「少しの運動で大量の汗が出る…」
「これって肥満のせい?」
肥満の人が少しの運動で大量の汗をかくのはなぜか、お医者さんに聞いてみました。
発汗を抑えるための対策法や、気になるニオイについても解説します。
痩せたら治るのかもチェックしましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なぜ?太ったら少しの運動で大量の汗が…
少しの運動でも大量の汗が出るのは、体温を下げようとする働きによるものです。
肥満で皮下脂肪が増えると、体温が上昇したときに放熱しにくくなるため、汗が出やすくなります。
「激しい運動の後」や「暑い場所」で汗をたくさんかくのは、代謝機能による自然な働きです。
一方、肥満で起こる大量の発汗は体温調節の異常によるものです。これは健康な状態ではなく、むしろ代謝が悪い状態といえます。
肥満以外の原因があることも
更年期障害や自律神経の乱れにより、体温調節がうまくいっていないと、汗をかきやすくなります。
また、甲状腺機能に異常がある場合にも、代謝が活発となり大量に汗をかくことがあります。
その他にも「薬の副作用」で汗が出ることもあります。
「汗をかきやすくなる」薬の例
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ピロカルピン
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口腔乾燥に使われる。
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アセチルコリン
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円形脱毛症や腸管麻痺に使われる。
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コリンエステラーゼ阻害薬
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重症筋無力症やアルツハイマー病に使われる。
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「抗うつ剤」
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うつ病などの治療に使われる。
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汗をかきたくない…どうすれば?
汗をかくのが恥ずかしいです…なにか発汗を抑えるよい対策はないでしょうか?
発汗を抑えたい人は、
- ダイエットして皮下脂肪を減らす
- 深呼吸してリラックスする
といった対策を試してみましょう。
対策1. ダイエットして皮下脂肪を減らす
太っている人は、
- バランスの良い食事を摂る
- 「有酸素運動」と「筋トレ」を習慣づける
といった方法で減量しましょう。
体温の放熱を妨げている皮下脂肪を減らすことで、発汗を抑えられる可能性があります。
食事は、1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事を心がけてください。
有酸素運動は、ウォーキングや水泳などご自身に合った方法で行いましょう。
\無理な減量はNG!/
ダイエットはすぐに効果が出るものではありません。
極端な減量は、筋肉を落として代謝を悪くしたり、リバウンドの原因にもなるため無理のない程度に進めましょう。
対策2. 深呼吸してリラックスする
神経が高ぶっていると感じたら、深呼吸をしてみるのがおすすめです。
リラックスして副交感神経を優位にすると、発汗が落ち着く場合があります。
逆に緊張や不安・ストレスを感じていると、交感神経が刺激されて汗をかきやすくなります。
汗のニオイを消す方法はある?
汗をかいたら、
- 「濡れタオル」や「汗拭きシート」で汗を拭き取る
- 衣服を交換する
- シャワーを浴びる
などしましょう。
汗をかいたときの嫌なニオイは、雑菌や皮脂、アカなどが加わることで発生しやすいです。
発汗時のニオイを予防したい人は、毎日入浴して皮脂やアカを落とすと良いでしょう。
また、髪が濡れたまま寝るとニオイが発生しやすくなるため、必ず髪を乾かしてから寝るようにしましょう。
こんなニオイは「病気」が原因かも…
- 脂っぽい皮脂のニオイ
- 尿のあまずっぱいようなニオイ
- ドブのようなニオイ
- アンモニアのようなニオイ
上記のようなニオイがする場合、皮膚や内臓の病気が疑われるので要注意です。
体の不調などを伴っているときは、早めに内科へ相談しましょう。
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痩せたら、汗っかきも治る?
肥満(皮下脂肪)が原因で汗をかきやすくなっている場合は、痩せることで症状が改善される可能性が高いです。
痩せて皮下脂肪が減ると、大量に汗をかかなくても体温調節が可能になるため、汗っかきも解消されやすくなります。
痩せても汗が止まらない…なぜ?
