「ものもらいって自然治癒するの?」
「自分でできる対処法ってある?」
罹ると厄介なものもらいの原因から、対処法・予防策を医師が詳しく解説します。
ものもらいができる「原因」
ものもらいの原因の多くは、まぶた周りの不衛生状態です。
よくある例
- 過度のアイメイクで、分泌腺の出口がふさがれる
- コンタクトレンズを正しく使用していない
- 清潔ではない手で目をこすってしまう
その他にも、季節の変わり目・体調不良・睡眠不足・過度の飲酒・ホルモンバランスの乱れといったことも、ものもらいの原因になります。
ものもらいは「自然治癒する?」
軽症のものもらいであれば、清潔な状態を維持すると、自然治癒する場合があります。
患部に触れないようにしてください。
しかし、腫れがひどい場合や、治らない場合には、早めに眼科を受診してください。
<ものもらいが悪化すると…>
まぶたの腫れ/赤み/痛み/かゆみ/異物感など
悪化すると、化膿することがあります。化膿が進行すると、痛みを伴い、腫れた部位から膿(うみ)が出ることがあります。膿が出ると、症状が改善される場合が多いです。
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「ものもらいが治らない…」
「しこりが残っているけど大丈夫?」
ものもらいの原因と自分でできる対処法、放置のリスクまで医師が詳しく解説します。
なぜ?ものもらいが治らない原因
しこりができている
膿が出ている
ものもらいを繰り返す
場合は、なかなか治りません。
ケース1.しこりが残っている
ものもらい(麦粒腫)と似た症状がでる、めいぼ(霰粒腫)になっている可能性があります。
霰粒腫は、ものもらい(麦粒腫)のようにまぶたが赤くなったり痛くなったりはしませんが、まぶたの中に小さなしこりができます。治すためには、目の周りを清潔に保つことが必要です。2~8週間でしこりが自然に消失しますが、再発することもよくあります。
まぶたにしこりや痛みがあり、大きくなっているようであれば眼科を受診しましょう。
ケース2.膿が出ている
ものもらいの炎症が悪化すると、膿がたまります。
腫れている部分が破れると、たまっていた膿が出てきます。膿が出たあとは、快方に向かう傾向にあります。
ケース3.繰り返しものもらいができる
一度治っても繰り返しものもらいができる場合は、「感染症にかかりやすい病気」や「糖尿病」の可能性も考えられます。
また、子どもは目に違和感があると触ってしまうため、ものもらいが治りにくいと考えられます。
ものもらいを早く治すためにできること
目元を常に清潔に保つようにしましょう。
痛みが強い場合は冷やすことで痛みが緩和されます。
以下の7点に気をつけましょう。
汚れた手で目を触らない
コンタクトレンズの使用は控える
顔を拭くタオルは、清潔なものを使う
アイメイクは控える
前髪は目に入らないようにする
疲れているときは休む
アルコールは避ける
疲労により、症状が悪化する可能性があります。
疲れている時は無理をせず、休むようにしましょう。バランスの良い食事、質の良い睡眠、ストレスを溜めないなどを心がけ、健康なからだを維持することで免疫力もあがります。アルコールや刺激物は症状を悪化させる可能性があります。控えましょう。
アイメイクにより目元が刺激されたり、細菌が繁殖しやすくなったります。できるだけアイメイクは控えましょう。また、メイクを落とす際も、落とし残しがないように、しっかりと落としましょう。
もしコンタクトレンズを使用する場合、レンズに細菌や汚れがたまらないよう、しっかりとケアをしましょう。繰り返し使用するタイプのコンタクトレンズは、保存用ケースも清潔に保つようにしてください。
市販薬を使い続けても大丈夫?
市販薬を使用しても治らない場合は、病院を受診した方がよいです。
市販薬を使っても治らない場合、「薬との相性が悪い」または「他の疾病がある」といった可能性があります。
自然に治るまで放置しても大丈夫?
