頭がいい人は強迫性障害になりやすいって本当?
強迫性障害は頭がいい人に多いのかどうか、お医者さんに聞いてみました。
強迫性障害になりやすい人の特徴や代表的な症状も紹介するので、心当たりがないかチェックしましょう。
監修者
平成かぐらクリニック
院長、メンタルアシストプログラム総責任者
伊藤 直
経歴
一般社団法人 健康職場推進機構理事長
医療法人社団 平成医会 理事
専門領域:精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科
著書:精神科医が教える 3秒で部下に好かれる方法
「強迫性障害の人は頭がいい」ってウソ・ホント?
「強迫性障害は、頭がいい人に多い」と聞きましたが、本当でしょうか?
いいえ。「強迫性障害は頭がいい人によくみられる」という医学的根拠はありません。
ですが、強迫性障害を発症する人には
といった傾向があるため、「リスクマネジメントができている」「頭がいい」と誤解されることがあります。
強迫性障害とは
強迫性障害は、払いのけられない思考やイメージ(強迫観念)が何度も浮かび、同じ行動を繰り返すなどして、日常生活に支障をきたす病気のことです。
強迫性障害を発症する原因は判明していませんが、脳の神経の異常が影響しているといわれています。
強迫性障害になりやすい人の特徴
- 几帳面でこだわりが強い
- 真面目で融通がきかない
- ストレスを抱えやすい
- 妊娠・出産後の女性
- 仕事で忙しい
上記のような性格・環境などの要因が複数重なると、強迫性障害を引き起こす可能性があると考えられます。
ただし、当てはまるからといって必ず発症するわけではありません。
強迫性障害かも…病院に行くべき?
- 汚れが気になって繰り返し手を洗う
- 家の戸締りやガス栓が気になって何度も確認してしまう
- 決まった手順で行動しないと気が済まない
上記の行動が見られるときは、強迫性障害が疑われるので病院で相談しましょう。
仕事や人間関係に悪影響を出さないためにも、早期の受診をおすすめします。
セルフケアで治ることはある?
強迫的に行ってしまう行動や考えを我慢できる程度であれば、「認知行動療法(※)」によるセルフケアで治る可能性があります。
ただし、認知行動療法を正しく実践するためにも、一度病院で医師に相談することをおすすめします。
※認知行動療法:自分の不合理な行動や思考に対して、バランスのいい方法を身につけてストレスを和らげる治療法。
何科に行くべき?
強迫性障害で病院へ行く場合は、「精神科」で相談しましょう。
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強迫性障害の治療法
強迫性障害は、「認知行動療法」と「薬物療法」の2つを組み合わせて治療を行うのが一般的です。
薬物療法では、抗うつ薬を使用することが多く、強迫性障害による不安定な精神状態を落ち着かせます。
治療にかかる費用は?
強迫性障害の治療費は、
「薬物療法」→ 保険適用で2,000〜3,000円前後
「認知行動療法」→ 保険適用で1,000〜3,000円前後
が目安です。
なお、「認知行動療法」は自費診療となるケースもあり、その場合は3,000〜5,000円前後が目安となります。
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2021-11-08
強迫性障害がつらい…。
「治療費はいくらかかる?保険適用?」
詳しい治療方法や、克服するためにできることをお医者さんに聞きました。
考え方次第で、早く治せるかもしれません。
「家族にできること」を本人が家族に強要して病状が悪化することもあるので、家族など周りの人も一緒に理解を深めましょう。
強迫性障害の治療方法
強迫性障害の治療は主に
投薬治療
認知行動療法
の二軸で行われます。
どちらか単独での治療よりも、2つを組み合わせた方がより効果が高まります。
一般的に「投薬治療」で不安感などの症状を落ち着かせてから、「認知行動療法」を併用することが多いです。
その① 投薬治療
強迫性障害の原因の1つと言われるセロトニン(※)の異常を調整する「抗うつ薬」を使用します。必要に応じて、不安をやわらげる「抗不安薬」を併用することがあります。
具体的な抗うつ薬の種類はデプロメール・ルボックス・パキシルなどです。
効果が出るまでに2週間から1ヶ月程度かかるため、自己判断で中断せずに医師の指示に従って服用してください。
※セロトニンとは
脳内で働く脳内神経物質の一種です。心の安定に関わっている物質なので、セロトニンが不足すると不安感や緊張感が強くなると考えられています。
「投薬治療」にかかる費用は?
