「食後1時間の血糖値はどれくらいが正常なの?」
食後の正常な血糖値の基準について、栄養士さんに聞いてみました。
毎回140mg/dL以上の人は「糖尿病予備軍」も疑われます。
血糖値の上昇がゆるやかになる食べ方も解説しますので、糖尿病を予防したい人は必見です。
監修者
経歴
株式会社Luce代表/健康検定協会理事長、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、日本臨床栄養協会評議員、ダイエット指導士、ヨガ講師、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど栄養・美容学の分野で活動をおこなっている。
「食後1時間の正常な血糖値」ってどれくらい?
食後1時間の正常な血糖値は、120~150mg/dLになります。
食後30~60分で最大値(120~150mg/dL)となり、2~3時間後にはもとの数値(70~110mg/dL未満)に戻ります。
時間
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血糖値(健康な場合)
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食前
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70~100mg/dL
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食後すぐ
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100~120mg/dL
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食後30分~1時間
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120~150mg/dL
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食後2~3時間
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70~110mg/dL
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血糖値が高めかも…これって大丈夫なの?
あまり心配いらない
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糖尿病が疑われる
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- 糖質の多い食品をたくさん食べた
- たまに数値が高くなる
- 食後2時間で140㎎/dL未満に低下する
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- 糖質をたくさん食べていない
- 食後血糖値が毎回140mg/dL以上
- 食後2時間経っても140mg/dL以上
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「ごはんを何杯もおかわりした」「甘い物をたくさん食べた」など、一度の多くの糖質を摂ると、健康な人でも血糖値が高くなります。
原因が食事だとわかっており、一時的な症状なのであれば心配しなくて大丈夫です。
血糖値が上がりやすい食べ物
砂糖/ジュース/ホットケーキ/菓子パン など
一方、食事内容に関わらず「血糖値が140mg/dL以上」ある場合は、糖尿病・糖尿用予備群が疑われます。
医療機関で診てもらっていない方は、一度内科で相談するようにしましょう。
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「食事」と「血糖値」の関係をわかりやすく解説!
炭水化物などに含まれる「糖分」を摂取すると、それが血液中に入って体のエネルギーとして使われます。
血糖値が上昇すると、膵臓から「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが分泌され、バランス調整が行われます。
「食後の血糖値上昇を“ゆるやか”にさせたほうがよい」のはなぜ?
血糖値の上昇をできるだけ“ゆるやか”にさせていると、インスリンの分泌に異常をきたしにくくなるため、糖尿病の予防につながります。
血糖値の上昇が急激であればあるほど、インスリンの分泌量は多くなります。
食生活の乱れなどで「インスリンの過剰な分泌」が繰り返されると、次第に分泌する力が弱くなっていき、「インスリン不足」に陥ることがあります。
これにより血糖値が下がらなくなると、「糖尿病」の発症につながります。
また、インスリンには余った糖を脂肪として蓄える働きがあるため、過剰な分泌が繰り返されると「肥満」の原因にもなります。
ドカ食いによる「血糖値スパイク」に注意!
一度に多くの糖質を食べると、「血糖値の急上昇」が起こり、インスリンの働きによって「血糖値が急降下」します。
この血糖値の乱高下は“血糖値スパイク”と呼ばれており、糖尿病を招く原因になると考えられています。
特に「空腹状態でのドカ食い」が習慣となっている人は要注意です。
血糖値スパイクが繰り返されると、次第に血管にダメージが加わっていくため、心筋梗塞などのリスクも上昇します。
また、砂糖・ブドウ糖のような単純糖質は早く消化吸収され、糖質の中でも血糖値スパイクになりやすい食べ物です。
甘いお菓子・ジュースを口にする回数が多い人は、摂りすぎに気をつけましょう。
食後の血糖値上昇をゆるやかにする4つの方法
食後の血糖値が高めな方には、
- 1口あたり20回以上噛む
- 副菜→主菜→主食の順で食べる
- 摂取カロリーは変えず、1日の食事回数を増やす
- 温かいものを食べる
といった対策をおすすめします。
対処法① 1口あたり20回以上噛む
1口あたり最低20回は噛むように習慣づけましょう。
調理の際に具材を大きめにカットすると、噛む回数が増やしやすくなります。
よく噛まずに早食いをすると食後の血糖値が上昇しやすくなります。
対処法② 副菜→主菜→主食の順で食べる
副菜
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野菜/きのこ/海藻 など
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主菜
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お肉/魚 など
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主食
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ご飯/麺/パン など
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食事は、副菜→主菜→主食の順で食べ進めましょう。
炭水化物から食べるのはNGです。
野菜などの食物繊維が豊富な食べ物から食べると、胃の中で糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の急上昇を抑えることができます。
また、食物繊維は胃の中での滞在時間が長いため、満腹感を得やすく食べ過ぎの防止にもつながります。
対処法③ 摂取カロリーは変えず、1日の食事回数を増やす
摂取カロリーを変えずに1日5食にして、小分けで食事をとるようにしましょう。
1回あたりの食事の量を減らすと、その分血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。
実践する際には、
- 食事の間隔を4時間程度空ける
- 「1日で最後の食事」が遅くなりすぎないようにする
といった点も守りましょう。
食器のサイズを小さくしてみよう!
