「鼻の中がズキズキ痛む…」
「かさぶたもできた…」
繰り返す鼻の中の痛みの原因を、医師にうかがいました。
病院を受診する目安や治療法をご紹介します。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
鼻の中が痛くてかさぶたも…それはドライノーズかも
なんだか鼻の中が痛いし、かさぶたもできているようで不快です…。
空気の乾燥などにより鼻の粘膜が乾いて、皮がむけたりかさぶたができると、鼻の中が痛みます。
この状態を「ドライノーズ(乾燥性鼻炎)」といいます。
市販薬でよくなる?セルフケア方法を教えて!
症状が出始めたばかりで痛みが軽い場合は、市販薬などでセルフケアで改善できるケースもあります。
まずは、マスクや加湿器を使用して、鼻の中の乾燥を防ぎましょう。
ドライノーズスプレーや、保湿できる医療用洗浄器(鼻洗浄ができる機械)などを使用しましょう。
病院に行く目安
症状が軽く、一時的なものであれば、一旦様子を見ても大丈夫です。
ただし…
- セルフケアを行っても症状に改善が見られない
- 日常生活に支障をきたしている(鼻の不快感によって仕事に集中できない、においがわからなくて食事が進まない、など)
という場合は早め医療機関を受診しましょう。
放置は危険!嗅覚が失われる可能性も
ドライノーズを放置すると、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)の粘膜が次第に萎縮していきます。
これにより、炎症が起こりやすくなったり、嗅覚が失われるリスクがあります。
早めに医療機関を受診して適切な治療を受けると、症状の悪化を防ぎやすくなります。
症状が重くなると、手術が必要になることもあるので、放置せず医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
鼻の中が痛み、かさぶたができているときは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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「萎縮性鼻炎」という病気のリスクも
ドライノーズの症状を引き起こすのは、「萎縮性鼻炎」といった病気が考えられます。
慢性鼻炎の一種で、鼻の粘膜が薄く硬くなり、鼻腔が異常に広がり、鼻の中が乾燥する病気です。
「萎縮性鼻炎」になると、粘液をのどの奥へ運ぶ役割がある「線毛」という細胞が失われてしまいます。この線毛が失われることよって鼻の内部の潤いがなくなると、ドライノーズの症状を引き起こします。
「萎縮性鼻炎」の症状
- 鼻の中が乾燥する
- 鼻の粘膜が薄く硬くなる
- 鼻の中にかさぶたができる
- 鼻の奥が痛い
- 鼻づまり感がある
- 多量の鼻くそが出る
- 鼻血を繰り返す
- 鼻の中が臭い
「萎縮性鼻炎」の原因
- 慢性的に、鼻粘膜が細菌感染によって炎症をおこしている
- 副鼻腔の手術の影響
- 免疫系の病気
などが考えられますが、原因は今のところはっきりとわかっていません。
免疫系の病気の場合、「多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)※」という難病が挙げられます。
また、高齢者に発症しやすい傾向があります。
※多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)とは
血管に異常な自己免疫反応が起こり、攻撃してしまう病気です。
鼻・目・耳・喉・肺・腎臓など、全身の血管に炎症が起こります。
自分でできる対処法は?
残念ながら、「萎縮性鼻炎」はご自身でできる対処法はありません。治療が必要な病気です。
自己判断で対処しようとせず、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
悪化すると嗅覚を失うこともあるため、早めの治療をおすすめします。
病院で受ける治療法
治療では、お薬を使用するケースが多いです。
鼻の中のかさぶたを減らし、悪臭もなくせるよう感染を抑える治療を行います。
軟膏(ムピロシンやバシトラシン)や抗菌薬を鼻の内側に塗り、殺菌します。
さらに、エストロゲンの鼻噴霧や飲み薬、ビタミンAやビタミンDの服用で、粘液分泌を促します。
なお、症状によっては手術を検討することもあります。
どれぐらいで治る?
「萎縮性鼻炎」は、完治させることが難しい病気です。
治療しながら、今後も付き合っていく病気だと考えてください。
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2020-07-07
鼻の中に「白いできもの」が!
なんだか痛みもあるし、膿まで…。
お医者さんに、その正体と対処法を聞きました。市販薬や病院を受診すべきケースについても解説します。
白いできものは「鼻茸」の可能性大
「鼻茸」は、鼻や副鼻腔の粘膜が膨張して垂れ下がり、キノコのような形状になったできものです。透明感のある白っぽい色に見えることがあります。
ぶどうのようにブヨブヨしていて、一つだけ生じることもあれば、複数生じることもあります。
また、片方の鼻にできたり、両方の鼻にできたりと、症状も様々です。
鼻茸が大きくなると、鼻の穴から突出する場合があります。
その他、
鼻のづまりや閉塞感
くしゃみが出やすい
鼻水が喉にまわりやすい
頭痛や顔の痛み
臭いが分かりにくい(嗅覚異常)
鼻からの分泌物が増える
いびきや無呼吸症候群
といった症状を伴うケースもあります。
鼻茸ができる原因
鼻茸が生じる原因ははっきり分かっていませんが、細菌やアレルギー物質等により鼻の粘膜が刺激を受けて、ヒスタミンという物質が分泌されることで粘膜の血管が膨張して発生すると考えられています。
そのため、
鼻炎持ちの方
副鼻腔炎の方
喘息を患っている方
アトピー体質の方
は、鼻茸が生じやすいと言えるでしょう。
また、希ですが嚢胞性繊維症※という難病を発症している方にも現れやすいです。
※嚢胞性繊維症…気管支、消化管等の臓器が、粘り気の強い分泌液によって詰まりやすくなる病気
鼻茸は自然に治るの?
