アルコールを飲むと顔や体がまだらに赤くなる人がいます。
この症状はアルコールアレルギーと呼ばれ、息苦しさや喉のつまり、かゆみ、蕁麻疹などを伴う場合もあります。
「突然、アルコールアレルギーを発症する」ケースもあります。
※飲酒した際に生じる“アルコールアレルギー”と呼ばれる諸症状は、厳密にいうと、通常のアレルギー反応とは異なる『アルコール過敏症』というものです。この記事では、一般的な呼称と合わせて“アルコールアレルギー”と記載を統一しております。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
アルコールアレルギーの「症状」
アルコールを飲んだ際に次の症状を伴う場合、アルコールアレルギーの可能性があります。
- 蕁麻疹が出る
- 息苦しい(呼吸困難)
- 喉の閉塞感
- 皮膚のかゆみ
- 鼻づまり
- 頭痛
- 顔の火照りや赤みアル
また、アルコールアレルギーの場合は、一般の食物アレルギーと異なり免疫の過剰反応から起こるものではありません。アルコールに対する耐性(アルコールを十分分解する酵素)がないことで起こります。
「お酒に弱い」と「アルコールアレルギー」は違う
お酒が全く飲めない体質がアルコールアレルギーです。
アルコールアレルギーは、「お酒に弱い」「弱いけど飲める」というのとは別で、ひと口でも飲んだら呼吸困難や蕁麻疹などの重大な症状が現れる可能性もあります。
アルコールアレルギーの特徴
アルコール中の毒素を代謝する酵素を持ち合わせていないアルコールアレルギーの人の場合は、体調に関係なく症状を発症します。
お酒の種類も関係なく、アルコールの入っているものに反応します。お菓子や漬物などの食品でも、成分としてアルコールが入っていると同様の反応が出ます。
アルコールアレルギーは、一口でも口にしたら呼吸困難蕁麻疹などの重大な症状が現れる可能性もあります。
元々アルコール耐性がない場合、耐性が備わることはありません。
お酒に弱い人の特徴
「お酒に弱い」人は、この代謝酵素の活性が低いと考えられています。お酒を飲んだ量や、そのときの体調で左右される場合もあります。
合わせて読みたい
2020-01-29
「お酒を飲むと顔が赤くなるのはなぜ?」
「赤くなる人、ならない人の違いは?」
お酒を飲むと顔が赤くなるのはなぜか、お医者さんにお聞きしました。
顔が赤くなりにくいお酒の飲み方や、赤みを引かせる方法なども解説します。
なぜ?「お酒を飲むと顔が赤くなる」
急に赤くなるのは?
「お酒を飲むと顔が赤くなる」のは、肝臓でアルコールを分解すると作られる「アセトアルデヒド」によるものです。
アセトアルデヒドが体内でうまく分解されないと、血管が拡張して顔が赤くなります。
顔が赤くなるだけでなく吐き気、頭痛といった不快な症状も、アセトアルデヒドが原因です。
「赤くなる人」と「赤くならない人」の違い
アセトアルデヒドは、「アセトアルデヒド分解酵素」という成分によって分解されて体内に吸収されていきます。
この分解酵素の “強さ”には個人差があり、それによって赤くなる・赤くならないが決まります。
「アセトアルデヒド分解酵素」の活性の強さは、
活性型
低活性型
非活性型
に分けられます。
「お酒に弱い人」は、低活性型・非活性型の人です。
アセトアルデヒドを上手く分解できないため、顔が赤くなりやすく、少量のお酒でも酔っぱらった症状が出やすいといえます。
一方「お酒に強い人」は、活性型の人です。
アセトアルデヒドが分解されやすいため、顔が赤くなりにくく、ある程度の量のお酒を飲んでも酔っぱらった症状が出にくいといえます。
活性の強さは遺伝や性別、体格なども関係しています。
両親がお酒に弱く、すぐに顔が赤くなる場合、その子どもも同じ体質である可能性が高いです。
顔が赤くならないようにする方法
体調を整え、健康な身体のときにお酒を楽しみましょう。
また、ゆっくり食事と水分を一緒に摂りながらお酒を飲むようにすると、赤みが出にくくなります。
顔の赤みを治す方法
お酒を飲むのをやめて、水分補給をして安静にしてください。
火照りを冷やすため、涼しいところでしばらく涼みましょう。
女性であれば、ファンデーションで赤みを隠すこともできます。
なお、赤くなったときは、体からのアルコールの飲み過ぎ注意警報です。
無理をして飲まないようにしましょう。
1.「急に赤くなる」ケース
お酒が弱い人は、血管が拡張されて急に顔や体が赤くなるケースがあります。
これは、上手く分解できなかった「アセトアルデヒド」が、血液中に巡ってしまうために起こります。
女性は赤くなりやすい?
