もしかして、いんきんたむし?
デリケートゾーンのつらいかゆみの対処方法を紹介します。
- 原因は本当にいんきんたむし?
- 市販薬で治療することはできる?
- 病院で相談するなら何科?
他人に相談しにくい、デリケートな悩みを、お医者さんにお聞きしました。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
女性のいんきたむしの「症状」
女性のいんきんたむしは、皮膚がすれやすい部分(陰部・股関節内側、お尻など)に症状が出ることが多いです。
- 円形(楕円形)または環状の発疹が出現する(赤く盛り上がっているような発疹)
- 性器周辺や下腹部、臀部に小さい水ぶくれやブツブツが生じる
- 赤くなってただれることがある
- かゆみを伴う(個人差がある)
- 色素沈着(黒ずみ)がみられる
- 痛みを伴う場合がある
※そのほか、かゆみから掻きすぎて傷ができたり、出血したり、膿が溜まってしまうこともあります。
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2020-11-19
周りの人には聞きづらい女性の悩み。
「陰毛部分が乾燥して…かゆい!」
「皮がポロポロするのは病気…?」
病院を受診すべきかどうかお医者さんに聞きました。
病気の可能性や、対処法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
陰毛部分の乾燥。痒みと皮むけも…これ大丈夫?
一時的な乾燥が原因であれば、過度に心配する必要はありません。しかし…
かゆみや皮むけが長期間(目安として1週間以上)続く
激しいかゆみが伴う
という場合は、治療すべきかぶれや感染症などの病気の可能性があり、病院を受診すべき場合があります。
病院行くべき?
一般の方が「これなら大丈夫」と自己判断するのは難しいです。
一時的な乾燥肌なのか、治療を必要とする接触性皮膚炎(かぶれ)や病気かどうかを自己判断するのは難しいです。
一度病院で、医師の診察を受けましょう。
受診するのは何科?
陰毛部分の皮膚に関するトラブルは、皮膚科が基本です。
※ただし、陰部近くの皮膚や粘膜にかゆみ・ただれ、おりものに違和感、下腹部痛を伴っているなど、他の箇所にもトラブルがある場合は、婦人科や産婦人科を受診しましょう。
皮膚科を探す
婦人科を探す
考えられる3つの病気
陰毛部分がかゆい、皮がポロポロむけるというときは
接触性皮膚炎(かぶれ)
毛ジラミ症
白癬菌への感染(インキンタムシ・股部白癬)
の可能性があります。
それぞれ詳しく解説します。
病気① 接触性皮膚炎(かぶれ)
化学繊維の下着や、洗剤の成分などの刺激により、皮膚が炎症を起こすことで生じます。
皮脂や汗の過剰分泌による蒸れ、下着の擦れなどが主な原因です。
特に、生理中は免疫が下がるのに加え、ナプキンやタンポンにより蒸れやすくなります。
乾燥・かゆみ・皮むけ以外の「症状」
炎症
かき壊し
ただれ
自分でできる対処法は?
通気性のよい下着をつけましょう。
ご自身の体質にあった素材のナプキンをこまめ変えましょう。
特に、生理前〜生理中は免疫が下がりやすくなります。
睡眠をよくとり、ビタミンやミネラルを意識的に摂取しましょう。
これらの対策を2~3日続けても、改善しない場合は皮膚科を受診しましょう。
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病気② 毛ジラミ症
毛ジラミ(吸血昆虫)が陰毛に寄生することが原因で起こる感染症です。
強いかゆみが生じます。
陰毛だけでなく、頭髪、脇毛、すね毛、眉毛など毛が生えている部分に寄生する場合もあります。
陰毛に毛ジラミを持っている人の陰毛が接触(主に性交)したことによって感染します。
乾燥・かゆみ・皮むけ以外の「症状」
かゆみ以外の症状はあまりない
毛ジラミの糞は、吸った血液なので黒色。
その黒い糞が、下着に付着していることがある
自分でできる対処法は?
