ダイエットしてるのに体重が減らない!
食事は減らしてるつもりなのに…なぜ?
そんなに食べていないのに体重が減らない原因を、栄養士さんに聞きました。
「タンパク質をしっかりとる」「糖質は食物繊維と一緒にとる」など、食事のとり方を詳しく解説します。
効率のよい運動方法も載せていますので、着実に痩せたい方は必読です。
監修者
経歴
株式会社Luce代表/健康検定協会理事長、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、日本臨床栄養協会評議員、ダイエット指導士、ヨガ講師、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど栄養・美容学の分野で活動をおこなっている。
食べていないのに痩せない!よくある「5つの原因」
- 運動をしていない
- 筋肉が少ない
- 生理前にダイエットしている
- 更年期による女性ホルモンの減少
- 便秘である
原因① 運動をしていない
運動しない人は、消費カロリーが少ないです。
摂取カロリーを消費カロリーが上回っていないと、食事量を減らしても痩せません。
特に、
- デスクワークで「座りっぱなし」のことが多い
- 階段ではなく、エレベーター・エスカレーターをよく利用する
- 休日は家でのんびり過ごしていることが多い
といった方は、運動不足になりやすいです。
体重を減らすには、日常的に運動を行って消費カロリーを増やす必要があります。
原因② 筋肉が少ない
筋肉が少ない人は、基礎代謝量が低下するため、脂肪が燃焼されにくいです。
「基礎代謝」とは、安静時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー量のことです。
「筋肉量が少ない」サイン
- 階段や坂道などですぐに息切れしてしまう
- 同世代の方と比べて歩くスピードが遅い
- 立ったまま靴下がはけない
- 冷えを感じやすい
基礎代謝量は、加齢とともに徐々に減少していきます。特に30歳以上になると、10~20代よりも痩せにくくなることが多いです。
17歳と30歳で基礎代謝によるエネルギー消費量を比べると、1日あたり180kcal差があるとされています(体重50kgの場合)。
特に、
などに当てはまる方は、筋肉量が低下しやすいので注意が必要です。
原因③ 「生理前」にダイエットしている
生理前は体がむくみやすく、体重も増えやすいです。
この時期にダイエットを頑張っても、他の時期に比べて結果が出にくいと言えます。
女性はホルモンの影響を受けて、約1ヵ月の月経周期で体の状態が変動します。
排卵後から生理前は、代謝を上げる「エストロゲン」の分泌量が減り、「プロゲステロン」の分泌量が増える時期です。
「プロゲステロン」が増えると、妊娠に備えて栄養・水分を体に蓄える作用が働くため、生理前のむくみが発生します。
生理前の体重増加は気にしすぎなくてOK!
生理前の1〜3kg程度の体重増加は、女性の体にとって自然なサイクルです。
この時期は体重が減りにくいものなので、気にしないでよいでしょう。
ただし、生理前に増えた体重が生理後に元に戻らない人は、食欲のコントロールがうまくできていない可能性があります。
その場合は、体重を記録して「生理との関連」を確認してみるのもおすすめです。
原因④ 「更年期」による女性ホルモンの減少
更年期は、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が減少します。
エストロゲンには脂肪の代謝を促す働きがあるため、減少することで痩せにくくなります。
閉経前後の約10年間(一般的に45〜55歳頃)を「更年期」といいます。
※閉経時期の平均は50歳頃ですが、個人差があります。
40代以上の女性で「痩せにくい」という場合は、更年期が関係している可能性が高いです。
「更年期」のサイン
- のぼせ・顔のほてり
- 脈が速くなる
- 動悸・息切れ
- 異常な発汗
- 血圧が上下する
- 耳鳴り・めまい
- 頭痛
- イライラ・不安感
- 不眠
など
原因⑤ 便秘
便秘により腸内環境が悪くなると、代謝機能が低下するため、体重が減りづらくなることがあります。
特に、
- 不規則な食事
- 栄養バランスの偏った食事
- 運動不足
- ストレスが多い
といった生活を送っている方は、便秘になりやすいです。
また、40歳を過ぎた頃からは、更年期による自律神経の乱れも便秘の原因となります。
「痩せにくい食生活」ではありませんか?
