「左肋骨下に鈍痛がある…これは何?」
この症状の原因には、消化器の病気も考えられます。
吐き気など「病院に行くべき症状」を確認しましょう。
様子を見るときの対処法も併せて解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
左肋骨下の鈍痛の正体は…?
左肋骨下が「一時的に痛い」場合は、
による痛みが考えられます。痛みが続かないようであれば、過度な心配はいらないでしょう。
ただし、左肋骨下に「鈍痛が続く」場合は、
のいずれが起こっている可能性があります。
痛みが強くない場合には、セルフケアで快方に向かう場合があります。
左肋骨下の鈍痛には、胃の不調が疑われますので、
- 安静に過ごす
- 消化の良いものを食べる
- 市販の胃薬を飲む
といった対処で様子を見てみましょう。
胃薬には、胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を守る薬など、さまざまな種類があります。
市販薬を使用する際には、事前に薬剤師に相談しましょう。
痛みが強い場合は、セルフケアせずに早急に医療機関を受診してください。
この鈍痛は…大丈夫?病院行くべき?
痛みが一時的で繰り返さない場合には、心配いらないケースが多いですが
- 痛みが3日以上改善しない
- 激しく痛む
- 吐き気や嘔吐を伴う
といった場合は、医療機関の受診をおすすめします。
上記症状には、消化器の病気の悪化が疑われます。
重症化すると命に関わる危険性があるため、放置は禁物です。
病院は何科?
左肋骨下の鈍痛があるときは、まず消化器内科を受診しましょう。
重症化のリスクを避けるためにも、早期受診を心がけましょう。
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考えられる「2つの病気」
左肋骨下に鈍痛があらわれる場合、
といった病気が考えられます。
病気① 胃潰瘍
胃酸などでダメージを受け、胃の粘膜が深く傷ついている状態です。
左肋骨下の鈍痛は、胃の神経細胞が刺激されたときに起こります。
ストレスが溜まっている人や、暴飲暴食をする人に発症しやすい傾向があります。
胃潰瘍の症状
- みぞおち辺りの痛み
- 背中の痛み
- 吐き気、嘔吐
- 胃もたれ、胸やけ
- お腹が張ったような感覚
- 食欲低下
- 血便、黒っぽい便が出る
胃潰瘍の原因
- ストレス(自律神経の乱れ)
- ピロリ菌の感染
- 暴飲暴食や早食い
- 薬の副作用
- 刺激が強い食品(香辛料、辛いもの等)の過剰摂取
- 喫煙
- アルコールやカフェインの過剰摂取
などが挙げられます。
薬の副作用の場合、解熱消炎鎮痛薬(痛み止め)や抗凝固薬の長期間使用が原因になります。
発症しやすい年代は、40~50歳代です。
女性の場合、更年期を迎えると発症リスクが上昇します。
胃潰瘍とストレスの関係性
胃潰瘍は、神経質な人やストレスを感じやすい人にも多く見られる病気です。
これは、ストレスによる自律神経の乱れで、粘膜を守る胃粘液が減少し、胃酸分泌が過剰になることが原因です。
どう対処すればいい?
まずは医療機関を受診しましょう。
胃潰瘍を放置して悪化すると、命に関わる恐れがあります。
特に吐血や血便、黒っぽい便の症状がある場合は、早急に受診してください。
病院は何科?
胃潰瘍の治療方法
飲み薬を使った治療が多く行われます。
お薬には、「胃の粘膜を増やす薬」や「胃酸の分泌を抑える薬」、「炎症を鎮める薬」などがあります。
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病気② 膵炎
膵臓に炎症を起こしていると、左肋骨下に鈍痛があらわれることがあります。
膵炎は、お酒をたくさん飲む人や、脂っこいものをよく食べる人に発症しやすい病気です。
膵炎は「食後」に症状が出やすい
膵炎の場合、脂っこいものを食べたり、お酒を飲んだりした数時間後に痛みが出る傾向があります。
食事をすると、膵臓で消化酵素が分泌されます。
膵炎の場合、自分で自分の膵臓組織を消化してしまうため、食後に痛みがでやすいです。
膵炎の症状
- 37度~38度程度の熱
- 食欲不振、体重の減少
- 吐き気、嘔吐
- 倦怠感
- 腹部膨満感
- 下痢
膵炎の原因
などが主な原因です。
特に大量の飲酒は、アルコールの刺激による「急性膵炎」を起こしやすいです。
「胆石症」は、胆のうや胆管に結石が発生する病気です。
この胆石が消化液の通り道を塞ぐと、滞留した消化液によって、膵臓に炎症が起こります。
どう対処すればいい?