食事の回数を増やすと、1回あたりに盛る量が少なくなるものです。
量を調整する際は、普段使用している食器を「一回り小さいサイズ」のものに変えてみましょう。
食器のサイズを小さくすることで、「量が少なくなった」というストレスを軽減できます。
小さい食器がおすすめですが、子ども用の食器ではなくきちんとした大人用を選びましょう。
子ども用では食べた満足感が下がってしまい、逆効果になる恐れがあります。
対処法④ 温かい食べ物を食べる
食事をするときは、お味噌汁などの温かいメニューを1品つけるようにしましょう。
温かい食べ物は早食いすることが難しいので、自然とゆっくりと噛む食事となり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
お味噌汁にする場合は、野菜・きのこ・海藻などの「食物繊維が豊富な食べ物」を入れるとよいでしょう。
食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにさせます。
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2021-09-17
「血糖値が気になるけど、パンやケーキが食べたい!」
パンやケーキの「血糖値を上げない食べ方」を栄養士に聞きました。
オリーブオイルを組み合わせる方法、低糖質のパンについてなど詳しく解説していきます。
パンやケーキの「血糖値を上げない食べ方」
パンやケーキには小麦・砂糖といった糖質が多く含まれているため、血糖値が上がりやすいイメージがあります。
ただし、
一度にたくさん食べない
食物線維が多いパンを選ぶ
食べる順番・組み合わせを工夫する
といったことに気を付けると、血糖値の上昇を抑えることができます。
その① 一度にたくさん食べない
糖質の多いものを一気にたくさん食べると血糖値が急上昇するので、食べる量に気をつける必要があります。
菓子パン(メロンパン、あんぱんなど)やケーキは、砂糖をたっぷり使っているので糖質が多く、血糖値が急上昇しやすいです。
空腹時に食べる場合は半分~1/4個程度まで減らし、小分けにゆっくり食べることで血糖値の急上昇を防げます。
その② 食物線維が多いパンを選ぶ
食物繊維を多く含むパンを食べると、糖の吸収を抑えられ、血糖値の上昇がゆるやかになります。
食物繊維の多いライ麦パン、全粒粉パン、ふすまパンがおすすめです。
また、ナッツ入りのようなよく噛むパンを選ぶのも、血糖値の急上昇を抑えます。
その③ 食べる順番・組み合わせを工夫する
糖の吸収を抑える「食物繊維」や「たんぱく質」などを先に食べておくことで、血糖値の急上昇を防げます。
血糖値を上げにくい食べ方は、①野菜 → ②肉または魚 → ③パン の順に食べることです。
食物繊維の多い野菜を先に食べることで、糖の吸収を抑えてくれる働きがあります。
また、肉や魚などのたんぱく質が先でも血糖値の急上昇を抑えることがあります。
たんぱく質を多く含む食品は、胃での滞在時間が糖質よりも長く、満腹感を得やすくなります。
パンとオリーブオイルを合わせるといいって本当?
パンと一緒にオリーブオイルを食べることで、糖質の吸収が緩やかになり、血糖値の急上昇を抑制できます。
ただし、オリーブオイルは油ではあるのでエネルギーは多くなります。そのため摂りすぎには注意が必要です。日常での油摂取の量によっても異なりますが、大さじ1杯ほどを目安にするとよいでしょう。
おすすめの食べ方♪
パンに、バターやマーガリンの変わりにオリーブオイルをつけて食べるのが良いでしょう。
また、パンと一緒にサラダを用意し、サラダのドレッシングがわりにオリーブオイルにしても良いでしょう。
低糖質のパンやケーキってどうなの?
低糖質のパンやケーキは、通常のものに比べて血糖値の上昇が緩やかですが、糖質を全く含んでいないわけではないので、多少の血糖値の上昇を招きます。
たとえ低糖質パンだとしても、食べる順番や量に気をつけて食べるほうが良いでしょう。
▼参考
e-ヘルスネット
「低糖質パンの摂取がセカンドミール摂取後の血糖値に及ぼす影響」日本栄養・食糧学会誌2020年73巻4号金本 郁男、金澤 ひかる、内田 万裕、中塚 康雄、山本 幸利、中西 由季子、佐々木 一、金子 明里咲、村田 勇、井上 裕
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2021-09-10
「血糖値を上げない朝食」について、栄養士に聞きました。
血糖値の上昇を防ぐポイント詳しく解説していきます。
おすすめのメニューやコンビニで選ぶ時のコツなど、血糖値が気になる方は必見です。
血糖値を上げない朝食って、どんなメニュー?