多汗症である場合、体格に関係なく汗が出やすくなります。
多汗症には、
などが隠れているケースもあるため、注意が必要です。
汗っかきの症状に体の不調を伴っているときは、早めに内科で診てもらいましょう。
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2022-01-27
「息苦しい…」
「これって太りすぎが原因?」
肥満を呼吸の関係を、お医者さんに聞いてみました。
自分でできる息の整え方や、肥満で起こる動悸などの症状例も解説します。
肥満による息苦しさは命に関わることもあるため、放置はキケンです。
“太りすぎ”による呼吸器の症状例
呼吸が浅く速くなる
軽い運動時に息切れを感じる
激しい運動時に咳が出る
息をうまく吸えない感じがする
など
また、肥満は交感神経を優位させるため、「不安」や「動悸」を感じる場合もあります。
医学的に”肥満”といわれるラインはどこから?
肥満度を示す「BMI」が25を超えると、男女ともに肥満と判断されます。
特に「BMI」40の高度肥満+合併症が認められる場合には、「重症肥満」と診断され、病気として扱われるようになります。
BMIの計算方法
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)でBMIが算出できます。
▼肥満に値する体重の例
身長160センチの場合…64㎏以上で肥満
身長170センチの場合…72.2㎏以上で肥満
肥満の影響で「息苦しくなるしくみ」
肥満の影響で息苦しくなるのは、
肺に負担がかかる
心臓が栄養不足になる
などが関係していると考えられます。
肥満による息苦しさは、心臓病の発症リスクを高くさせる「要注意な症状」です。
どんな影響で息苦しくなるのか、それぞれ詳しく解説していきます。
① 肺に負担がかかる
肥満が進むと、脂肪で肺が圧迫されて負担がかかります。
肺のふくらみやすさや肺容量が低下するため、浅く速い呼吸になります。
呼吸が浅く速くなると、十分な酸素を取り込めずに息苦しくなってしまいます。
また、脂肪の圧迫によって肺容量が低下すると、空気が気道を通りにくくなります。
すると、息切れや喘息のような症状を助長するようになり、息苦しさにつながります。
② 心臓が栄養不足になる
肥満の状態だと、呼吸が浅くなったり、ホルモンバランスが崩れて代謝が低下したりします。
同時に体の「栄養を取り込む能力」も低下するため、心臓が栄養不足になってしまいます。
栄養が不足した心臓は、「心拍数を増やす」ことで栄養補給を補おうとします。
心拍数が増えると、息苦しさを感じるようになります。
「将来の病気」のリスクにもつながる…!
心拍数を増やす「過度な心臓の働き」は、将来の「動脈硬化」「狭心症」などの発症リスクも高める恐れがあります。
息苦しくなったら「まず呼吸を整える意識を」
口をすぼめて、ストローを通すように息を吐く
吐けたら、鼻からゆっくり酸素を取り込む(鼻呼吸がカギ)
吸いきったら、①②を2~3回繰り返す
①~③を行い、呼吸が落ち着いてきたら、
息を吸うときに「お腹を膨らませる」
吸いきったら、3~4秒息を止めてから吐く
などを意識しましょう。
上記を行うときは、テーブルに肘をついたり、膝に手をついたりして、軽く前傾すると少し楽になります。
このまま放置すると…どうなる?
