「トランス脂肪酸は、なぜ体に悪い?」
「マーガリンやお菓子に多いって聞いて心配」
どのような悪影響があるのか栄養士に伺いました。
おすすめの食事や注意すべき点もあわせて解説します。
監修者
株式会社Luce
栄養士・食育栄養インストラクター
神原 李奈先生
経歴
株式会社Luce・健康検定協会 所属
CA(客室乗務員)の仕事をきっかけに、健康と食の強い結びつきを実感し、食の世界に興味を持つ。大手料理教室の講師の経験を経て、栄養士を目指すことに。栄養士免許を取得後の現在は、現役CAとして世界中を飛び回りながら、栄養士として健康や食に関する情報を発信している。
なぜ?「トランス脂肪酸が体に悪い」といわれる理由
トランス脂肪酸の摂取は、冠動脈性心疾患など心血管疾患のリスクを上げてしまうからです。
もっと詳しく!「体にどんな影響があるの?」
トランス脂肪酸を摂取すると、血中のLDL(悪玉)コレステロールが増え、HDL(善玉)コレステロールが減少し、動脈硬化につながります。
動脈硬化になると、血管に詰まりが発生しやすくなるため、心血管疾患の原因となっていまいます。
WHOでは心血管系疾患のリスクを低くし、健康を増進するための目標として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー比1%未満に抑えるように定めています。
日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は0.3%であり、WHOの基準よりも少ない傾向にあります。
そのため、日本人の通常の食生活においては、健康への影響は小さいと言えます。
「がん」を引き起こすって聞いたことあるけど…
トランス脂肪酸の摂取は、がんの発症に関係していると聞いたのですが…。

ヨーロッパでの調査(1997〜)で、トランス脂肪酸の摂取量と乳がん、大腸がんの間に相関が見られたという報告があります。しかし、500 名の症例対照調査では、大腸ポリープとトランス脂肪酸との関連はなかったと報告されています。
トランス脂肪酸を多く含む食品一覧

- マーガリン
- ファットスプレッド
- ショートニング
- マヨネーズ
- ビスケット類(クッキー・パイ・半生ケーキなど)
- コーン系スナック菓子
- クリーム
ただし、平成22年度に行われた検査によると、マーガリン・ファットスプレッド・ショートニングに含まれるトランス脂肪酸の含有量は、企業努力もあって減少傾向です。
「天然のトランス脂肪酸」も存在する
牛・羊・山羊の「肉加工品」「乳加工品」に天然由来のトランス脂肪酸が微量含まれています。
これは、牛・羊・山羊などの胃に存在している微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られているからです。
良質なたんぱく質源やカルシウム源でもあるため、天然由来のものまで「完全に排除すべき」とは言えません。
普段の食事では「何に注意すればいい?」

トランス脂肪酸を含む食事と上手に付き合っていくためには
- 魚を積極的に摂る
- 食物繊維を積極的に摂る
- 主食・主菜・副菜の揃った献立を選ぶ
といったことを心がけるとよいでしょう。
その① 魚を積極的に摂る

青魚がおすすめです。一食あたり、80〜100g程度を目安に、毎日食べましょう。
バターやクリームなどを使わずに、塩焼きや蒸し焼きにすると、トランス脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸の摂取も抑えられます。
魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸には、血中LDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあります。
その② 水溶性食物繊維を積極的に摂る

毎食、海藻・大麦・豆類・野菜など水溶性食物繊維が豊富な食材を取り入れましょう。
一食あたり8g以上(1日あたり24g以上)を目安に摂取してください。
水溶性食物繊維には、血中LDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあります。
その③ 主食・主菜・副菜の揃った献立を選ぶ