ものもらいのほとんどは、治療をしなくても自然に治る傾向にあります。
しかし、なかなか治らない場合は、悪化する可能性も考えるとできるだけ症状が軽いうちに眼科で治療をした方がよいでしょう。
症状が進むほど、治療期間が長くなったり、治療費用が高くなります。
放置することで生じるリスク
ものもらいを放っておくと、以下のようなリスクが考えられます。
眼が腫れて、痛みが強くなる。
腫れが大きくなり、視界が悪くなる。
合併症を引き起こす。
悪化すると、手術が必要。
隠れている他の病気に気づかない可能性がある。
病院で治療する目安
目の痛みが強い
眼が腫れて、視界が悪い
症状がどんどん悪くなっている
症状が長く続く
ものもらいを繰り返す
といった症状があるときは、早めに病院を受診しましょう。
病院に行って適切な治療を受けることで、症状の早期改善・重症化の予防が期待できます。
どんな治療をするの?
基本的に、抗菌作用のある点眼薬や、抗生物質や抗炎症作用のある飲み薬による治療を行います。
痛みが強い場合、鎮痛薬を使用することもあります。膿がたまって大きく腫れている場合やしこりが残っている場合は、切開手術をすることもあります。
切開手術するかもと思うと…怖い!
手術をする前、まぶたに麻酔薬を注射しますが、そのときに少し痛みがあるだけで、切開をするときはほとんど痛みはありません。
点眼麻酔や局所麻酔の注射をしてから、手術を行います。膿やしこりのある部分を切開して、取り除きます。
糸を使用した場合、一週間後に抜糸をします。手術当日は眼帯をつけますが、翌日からはしなくても良いです。麻酔が切れると痛むこともありますが、長くは痛みません。手術後に内出血によるあざや傷跡ができることがありますが、時間が経てばなくなります。
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▼参考
MSDマニュアル家庭版 霰粒腫と麦粒腫(ものもらい)
自分でできる「対処法」
軽症のものもらいであれば
- 目の周りを清潔にする
- まぶたを温める
- 市販の点眼薬を使う
といった対処をとることもできます。
マイボーム腺出口が詰まって症状が現れている場合には、清潔なホットタオルで目の周辺を温めます。
脂が柔らかくなり、詰まりが解消し、症状が快方に向かう場合があります。
どんな「市販薬」がいいの?
軽症であれば、薬局などで購入できる、市販の抗菌作用がある目薬の使用で、症状が改善するケースもあります。
- 目の痛み
- まぶたの腫れ
- 目の充血
- めやに
- 涙の量が増える
- 異物感など
これらの症状があるとき、市販の目薬でもよくなることもあります。
※ただし、市販薬では快方に向かうまでに時間がかかったり、重症化したり、再発を繰り返したりするなどの可能性もあります。
ものもらいは「うつる?」
ものもらいは、人から人へは感染はしません。
ものもらいは、細菌による感染が原因で発症します。誰の体にも存在する、常在菌です。ウイルス感染ではありません。
「ものもらい」と「はやり目(流行性結膜炎)」を混同したり、一度に何カ所も出現したりするため、「ものもらいはうつる」と思っている人も多いようですね。
2~3日治らない場合は病院へ
発症後、2~3日で改善がみられない場合には、眼科を受診しましょう。
眼科で症状に合った治療を受けると、通常は2週間ほどで良くなるケースが多いです。
病院での治療法
病院では、軽症時は抗菌点眼薬・抗菌眼軟こうなどの薬が処方され、
重症時は抗菌点眼薬・抗菌眼軟こう・抗菌内服薬・消炎点眼薬などの薬が処方されます。
※化膿が悪化している場合には、切開手術が行われることもあります。
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「再発予防」のためにできること
- 目を清潔にする
- 体の抵抗力・免疫力を維持する
- 刺激の強い食品を控える
などの予防策があります。
目を清潔にしておく
- 汚れた手指・タオルなどで目に触れない
- アイメメイク後は丁寧にしっかり落とす
- コンタクトレンズは手指を洗ってから使用し、正しい使用方法を守る
- 前髪の長さに気を付けるなど
体の抵抗力、免疫力を維持する
- 十分な睡眠をしっかり取る
- 栄養バランスのよい食事を取る
- ストレスや疲れをため込まないなど
体の抵抗力・免疫力が落ちていると、細菌に感染しやすくなります。
刺激の強い食品を控える
- 香辛料(唐辛子、にんにく)
- ピーナツ類
- 甲殻類など
上記の食べ物は炎症を引き起こしやすくする傾向があります。
ものもらいの原因になったり、症状を悪化させたりする恐れがあるので、できるだけ控えるようにしてください。
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まぶたの上下が腫れたり、痛みがでたりするものもらい(麦粒腫)。
できることならセルフケアで快方に向かわせたいと思う方も多いと思います。
そこでこの記事では、ものもらいを早く治したい方に向けて、ご自身で実践できる治し方を医師が解説しています。
ものもらいを早く治す方法
治し方
ものもらいは、まつげの生え際やまぶたの裏に炎症が起きているのが原因です。
市販薬を使用するときは、抗菌剤 の入っているものを使用します。
(スルファメトキサゾールナトリウムという抗菌剤を配合したロート抗菌目薬、サンテ抗菌新目薬など)
また、目の周りを清潔にして強い力を加えないようにします。
メイク用品も使用を避けると肌への刺激が少なくなり、メイクの成分がものもらいを刺激しないので早く良くなるでしょう。
ホウ酸で目を洗うのは避けて
昔はホウ酸での目の洗浄を行ったようですが、 これは何度も行うことで油分など目に必要な成分が表面から流されてしまうので避けた方が良いです。
以前は、抗生剤がなかった頃にホウ酸で洗浄していたようですが、今は良い薬がありますのでそちらを使用しましょう。
冷やす?温める?正解はどっち?
