皮膚がかゆい…。
赤く盛り上がっている…これって「ぜにたむし」?
「ぜにたむし」と似た症状が出る病気を、お医者さんに聞いてみました。
帯状疱疹の場合、放置すると後遺症が出るリスクもあります。
症状の特徴に当てはまるものがないか、確認してみましょう。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
「ぜにたむし」ってどんな病気?
ぜにたむしとは、足にできる「水虫」と同じ原因菌(白癬菌)によって起こる皮膚の感染症で、体に表れる症状を指します。
「ぜにたむし」の症状
- 皮膚が赤く盛り上がって腫れ、かゆくなる(初期)
- 腫れは丸みを帯びていて、次第に大きくなる
- 円の中心を残して、赤く輪のような発疹・水泡などが出てくる
上記の経過で症状が進行することが多いです。
※通常は、輪の形ですが、輪が出ない形になることもあります。
似た症状が出る病気も…
かゆみ・発疹といった「ぜにたむし」のような症状がある場合、
といった病気も考えられます。
それぞれの病気の特徴を解説していきますので、当てはまるものがないか確認してみましょう。
似た症状の病気① 接触性皮膚炎(アレルギー)
接触性皮膚炎とは、アレルギー物質に触る・擦れるなどで発症する、皮膚の炎症です。
皮膚に赤み・腫れ・かゆみが出る点で、「ぜにたむし」と症状が似ています。
「接触性皮膚炎」の皮膚症状
※症状は顔・腕・足・腹部・背中・臀部など様々な箇所に現れます。
特に、アレルギーを持っている人が発症しやすいです。
「ぜにたむし」と異なる点は?
接触性皮膚炎の場合、アレルギー物質を皮膚から取り除くと、症状は快方に向かいます。
ぜにたむしは、体から菌を根絶させないと再発を繰り返します。
接触性皮膚炎かも!どう対処すればいい?
まずは、アレルギー物質を皮膚から取り除きましょう。
かゆみがつらいときは、氷などを当てて患部を冷やしたり、市販のかゆみ止めを使ったりしましょう。
接触性皮膚炎であれば、原因物質を取り除くと、基本的に1~2日でかゆみ・赤みは引いていきます。
しかし、取り除くまでに時間がかかると、治りが遅くなる場合もあります。
1~2日見ていても症状の改善が見られないときは、皮膚科で相談しましょう。
これはNG!間違った対処法
赤みやかゆみがある部分を「ゴシゴシと擦って洗う」のはNGです。
皮膚に傷ができると、肌の炎症が広がったり、皮膚が弱くなって症状が悪化しやすくなったりします。
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似た症状の病気② 蕁麻疹(アレルギー)
「蕁麻疹」の症状
- 皮膚の腫れ・赤み
- 皮膚のかゆみ
- 腹痛・嘔吐を伴うこともある
- 口や喉のかゆみ・息苦しさ・呼吸困難といった症状を伴うこともある
※蕁麻疹は、太もも・二の腕・腹部・臀部など「皮膚の柔らかい部分」に出やすいです。
※「出ている部分」と「出ていない部分」がはっきりわかる点も特徴です。
蕁麻疹とは、アレルギー物質が体内に侵入したときに起こる、皮膚症状です。
皮膚の一部が盛り上がる・かゆみが出るといった点が、「ぜにたむし」と似ています。
発症のキッカケとしては「アレルギーの食べ物を食べる」といった行動が挙げられます。
アレルギー体質だと発症しやすいです。
特に疲れ・ストレスなどが溜まっていると、免疫低下によって発症リスクが高まります。
「ぜにたむし」と異なる点は?
蕁麻疹は一気に発疹やかゆみが出て、長くても20分程度で引いていきます。
ぜにたむしは、発疹が長期的に続きます。
ブツブツが一気に増えてきたら、蕁麻疹である可能性が高いです。
蕁麻疹かも!どう対処すればいい?
かゆみのある部分を冷やして、様子を見ましょう。
※呼吸困難を伴うなど、命の危険がある場合はすぐに救急車の手配をしてください。
アレルギーの症状が出たら、一度病院に行って原因物質を調べてもらいましょう。
原因がわからないまま放置すると、アナフィラキシーショックを起こす恐れもあります。
発疹が出ているときに病院へ行くと、かゆみを抑える薬を処方してもらえます。
これはNG!間違った対処法
蕁麻疹は「体を温める」と悪化しやすいです。
蕁麻疹のようなブツブツが出ているのを見つけたら運動をやめて、体・皮膚を冷やしましょう。
アレルギー科を探す
似た症状の病気③ 乾癬(角質の異常増殖)
「乾癬」の皮膚症状
- 皮膚の赤み
- 白っぽい、銀色の様なかさぶた(鱗屑)
- かさぶたから角質が剥がれ落ちる
- 徐々に広がることもある
- かゆみを伴うこともある
※全身に発症しますが、膝・腰・ひじ・頭など「擦れる部分」に出やすい傾向があります。
※「赤みがある部分」と「ない部分」がはっきり分かれる点も特徴です。
乾癬とは、皮膚細胞の増殖スピードが異常に早くなってしまう病気です。
「境目のはっきりした赤い発疹」が出るところが、「ぜにたむし」の症状と似ています。
乾癬の発症には、免疫機能の異常や、遺伝的要因が関わっています。
特に生活習慣病(糖尿病・高血圧など)を患っている人、ストレス過多の人などは、発症リスクが高いと考えられています。
「ぜにたむし」と異なる点は?