- 「糖質に偏った食事」をしている
- タンパク質が不足している
- 食事量が少なすぎる
食事量を減らしていても、栄養バランスに問題があると、体重が減りづらくなります。
NG食生活① 糖質に偏った食事をしている
- ご飯・パン・麺類ばかり食べる
- お菓子で食事を済ませる
など、食生活が糖質に偏っていると脂肪がつきやすくなります。
これは血糖値が上昇したときに分泌される、「インスリン」というホルモンが原因です。
糖質の摂取は、1日の摂取エネルギー量の50~65%が適切です。
食事全体の比率で糖質がこれを上回っている人は、食事量自体が少なくても太りやすくなってしまいます。
NG食生活② タンパク質が不足している
肉・魚・卵を食べないダイエットはNGです。
タンパク質は筋肉の材料となる栄養素なので、不足すると筋肉が減少してしまいます。
筋肉が減少することで一時的には体重が減っても、基礎代謝が低下して結果的に痩せにくい体になってしまいます。
NG食生活③ 食事量が少なすぎる
食事量が少なすぎると、体がエネルギー消費量を抑えて、脂肪をため込もうとしてしまいます。
偏った食事で「ビタミン」や適度な「糖質」が不足していると、体脂肪の燃焼が滞ります。
また、「食物繊維」不足による便秘も、“食べてないのに体重が減らない”原因になるでしょう。
しっかり痩せるための「食事・食べ方のルール」
ダイエットのためには、食事の量を減らすだけでなく、栄養バランスや食べ方に注意する必要があります。
- タンパク質をしっかりとる
- 糖質は「食物繊維」と一緒にとる
- 良質な油を適切にとる
- 1日3食、規則正しく食事する
- よく噛んでゆっくり食べる
といったことを普段から意識してみましょう。
ルール① タンパク質をしっかりとる
タンパク質は、筋肉量を増やし、基礎代謝を上げるために必要な栄養素です。
- 女性(18〜49歳):1日50g
- 男性(18〜49歳):1日65g
を目安※に、しっかりとりましょう。
(または、体重1kgにつきタンパク質1g目安)
※トレーニングで運動量が多い方はもう少し多くしてみるのもよいでしょう。
1食で集中して摂るよりも、3食に分けて摂ると、筋肉の栄養源となりやすく、おすすめです。
栄養素は食事から摂ることが基本ですが、どうしても不足してしまう場合にはプロテインを利用するのも一つの方法です。
※プロテインは「ビタミン」や「ミネラル」などが含まれているものが多いので、他の栄養素の摂りすぎには注意しましょう。
ルール② 糖質は「食物繊維」と一緒にとる
おすすめの食べ物
- 生野菜サラダ
- 海藻の酢の物
- きのこを使用した汁物
- こんにゃくの煮物
- 大麦入りのおにぎり
- 低糖質のブランパン
食事の際は主食だけでなく、食物繊維を含む野菜・海藻なども一緒に食べましょう。
食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
食事では、まず食物繊維から食べるようにしましょう。
ルール③ 「良質な油」を適切に摂る
- 魚を積極的に食べる
- サラダや豆腐に、えごま油・亜麻仁油をかける
などの方法で、良質な油を適切に摂っていきましょう。
良質な油には、血糖値の急上昇を抑え、食事の腹持ちをよくしてくれる作用があります。
脂質はダイエットの敵というイメージがあるかもしれませんが、適度に摂る分には効果的です。
※脂質の目標量は、1日の摂取エネルギー量の20~30%です。
良質な油を含む食品 |
- いわし・さばなどの青魚
- えごま油(シソ油)
- 亜麻仁油
|
ルール④ 1日3食、規則正しく食事する
欠食せずに、1日3食、規則正しく食べるようにしましょう。
空腹時間を長くさせないことで、次の食事での血糖値の急上昇を抑えられます。
夕食が遅くなってしまうときは…
どうしても夜ご飯が遅くなる場合は、夕方に200kcal程度を目安に「間食」をとるとよいでしょう。
その後の夕食は、間食をとった分を減らして食事量を調節してください。
ルール⑤ よく噛んでゆっくり食べる
よく噛んでゆっくり食べると、満腹中枢が刺激されて、食事量を抑えやすくなります。
さらに、食後のエネルギー消費量が増加するという研究結果もあります。
食事のメニューでは、
を意識的に取り入れると、自然と噛む回数が増えて食事がゆっくりになります。
早食いになりやすいので、「柔らかいものばかりの食事」は避けましょう。
早食いは満腹感を得られにくく、胃腸に負担をかけてしまいます。
「筋トレ+有酸素運動」で脂肪を燃焼させよう
痩せるためには「食べない」だけでなく、運動でカロリーを消費することが重要です。
- 筋トレ → 基礎代謝量を増やす
- 有酸素運動 → 脂肪の燃焼を促す