肥満による息苦しさを放置すると、
慢性心不全
狭心症
などの心臓病の発症リスクを高める恐れがあります。
心臓病は命に関わるので、発症を防ぐことが大切です。
肥満に心当たりがある人は、早めに減量に取り組むことをおすすめします。
今、あなたができる5つの対策
肥満が気になり、息苦しい人は
体型の認識
食習慣の改善
活動量を多くする
質のよい睡眠を摂る
禁煙
を行いましょう。
まずは、取り組みやすいことから始めてみましょう。
1. 体型を認識しよう
体重を測って数値化すると、今の体型を認識しやすくなります。
肥満の解消を進めるため、理想のイメージを具体的にしましょう。
「体重測定」のコツ
体重測定は、できるだけ同じ条件下で行うようにしましょう。
例えば、
起床後
トイレを済ませる前
食事を摂る前
などの条件を意識して測ることで「測定条件のブレのない推移」を見ることが出来ます。
2. 食習慣を改善しよう
「まだ食べられるけど、お腹は空いていない」程度の、腹八分目を目安に食事を行いましょう。
「満腹まで食べる」「早食い」「間食が多い」「肉ばかり食べる」などの食生活はNGです。
「食事改善」のコツ
まだ食べられるときでも、我慢する
1日3食、食事の時間を決めて摂る
1口30回を目安によく噛んで食べる
野菜や海藻から食べる(1日350gが目安)
バランスよく食べる
3. 活動量を多くしよう
普段の生活+10分(1,000歩・1㎞相当)の活動量を増やしましょう。
運動を急に始めると、怪我のリスクがあるため、少しずつ軽く身体を動かす意識をしましょう。
「活動量を増やす」コツ
できるだけ階段を選ぶ
1駅分歩く
など
4. 質のよい睡眠を摂ろう
肥満で息苦しいと感じる場合は、気道を塞ぎにくい「横向き」で寝ましょう。
仰向けで寝ると、脂肪で気道が圧迫されやすく、睡眠中の呼吸を阻害してしまうことがあります。
「横向きで寝る」コツ
横向きになったときに、上側になる足を少し曲げてみましょう。寝姿勢が安定します。
5. 禁煙をしよう
息苦しいと感じている人は、禁煙をしましょう。
タバコには有害物質が多く、肺胞に付着し、肺でのガス交換がうまくできず、さらに息苦しくさせてしまいます。リスクを減らすためにも禁煙を行いましょう。
「禁煙する」コツ
禁煙外来で受診する
時期を決めて取り組む
などがおすすめです。
(タバコの量を減らす、吸う㎎を小さくするのは、ニコチン依存が高まり逆効果になる恐れがあるため、おすすめできません)
日常に支障がでているときは、早めに病院に相談を
息苦しさで日常生活に支障がでている
日中の眠気がひどく仕事にならない
家族に「いびき」「睡眠時の無呼吸」を指摘される
睡眠中、息苦しさで目が覚める
上記に当てはまる人は、早めに病院で受診しましょう。
肥満による息苦しさは心臓の負担となるので、放置は禁物です。
また、肥満による「睡眠時の無呼吸」は、約9年の放置で4割の方が亡くなるというデータがあり、突然死のリスクも高まりやすくなります。
何科に受診すればいい?
肥満で息苦しさを感じている人は、「内科」で受診しましょう。
「太りすぎくらいで病院に行っていいのか…」と受診を迷っている方へ
内臓脂肪の蓄積による肥満は、
生活習慣病(ガン、心臓病、糖尿病 など)
脳血管疾患
など、“命に関わる病気”の発症リスクにつながります。
その過程の大半は「無症状」であることがほとんどです。
よって、肥満の人は早めに病院で受診して対処することが何よりも大切になります。
お医者さんには、なんて伝える?
受診時には、
息苦しさがいつから続いているのか
日常で困っていることは何か
他に何か症状があるか
などを医師に詳しく伝えましょう。
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▼参考
j-stage 肥満の息切れの機序とそれに対するリハビリテーション
j-stage 重症肥満とその治療
医療法人澄心会豊橋ハートセンターVol.04:肥満だけではない 痩せることもハイリスク!心血管リスクを増大させる「サルコペニア(筋肉減退)」
医療法人澄心会豊橋ハートセンターVol.33:そのいびき その眠気 ヤバいかも?!心臓に大きな負担をもたらす睡眠時無呼吸症候群
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2018-12-18
「太り過ぎかもしれない…」
「肥満が原因の病気ってどんな病気?」
太り過ぎが原因の病気について、お医者さんに聞きました。
病気になる理由や肥満がもたらす体調不良についても解説します。
太りすぎで“体調不良”になるしくみ
脂肪がたまっていると、血糖値や血圧値、中性脂肪などが高くなり、血流が悪化します。
その結果、慢性的な疲労感など体調不良に陥ることがあります。
肥満になれば、体が重くて動きにくくなるため、さらに脂肪がたまりやすい状況になります。
早めに肥満を改善しなければ、どんどんと健康から遠ざかり、健康とはかけ離れた「悪循環の体質」になってしまうのです。
”太りすぎ”の目安
日本肥満学会では、肥満(太り過ぎ)はBMI25以上をいいます。
