かさぶたが治らない…。
早く治す方法は?
かさぶたが治らない原因について、お医者さんに聞いてみました。
治癒を早める方法も紹介するので、かさぶたを早く治したい人は必読です。
監修者
経歴
2010年 東京医科歯科大学卒業
その後、皮膚科医として大学病院、一般病院、クリニックで勤務。2022年7月よりCROの安全性情報センターのMDとして勤務。
かさぶたが治らない!原因は?
かさぶたがなかなか治らない場合、
- 傷が深い
- かさぶたを剥がしている
- 患部が乾燥している
などの原因が挙げられます。
浅い傷であれば、かさぶたは2週間以内に治ると考えられます。
皮膚表面にある「表皮」は、4週間のサイクルで新しい細胞に生まれ変わるため、この期間内で自然とかさぶたも剥がれ落ちます。
ただし、傷が深かったり、かさぶたが剥がれて患部が乾燥したりすると、かさぶたの治癒に時間がかかってしまうことがあります。
かさぶたを早く治すには、どうしたらいい?
かさぶたを早く治すには、上記の2つを心がけることが大切です。
対処法① かさぶたを乾燥させない
傷パッドなどの「ハイドロコロイド製剤」や「軟膏」を使い、傷口を乾燥させないようにしてください。
できれば、かさぶたができる前に処置を行うのが望ましいです。
ハイドロコロイド製剤は、1~3日おきに交換するようにしてください。また、浸出液が漏れた場合にも交換するようにしましょう。傷口周辺の皮膚がふやけてしまうと、かえって傷の修復が遅れるおそれもあります。
皮膚の状態をこまめに確認しながら取り替えるようにしましょう。
また、軟膏で処置する場合は、塗った後に絆創膏やガーゼで傷口を覆いましょう。
対処法② かさぶたを剥がさない
かさぶたは無理に剝がさないで、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。
軟膏などで湿潤させると、傷の修復が早くなり、かさぶたが剥がれ落ちやすくなります。
一年以上治らないかさぶたは病気の疑いも…
上記の病気により、「かさぶたが治らない」という状態に陥ることがあります。
危険な病気① 乾癬
乾癬(かんせん)とは、赤い皮疹(※)を伴う皮膚病です。
症状の一つとして、垢のようなかさぶたができることがあり、乾癬の治療をしないと治りません。
※肉眼で見える発疹のこと。
乾癬の主な症状
- 関節の腫れ・痛み
- 皮膚の一部が充血して赤くなる
- 皮膚の下に白や黄色みがかった膿が溜まって盛り上がる
- 全身の倦怠感
- 悪寒
乾癬を発症する要因は?
乾癬の原因は、はっきりと分かっていません。
しかし、ストレス過多や妊娠など免疫力が弱くなっている状態に、喫煙・肥満・生活習慣の乱れなどが加わると、発症しやすいと考えられています。
乾癬の疑いがある場合は皮膚科へ
乾癬が疑われるときは、皮膚科を受診しましょう。
症状が進行すると、日常生活で不便な場面も増えてしまいます。
一度医療機関で相談されることをおすすめします。
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2019-01-24
「乾癬ってどんな病気?」
「治療で治せるの?」
乾癬に対する疑問に皮膚科の医師がお答えします。
症状の特徴、医療機関での治療法なども詳しく解説します。
皮膚がポロポロ剥がれる病気「乾癬」とは
乾癬は、皮膚の代謝異常によって「皮膚の角質化」と「皮膚の炎症」が起きる疾患です。
乾癬を発症すると、皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)の時間が著しく短くなります。
次から次へと新しい皮膚細胞が産生されるため、皮膚の表面にある角質が何層にも重なって厚くなってきます。
▼乾癬の症状の特徴
皮膚が赤くなる
角質が厚く、硬くなる(銀白色に見える)
皮膚の皮がむける
痛みやかゆみ、発熱
乾癬を発症しやすい部位
頭
肘
腰回り
膝頭
全身のいたる部位に発症しますが、皮膚がこすれる部位に発症しやすい傾向があります。
乾癬になってしまう原因
乾癬の原因はまだはっきりとはわかっていません。