痛みを抑えたい場合は、冷やせば一時的な痛みの緩和はできるでしょう。
冷やしても痛みがおさまらない場合、マイボーム腺(まぶたのふちにあり、目の乾燥を防ぐために脂質を分泌する腺)がたびたび詰まるようなら、早めに眼科を受診してください。
ものもらいの初期症状は温める
ものもらいになる前にまつ毛のキワにあるマイボーム腺に油分が溜まり、ものもらいになりそうだなという時に、その部分をホットタオルなどで温めると溜まった余分な皮脂のつまりが解消され、ものもらいを避けられることがあります。
すでに痛みや炎症がある時に温めるのは避けましょう。
ものもらいが痛いときは?
先述したように、痛みを抑えたい場合は冷やすのも良いでしょう。
市販のロキソニンやイブなどの鎮痛剤も使用できます。
しかし、あまりに痛みがあるときは炎症が強い・膿んでいる可能性もあるので、眼科を受診して早めに患部の対処をしましょう。
ものもらいができたときにコンタクトはしても良い?
コンタクトレンズの使用は避けましょう。
乾燥や接触により目元が疲れてしまい、ものもらいの炎症が長引く原因になります。
おへそに塩を入れると治るは迷信!?
おへそに塩を入れてもものもらいは良くなりません。
一種の迷信だと思われます。
雑菌が入り炎症を起こす原因にもなるのでやめましょう。
どれくらいの期間で治る?
通常2~3週間程度で徐々に良くなるでしょう。
その間に、睡眠不足やアルコール・タバコの摂取などが多いと刺激によって炎症が悪化し、長引く可能性があります。
アルコールは血管を拡張して炎症を悪化させ、タバコは細胞の修復や炎症を緩和するために必要なビタミンCを消耗させてしまいます。
早く治したい場合は、病院に行くべき?
眼科を受診すれば確実な診断ができ、治療法も分かります。
病院で適切な処置を受ければ、ものもらいの早期改善が期待できると言えるでしょう。
一般的に点眼薬(クラビット点眼薬など)が処方されます。
病院での治療は痛い?
点眼薬や軟膏で改善されない場合、まぶたを切開して膿を出すことがあります。
麻酔をかけるので痛みはありません。
治療費
病院での治療は、点眼薬だけや点眼薬に加え眼軟膏、内服のための抗生物質や抗炎症薬を併用する場合など様々です。
薬代は種類や数によって異なりますが、500円〜2000円ほどです。
切開手術は、おおよそ2~3000円で受けることができます。
医療機関によって異なりますが、検査費やガーゼ、保護テープ、薬など別途かかることがあります。
ものもらいは自然治癒する?
薬を使用するより時間がかかっても、ものもらいは基本的に自然治癒します。
しかし、痛みや腫れが強い場合は、別の原因がある場合や悪化すると切開手術が必要な場合もあります。
早めに眼科を受診し、的確な治療をすることをお勧めします。
まとめ
ものもらいならば自然治癒しますが、眼科で医師の確実な診断により早く治癒します。
自己判断で悪化させないためにも眼科を受診しましょう。
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