「いびきをかくのは熟睡している証拠」と言う人がいますが、それは正しくありません。
医学的に見ると、いびきをかく人ほど睡眠がぐっすりととれていないことが多いのです。
いびきに隠れた「睡眠時無呼吸症候群」は、血管の病気につながる要注意な病気です。
心当たりのある症状がないかチェックしてみましょう。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
「いびき」と「眠りの深さ」の関係
いびきをかいているときは、眠りの浅いレム睡眠です。
たまにいびきをかくのは、心配ないことが多い
「普段はいびきをかかないのに、たまにいびきをかく」ような、一時的に現れる症状を、散発性いびきといいます。
この場合は健康に大きく影響を及ぼさないため、心配ないことが多いです。
散発性いびきは
- お酒を飲んだ後
- 風邪をひいて喉が腫れている
- 花粉症で鼻がつまっている
いびき防止のためには…
横向きで寝る、枕の高さを調整するといった対処で改善が期待できます。
また、鼻で呼吸する習慣をつけるようにしましょう。
いびきは気道が塞がって発生するため、舌の落下を起こさないことが大切です。
枕の高さは、「仰向けで顎が少し引いた状態」になるものを選んでください。
いつもいびきをかく人は、“眠りの質”が悪くなっているかも
「寝ている時は、いつもいびきをかいている」という習慣性のいびきがある人は、「睡眠時無呼吸過眠症候群(SAS)」の可能性が十分に考えられます。
この病気は、睡眠時の無呼吸や低呼吸によっていびきが起こります。
脳・体も「酸欠状態」に陥るため、 当然“眠りの質”は悪くなります。
「よく寝たはずなのに疲れがとれない」ことはありませんか?
よく寝たはずなのに疲れがとれない場合は、睡眠時無呼吸過眠症候群になっている可能性が高いです。
睡眠時無呼吸過眠症候群になると、睡眠の質が悪くなったせいで
- 日中の強い眠気
- 集中力・記憶力の低下
- 作業効率の低下
- 頭痛
- 夜間頻尿
- 疲労感
- うつ
などの症状がでることがあります。
睡眠時無呼吸過眠症候群チェック
睡眠時無呼吸過眠症候群は、「10秒以上続く無呼吸が一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上起こる」と定義されています。
しかし、眠っているときの症状は、自分では確認することができません。家族やパートナーに様子をみてもらうといいでしょう。
自覚できる症状
- 睡眠時に何度も目が覚める
- 寝汗をかく
- 頭が痛い、ズキズキする、身体が重いと感じる
- 熟睡感がなく、すっきりと起きることができない
- 日中に強い眠気、だるさ、倦怠感がある
上記症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
息が止まった後に大きな音を出すようないびきは要注意!
息が止まった後に、大きな音を出すようないびきは注意が必要です。
本人に自覚がないことが多いため、家族やパートナーの指摘で発見されます。
放置すると…不整脈・脳卒中が起こりやすくなる
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、
- 動脈硬化症
- 糖尿病
- 高血圧症
- 不整脈
- 心筋梗塞
- 脳卒中
といった病気の発症リスクが上昇します。
循環器の病気は、無呼吸時に血液中の酸素が不足することで起こります。
また、夜間に無呼吸を起こすと、交感神経が興奮し続けるために自律神経が乱れ、内分泌系にも悪影響を及ぼします。
米国の「睡眠時無呼吸過眠症候群の患者を調査した研究」では、循環器疾患で死亡するリスクが健康な人の5.2倍も高いことが報告されています。
簡易キットで検査することも可能です!
病院では受診時に、自宅で出来る、いびき・睡眠時無呼吸症候群の検査装置が配布されることがあります。
ただし、これはあくまでも簡易検査です。
正しい診断を受けるために、検査後に病院で診察を受けることをおすすめします。
“たかがいびき”と考えず…気軽に相談を!
「いびき」の中には、
などさまざまな問題が隠されています。
睡眠の質の低下が、日常生活の質を低下させると言っても、過言ではありません。
周囲から「いびき」の指摘を受けた人は、「たかがいびき」と軽く考えるのではなく、一度自分のいびきの状態と向き合ってみませんか?
いびきに関する悩みは、耳鼻いんこう科で相談できます。
耳鼻いんこう科を探す
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2023-01-17
「明日も朝早いのに眠れない…」
「すぐに眠れる方法が知りたい!」
公認心理師・臨床心理士の赤田太郎先生が、スムーズな入眠をサポートする方法をご紹介。
寝付けなくてお困りの方は、ぜひお試しください。
※動画による解説は記事末尾から
今すぐ寝たいときは「漸進的筋弛緩法」を試してみよう
最近寝つきが悪くて困っています。
明日も仕事で朝早いのに…。すぐに眠れる方法ってないのでしょうか?