治療が必要な病気ですので、医療機関を受診しましょう。
膵炎を放置すると、回復が遅れ、社会復帰が困難になることもあります。
さらに、免疫機能の低下や、さまざまな深刻な病気のリスクが高まります。
病院は何科?
膵炎を疑うときは、消化器内科を受診しましょう。
膵炎の治療方法
症状によっては、入院や手術が必要になることもあります。
特に急性膵炎は、膵臓を安静にするために、入院して絶飲食を行うケースが多いです。
絶飲食をする場合、点滴で栄養補給をします。
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2023-01-30
膵炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
膵炎の主な症状も紹介するので、「膵炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしてみてください。
膵炎とは
膵炎とは、膵臓の消化液が漏れて、臓器を傷つけてしまう病気です。
この膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分かれます。
「急性膵炎」とは、消化酵素によって膵臓自体がダメージを受けて、炎症が起こっている状態です。
「慢性膵炎」とは、食べ物を消化するための膵液が、長期間に渡って膵臓自身を溶かしてしまう病気です。
「急性膵炎」と「慢性膵炎」それぞれの症状
急性膵炎
▼軽度~中等度の症状
みぞおち周辺から左上腹部の痛み
背中の痛み
吐き気、おう吐(吐いても症状が改善しない)
発熱(37度~38度程度が多い)
食欲不振
腹部膨満感
▼重度の症状
血圧低下
皮膚が黄色っぽくなる
呼吸困難
精神が錯乱してしまうほどの激しい痛み
失神
慢性膵炎
腹痛を5〜10年ほど繰り返す
急にお腹や背中が痛くなることがある
下痢や便秘の症状がある
みぞおちを押すと痛い
だるい
食欲不振
吐き気、嘔吐
お腹の張り(膨満感)
体重減少(※)
※人によって異なりますが、6か月で5%以上を病的な体重減少とすることが多いです。
膵炎の原因
膵炎の原因には、「お酒の飲み過ぎ」「胆石が胆管で詰まる」などが挙げられます。
ただし、はっきりと原因が分からないケースもあります。
膵炎になりやすい人
お酒をよく飲む
タバコを吸う
暴飲暴食している
脂肪分を多く含む食品のとり過ぎ
就寝直前に食事をとることが多い
刺激が強い飲食物を好む
急性膵炎を疑う場合はすぐ病院へ
膵炎が疑われる場合は、「内科」で受診することをおすすめします。
急性膵炎を発症すると、命に関わるケースもあります。
特に毎日飲酒している方は、腰・背中あたり痛みを感じたら早めに受診しましょう。
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慢性膵炎も放置はNG
慢性膵炎は症状が進行すると、インスリンの分泌量が低下し、糖尿病を発症する恐れがあります。
また、症状が悪化すると、膵臓ガンを発症する恐れもあるため、早めに受診してください。
膵炎の検査・治療法
医療機関では、必要に応じて血液検査、内視鏡、エコーなどを行います。
そこまで痛い検査はありません。
膵炎の治療は、
鎮痛剤の投与
輸血
絶食
などをおこなって症状の改善を図ります。
安定するまで集中治療の管理が行われるため、入院が必要になるケースが多いです。
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2021-07-12
「左肋骨の下が痛い…これは婦人科の病気?」
“痛みの原因”をお医者さんが解説します。
生理周期に伴う症状は、子宮内膜症や子宮筋腫を疑う必要があります。
また、尿路感染症や大腸がんといった病気にも注意しましょう。
左肋骨の下が痛い…婦人科の病気サインって本当?
卵巣・子宮の病気によって左肋骨の下が痛むことも、稀にあります。
ただし、通常は婦人科の病気以外で起きているケースが多いです。
婦人科以外の「左肋骨の下が痛い」原因として多いのは、肋間神経痛、骨折、気胸などです。
ズキズキ痛むのは「婦人科の病気の可能性あり」
卵巣や子宮に腫れ・炎症がある場合、じんじん、ズキズキとした痛みを感じます。
「子宮内膜症」の場合は、生理のたびに痛みが増し、徐々に我慢できないほどの痛みになっていくこともあります。
こんな症状があったら婦人科へ!
生理の出血量が多い
貧血
不妊
不正出血
上記の症状があらわれている場合、すぐに婦人科で相談するようにしましょう。
特に妊娠を望んでいる場合は、早めの治療をおすすめします。
治療を早い段階で済ませることで、不妊を防ぎやすくなります。
また、医療機関に行かずに放置すると、手術や入院が必要になるリスクが高くなります。
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どんな病気の可能性があるの?