BMI25以上30未満が肥満度Ⅰ
BMI30以上35未満が肥満度Ⅱ
BMI35以上40未満が肥満度Ⅲ
BMI40以上が肥満度Ⅳ
とされています。
ただ、BMI25以上でも病気ではありません。
BMIはあくまでも簡易に肥満をみるための指標で、身長が高いほど体重が重くなるという理論で計算されます。
筋肉質の方は、体重が重くなりやすいので、太っていないのにBMIが高くでてしまうことがあります。
肥満によって健康障害が出ている場合は「肥満症」という病気になります。
太りすぎるとでる症状
息切れ
疲れやすくなる、だるい
足腰が痛くなる
などが出やすくなります。
※足腰の痛みは、体重が重いために起こる症状です。
特に注意「太り過ぎ」が原因になる3つの病気
肥満の状態が続くと、
2型糖尿病
心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中
痛風
といった病気を招くリスクがあります。
それぞれの病気を詳しくご紹介します。
病気① 2型糖尿病
インスリンの分泌が悪くなることで、高血糖状態が続いてしまう病気です。
血管にダメージを与えるため、次第に全身の健康が損なわれていきます。
すい臓から出る「インスリン」というホルモンには、血糖値を下げる働きがあるため、不足すると血液内の糖分が多くなってしまいます。
食べ過ぎ・肥満・運動不足など、生活習慣の乱れが原因で、発病した場合は「2型糖尿病」と診断されます。
特に肥満になると発症する糖尿病を「肥満糖尿病」といいます。
「肥満糖尿病」である場合、今までの食生活を見直さないと、症状は悪化します。
ただし、体重を落とすように努力をし、実際に体重を落とせれば、改善する場合もあります。
糖尿病が悪化すると…
糖尿病は、
失明(糖尿病網膜症)
腎不全(糖尿病性腎症)
指先からの壊死
を招く恐れがあります。
指先が壊死すると、手足切断するケースもあります。
これらの重大な合併症を避けるためにも、血糖値のコントロール(管理)が必要になります。
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病気② 心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中
血栓が脳や心臓に詰まると、心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中を引き起こすリスクがあります。
これらの病気は命に危険が及ぶので、注意が必要です。
血栓は、揚げものなど「脂っこいもの」を食べ過ぎて肥満体質になった人に生じやすいです。
この場合、血液がどろどろ状態になっていると考えられます(脂質異常症)。
また、血管内にプラーク(※)が形成されると、血液が通りづらくなり、血管は柔軟性を失ってもろくなります。
状態によっては、もろくなった血管が切れてしまい、体内で大出血を起こすこともあります。
※プラーク:血液内の余分なコレステロールなどで形成される、血管内の異常な細胞
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病気③ 痛風
結晶化した尿酸によって関節炎が起こり、足の親指などに激痛が走る病気です。
激しい痛みで、一時的に歩行が困難になることもあります。
「尿酸値が高いですね」
人間ドックを受けたときなどに、そんなことを言われた経験はありませんか?
尿酸は、プリン体が分解されたときにできる老廃物で、尿や便と一緒に排せつされます。
尿酸の値が基準値より高いと、「高尿酸血症」という状態になります。
高尿酸血症になると尿酸が結晶化し、それが関節に沈着(付着)すると、激痛を伴う関節炎を引き起こします。
痛風は、おいしいものばかり食べて太り、それが原因で発症するので、「ぜいたく病」とも呼ばれています。
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無理のないダイエットから始めよう
太りすぎ・肥満が気になる人は、ダイエットが必要です。
無理のないダイエットから始めてみてください。
減量方法① 食事制限
食事制限と言っても、極端に食事量を減らせばいいというわけではありません。
急に肉類を絶つのも禁物です。
肉類を摂取しないと、筋肉を作るたんぱく質が不足し、善玉コレステロールなどの必要な栄養素が足りなくなり、体調を崩す要因にもなりかねません。
主食・主菜・副菜をきちんとそろえ、栄養バランスの整った食事を摂りましょう。
減量方法② 運動
無理のない運動で体を動かし、エネルギーを消費しましょう。
例えば、駅などではエスカレーターに乗らず、階段を歩くようにする、一駅分を歩いてみる、などの取り組みです。
食事制限も、運動も、「これならできそう」と思えるところから始めてみましょう。
肥満を解消し、病気を予防するには、まずは体質改善からです。
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▼参考
e-ヘルスネット-厚生労働省
メタボリック症候群の診断基準
e-ヘルスネット- e-ヘルスネット 肥満と健康