現段階では、遺伝的な「乾癬になりやすい体質」があり、そこに様々な要因が重なることで発症するとわかっています。
乾癬の体質がある場合、
ストレス
不規則な生活・食事
肥満
薬の影響
感染症
などが発症に影響していると考えられています。
乾癬は“不衛生のせい”でも“うつる病気”でもない
乾癬は、うつる病気ではありません。
また、皮膚の不衛生が原因で発症する病気でもありません。
乾癬は皮膚に現れるので、人目を気にしてしまい、それが大きなストレスになりやすいものです。
鱗屑がぽろぽろ剥がれ落ちるせいで、不衛生だと思われたり、うつると思われたりしないかと、苦痛にもなります。
さらに接客業では、夏場でも肌を隠すために長袖を着用している人もいます。
肌を見られて同情されることもストレスになるため、「患部を隠そう」とする人が多いようです。
乾癬の患者さんのつらい気持ちを和らげるには、周りの人のサポートと配慮が必要です。
そのためにも、乾癬という疾患をしっかり理解し、乾癬を恐れないでほしいと思います。
女性は10代と50代・男性は30代の発症が多い
男性は30代、女性は10代・50代での発症が多いとされています。
乾癬の発症には、脂・動物性脂肪の多い食事との関係が指摘されており、近年の食の欧米化によって患者数は増加傾向にあります。
全国には、約50~60万人(人口の約0.4~0.5%)万人の患者がいると推測されています。
病院での治療経験がある患者を性別でみると、「2:1」で男性の方が多い傾向があります。
男性の場合
30代での発症が多いのは、
仕事が忙しくなる
結婚して責任が増えたりする
などの変化が起こりやすいためだと考えられています、
女性の場合
「10代」 → 身体の変化、生活の変化が著しい
「50代」 → 更年期の症状が現れ、体調が一気に変わりやすい
といった理由で発症リスクが上昇すると考えられています。
乾癬は、5つの種類に分けられる
① 尋常性乾癬(乾癬の約90%)
尋常性乾癬の場合、初期は赤く小さい発疹が現れます。
発疹が大きくなると、鱗屑(※)が付着した状態になります。
※鱗屑(りんせつ):皮膚の表面の角質細胞が剝がれ落ちたもの
この乾癬は、肘や膝、髪の生え際などに多く発生します。
爪に穴が空いたり、爪が変形したりするケースもあります。
乾癬患者の約90%は、この「尋常性乾癬」だと言われています。
② 膿疱性乾癬(尋常性乾癬の症状がすすんだ状態)
膿を含んだ水疱ができる乾癬で、水疱が破れると皮膚がただれます。
悪化して全身に膿疱ができると、高熱、全身倦怠感を伴うこともあります。
膿疱性乾癬は、尋常性乾癬を発症した後に現われることがある症状です。
③ 滴状乾癬(子どもに多い)
溶連菌感染症(※)に伴って生じるタイプの乾癬で、主に小児にみられます。
手足の付け根や背中、おなかに生じやすく、1cmほどの小さい角化した赤い発疹がみられます。
※溶連菌感染症:発熱・喉の痛みなどを生じる病気。舌にイチゴのようなぶつぶつが出る。
④ 乾癬性紅皮(全身に広がり、皮膚が真っ赤になる)
発疹が体中に広がり、全身の皮膚が真っ赤になって剥がれ落ちる状態です。
脱水症状、低タンパク血症、低カルシウム血症を合併することもあります。
尋常性乾癬や膿疱性乾癬になると、紅皮症を起こすことも多いです、
◆脱水症状
乾癬によって皮膚の水分を保てなくなると、身体の脱水が起きてしまいます。
悪化すると身体の水分が少なくなり、体を動かせなくなったり、内臓機能などが低下したりします。
◆低タンパク血症
尿にタンパク質が排出されて体のタンパク量が足りなくなり、むくみを引き起こします。
◆低カルシウム血症
血液からカルシウムが減少してしまう状態です。
強い筋肉の痛み、けいれん、唇・足・手などのチクチク感、抑うつ、物忘れなどが起こります。
⑤ 乾癬性関節炎(関節に炎症が起きる)
全身の関節の腫れ・痛み・変形・こわばりを伴う乾癬です。
関節の症状は、手足の指先・かかと・足裏の腱(けん)などに出ます。
乾癬性関節炎は、乾癬患者の約10%に見られる症状です。
痛みで眠れなくなるケースもあります。
乾癬は、自分で治せる?