自分で駆除するのは難しいです。
皮膚科など病院での治療(専用のシャンプーなど)が必要です。
また、感染者と同じタオルや布団を使うことで家族やパートナーに寄生することも多いので、早急な対応が必要です。
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病気③ 白癬菌の感染(インキンタムシ)
白癬菌(カビ・真菌)が原因で起こる感染症です。
大勢の方が利用する浴場、公衆の洋式トイレなどで感染する場合もあります。
また汗をかきやすい人やナプキンなどで蒸れている人は、発症しやすいでしょう。
乾燥・かゆみ・皮むけ以外の「症状」
痛み
発疹
膿のある水疱
下腹部やヒップ、性器周辺まで広がる
自分でできる対処法は?
白癬菌は、しぶとい菌なのでご自身で処置をするのは難しいです。
市販薬も販売されていますが、自己判断での使用は、別の病気の場合、症状を悪化させる原因になります。
薬は、病院で「白癬菌」が原因だと診断を受けてから使用するようにしましょう。
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その他に考えられる感染症や原因
・クラミジア
・梅毒
・淋菌
・ヘルペス
・尖圭コンジローマ
・トリコモナス
などの性感染症の可能性もあります。
心当たりがある場合は、婦人科・産婦人科を受診しましょう。
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早期受診がオススメ
正確な病状の把握によって、適切な治療を受けることが大事です。
感染症の場合、家族やパートナーにうつしてしまう可能性があるので、早急に治療を受けましょう。
▼参考
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q &Aかぶれ
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa4/q02.html
いんきんたむしは「どこから感染する?」
いんきんたむしは、次のようなルートから感染します。
- 自分の足の水虫
- 水虫を患った同居の家族
- 共同で使用しているタオル
- 公衆浴場、プール等の腰掛やイス
- トイレの便座の布製カバー
- 性行為の相手
- 格闘技の相手
足の水虫から感染する可能性があると考えられています。
また、タオルや便座カバー等、直に股部に触れてしまうものから感染する可能性もあります。
性行為や格闘技のように、体が密着する動作によって感染するケースもあります。
他の人にもうつる?
水虫(白癬菌)が付着しても、付いた瞬間に感染して症状が出ることは、ほぼありません。
白癬菌が皮膚に付着後、増殖するまでに約24時間かかると考えられているので、その前にできるだけ早く洗い流して、白癬菌が増えないようにすることで感染を予防できます。
市販薬は使える?
いんきんたむしではないのに、自己判断で市販薬を使用した場合、症状を悪化させてしまう恐れがあります。
そのため、医療機関で検査をして、症状に合った薬を処方してもらうようにしてください。
それが完治への近道です。
「早く治したい!」対処方法は?
病院で治療を受けましょう。
皮膚科を受診した場合、一般的に抗真菌薬(塗り薬)による治療が行われます。
抗真菌薬を患部に塗って、症状の改善を待ちます。
通常、塗り薬を2週間ほど使用し続けることで、症状の改善が期待できます。
悪化させない方法
医師の指示に従って、根気よく薬の使用を続けてください。
白癬菌は皮膚の奥まで侵食しているケースが多いので、ので、かゆみ等の症状が消えても、自己判断で薬の使用を中止しないでください。
白癬菌は高温多湿の環境を好むため、できるだけ通気性の良い下着や衣服を使用し、蒸れないようにして、菌の増殖を抑制してください。
入浴後は、患部を湿ったままにせず、しっかりタオル等で拭き取り、乾燥させましょう。
かゆみを止めるには
まず、いんきんたむしと診断する検査が必要です。
自己判断で薬を使用して、違う病気だった場合、症状を悪化させる可能性があります。
早期にかゆみを止めるためにも、医療機関を受診して、症状に合った薬を処方してもらいましょう。
入浴はしても大丈夫?