般的に女性は男性よりも体が小さい場合が多く、肝臓も同様に小さいです。
そのため、女性の方がアルコールの影響を受けやすく、赤くなりやすい人が多い傾向があります。
ただし、アルコールの代謝は遺伝の影響を受けるため、女性でも男性よりもお酒に強い人もいます。
2.「まだらに赤くなる」ケース
肝臓の機能が低下していると、まだらに赤くなったり、手のひらが赤くなったりします。
その場合は、少し飲酒を控えましょう。
一時的のものであれば良いのですが、
飲酒する度に体に赤い斑点が出る
今までよりお酒が飲めなくなった
長期的に飲酒をしている
といった人などは、一度検査を受けた方が良いでしょう。
飲酒で赤くなるとニキビが目立つ理由
赤いニキビは毛穴の炎症であるため、アルコールで血流が良くなると目立つようになります。
体に赤い斑点ができるのはなぜ?
飲酒すると体に赤い斑点が出るのは、肝機能が衰えていると出やすい症状です。
3.「赤くなる日とならない日がある」ケース
その日の体調によって、肝臓のコンディションは異なるものです。
肝臓の疲労がたまっていたり、働きが悪かったりすると、赤くなりやすい傾向があります。
薬の服用や生理の影響も
病気をした後
薬を飲んでいる時
生理で体調が悪い時
などに赤くなりやすいのは、体の他の器官と同様に肝臓も疲れているからです。
4.「最近、顔が赤くなるようになった」ケース
いままで赤くならなかったのに、急に赤くなるようになった場合は、疲れがたまっていたり、肝機能の低下なども考えられます。
肝機能の働きが悪くなると、アルコール代謝が落ちるため、顔が赤くなりやすいです。
肝機能の低下で疑われる「病気」
急に顔が赤くなるようになった場合、
脂肪肝
肝硬変
などの病気で肝機能が低下している可能性があります。
脂肪肝
肝臓に中性脂肪が多く蓄積されている状態を脂肪肝と言います。
こんな症状は要注意!
疲れやすくなる
お腹が張る
倦怠感が出る
肝硬変
肝臓が慢性的に炎症を起こして肝機能が低下し硬くなっている状態です。
本来柔らかいはずの肝臓が硬く、小さくなっています。
こんな症状は要注意!
食欲がなくなる
倦怠感が出る
皮膚が黄色っぽくなる
お腹が張る
手のひらが赤くなる
受診するのは何科?
肝機能が低下や、病気の可能性があるときは、内科・消化器内科を受診しましょう。
肝臓は沈黙の臓器と言われており、病気の進行に気づきにくいです。
悪化を防ぐためには、定期的な検診や早めの受診を心がけることが大切です。
内科を探す
これホント?「お酒を飲み続けると赤くならない」
毎日お酒を飲み続けても、アルコール代謝能力が上がることは、ほとんどありません。
そのため、飲み続けたからといって赤くならないということはありません。
弱くないのに赤くなるのは赤信号
お酒に弱いというわけではなくても、ひとくちふたくち飲んだだけで一気に真っ赤になる時は飲酒を控えましょう。
赤くなるのはアルコールに対して拒否反応のような状態が起きています。
無理して飲み続けると、急性アルコール中毒になるおそれがあるため、危険です。
まとめ
肝臓も他の臓器と同じように、使えば使うほど老化していきます。
以前は顔が赤くならなかったのに、年をとったら赤くなるようになってきた人は、休肝日を設けて、肝臓を休める日を作りましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
ある日、突然発症する場合も
今まではお酒を飲んでも何ともなかったのに、後天的に症状を発症する人もいます。
「疲れ」や「ストレス過多」で発症する人もいると言われています。
後天的に発症する原因は、現在もはっきりとわかっていません。原因がはっきりしない以上、お酒に弱い人だけでなく、お酒に強い人でも起こる可能性はあります。
お酒以外のアルコールにも要注意
アルコールアレルギーの人は、飲むアルコール以外にも、注意が必要です。
アルコールアレルギーの人は、皮膚のアルコール消毒でも赤くなったり、シャンプーや化粧品のアルコールにも反応する場合もあります。
お酒を避けていても、その他の物から取り込み、体調不良を起こしているかもしれません。アルコールの配合の有無は、パッケージの成分表示に記載されていますので、確認するようにしましょう。
病院に行く目安
アルコールを飲むと蕁麻疹ができたり、呼吸困難が起こるという人は、病院で一度検査を受けてみましょう。
アルコールにアレルギーのある体質の場合、日常生活においてアルコールを避けることが必要になるでしょう。
検査方法
病院では、皮膚でアルコールのパッチテストを行うことが多いです。
受診するのは何科?