といった作用があるため、「筋トレ+有酸素運動」で組み合わせてダイエットを行うと、脂肪が燃焼されやすくなります。
筋トレは「スクワット」がおすすめ
「スクワット」の正しいやり方
- 脚を腰幅~肩幅に開いて立つ
- つま先はひざと同じ向きにする
- 手は胸の前で軽く組む
- 太ももと床が並行になるように、お尻を下げる
- お尻の力を抜かないようにしつつ、ゆっくりと元の位置に戻す
※10回1セットとして、1日3セット行いましょう。
下半身には大きな筋肉があるため、鍛えると効率よく筋力アップできます。
これから筋トレを始める方には、太もも・お尻の筋肉を鍛える「スクワット」をおすすめします。
有酸素運動は「無理なくできるもの」をやろう
有酸素運動は、1日30分以上・週2日以上を目安に行いましょう。
継続して行うことが大切になるため、ご自身に合った無理のないメニューをおすすめします。
運動に慣れていない方は、ウォーキングから始めるとよいでしょう。
まずは1カ月チャレンジしてみて
ダイエットはすぐに結果が出るものではないため、長期的な視点で行う必要があります。
個人差はありますが、まずは1カ月チャレンジして、体重や体の変化を見てみましょう。
体重1kgを減らすには7200kcalのエネルギー消費が必要になります。
食事や運動で1日240kcal減らしたとしても、1kg落とすには1ヵ月かかる計算になります。
3日や1週間などの短期間で体重が減少した場合、そのほとんどは水分によるものです。
また、極端な食事制限は一時的に体重が減りますが、健康を損なう恐れがあるため、おすすめできません。
食事内容を見直す・運動を習慣化するといった着実な方法で、地道に続けていきましょう。
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2021-10-29
「食べてすぐ寝ると太るって嘘?本当?」
食べてすぐ寝ると太るのは嘘か本当か、栄養士さんに聞いてみました。
「寝る前に食べるとき」に気をつけたいポイントなども解説しますので、ダイエット中の方は必見です。
「食べてすぐ寝ると太る」は嘘?本当?
「食べてすぐ寝ると太る」可能性があります。
寝ることによってエネルギー消費量が少なくなるため、脂肪として蓄積されやすくなります。
また、直後に寝てしまうような「夜遅い食事」は、特に脂肪の蓄積が促進されます。
これは、体内時計を調節する「BMAL1遺伝子」と、そのたんぱく質が活性化するためです。
20分程度の昼寝ならOK!良い効果も
食べてすぐに寝ると、脳のリフレッシュにつながるというメリットが期待できます。
特に昼食後の適度な昼寝は、午後のパフォーマンスをアップさせてくれます。
ただし、昼寝の時間は15〜20分程度に留めておきましょう。
長時間の昼寝は、逆に目覚めが悪くなってしまうので注意が必要です。
昼寝のコツは「寝る前のコーヒー」
昼寝の前にはコーヒーなどのカフェインを含む飲み物を飲むのがおすすめです。
カフェインは摂取後、15〜20分後くらいから覚醒効果を発揮するためすっきりとした目覚めにつながるでしょう。
夜間、睡眠直前の食事はNG!デメリットは?
脂肪の蓄積につながる
睡眠の質が下がる
病気の発症リスクが上がる
などのデメリットがあげられます。
デメリット① 脂肪の蓄積につながる
活動している時間よりも、寝ている時間のエネルギー消費量の方が少ないです。
そのため、エネルギー消費がスムーズに行われず、脂肪の蓄積につながって太る可能性があります。
また、夕方以降から、体内時計を調節する“時計遺伝子”の一種である「BMAL1遺伝子」とそのたんぱく質が活性化します。
このたんぱく質は脂肪を蓄積して、分解を抑える働きを持っているため、直後に寝てしまうような夜遅い食事では、特に脂肪の蓄積が促進されてしまうのです。
デメリット② 睡眠の質が下がる
食べたものの消化にエネルギーが使われることで、睡眠を妨げられ、睡眠の質が下がってしまう可能性があります。
良質な睡眠を取るためにも、就寝の2〜3時間前までに食事を済ませるようにしましょう。
睡眠の質の低下は、疲労を翌日に持ち越すことにつながります。
疲労が溜まった体は代謝が下がりやすくなるため、健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。
デメリット③ 病気の発症リスクが上がる
食後は胃酸の逆流が生じやすい時間帯です。
食後すぐ横になると、逆流した胃酸で食道の粘膜がただれてしまい、逆流性食道炎を起こすリスクがあります。
逆流性食道炎を起こすと、胸焼けや胃もたれ、げっぷ、喉の違和感や咳、声のかすれなどが起こり、日常生活に支障をきたす可能性もあります。
ダイエット中の人は、どう気を付ければいい?