入浴は通常通り行っても大丈夫です。
いんきんたむしは、同じ浴槽に入ることより、足拭きマットやイス、腰掛等を共用することで感染します。
感染を予防するために、銭湯等の利用後は、できるだけ早くきれいに洗い流し、しっかり乾燥させてください。
病院に行くべき症状
いんきんたむしは、自然治癒しないため、病院の受診が不可欠です。
次の場合は、病院を受診してください。
- かゆみがひどい
- 症状が出る範囲がどんどん拡がる
- いんきんたむしやカンジタなど、他の病気と区別がつかない
いんきんたむしは、時間が経つと症状の範囲が広がっていくため、症状の改善には時間がかかります。
そのため、早期受診、早期治療開始がとても重要です。
他人に感染させないように、早期に治療を開始しましょう。
治療は、皮膚科、婦人科、産婦人科の受診をおすすめします。
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2020-02-05
「デリケートゾーンが…かゆい!」
お医者さんに、
「自分で治せるの?」
「市販薬でケアしてもいい?」
病院を受診すべき目安についても聞いたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
デリケートゾーンのかゆみの原因は?
デリケートゾーンにかゆみがある場合
蒸れ
かぶれ(接触性皮膚炎)
ホルモンバランスの変化
アレルギー
ストレス
などが代表的な原因として考えられます。
生理用ナプキンの使用などで蒸れていると、かゆくなりやすいです。
また、この他にも「産後」や「抗菌薬を服用中」、「膀胱炎」「性感染症(STD)」になっている場合もかゆみがでることがあります。
「夜だけかゆくなる」ケースも
夜だけかゆみが生じる場合は、「入浴中」に原因があることがあります。
原因①40度以上の熱いお風呂に入っている
熱いお湯に浸かり過ぎると、皮脂が失われて乾燥しやすくなります。
原因②過剰に洗い過ぎている
お風呂でデリケートゾーンをゴシゴシ洗い過ぎると、刺激が生じてかゆみや黒ずみを引き起こす場合があります。
タオルでゴシゴシ拭くのも、摩擦による刺激で肌を痛めたり、乾燥しやすくなってしまい、かゆみにつながる場合があります。
洗いすぎはNG
デリケートゾーンの過剰洗浄は控えてください。
膣内には、清潔な状態を守るための自浄作用をもつ常在菌が存在しています。
しかし、デリケートゾーンを必要以上に洗うと、常在菌まで一緒に流してしまう可能性があります。石鹸によっては、常在菌を殺菌したり、膣内酸性度を変えてしまうものもあります。
すると、せっかく持っている自浄作用を低下させ、自ら不衛生な状態を作り出すことになります。
自分でできる「デリケートゾーンのケア」
通気性・肌当たりの良い下着を選ぶ
ストレスを溜め込まない(過度なストレスは免疫の働きを抑制してしまう)
炎症で熱をもっている場合は冷やす
ようにしましょう。
その他、「自分でできるケア方法」を紹介します。
洗うときは「泡」と「手」で
デリケートゾーンを洗うときは、タオルや固いスポンジではなく、清潔な手で洗いましょう。石鹸をしっかり泡立てて、優しく拭き取るようにてください。
デリケートゾーン専用の石鹸を利用するのもよいでしょう。
お風呂上りに「保湿」をしっかりと
洗った後に保湿ケアをすることで、肌のバリア機能が高まり、かゆみを軽減させることは可能です。馬油などを使ってケアするのもよいでしょう。
「ベビーパウダー」で蒸れ・摩擦を防ぐ
主成分がコーンスターチであるベビーパウダー(無香料、無添加のタイプ)は、皮膚の蒸れや摩擦を軽減する効能が期待できるとされています。
生理用品はこまめに交換
生理用ナプキン・おりものシートはこまめに交換しましょう。3~4時間に1回程度、トイレのたびに変えるようにするとよいでしょう。
また、ナプキンはできるだけ肌に合う低刺激な素材のものを使用しましょう。
市販薬について
「かゆみ」や「ただれ」であれば、市販薬を使用しても構いません。
しかし、根本治療ではなく、あくまでも対症療法という認識で使用しましょう。