左肋骨の下に痛みが生じる婦人科の病気には、
子宮内膜症
子宮筋腫
などの可能性が考えられます。
※婦人科の病気で左肋骨の下の痛みが起こるケースは稀です。
病気① 子宮内膜症(生理のたびに痛みが増す)
子宮内にあるべき“子宮内膜組織”が子宮とは違う場所に発生する病気です。
子宮内膜症が左卵巣やその周辺の左側の臓器に起こると、左助骨の下が痛む場合があります。
この場合、異常発生した“子宮内膜組織”の剥離や増殖によって、痛みが起こっています。
左肋骨の下の痛みは、生理のたびに症状が増す傾向があります。
子宮内膜症の「主な症状」
重い生理痛
腰痛
下腹痛
排便痛
性交痛
生理前から生理期間中に重い痛みのようなものを感じやすくなります。
また、生理の回数を重ねるごとに症状、痛みが強くなるのが特徴です。
子宮内膜症の「原因」
はっきりとした原因はわかっていません。
現段階では、遺伝が関係しているとも言われています。
どんな人に多い?
20代~30代の女性に多く発症します。
自分でできる対処法は?
セルフケアで快方に向かわせるのは困難です。
生理のたびに生理痛が重くなる
腹部痛などが激しい
日常生活に支障が出るほどの痛みがある
といった場合は、早めに婦人科で相談しましょう。
悪化すると手術が必要になるケースもあります。
婦人科で受ける治療法は?
薬での治療と手術での治療があります。
根治は閉経または手術のみですが、症状が軽いうちに早期治療できれば、お薬の治療だけで済む可能性があがります。
子宮内膜症は、再発や“がん化”のリスクもあるので、長期的な経過観察が必要です。
病気② 子宮筋腫(生理の出血が増える)
子宮の壁にできる良性の腫瘍です。
この腫瘍が左側にできると、左助骨の下に痛み・違和感が生じる場合があります。
子宮筋腫が大きくなると、お腹がポッコリと出る人もいます。
主な症状
生理の出血量が増える
不正出血
貧血
腰痛
頻尿
頻尿の症状は、腫瘍が膀胱を圧迫することで起こります。
この病気の原因
女性ホルモンが影響して発症するとされています。
閉経を迎えて女性ホルモンが排出されなくなると、筋腫が自然と小さくなることもあります。
どんな人に多い?
30代ごろの女性に多いです。
自分でできる対処法は?
子宮筋腫は自身では対処できない病気です。
症状が重い場合は婦人科での治療が必要ですが、軽い場合には経過観察となります。
なお、
痛みがつらい
生理の量が増えて困っている
など日常に影響がある場合は、婦人科で相談してください。
婦人科で受ける治療法は?
飲み薬で腫瘍を小さくする治療、手術で腫瘍を取り除く治療などが主流です。
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婦人科以外の病気のケースも
左肋骨の下に痛みを引き起こすのは、
尿路感染症
大腸がん
といった病気の可能性もあるので、注意が必要です。
ご自身の症状に当てはまる病気はないか、チェックしていきましょう。
婦人科以外の病気① 尿路感染症
尿路の左側に結石・感染症が起こると、左助骨の下が痛みます。
こんな症状はありませんか?
排尿痛
頻尿、残尿感
尿混濁
下腹部痛、背部痛
高熱
血尿
排尿痛とは、尿を出すときに感じるズキズキとした痛みです。
また、背部痛や高熱、血尿がある場合、症状が進行して“腎盂腎炎”を発症している疑いがあります。
尿路感染症の原因
細菌感染(大腸菌など)が原因です。
そのため、
疲労をためている
睡眠不足
など、免疫が低下しているときに多く発症します。
自分でできる対処法は?
水分を多くとりましょう。
尿から菌を排出させることで、症状が快方に向かいやすくなります。
病院は何科?
尿路感染症は、泌尿器科で専門的な治療を受けられます。
また、女性は婦人科でも相談できます。
尿路感染症の場合、抗菌薬の処方が行われます。
ただし、腎盂腎炎まで進行すると入院治療が必要となるケースもあります。
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婦人科以外の病気② 大腸がん
大腸の一部にがん細胞が増殖することで、左助骨の下に痛みを感じる場合もあります。
大腸がんの場合、大腸ポリープが“がん化”する、もしくは直接粘膜から発生するといったケースがあります。
こんな症状はありませんか?
血便
便秘
下痢
腹痛
倦怠感
初期は無症状の場合が多いです。
症状を自覚するときには、病気が進行している可能性があります。
大腸がんの原因
便秘
肥満
過度の飲酒
喫煙習慣
赤肉の過剰摂取
などが発症リスクを上昇させると考えられています。
自分でできる対処法は?
大腸がんは、セルフケアで治せません。
心当たりがある方は、医療機関で検査を受けましょう。
病院は何科?
大腸がんを疑うときは、胃腸内科・内科を受診しましょう。
大腸がんの場合、薬や放射線による治療、手術が必要です。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
国立がん研究センターがん情報サービス 大腸がん
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。