乾癬は、セルフケアで治すことはできません。
専用の薬を使い症状を軽く押さえていく治療が必要になります。
乾癬は、治せる病気なの?
今のところ乾癬は完治できない病気ですが、薬は日々進化しているため、症状を軽くさせることは可能です。
適切な治療を受けることで、「調子が整っているときは症状が出ない」という状態になる人もいます。
近年は、「新しい治療法」も開発されています
近年では、乾癬の研究がどんどん進み、新薬や新しい治療法も開発されました。
新薬の例としては、「アプレミラスト」というお薬が挙げられます。
アプレミラストとは、「経口ホスホジエステラーゼ4(※)」を阻害する薬です。
服用すると、過剰な炎症反応が抑制されるため、乾癬症状の改善が期待されています。
重度の副作用も少なく、飲み薬であるため、治療に取り入れやすいという利点もあります。
新しい治療法によって、
皮膚症状が出現しない状態を継続できる
関節の痛み・腫れが治まる
など、日常生活に支障が出ないようになるケースも増えています。
ご自分のライフスタイルに合う治療法を、担当医師と相談しながら選択してください。
症状を確認しながら治療を進めるのが、乾癬を良好な状態に戻す第一歩になります。
(※)経口ホスホジエステラーゼ4…体に存在する酵素の1つで、炎症や免疫にかかわる免疫細胞・脳などに多く存在する
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乾癬の治療法
乾癬の治療法には、
塗り薬
光線療法(紫外線照射)
飲み薬
注射(生物学的製剤)
が主に用いられます。
症状に合った治療法を選択するのはもちろんですが、患者一人ひとりのライフスタイルを考慮する必要があります。
患者の苦痛をできる限り軽減し、皮膚をよりよい状態にできるようにしていきます。
治療① 塗り薬
乾癬治療の基本は、塗り薬の使用です。
「ステロイド」や「活性型ビタミンD3」を皮膚に直接塗ります。
現在は、この二つの薬剤の合剤が利用できるようになり、発疹の治療には非常に有効です。
治療② 光線療法(紫外線照射)
紫外線を皮膚に照射する治療法です。
現在は「中波長紫外線」が使用できるようになり、これが主流になっています。
光線療法は、効く人と効かない人がいますが、乾癬を抑制する作用が認められています。
治療③ 飲み薬
乾癬の発疹が中等度から重度に進行した場合、飲み薬による治療が行われるケースが多いです。
塗り薬による治療・光線療法と組み合わせるケースもあります。
治療④ 注射(生物学的製剤)
遺伝子組み換え技術を駆使して作られた「タンパク質製剤」を注射します。
注射すると、「サイトカイン」という物質の働きが弱まるため、乾癬の症状改善を図れます。
また、体内で分泌される特定分子を標的にするので、腎・肝障害などの副作用が起こりにくいとされています。
ただし、免疫を抑制する作用があるため、感染症への注意が必要です。
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参考文献
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」Q1より
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」Q8より
健康保険組合レセプト情報を利用した乾癬の実態調査
照井正1), 中川秀己2), 江藤隆史3), 小澤明4)
1)日本大学医学部皮膚科学分野皮膚科, 2)東京慈恵会医科大学皮膚科学, 3)東京逓信病院皮膚科, 4)東海大学医学部専門診療学系皮膚科
臨床医薬 30(3): 279 -285 2014
医学文献検索サービス -メディカルオンライン
Semantic Scgolar「Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database」
Kiyoshi Kubota, Yukari Kamijima, +4 authors Hidemi Nakagawa Published 2015 in BMJ open
危険な病気② 日光角化症
日光角化症とは、長期的に日光を浴びることで発症する皮膚ガンの一種です。
顔や手の甲に発症することが多いです。
日光角化症の主な症状
- 皮膚の表面にかさぶたのような「ざらつき」がある
- 皮膚の表面にかさぶたのような「赤いイボ」がある
- 紅斑(※)がある
- 肌の色素沈着がある
※皮膚の浅い層での血管拡張によってできる、赤い斑のこと。
日光角化症になりやすい人は?