鼻茸が自然治癒することはないと考えられています。
鼻茸ができると、空気の通り道が害されて、鼻からの分泌物が溜まりやすくなり、その結果、どんどん鼻茸が大きくなるという悪循環が起こります。
また、好酸球性副鼻腔炎という難病が原因となっている場合、両方の鼻にいくつも鼻茸が発生して、手術で除去しても再発してしまうため、完治が難しいと考えられています。
ただし、鼻茸が発生する原因となる疾患(慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎等)の治療を行うことで鼻茸が小さくなる可能性はあります。
鼻茸を治す方法は?
鼻茸は、セルフケアだけで完治することは困難です。
しかし、毎日の鼻洗浄により、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の症状を緩和させることで、鼻茸を小さくできるケースもあります。
鼻洗浄の方法
片側ずつ生理食塩水※を吸い込み、鼻の中を洗浄した後、口から排出します。
※生理食塩水…水道水500mlに対して、5gの食塩を溶かして作ります。作った食塩水は、衛生上24時間以内に使いきってください。
注意!
セルフケアは、病院で診察を受けて、医師に相談した上で行うようにしてください。
病院で行う治療
ステロイド薬(点鼻薬、飲み薬)を用いて炎症を抑えたり、手術によって鼻茸を切除する治療が行われます。
早く病院に行くべき症状
息苦しいほど腫れてきた
鼻詰まりが改善しない
鼻茸の数がどんどん増えていく
鼻茸が大きくなっていく(前鼻孔から突出する等)
鼻茸が咽頭のほうに落ち込むことで睡眠時無呼吸を起こした
嗅覚障害が生じた
何科を受診する?
耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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放置のリスク
鼻茸を治療せずに放置していると、鼻茸がどんどん大きくなって、嗅覚障害を起こす可能性があります。
嗅覚障害を長く患うと、改善が困難になるケースがあります。
また、鼻の奥に感染症が起きたり、腫瘍等の重篤な状態を見逃す恐れがあります。
早期に治療を開始すれば、合併症を避けられるのはもちろん、症状や状態に合った薬や治療を施してもらえることで、短期間での改善が期待できます。
▼参考(文献・ウェブサイトなど)
公益財団法人 難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)
岩野耳鼻咽喉科 鼻詰まりの原因
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2020-06-11
鼻の中にできものができて痛い…。
鼻の中のできものは
鼻茸
鼻せつ
鼻前庭湿疹
好酸球性副鼻腔炎
の可能性があります。
「自然に治る?」「放置するとどうなるの?」
早めに病院を受診するメリットについてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
原因1.鼻茸
鼻茸は、鼻ポリープとも呼ばれています。
鼻の中の粘膜がふくらんで、白っぽいしずくのような形になったものです。
ブヨブヨしたできものが、一個だけでなく、多数できることもあります。
空気の通り道が塞がれて鼻づまりを起こします。
原因
長引く副鼻腔炎(※1)が原因のケースが多いと考えられています。
また、アレルギーを持つ方や、喘息を患っている場合にも発症しやすいと考えられています。
(※1)風邪等によって鼻の奥の空洞(副鼻腔)に炎症が起こる病気
<できものの特徴>
白っぽい肉質のできもの
涙のしずくのような形状
皮をむいたブドウのような色と形状
<その他の症状>
鼻の閉塞感
鼻づまり
くしゃみ
顔の痛み
嗅覚異常
鼻水がのどに回る
鼻から過剰に分泌物がでる
自然に治る?
自然治癒は難しいでしょう。病院にいきましょう。
鼻茸は睡眠時無呼吸やいびきの原因になる可能性もあります。放っておくとどんどん息苦しくなったり、生活に支障をきたすようになるため、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
早めに受診することで、手術ではない軽い治療(薬の内服など)で済むこともあります。
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原因2.鼻せつ
鼻せつは、激しい痛みを伴います。
主に黄色ブドウ球菌の感染によって鼻の中に生じる赤いできものです。
鼻穴の入り口あたりに生じる場合が多いです。気になって触れてしまうと悪化する場合もあります。
原因
鼻の中の触り過ぎ(鼻毛の処理、鼻のかみ過ぎ等)で鼻の中の粘膜に傷を付けてしまい、毛穴の中で細菌感染が起きて発症するケースが多いです。細菌感染の炎症が生じると、痛みを伴って腫れます。
<できものの特徴>
赤く腫れあがる
痛みを伴う(特に鼻の穴を拡げたとき)
<症状の特徴>
軽度の場合かゆみが生じることがある
膿が生じる場合がある
自然に治る?