「焼き魚」+「玄米」+「味噌汁」+「サラダや煮物」のような献立を目指しましょう。
野菜は1日に350g以上を目指し、毎食サラダや野菜が主材料の副菜を1皿以上食べてください。
主食・主菜・副菜の揃った献立を選ぶことで、魚や食物繊維を含む料理などを取り入れることができ、血中LDL(悪玉)コレステロールの低下につながります。
\塩分の摂りすぎにとりすぎに注意/
サラダなど野菜を食べる際、ドレッシングや醤油などをたっぷりかけないよう注意してください。
脂質や塩分のとりすぎにつながってしまいます。
減塩調味料や柑橘類や酢などの酸味、香辛料やハーブなどを上手に活用し薄味を目指してください。
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2021-09-10
「若返りたい人が絶対とるべき食べ物」について栄養士に聞きました。
アンチエイジングのためには、体の糖化・酸化を防ぐ食べ物を摂る必要があります。
それぞれの食べ物や、レシピについて詳しく解説していきます。
「若返りたい人が絶対とるべき食べ物」とは?
酢、レモン
緑黄色野菜、果物
オリーブオイル
イワシ、さば、牛肉、豚肉
ナッツ類
若返りたい人には、これらの食べ物をおすすめします。
老化は、体が糖化・酸化することによって進んでいきます。
上記の食べ物には体の糖化・酸化を防ぐ作用があります。
糖化ってな~に?
必要な量以上に摂りすぎてしまった糖が体にあるタンパク質と結びつき、血管や細胞、皮膚を劣化させる反応のことを言います。
糖化によって体の中に生まれるAGEs(糖化最終生成物)は、老化だけでなく動脈硬化を進め、糖尿病、高血圧症、脳梗塞、冠動脈、心筋梗塞、がん、骨粗しょう症、アルツハイマーなどの病気の原因もなります。
酸化ってな~に?
体内に取り込まれた酸素により活性酸素が発生して、自らの細胞を傷つけ老化(酸化)させる状態のことを言います。
おすすめの食べ物① 酢、レモン
酢、レモンなどに含まれるクエン酸には、食品に含まれるAGEs(老化物質)を減らす働きがあります。
酢やレモンを揚げ物や焼いてある肉、ソーセージなどの加工品と一緒に食べると、それらのAGEsを減らし、糖化を防いでくれます。
また、糖代謝をスムーズする働きが期待できるので、体にAGEsを溜めにくくするのにもおすすめです。
おすすめの食べ物② 緑黄色野菜、果物
抗酸化成分のビタミンCを含み、体の酸化や細胞の老化を防ぎます。
◆おすすめの緑黄色野菜
ピーマン、菜の花、ブロッコリーなど
◆おすすめの果物
いちご・キウイなど
ただし、ビタミンCは大量に摂取しても体にとどめておくことができません。
そのため、一度に多く食べるのではなく、小分けにして食べるようにしましょう。
また、ほうれん草やブロッコリー、トマトなどにα-リポ酸が含まれています。
α-リポ酸は、糖の代謝に関わっていて糖化を防ぐ作用があります。
α-リポ酸は含まれている量が少ないので、これらを毎日食べるようにしましょう。
緑黄色野菜はシミやシワ予防の効果だけでなく、動脈硬化などのリスクも下げることも期待できます。
おすすめの食べ物③ オリーブオイル
ご飯、パン、パスタなどの糖質を含む食事の際と一緒にオリーブオイルを少量摂ると、血糖値が急激に上がるのを防ぎ、糖化を予防します。
オリーブオイルを摂ることで、シワやシミができるのを避けるだけでなく、内臓や心臓、脳の血管などの劣化を防ぐ働きも期待できます。
オリーブオイル以外には、えごま油、アマニ油、ココナッツオイルもおすすめです。
ただし、オイルの摂りすぎは肥満につながるため注意しましょう。
おすすめの食べ物④ イワシ、さば、牛肉、豚肉
抗酸化力の強いコエンザイムQ10を含みます。
コエンザイムQ10は、強い抗酸化作用があり、シワやしみ、たるみの防止が期待できます。
ただ、食品の中では少量なので、サプリメントなど上手に活用して摂り入れましょう。
おすすめの食べ物⑤ ナッツ類
抗酸化成分のビタミンEを含み、特に脂質の酸化を防ぎます。
ナッツ類を積極的に食べると、過酸化脂質の発生が抑制されるため、血行不良による病気の予防、肌荒れ予防に期待が持てます。
控えめにしよう!糖化・酸化が進む食べ物
揚げ物や高温調理した料理(ステーキ、フランクフルトやベーコンなど)
ファストフード
スナック菓子
砂糖や果糖
人工甘味料入りの飲料
甘いお菓子
などの食品を食べ過ぎると、老化を早める原因になります。
上記の食品の摂取を控えめにして、体の糖化・酸化を防ぎましょう。
特に糖類の取りすぎは、体を糖化させます。
甘いジュース、パン、ご飯、パスタなどは食べ過ぎない、飲みすぎないことが大切です。
どうしても食べたい場合は、AGEsを減らせるよう、お酢やレモン汁をかけて食べましょう。
また、揚げ物は可能な限り新しい油を使ったもの食べるようにしましょう。
おすすめ若返りレシピ
若返りには、「マリネ風パプリカ」をおすすめします。
「マリネ風パプリカ」の作り方
<材料>
パプリカ ・・・ 1個
玉ねぎ ・・・ 中1個
お酢 ・・・ 適量
レモン汁 ・・・ 適量
<作り方>
玉ねぎは、薄くスライスして5〜10分程度水にさらす(水にお酢を加えておくと辛味が取れやすい)
パプリカを縦切りの食べやすい大きさにカット
水気を切った玉ねぎ、パプリカを同じボールに入れる
お酢、レモン汁をお好みで混ぜる
そのまま食べても、1日ほどつけて食べても良いですし、酸味が強い場合は、オリーブオイルをかけてもよいでしょう。
味付けをマイルドにしたい場合は、マヨネーズを少量混ぜると食べやすくなります。
ボリュームが欲しい場合は、アボカド、ゆで卵、塩、胡椒などを足してサラダにしてもよいでしょう。
食べ物以外も、こんな食習慣を心がけて
ポイント① 大食い・早食いは避ける
食事は、毎日3食を同じくらいの時間に食べ、食べすぎ、早食いを避けてください。
早食い、大食い、糖質から食べるなどをすると、体を酸化させたり、糖化を進めたりします。
また、野菜、食物繊維などの多いもの(サラダや副菜)などから食べましょう。
ご飯やパン、パスタなどは、初めに食べると血糖値が跳ね上がり、血管を傷つけます。
夕食は19時くらいまでに、遅くなるようであれば、夕方に少量小腹に入れておくことで、急激な血糖値上昇を抑えられます。
ポイント② 抗酸化力のある飲み物をとる
食事だけでなく、抗酸化力のある飲みものを飲めば、体の酸化、糖化にも働きかけアンチエイジングに期待が持てます。
ルイボスティー、カモミールティー、どくだみ茶、甜茶などは、カフェインを含んでいないのでおすすめです。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。