眠れないときには、「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」がおすすめです。
意識的に筋肉の緊張と弛緩(緩める)を繰り返すことで、体と心の緊張をほぐしていきます。
体全体がリラックスするので、スムーズな入眠に繋がりますよ。
漸進的筋弛緩法のやり方
まずは楽な姿勢で座ります。
その後、体の各部位の「筋肉を緊張させる⇒脱力する」という行為を2回ずつ繰り返していきます。
手・腕
頭部(額・目・顎)
首肩まわり
上半身(胸・お腹)
足
の順に行いましょう。
大切なのは、緊張した筋肉が緩んでいく感覚を意識することです。
ここからは詳しい手順を解説していきますので、ぜひ実践してみてください。
※漸進的筋弛緩法の注意点※
漸進的筋弛緩法は、著しく体力が低下している方や治療中の疾患・ケガのある方が行うと、不快感が生じたり、症状が強くなったりする可能性があります。特に現在通院中の方は、必ずかかりつけ医に相談してから実践するようにしましょう。
1. 手・腕の筋弛緩
▼手の筋弛緩のやり方
椅子やベッドで楽な姿勢で座り、目を閉じる。
右の拳を、体を痛めない程度に、少し強めに握る。
指と腕の力を抜いていく。
①~③を2回繰り返す。
左手も同様に行う。
▼腕の筋弛緩のやり方
右腕の肘を曲げて力を入れる。
腕をゆっくり伸ばして、緊張を緩める。
緊張のある状態とない状態の違いを感じながら、リラックス感を深める。
①~③を2回繰り返す。
左腕も同様に行う。
目を閉じるのが不安な人は、開いたままでも構いません。
「力を入れたときの緊張」と「脱力するときの弛緩」の違いを味わうようにしましょう。
2. 頭部(額・目・顎)の筋弛緩
▼額の筋弛緩のやり方
額にシワを寄せるようにして力を入れる。さらに力を入れる。
だんだんと額の力を抜く。額全体のシワがなくなっていくことをイメージする。
①~②を2回繰り返す。
▼目の筋弛緩のやり方
目を強く閉じる。目やまぶた以外の部分に力が入らないようにする。
目を閉じたまま、力を抜いていく。
①~②を2回繰り返す。
▼顎の筋弛緩のやり方
歯を食いしばる。
顎を固めて、唇も強く閉じる。
だんだんと力を緩めて顎と口をリラックスさせる。
①~③を2回繰り返す。
額・目・顎の筋弛緩トレーニングを行うことで、顔全体が自然とゆったりして、表情がリセットされます。
顔の筋肉を滑らかにして、穏やかな気持ちを味わいましょう。
3. 首肩まわりの筋弛緩
▼首の筋弛緩のやり方
首をできるだけ後ろに曲げて、首の緊張を感じる。さらに強く緊張させる。
ゆっくりと首を楽な位置に戻す。
①~②を2回繰り返す。
▼肩の筋弛緩のやり方
肩をすくめて上にあげる。
さらに肩を上にあげながら、胸を開くように肩を開く。
ゆっくりと肩の緊張を緩める。
①~③を2回繰り返す。
リラックス感が、顔・腕・肩・背中に染み渡るのを感じましょう。
4. 上半身(胸・お腹)の筋弛緩
▼胸の筋弛緩のやり方
楽に呼吸を続ける。息を吐くとき、体全体が緩んでいくことを感じる。
深く息を吸う。
しばらく息を止めて緊張を感じる。
ゆっくりと胸の緊張を緩めて、息を吐きだす。
自然に呼吸しながら、体全体をゆったりさせる。
①~⑤を2回繰り返す。
▼お腹の筋弛緩のやり方
腹筋に力を入れてお腹を固くする。
力を抜いて腹筋を緩める。
①~②を2回繰り返す。
5. 足の筋弛緩
両足をつま先まで精いっぱい伸ばして、足を突っ張る。
同時に足全体とおしりにも力を入れる。
ゆっくりと自然に足の力を抜く。
①~③を2回繰り返す。
全部終わったら、大きく深呼吸をします。ゆっくりと長い深呼吸をして、リラックス感を味わいましょう。
最後にもう一度深呼吸をして、体全体の筋肉をゆったりさせます。
全身の筋肉が緩んだら、5~1までの数字を心の中で数えてください。1まで数えると、頭がすっきりして気分爽快になります。
眠気が強い方は、そのままお休みください。
毎日の習慣にすると効果的!
漸進的筋弛緩法は、初めてすぐには効果を実感しにくい可能性があります。
まずは1週間続けてみることをおすすめします。
効果を感じた場合もすぐにやめるのではなく、毎日の習慣にして、できるだけ長く続けるといいですよ。
▼動画による解説はこちら
≪チャンネル紹介≫
【公認心理師】赤田太郎の「仕事に役立つ心理学」
公認心理師・臨床心理士の赤田太郎先生が、仕事や生活をよりよくするための心理学を、誰でもわかる易しい言葉で解説。
メンタルヘルスの大切さを社会に広めることで、苦しむ人がいなくなる社会を目指し、動画を配信しています。
参考文献
『睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識』白濱龍太郎監修 日東書院本社
『睡眠時無呼吸症候群がわかる本』成井浩司著 法研
『いびきのことがよくわかる本』高山幹子著 小学館
一般社団法人日本呼吸器学会 呼吸器の病気「睡眠時無呼吸過眠症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」