軽症であれば、自然治癒することもあります。
少し痛い、少しかゆい、という程度であれば様子をみてもいいでしょう。2~3日様子をみても治らない場合は病院に行きましょう。
糖尿病を患っている場合、重症化するケースがあると考えられています。
悪化すると、蜂窩織炎(※2)や、稀に海面静脈洞血栓症(※3)を併発することもあります。さらに重症化して化膿すると、敗血症(※4)を引き起こし、命に関わる場合もあります。
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(※2)蜂窩織炎…皮膚から皮下脂肪にかけて細菌が入り込んで、赤く腫れる病気
(※3)海面静脈洞血栓症…眼球突出、顔面感覚低下、けいれん等の症状が出現する病気
(※4)敗血症…細菌をはじめとする種々の病原体が血管やリンパ管の中に入って組織や臓器など全身に障害を引き起こす病気
原因3.鼻前庭湿疹
鼻の穴周辺の皮膚や粘膜が荒れて湿疹が生じて、かゆみや皮膚の乾燥が起こる赤い皮膚炎です。
鼻の入り口周辺に生じる場合が多いです。主に細菌感染(黄色ブドウ球菌)により、炎症が生じて湿疹ができます。
原因
鼻の穴の入り口周辺を指で触る、鼻のかみ過ぎ、鼻毛の処理等の物理的刺激によって生じる炎症です。慢性副鼻腔炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎の方は、鼻水の量が多く、つい鼻を触り過ぎてしまうので発症しやすくなります。
<できものの特徴>
吹き出物
赤くなる
体の他の部位に感染して、「とびひ」となる可能性がある
<症状の特徴>
かゆみを伴う
鼻の入り口周辺が荒れる(乾燥する)
痛みが生じる場合がある
鼻血が出る場合がある
鼻水が出る
自然治癒する?
鼻前庭湿疹は、自然治癒する可能性があります。
強い痛みはなく、少しかゆみがある、荒れている、というような症状であれば、一旦様子を見てもいいでしょう。
触らず安静にしておくと、2~3日で改善するケースが多いと考えられます。2~3日を過ぎても良くならない場合は病院に行きましょう。
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原因4.好酸球性副鼻腔炎
副鼻腔炎の一つで、治療が困難な病気です。
鼻の中に白っぽい鼻茸が多発し、手術で除去しても再発してしまうため、完治の可能性が低いと考えられています。多くのケースで気管支喘息を合併します。喘息やアレルギー性鼻炎を伴うケースも多いです。
原因
明確な発症原因は分かっていませんが、白血球の一つである好酸球が副鼻腔の粘膜で増殖し、過剰に働いてしまうことで発症するのではないかと考えられています。
<できものの特徴>
水ぶくれのような鼻茸が充満するように発生する
白っぽい
<症状の特徴>
鼻づまり
粘性がある鼻水が出る
嗅覚障害(匂いを感じにくい)
口呼吸になり口が乾燥するため、のどに痛みが生じる場合がある
頭痛
自然治癒する?
自然に治ることはありません。
鼻茸(白っぽいブヨブヨしたしずく状のできもの)がたくさん見られる場合は、すぐに病院を受診しましょう。
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病院に行くべき目安
痛みが悪化している
かゆみが生じている
味覚障害が生じている
息苦しいほど腫れている
できものが頻繁に生じる
できものの数がどんどん増えている
できものが化膿して膿をもった
できものが大きくなって鼻の穴から突出した
できものが喉の方に落ち込んで、睡眠時無呼吸を起こした
以上のようば場合は、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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痛いできものを放置すると…
鼻の中のできものを放置すると、鼻の不快感が続くだけでなく、重篤な状態に陥っていることに気が付かずに、どんどん症状が悪化する恐れがあります。
その他にも
再発を繰り返す
鼻の奥まで感染が広がる
重い合併症を引き起こす(鼻せつ)
といったことが考えられます。
参考
MSDマニュアル家庭版 鼻茸(鼻ポリープ)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/19-耳、鼻、のどの病気/鼻と副鼻腔の病気/鼻茸(鼻ポリープ)
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537
岩野耳鼻咽喉科 鼻詰まりの原因
https://www.iwano-jibika.or.jp/stuffy_nose/
時事メディカル 鼻茸〔はなたけ〕
https://medical.jiji.com/medical/011-0271-01
時事メディカル 治りにくい鼻詰まり―好酸球性副鼻腔炎
https://medical.jiji.com/topics/1293
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。