皮膚科を受診しましょう。
皮膚科を探す
アルコールアレルギーは治せる?
アルコールアレルギーを根本から治療する方法や薬剤は現在のところありません。
このため、アルコールを摂取しない、アルコールに接触しないことが基本的な改善策となります。
現在さまざまな食品や製品にアルコールが使用されているので注意が必要です。
合わせて読みたい
2021-01-07
「日光に当たると肌が荒れる…」
その症状、もしかすると日光アレルギーかもしれません。
セルフチェックリストを使って、日光アレルギーかどうかをご自身で確認してみましょう。
お医者さんが日光アレルギーの原因から対処法まで解説します。
日光アレルギーチェックリスト
日光アレルギーかどうか不安な方は、次のセルフチェックを試してみましょう。
日光に当たった数分後に蕁麻疹が現れ、数分~数時間で消える
日光に当たった数分後に蕁麻疹が現れ、頭痛や吐き気、脱力などの症状がみられる
日光に当たった30分~数時間後、皮膚にかゆみを伴う赤いできものや不規則な形の盛りあがり、水ぶくれなどができる
日光に短時間当たった数時間後、皮膚が赤く(または褐色や青灰色)なり、痛みも出る
日焼け止めなどを塗って日光に当たった後、皮膚が赤くなり、うろこ状のくずができたり、かゆみが生じたりする
上記の症状が1つでも当てはまる場合、日光アレルギーを発症している可能性が高いです。
病院に行くべき?
日光を浴びた後に、蕁麻疹など異常が生じる場合は病院を受診しましょう。
受診するのは何科?
皮膚科やアレルギー科を受診しましょう。
皮膚科を探す
なぜ日光アレルギーになってしまうの?
日光アレルギーの原因は
光アレルギー性皮膚炎
光毒性皮膚炎
日光蕁麻疹
多形日光疹
の4種類があります。それぞれ説明していきます。
① 光アレルギー性皮膚炎
薬の服用が原因で発症することが多いです。
日光を浴びることで、原因物質が光アレルギーを誘発し、アレルギー反応を引き起こします。
原因となる薬
サイアザイド薬
クロルプロマジン
経口糖尿病薬 など
日焼け止め・アフターシェーブローションが原因物質になることもあります。
② 光毒性皮膚炎
薬の服用が原因で発症します。
原因物質が皮膚に蓄積し、紫外線が当たることでアレルギー反応を引き起こします。
原因となる薬
ソラレン
コールタール
テトラサイクリン
サイアザイド薬
ソラレンはきゅうりや柑橘系の果物の皮など、食物にも含まれているので気をつけましょう。
③ 日光蕁麻疹
日光を浴びたことで皮膚が過剰反応し、炎症が生じて皮膚炎になる場合があります。
④ 多形日光疹
日光(主に紫外線A波)が原因とされていますが、はっきりとわかっていません。
大人になってからでも発症する?
日光アレルギーは、大人になってから発症することはあるのでしょうか?
大人になってからでも発症することがあります。
多形日光疹は10~20歳代の女性に多く、成人してから発症するケースもあります。
改善するために自分でできることは?
日頃から3つのことを意識しましょう。
日光を過剰に浴びない
紫外線カットできる洋服を着る
日焼け止めを使用する
日光アレルギーの原因となる化学物質や薬は、医師と相談し、可能な限り中止してください。
▼参考
MSDマニュアル家庭版 光線過敏症
皮膚病治療情報・皮膚科教科書 あたらしい皮膚科学 第3版