また、皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には使用しないことが原則です。
適切な抗菌剤や抗真菌剤による治療が必要なケース(※後述)もあるので、医師や薬剤師、登録販売者に相談の上、使用しましょう。
例えば、性器クラミジア感染症は、抗生物質を服用しないと治りません。
かゆみに使える市販薬
これらの薬はヒリヒリしたかゆみに対しては使用できます。
フェミニーナシリーズ(軟膏、ジェル、ミスト)
ユースキンラフィ
ワセリン
オイラックス(鎮痒消炎薬)
エンペキュア
ゲンタシン軟膏
オロナインH軟膏(※後述の白癬菌の場合)
薬局等でデリケートゾーン専用の市販薬を購入しにくい場合には、乳幼児にも使用できるとされている「オイラックスソフト」という市販薬もあります。
症状が悪化している場合や2週間ほど使用しても改善がみられない場合には、医療機関を受診してください。
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漢方薬について
次の漢方薬の内服と「蛇床子(ジャショウシ)」という生薬煎液の外用を併用すると、デリケートゾーンのかゆみの改善が期待できるとされています。
苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
完帯湯(カンタイトウ)
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)等
こんな症状は病院へ
かゆみがひどい
赤くかぶれている
おりものが増加している
おりもののにおいが気になる
痛みがある
発疹がある
発熱がある
という場合は、できるだけ早急(数日中)に病院を受診してください。
何科で受診すればいい?
婦人科、皮膚科を受診しましょう。
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病院ではどんな治療をするの?
抗生剤や塗り薬を用いた治療が行われることが多いです。
感染症(※後述)の場合には、原因菌に対する抗生剤を用いた治療が行われます。
かゆみが強い場合やアレルギー性のかゆみの場合は、ステロイドの軟膏や抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)の処方、外用薬による治療が行われる場合もあります。
デリケートゾーンがかゆい「病気」
感染症などの「病気」によって、デリケートゾーンがかゆい場合があります。
あてはまる症状がでていないか確認してみてください。
性器ヘルペス
単純ヘルペス(ウイルス)が原因で起こる感染症です。
<症状>
かゆみ
痛み
かぶれ(ただれ)
性器クラミジア
クラミジア・トラコマティス(細菌)が原因で起こる感染症です。
<症状>
かゆみ
残尿感
子宮頸管炎(帯下や不正出血などの症状が起こる、子宮頸管の炎症)を起こし、不妊の原因になったりする場合があります。
膣トリコモナス症
膣トリコモナス(原虫、単細胞微生物)が原因で起こる感染症です。
<症状>
ひどいかゆみ
悪臭を伴うおりものの増加
膣カンジダ症
カンジダ(カビ・真菌)が原因で起こる感染症です。
カンジダ菌は、健常者の体にもともと常在している場合が多い菌です。
妊娠中や免疫力が低下しているときに菌が増えて発症するケースが多いです。
<症状>
かゆみ
ヨーグルト状のおりものの増加
白癬菌(いんきんたむし)
白癬菌(カビ・真菌)が原因で起こる感染症です。
<症状>
強いかゆみ
毛ジラミ症
毛ジラミ(吸血昆虫)が陰毛に寄生することが原因で起こる感染症です。
<症状>
強いかゆみ
細菌性膣炎
デリケートゾーンから検出されるケースが多い病原体(黄色ブドウ球菌、大腸菌等)が活性化して炎症を起こす疾患です。
<症状>
悪臭を伴う水のようなおりものが多量に出る
かゆみ
痛み
ただれ
参考
公益社団法人三鷹市医師会 デリケートゾーンのお話
第一三共ヘルスケア 薬と健康の情報局 デリケートゾーン(陰部)のかゆみの原因
陰部湿疹・陰部掻痒症 漢方坂本
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