「食物繊維」や「たんぱく質」、「適度な油」がある食事は、血糖値の上昇を防ぎます。
たんぱく質の多い「肉・魚・卵・大豆製品」などを使ったおかずに、食物繊維の多い「野菜」、そして主食となる「ご飯やパン、麺」を組み合わせるとよいでしょう。
主食は、
玄米
雑穀
ライ麦パン
ふすまパン
などの食物繊維が豊富なものを選ぶと、血糖値の上昇をさらに抑えられます。
食べる順番にも気をつけよう
食物繊維やたんぱく質の多いものから先に食べ、主食は最後の方にすると、血糖値の急激な上昇を防げます。
血糖値は上がりやすい食事は?
菓子パン
砂糖がコーティングされているようなコーンフレーク
パンケーキ
といった糖質が多いものは、血糖値が上がりやすくなります。
また、果物や砂糖をたくさん使用した「スムージー」や「ジュース」も、空腹時に一気に飲むと血糖値が急激に上がります。
ただし、果物の中でもキウイやバナナなどは食物繊維も多く含んでいるので、血糖値の急上昇が防げます。
さらに、麺類・ごはんなどの炭水化物も、単品で食べると血糖値が上がりやすくなります。
特に、焼きそばパン、グラタンコロッケパンなどは糖質の量が多く血糖値を上げやすいので、食物繊維やたんぱく質を組み合わせて食べましょう。
おすすめのメニュー例
和食の場合
主食:玄米や雑穀米
おかず:焼き魚など
汁もの:野菜やキノコ、海藻を入れた具だくさんのお味噌汁
の組み合わせがおすすめです。
余裕があれば、めかぶやオクラなどのネバネバした食材も追加すると、より血糖値が上がりにくくなります。
洋食の場合
主食:オリーブオイルをつけたパン
野菜:卵や豆腐などたんぱく質の入ったサラダ
の組み合わせがおすすめです。
パンだけだと血糖値が急上昇しますが、オリーブオイルをつけることで糖の吸収が緩やかになり、血糖値の急上昇を抑えられます。
サンドイッチにすると手軽に食べられるので、忙しい人にも適しています。
ヨーグルトがいいって聞いたけど…
ヨーグルトがいいって本当ですか?
はい、ヨーグルトに含まれる「ホエイプロテイン」は、血糖値を下げるホルモンの分泌を促し、血糖値の急上昇を抑えてくれます。
効果を出やすくするために、食事前に食べることをおすすめします。
なお、甘いヨーグルトは糖分によって血糖値を上げる要因となるため、無糖のヨーグルトを選びましょう。
甘味が欲しい方はキウイやバナナなどを入れても良いですね。
コンビニで選ぶときのコツ
基本は主食、主菜、副菜を揃え、できるだけ単品にならないようにしましょう。
トマトジュースにBLT(ベーコン、レタス、トマト)サンドやツナおにぎり、ゆで卵やサラダチキン、そしてインスタント味噌汁などを合わせてもよいでしょう。
炭水化物の組み合わせはNG!
カップラーメンとおにぎり、焼きそばと肉まんといった炭水化物の組み合わせは、血糖値が急上昇しやすくなるので避けてください。
低糖質のおにぎりやパンは、血糖値の上昇を緩やかにしてくれるの?
低糖質のパンは通常のパンに比べると、血糖値の上昇が緩やかになりますが、血糖値が上がらないわけではありません。
たとえ低糖質であっても、パンやおにぎりは単品で食べずに、他の食材と組み合わせて食べることをおすすめします。
血糖値の上昇を防ぐポイント
血糖値の上昇を防ぐには、
野菜やおかずから食べる
よく噛み、早食いしない(20分ほどかける)
主食、主菜、副菜を組みあわせる
といったポイントを意識するとよいでしょう。
その① 野菜やおかずから食べよう!
野菜に多く含まれている「食物繊維」は、糖の吸収を抑え、血糖値の急上昇を防いでくれます。
食事を開始して初めの5分程度は、野菜やおかずとなるたんぱく質源をゆっくり噛んで食べましょう。
その後は、ご飯・パンなどを食べても問題ありません。
その② 早食いはNG!
ゆっくりよく噛んで食べることで、血糖値の上昇が緩やかになります。
人は満腹と感じるまでは20分くらいかかります。
一口30回ほどと目安によく噛んで、20分ほど時間をかけて食べるようにしましょう。
その③ 主食、主菜、副菜を組み合わせる
糖質を多く含むパンやご飯は、単品で食べると血糖値が上がりやすくなります。
肉や魚、卵などのたんぱく質を多く含む食品や、食物繊維の多い野菜を一緒に食べ、血糖値の上昇を抑えましょう。
具材が多いサンドイッチやおにぎりを選ぶようにする、トッピングの多いうどんやラーメンを選ぶというのもコツです。
▼参考
e-ヘルスネット
▼参考
e-ヘルスネット
「血糖値は食べて下げる 寝て下げる」田中俊一、浅野まみこ著 アスコム出版
「ズボラでも血糖値がみるみる下がる57の方法」板倉弘重著 アスコム出版