忙しいときなど、どうしても晩御飯が遅くなってしまう場合もあります。
そんなときは、
高エネルギーの食事を避ける
脂肪・糖質の多い食事を避ける
ボリュームは通常の食事より抑える
といった点に気をつけると、ダイエットへの影響が少ないです。
寝る前の高エネルギーの食事、脂肪・糖質の多い食事を避けると、脂肪の蓄積だけでなく、消化不良による睡眠の質の低下も防げます。
また、食事のボリュームも通常の一食分より抑えると、消化がスムーズになります。
食べてすぐ寝るときの「食事選びのポイント」
食べてすぐ寝るときは、
野菜スープや味噌汁
大豆製品
などを選ぶのがおすすめです。
味付けは、さっぱりとしたものを選びましょう。
逆に、ごはんや麺類、パンなどの糖質の多い食品は避けましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省 e-ヘルスネット 睡眠と生活習慣病との深い関係
厚生労働省 e-ヘルスネット 快眠と生活習慣
日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)ガイドブック
ららぽーと横浜クリニック どうして食べた後すぐ寝てはいけないの?
日本成人病予防協会 昼寝 ~ストレス解消法~
保健指導リソースガイド 20分の仮眠が脳を活性化する コーヒーを飲んでから寝ると効果的
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2022-02-24
「腰回りが急に太った…」
「これって病気?」
腰回りが急に太る原因を、お医者さんに聞いてみました。
病気が疑われるケースも解説しますので、当てはまる症状がないか確認してみましょう。
なぜ?「腰回りが急に太る」主な原因
腰回りが急に太った場合、
更年期による「女性ホルモンの減少」
加齢による「筋肉量の減少」
などが原因となっているケースが多いです。
更年期になると、エストロゲン※という脂肪代謝を促す女性ホルモンが減少し、内臓型肥満を起こして腰回りが太ることがあります。
また、加齢に伴い筋肉量が減少すると基礎代謝量も減少してしまい、太りやすい体質になると考えられています。
※エストロゲン…脂質の代謝に関与しているホルモンで、コレステロールが最適な状態になるように調整する働きがある。
病気が疑われるケースも
卵巣や子宮の病気
ホルモン分泌に関わる病気
などが原因で、腰回りが急に太ることもあります。
いずれの病気も医療機関での治療が必要になることが多いです。
卵巣・子宮の病気の場合、悪性腫瘍が隠れているケースも稀にあるので、更年期・加齢が原因でない人は注意が必要です。
「病気のケース」と「病気ではないケース」の見分け方
原因
伴いやすい症状
更年期
イライラ感/不安感/発汗/ほてり など
病気
体重変化/貧血/便秘/腰痛/食欲不振/疲れやすい/むくみ など
心当たりのある症状がないか、上記の表で確認してみましょう。
ただし、30代以下で「食べ過ぎていないのに腰周りが急に太った」という場合は、症状に関わらず病気を疑った方が良いでしょう。
※上記の表はあくまでも目安です。発症している病気により、自覚症状がない場合もあります。
腰回りが急に太る5つの病気
疑われる病気
どんな状態か
① 卵巣腫瘍
卵巣内に腫瘍が発生している
② 多嚢胞性卵巣症候群
卵胞が正常な量よりも多く発生している
③ 子宮筋腫
子宮壁に腫瘍が発生している
④ 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌量が減少している
⑤ クッシング症候群
副腎から分泌されるホルモンの作用が過剰になっている
以下でそれぞれの病気を詳しく解説します。
心当たりのある症状などがないか確認してみましょう。
病気① 卵巣腫瘍
卵巣内に腫瘍が発生している状態です。
腫瘍が大きくなったり腹水がたまったりすると、腰回りが急に太ったように感じます。
卵巣腫瘍の発症は、欧米型の食事を好むなど食生活が偏っている人に多くみられます。
特に、
40~60歳
妊娠・出産の経験がないまたは少ない
初潮が早い
閉経が遅い
よく月経不順になる
といった女性に発症しやすいと考えられています。
こんな症状を伴いやすい
腰痛
強い月経痛
便秘
下腹部痛
頻尿
腹部が膨らむ
発症の原因は?
