場所、どんなときに痛むのかを伝えてください。
あなたの症状によって、適切な医療機関を紹介されることもあります。
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右肩甲骨の急な痛みは早期受診がオススメ
できるだけ早く病院を受診すると、お医者さんの診断で、より適切な治療を受けられるため、早い回復が期待できます。
また、突然の右肩甲骨の痛みには、重い病気が隠れている可能性もあります。放置すると命にかかわる場合もあるので、早めに受診しましょう。
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背中が痛い…。これは一体何?
「謎の背中の痛み」の原因を、お医者さんが解説します。
骨の病気や内臓の病気には要注意です。
謎の背中の痛み…これ大丈夫?
激しい運動に心当たりがある場合は、一旦様子を見ても大丈夫です。
ただし、
痛みが強い
ほかにも体の不調がある
といった場合は、なんらかの異常が考えられます。
なぜ?とにかく背中が痛い…
原因不明の背中の痛みは、
筋肉の異常
ストレス性の痛み
骨の病気
内臓の病気
によって起こります。
それぞれの原因を詳しく解説していきます。
原因① 筋肉の異常
背中の筋肉のこわばりや炎症が起こると、痛みを感じます。
特に肩〜肩甲骨周辺に症状が出やすいです。
痛みの特徴
肩こりのような痛みや、ズキズキとした痛みを感じます。
炎症が起きていると、動かすときに痛みます。
<その他の症状>
腕を上げられない
体が動かしにくい
頭痛
自分でできる対処法は?
市販の湿布を使うと、痛みが改善します。
こりが原因に考えられるときは、入浴して体を温めましょう。
それでも症状が改善しない場合には、一度整形外科で相談してください。
整形外科を探す
原因② ストレス性の痛み
過度のストレスで自律神経が乱れると、背中に痛みを感じることがあります。
背中の広い範囲や肩から肩甲骨にかけてなど、痛みを感じる範囲には個人差があります。
痛みの特徴
凝っているようにこわばったり、ギシギシ感じたりして痛みます。
<その他の症状>
頭痛
腹痛
吐き気
自分でできる対処法は?
ゆっくりと休み、心身を回復させてください。
また、入浴で体を温め、血液循環を良くしましょう。
症状に改善が見られない場合は、一度心療内科・精神科で相談してください。
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原因③ 骨の病気
背骨を圧迫骨折すると、背中に痛みが起こります。
痛みの特徴
激しい痛みが特徴です。
動いているときだけでなく、安静時にも痛みを感じます。
また、寝返りをうったり、起き上がったりするときにもズキズキと痛みます。
どう対処法すべき?
早めに整形外科を受診しましょう。
治療せずに放置すると、症状を繰り返す恐れがあります。
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原因④ 内臓の病気
内臓の病気によって、背中に痛みが起こるケースもあります。
様々な可能性がありますが、よくあるのは腎臓や肝臓の病気です。
腎臓病の場合
腎臓に異常があると、腰より少し上の両側が痛みます。
振動を加えると痛みが強くなります。
<その他の症状>
腰痛
腹痛
倦怠感
悪寒、発熱
頻尿、残尿感
肝臓病の場合
肝臓に異常があると、背中の右側や肩甲骨の周辺が痛みます。
だるく重い痛みを感じることが多いです。
<その他の症状>
肌が黄色くなる
濃い茶色の尿が出る
皮膚のしつこいかゆみ
体や顔に赤い斑点が出る
どう対処法すべき?
まずは病院を受診してください。
内科、消化器内科、腎臓内科のいずれかで相談すると良いでしょう。
また、肝臓病に心当たりのある人は、すぐに禁酒してください。
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病院に行く目安
背中の痛みが2~3日以上続く場合は、病院に行きましょう。
ただし、日常生活に支障をきたしている場合は、すみやかに病院を受診しましょう。
受診するのは何科?
まずは整形外科を受診してください。
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▼参考
公益社団法人 日本整形外科学会骨粗しょう症
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。