乾癬の方は、角質がポロポロと落ちるという特徴があります。
ぜにたむしの場合は、角質が厚くなり、表面がザラザラになります。
乾癬かも!どう対処すればいい?
乾癬は自然治癒が難しいため、疑われるときは一度皮膚科で受診しましょう。
セルフケアでは、こまめに保湿して皮膚が乾燥しないようにしてください。
特に「角質が盛り上がった発疹」が現れた場合は、早めの受診をおすすめします。
乾癬を放置すると、症状が広がり、見た目に影響を及ぼす恐れがあります。
皮膚科では、薬の処方などを通して、症状の悪化防止を図ってもらえます。
これはNG!間違った対処法
- 保湿をしないで放置する
- 角質を無理に剥がす
- 入浴時に擦り洗いする
といった行為は、乾癬を悪化させるので避けてください。
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似た症状の病気④ 帯状疱疹(ウイルス感染)
「帯状疱疹」の症状
- 神経痛(ピリピリ・チクチク感じる)
- チクチクなどの違和感があった部分に、赤い発疹が出る
- 水ぶくれ
- 強い痛み
- 皮膚のかゆみ
- しびれ
- 頭痛
- 高熱
※体の片側に発症します。
※体幹部や首周りなど、上半身の皮膚の薄い部分に出やすいです。
帯状疱疹とは、水ぼうそうのウイルスによって起こる、肌・神経のトラブルです
「ポツポツとした赤み」が出る点が、「ぜにたむし」の症状と似ています。
水ぼうそうを発症したことがある人は、治った後もウイルスが体内に潜伏しています。
ストレス・疲れなどで免疫が低下していると、水ぼうそうのウイルスが活性化して、帯状疱疹が出ることがあります。
特に中高年以降は発症リスクが高まります。
「ぜにたむし」と異なる点は?
帯状疱疹の場合、神経に沿って赤みが線状に出ます。
その後、チクチクとした痛みが強くなって日常生活を送れないほどになります。
ぜにたむしの場合、このような痛みを伴うことはありません。
帯状疱疹かも!どう対処すればいい?
帯状疱疹を疑うときは、早めに皮膚科で受診しましょう。
2週間程度で自然治癒するケースもありますが、悪化のリスクを避けるためにも、受診をおすすめします。
悪化すると、高熱が出て治療に時間がかかったり、後遺症として「神経痛」が出たりするリスクがあります。
特に再発の場合は、「以前の症状と似ている」と感じたときにすぐに受診しましょう。
これはNG!間違った対処法
帯状疱疹の発疹には、
といった対処はNGです。
冷やすと痛みが悪化するリスクがあります。
また、免疫が低下しているので、潰れた水ぶくれから感染症を起こす恐れがあります。
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2022-12-23
帯状疱疹ってどんな病気…?
放っておいてもいいの?
帯状疱疹という病気について、分かりやすくまとめました。
発症する原因や初期症状、治療方法についても解説します。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹とは、過去に感染した「水ぼうそうのウイルス」が再活性化することが原因で発症する感染症です。
帯状疱疹になると、体の片側に痛みやチクチクとした感覚、かゆみが生じます。
その後そこに、まわりが赤い小さな水ぶくれがたくさんできます。ピリピリとしたしびれを感じることもあります。
帯状疱疹の症状
体の片側のかゆみ
体の片側の発疹・水ぶくれ
発熱
頭痛
※かゆみ・発疹等は、腕・胸・顔に出ることもあります。
症状の経過
帯状疱疹は、「①かゆみや痛み→②発疹→③水ぶくれ」と症状が変化していきます。
① 痛みやかゆみが出る
体の左右どちらか片側に、はじめは皮膚の痛みやかゆみなどの症状があらわれます。
胸から背中など、上半身に症状が出ることが多く、顔や目の周りに発症することも多いです。
② 紅斑・発疹ができる
痛みやかゆみなどの症状がある箇所に、赤い斑点(紅斑)が出てきます。
その後、虫に刺されたような発疹ができます。
発疹は神経に沿って帯状にあらわれ、数日から1周間ほど続きます。
③ 水ぶくれができる
発疹ができた部分にみずぶくれができます。発疹の中央の部分が膿のようになり、ただれたり、潰瘍のようになったりします。
やがて、かさぶたとなり、自然に枯れて剥がれ落ちます。
皮膚の症状は、一般的には1~2周間から1ヶ月ほどで良くなります。色素沈着が残る人もいます。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹は、体内に潜んでいる「水痘ウイルス(水ぼうそうのウイルス)」が原因です。
免疫力が低下しているときにウイルスが活動を再開すると、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹になりやすい人は?
40~50代以上
疲労やストレスがたまっている
睡眠不足
免疫力が低下していると、神経細胞に潜んでいた「水ぼうそうのウイルス」が活性化して、帯状疱疹を発症しやすくなります。
※水ぼうそうに感染した人全員が、帯状疱疹を発症するわけではありません。
帯状疱疹は人にうつるの?
帯状疱疹は、周囲の人に帯状疱疹として感染することはありません。
しかし、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが帯状疱疹の原因なので、乳幼児など水ぼうそうにかかったことがない人には、水ぼうそうとして感染することがあります。
帯状疱疹かもと思ったら…
時間をかければ自然治癒しますが、早めにウイルスや痛みを抑えるのがよいため、帯状疱疹の疑いがあったら、皮膚科にいくのがよいでしょう。
病院で処方される抗ウイルス剤を飲めば、自然治癒を待つより早い回復が期待できます。
また、免疫力が低下している状態です。まずは安静にして、食事をしっかりとりましょう。
お家では、お風呂に入ったりホットタオルをあてたりして、体を温めて痛みを和らげましょう。帯状疱疹による痛みは、血行が悪いと強く感じます。
治療内容
抗ウイルス剤の点滴や内服を行います。痛みに対しては鎮痛薬を使用することもあります。水疱には軟膏を塗ります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
ぜにたむしに似た症状があるときは、「皮膚科」で相談を
ぜにたむしの場合、放置すると症状が広がったり、誰かにうつしたりするリスクがあります。
似たような症状があるときは、皮膚科で治療を受けるようにしましょう。
今回挙げたもの以外にも、
など、ぜにたむしと似た症状が表れる病気は様々あります。
悪化のリスクを防ぐには、原因が何か突き止めることが大切です。
特に「発疹が増えている」場合は、早めに受診しましょう。
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2020-11-19
皮膚に円形のカサカサができている…これは何?
円形のカサカサができる原因と対処法をお医者さんに聞きました。
「病院へ行くべき症状」や「人へうつることはあるのか」なども解説します。
皮膚にできた「円形のカサカサ」の正体
皮膚に円形のカサカサがあらわれている場合、
貨幣状湿疹
体部白癬
の可能性が高いです。
病気① 貨幣状湿疹
中高年以降に発症することが多いです。
皮膚が乾燥しやすい冬に起こりやすいです。
腕や足のうしろ側やおしりにできやすいです。
古い発疹が治った跡にできることも多いです。
貨幣状湿疹になってしまう原因は、今のところわかっていません。
貨幣状湿疹の特徴
直径2~10cmほどのかゆみを伴う赤い発疹が、1~50個ほど広範囲にできます。
斑状の吹き出物や水疱が生じ、次第にじくじくします。その後、かさぶたになり、乾燥してカサカサします。
人にうつる?
貨幣状湿疹は感染症ではないため、人から人へはうつりません。
自分でできる対処法はある?
皮膚を清潔に保ち、乾燥しないように保湿をしっかりしましょう。
また、衣服やタオルの摩擦など、皮膚へ刺激を与えないようにしましょう。
かゆくてもかきむしらないでください。
病気② 体部白癬
発疹の縁の部分がうろこ状にカサカサして盛り上がっている場合は、「体部白癬」が疑われます。
自分の足の水虫や、家族・ペット(犬や猫)からうつることが多いです。
特に格闘技など体の接触の多いスポーツをしている人は、感染リスクがあります。
他の皮膚に急速に広がるケースも多いので、注意が必要です。
体部白癬の特徴
ピンク色~赤色の円形の発疹ができる。
顔や手と足の甲を含む皮膚のあらゆる部分に、1つ以上の発疹ができる。
かゆみがある。
人にうつる?
感染症なので、人へうつすことがあります。
タオルや衣服の共有や、体の密着は控えましょう。
自分でできる対処法はある?
まずは医師への相談をおすすめします。
その上で毎日入浴し、皮膚を清潔に保ちましょう。
かゆくてもかきむしらないようにしてください。
汗をかきやすかったり蒸れたりする服装は、避けましょう。
皮膚科を受診する目安
円形のカサカサのほかに、かゆみなど他の症状がある場合、病気にかかっている可能性があります。
早めに皮膚科など医療機関を受診しましょう。
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早期に皮膚科で治療を受けるメリット
円形のカサカサの原因を突き止めることで、早く完治する可能性があります。
体部白癬など感染症の場合、家族やペットへの感染する可能性があります。
感染を広げないためにも、早めに治療を受けましょう。
特に、自己免疫性疾患の一つである円形状エリテマトーデスや、難病指定である全身性エリテマトーデス(※)にも注意が必要となるため、早期受診が必要です。
▼参考
MSDマニュアル家庭版 貨幣状湿疹
MSDマニュアル家庭版 ぜにたむし-体部白癬
Medical Mycology Journal 第3号 平成23年 体部白癬(足白癬含む)
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。