遺伝的要因
骨盤内の慢性的炎症
肥満
婦人科系疾患(子宮内膜症など)
などが関与しているのではないかと考えられています。
ただし、はっきりした原因は分かっていません。
対処法は?病院に行くべき?
卵巣腫瘍は、自力での改善は困難です。
疑われる症状がみられる場合は、早急に病院で受診してください。
良性のケースもありますが、悪性の場合は放置すると関わる命に関わる恐れがあります。
何科を受診すればいい?
「卵巣腫瘍」が疑われる場合、婦人科で受診しましょう。
病院では、外科的手術による病巣の切除、抗がん剤を用いた治療が行われるケースが多いです。ただし、腫瘍には良性と悪性があり、腫瘍の状態によって治療も異なります。
良性腫瘍の場合
腫瘍の大きさがある一定以上になる、小さくても充実性腫瘍(しこりのような硬さがある腫瘍のこと)を認めた場合、手術をします。急激な下腹痛を生じた(卵巣腫瘍茎捻転、卵巣腫瘍破裂など)場合には緊急手術となることもあります。
悪性腫瘍の場合
原則、手術により腫瘍を可能な限り摘出し、腫瘍を出来る限りなくします。手術後は化学療法(抗がん剤治療)を行い、残存腫瘍や腫瘍細胞の完全消滅に努めます。
婦人科を探す
病気② 多嚢胞性卵巣症候群
卵巣中の卵胞が正常な量よりも多く発生することで卵巣が腫れて大きくなり、排卵が起こりにくくなっている状態です。この症状がおきると、インスリン(ホルモン)が過剰に生じて、体重増加の一因になります。そのため、腰回りが急に太ったように感じます。
多嚢胞性卵巣症候群の発症は、
10~30歳代の女性
思春期から月経不順がある
肥満傾向
などの人に多くみられます。
こんな症状を伴いやすい
不正出血
肥満
多毛
月経不順
発症の原因は?
はっきりした原因は分かっていませんが、血糖値を下げる働きをもつインスリン(ホルモン)の機能低下が一因ではないかと考えられています。
また、「脳下垂体から分泌されるホルモン」と「卵巣から分泌される女性ホルモン」のバランスが崩れ、排卵障害が起こることが一因という考えもあります。
対処法は?病院に行くべき?
多嚢胞性卵巣症候群は、自力での改善は困難です。
放置すれば子宮内膜に異常な変化が生じ、「子宮内膜増殖症」や「子宮体癌(高分化型)」が発生することもあります。
疑われる症状がみられる場合は、早めに病院で受診してください。
何科を受診すればいい?
「多嚢胞性卵巣症候群」が疑われる場合、婦人科で受診しましょう。
病院では、「妊娠を希望しない」方には、低用量ピル、経口女性ホルモン等を用いた治療が検討されます。
「妊娠を希望する」方には、クロミフェン(経口排卵誘発剤)を用いて排卵を促進する治療が行われるケースが多いです。
この治療が無効な場合は、直接卵巣を刺激する注射療法(ゴナドトロピン製剤)や、卵巣表面に小さい穴を開ける外科的治療(腹腔鏡手術)が検討される場合もあります。
婦人科を探す
病気③ 子宮筋腫
子宮壁(子宮の筋層)に腫瘍(良性)が発生している状態です。
この病気によって腫瘍が大きくなる、腹水がたまるため腰回りが急に太ったように感じます。
子宮筋腫の発症は、
30歳以上の女性
初潮が早かった
妊娠・出産経験がないまたは少ない
などの人に多くみられます。
特に、アルコールの摂取量が多い、糖尿病、高血圧、肥満の人の発症リスクが高いと考えられています。
こんな症状を伴いやすい
貧血
月経過多、不正出血
月経痛の悪化
便秘、頻尿
レバーのような血の塊が出てくる(月経時)
腹部の膨らみ
発症の原因は?