60歳以上の高齢者や、日光に浴びる機会が多い人、紫外線対策を行っていない人はなりやすい傾向にあります。
日光角化症の疑いがある場合は皮膚科へ
心当たりがあるときは、皮膚科で診察を受けましょう。
早期発見であれば、薬物療法や、液体窒素で壊死させる凍結療法などにより治療が可能です。
しかし、進行すると悪性の「有棘細胞ガン」に移行し、手術が必要になります。
命に関わるおそれもあるので、放置せずに病院で相談してください。
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上記以外にも、糖尿病の合併症などが原因で、かさぶたが慢性化したような状態になるケースもあります。(糖尿病性皮膚潰瘍)
重い病気を見逃さないためにも、長期間治らないかさぶたがある場合は、病院で相談することをおすすめします。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-10-27
何度もほくろにかさぶたができるけど、これって皮膚の病気?
ほくろのかさぶたを何度も繰り返す原因について、お医者さんに聞いてみました。
皮膚ガンのおそれもあるので、心当たりがないかチェックしましょう。
なぜ?「ほくろのかさぶた」を繰り返すよくある原因
ほくろにかさぶたが繰り返しできるのは、
ほくろが衣類に引っかかりやすい部分にある
気になって触ってしまう
などの原因が考えられます。
ほくろを傷つけてかさぶたができる場合、心配いらないケースがほとんどですが、まれに悪性に変わることもあります。
かさぶたを繰り返すほくろがある人は、一度「皮膚科」に相談することをおすすめします。
こんなときは要注意!
何もしていないのに、ほくろにかさぶたができている
出血している
形が変化してギザギザになってきた
という場合は、皮膚ガンのリスクがあります。
小さな皮膚ガンでも、リンパ節・臓器・骨などに転移し、放置していると末期ガンまで進行する場合があります。上記に心当たりがある場合は、放置せず「皮膚科」を受診しましょう。
こんな人は「皮膚ガン」を発症しやすい
日中は野外で活動する時間が長い
日焼け止めを使わずに野外でレジャーをしている
火傷痕がある
免疫を抑える薬を飲んでいる
皮膚ガンは、紫外線のダメージにより発症するケースが多いため、屋外に長時間いる人はリスクが高いと考えられます。
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【チェック】危険な「ほくろ」の見分け方
大丈夫なほくろ
危険なほくろ
大きさが長年変わらない
色が均一
丸く境界がはっきりしている
左右対称
急に大きくなる
色がまだら(赤っぽい色が混じる)
ジュクジュクしている
左右非対称
急に大きくなったり、変形したりしている場合、危険なほくろであるリスクが高いです。
ほくろの「大きさの変化」「隆起」「一部の色の変化」を観察しましょう。
かさぶたを剥がすと…どうなる?
自分でかさぶたを剥がしてしまうと、出血したり、傷跡が残ったりするリスクが高まります。
また、ほくろが皮膚ガンであった場合、それがガンへの刺激となり、気がつかないまま進行してしまうおそれがあります。
ほくろに「かさぶた」ができたときのNG行為
ほくろを「触る」「擦る」「強く洗う」のは避けましょう。
かさぶたが早期に剥がれてしまい、出血や傷が治るのが遅くなるおそれがあります。
かさぶたを何度も繰り返すときは、皮膚科で受診を
ほくろのかさぶたを何度も繰り返す場合は、念のため皮膚科で受診しましょう。
特に、何もしていないのにほくろから出血が見られる場合、皮膚ガンのおそれがあるため要注意です。
受診する際は、
いつ症状に気がついたか
気がついたときにほくろはどのくらいの大きさだったか
ほくろの変化
などを医師に伝えるとよいでしょう。
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▼参考
日本皮膚科学会 メラノーマ
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