多くの場合、保険が適用されます。
2週間、抗うつ薬が処方されたとして、初診代と薬代で3,000円前後、再診で2,000円円前後かかるとお考えください。(3割負担の場合)
その② 認知行動療法
ストレスや苦手なものに対して、うまく対応する方法を学ぶ治療法です。精神科医や臨床心理士などが患者さんの考え方のクセ・受け取り方を理解し、良い方向へ修正します。
強迫性障害は、薬による治療も行われることが多いですが、認知行動療法を組み合わせると、症状がさらに良くなるといわれています。
つらい症状をやわらげるだけでなく、再発の防止にもなります。
「認知行動療法」治療にかかる費用は?
医師が「治療が必要だ」と判断した場合、基本的に保険適用です。
保険診療の場合、3割負担では初診の診察代は2,000~3,000円前後で、再診は1,000~2,000円前後です。一般的には5~20回ほど、2~6ヶ月の期間で行うことが多いです。
認知行動療法に関しては、保険適用外であることも多く、1回3000~5000円前後で、30分~1時間ほどかかります。
※医療機関によって費用が異なるため、あらかじめ医療機関に問い合わせて確認しておくことをおすすめします。
「薬なし」で治すのは難しい?
お薬を使用せずに治すのは難しいです。
強迫性障害の患者さんは、うつ病を併っていることも多く、早く症状を安定させるためには、薬の使用をおすすめします。
ご自身が現在、どのような治療を受ける必要がある状態なのかを、専門医と相談してみると良いでしょう。
強迫性障害を治すコツはあるの?
治療から逃げ出さずに、気長に着実に取り組むことも大事です。
薬は症状が良くなるまでに時間がかかるものもあります。
大切なのは、自己中断せずに医師から処方された通りに薬を飲むことです。
日常生活で気をつけることは?
夜の睡眠時間を最低でも7時間は確保し、規則正しい生活を意識してください。
生活リズムが崩れると悪化しやすくなります。
可能な範囲で、仕事や学校と関わりを持ちましょう。
病気と向き合うことは大切ですが、病気しか向き合うことがないと、症状の悪化に繋がりかねません。
治療は「自分のペース」が大事です
早く治そうと焦ってしまうと、ストレスなどが増えて逆効果です。
強迫性障害は、症状が良くなったり、悪化したりを繰り返し、長期にわたって向き合わなければならないケースが多いのでご自身のペースで治療していきましょう。
ご自身にあった治療を受ければ、症状は良くなる可能性が高くなるということを、忘れないでください。
家族や周囲の人が意識すべきポイント
強迫性障害は家族も巻き込まれやすい病気ですが、患者さんに合わせすぎると共倒れしてしまいます。患者さんの主治医や臨床心理士に相談しながら進めていきましょう。
例えば、患者さんが家族に対して繰り返し同じ確認をするときには、確認行動は1回だけにする、などルールを決めて対応しましょう。
患者さん自身も、つらく、苦しんでいることを理解し、病気のことを責めないように心がけることが大切です。
患者さんとの接し方
患者さんの話を最後まで聞く
巻き込まれすぎない
言い合いをしない
感謝の言葉を口にする
褒める
焦らせない
否定しない
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
厚生労働省:強迫性障害
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター:認知行動療法とは
公益社団法人日本精神神経学会:松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く
MSDマニュアル家庭版:強迫症(OCD)
一般社団法人日本うつ病センター(JDC):強迫性障害のくすり
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