女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の影響により、筋腫の芽が刺激を受けて増殖することが原因と考えられています。
対処法は?病院に行くべき?
子宮筋腫は、自力での改善は困難です。
疑われる症状がみられる場合は、病院で検査を受けることをおすすめします。
子宮筋腫があっても無症状の場合は、治療せず経過を観察する場合もあります。しかし、放置して子宮筋腫が大きくなってしまうと、妊娠しにくくなってしまいます。また、周囲の臓器を圧迫することにより頻尿や便秘、腰痛などの症状が出てくることもあります。
何科を受診すればいい?
「子宮筋腫」が疑われる場合、婦人科で受診しましょう。
病院では、手術療法(子宮全摘術、筋腫核出術)、薬物療法(ピル、偽閉経療法等)が行われるケースが多いです。
婦人科を探す
病気④ 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌量が減少し、全身の代謝が低下することで心身機能が衰退している状態です。この場合、むくみにより腰回りが急に太ったように感じます。
甲状腺機能低下症の発症は、40歳以上の女性に多くみられます。
こんな症状を伴いやすい
全身のむくみ
全身倦怠感、疲労感
無気力
便秘
皮膚の乾燥
徐脈
食欲不振にも関わらず体重が増加する
体温低下
甲状腺腫脹
発症の原因は?
発症の原因ははっきりと分かっていません。
対処法は?病院に行くべき?
甲状腺機能低下症は、自力での改善は困難です。
放置すれば、全身の臓器の働きが衰えて、日常生活を送るのが負担になっていきます。脳の働きも低下するため、認知機能や精神面にも悪影響を及ぼします。
疑われる症状がみられる場合は、早めに病院で受診してください。
何科を受診すればいい?
「甲状腺機能低下」が疑える場合は、内科で受診しましょう。
病院では、甲状腺のホルモン剤を用いて、不足している甲状腺ホルモンを補充する治療が行われるケースが多いです。
内科を探す
病気⑤ クッシング症候群
副腎皮質ステロイドホルモンである「コルチゾール」が過剰に分泌されている状態です。
この場合、コルチゾールの影響により体に過剰な脂肪がつくため、腰回りが急に太ったように感じます。
クッシング症候群の発症は、女性に多くみられます。
こんな症状を伴いやすい
前腕や下肢の皮膚が薄くなる
下腹部が膨らむ
太ももが細くなる
ぶつけた覚えがないのに皮下出血が起こる
皮下毛細血管が透けて見える
顔がむくんで丸くなる
赤ら顔、にきび
多毛
発症の原因は?
ACTHというホルモンを作る「下垂体の腺腫」が発生し、ACTHを過剰に分泌することが原因ではないかと考えられています。
なお、発症の直接的なきっかけ等はわかっていません。
対処法は?病院に行くべき?
クッシング症候群は、自力での改善は困難です。
放置するとさまざまな合併症(高血圧や糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症など)が引き起こされるほか、命に関わるケースもあります。
疑われる症状がみられる場合は、病院で受診してください。
何科を受診すればいい?
「クッシング症候群」が疑える場合は、内科で受診しましょう。
病院では、下垂体腺腫を摘出する外科的手術が行われるケースが多いです。
手術療法で改善がみられない場合は、コルチゾール産生を抑制する薬剤や注射薬等を用いる治療が検討されるケースがあります。
内科を探す
自分ではよくわからない…どうすれば?
自分ではよく分からない場合は、まず病院で相談してみましょう。
食べる量に変化がないのに
体重増加や腰回りが太ってきている
強く腰が痛む
下腹部の痛み
全身倦怠感
などの症状がみられる場合には、病院に行くことをおすすめします。
病院は何科へ相談に行けばいい?
「月経の異常などを伴うとき」 → 婦人科
「全身症状を伴う、または原因不明のとき」 → 内科
で相談しましょう。
病院では何を伝えればいい?
病院では、
どのくらいの期間にどの程度太ったか
腰回りが太ってきたこと以外の症状の有無
既往歴
服用中の薬剤の有無
などを医師に伝えると診察がスムーズに進むと考えられます。
内科を探す
婦人科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
一般社団法人 大阪府医師会 卵巣がん
公益社団法人 日本産科婦人科学会 卵巣腫瘍
公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮筋腫
一般社団法人 横浜市医師会 子宮筋腫
徳島県医師会 多嚢胞性卵巣症候群
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)(指定難病75)