下を向くと治る耳の詰まり…。これは何かの病気?
耳管開放症の原因と治療法について、お医者さんに聞きました。
症状を悪化させないよう、対処法をチェックしましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
なぜ?下を向くと治る耳の詰まり…
耳の詰まりが下を向くと治る場合、耳管開放症という病気になっている可能性が高いです。
下を向くと頭部がうっ血し、耳の周囲の血流が改善するため、耳の詰まりが改善されます。
「耳管開放症」ってどんな病気?
耳管開放症とは、通常閉じているはずの「耳管」が開いたままになってしまう病気です。
鼻炎などでよく鼻をすすることや、ストレスや顎関節症などが発症原因と言われています。
鼻と耳をつなぐ管を「耳管」といい、外気の気圧と耳の中の気圧を調整する働きがあります。
耳管が開いたままになると、呼吸時に鼻から耳に空気が流れ込みすぎてしまいます。
その結果、自分の鼻息で鼓膜がふるえてしまい、詰まった感じなど聞こえ方に異常が出ます。
耳管開放症の症状
- 耳が詰まった感覚が続く
- 自分の声が響いて大きく聞こえる
- 自分の呼吸音が聞こえる など
耳管開放症を発症しやすい人
- 鼻炎の人
- 神経質な人
- 頭痛持ちの人
- 不眠症の人
- 顎関節症の人
- ストレスが多い人 など
耳管開放症は、自然治癒する?
軽度の症状のものであれば1~2週間ほどで、自然治癒することもあります。
- 過度なダイエットはしない
- 鼻はすすらない
- 睡眠をしっかりとる
- 体調管理をする
などを意識するとよいでしょう。
※「唾を飲む」「耳抜き」などは一時的な耳のつまりには良いですが、耳管開放症の場合は快方には向かいません。
病院に行く目安
- 耳鳴りがする
- 自分の声の大きさが把握できない
- 自分の呼吸音が響く
- 耳詰まり
などの症状が1週間程度続き耳管開放症の疑いがある場合は耳鼻いんこう科の受診をおすすめします。
どんな治療を受けるの?
耳管開放症の原因を調べ、生活指導をベースにした治療を行います。
生活指導を行っても症状が改善しない場合は、耳管の入り口を狭くするためにお薬を使った治療、生理食塩水の点鼻、手術などを行う場合もあります。
一般的に治療期間は3ヶ月ほどかかると言われています。
生活指導の例
- 1日1.5~2リットルほど水分を摂取する
- 過度なダイエットを控える
- 鼻すすりをやめる
- 病気の理解を深める
ずっと放置すると…もとに戻らなくなる!
耳管開放症が悪化すると、耳管が開いたまま戻らなくなってしまいます。
軽度のうちに診察を受け、生活のアドバイスや治療を受けることで、症状を快方に向かわせやすくなります。耳詰まりの症状にお困りの場合は、早めに受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
NG!耳管開放症を悪化させる行動
「鼻をすする行為」や「過度なストレス」は耳管開放症を悪化させる恐れがあります。
慢性的に鼻づまりが続いていて常に鼻をすすっている方は、耳鼻いんこう科で治療を受けましょう。
慢性的な鼻づまりの原因
「アレルギー性鼻炎」「慢性副鼻腔炎」などが考えられます。
耳管開放症や蓄膿症など他の病気の原因にもなるので、季節を問わず慢性的に鼻がずるずるする方は病院での治療をおすすめします。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は花粉やほこりなど、特定の物質に対して、体が過剰に反応してしまう病気です。
体質・自律神経の乱れ・寒暖差などが原因と言われています。
アレルギー性鼻炎の症状
- 風邪でもないのに連続したくしゃみが出る
- 水のようなさらさらした鼻水が止まらない
- 鼻詰まりが改善しない
- 目の充血やかゆみが出る など
慢性副鼻腔炎
副鼻腔(鼻の奥にある空洞)に鼻水が溜まり、そこで細菌やウイルスが増殖する病気です。
体質・風邪や虫歯などの菌・煙草のけむり・大気汚染などが原因だと言われています。
慢性副鼻腔炎の症状
- 風邪でもないのにくしゃみが出る
- 鼻詰まりが改善しない
- 鼻がつまる
- 鼻を押すと痛い
- においを感じない
- 後鼻漏が多い など
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副鼻腔炎とは、どのような病気なのかを分かりやすくまとめました。
副鼻腔炎の主な症状も紹介するので、「副鼻腔炎かも…」と思う人は心当たりがないかチェックしましょう。
副鼻腔炎とは
副鼻腔炎とは、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)や鼻の粘膜に、細菌やウイルスが侵入し、炎症が起こる病気です。
副鼻腔に膿が溜まったり、腫瘍が発生したりすることで、目の下の骨に痛みが生じることがあります。
副鼻腔炎の症状
鼻がつまる
黄色や緑色の鼻水(膿性鼻水)が出る
発熱する
痰がからむ咳が出る
ほほ、おでこに痛みが出る
頭が痛い
目が痛い
歯が痛い
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎にかかる原因としては、下記が挙げられます。
風邪
ハウスダスト
花粉
カビ
風邪以外の原因に関しては、それらが鼻から入って副鼻腔にまで侵入し、炎症を起こして鼻水が臭うこともあります。
副鼻腔炎になりやすい人
副鼻腔炎は、誰にでも発症する可能性のある病気ですが、次のような人は特に注意が必要です。
75歳以上の高齢者
糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などにかかっている方
ウイルスや細菌感染による鼻症状を繰り返している方
過去一ヵ月に抗菌薬を使用した方
肥満傾向の方
喫煙習慣のある方
ぜんそくや気管支炎のある方
副鼻腔炎に使える市販薬は?
市販の鼻炎薬を使用することで、回復することもあります。
市販薬の例
アレルギー性副鼻炎の場合…
ナシビンメディ:佐藤製薬
アルガード鼻炎クールスプレーa:ロート製薬
風邪による副鼻炎の場合…
パブロン鼻炎アタックJL:大正製薬
アレルギーによる場合には、副鼻腔炎だけでなく鼻閉(鼻づまり)も併発している可能性があるため、点鼻薬がおすすめです。
また、最近では漢方薬による副鼻腔炎の治療薬も出始めています。
蓄膿症の漢方薬としても用いられている辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)がおすすめです。
こんな症状は早く病院へ
副鼻腔炎が悪化している場合、自然に治りにくいです。症状が2週間以上続いているときは、早めに受診しましょう。
副鼻腔炎が悪化すると、症状の慢性化や中耳炎を発症するリスクがあります。
中耳炎は聴力に悪影響を及ぼす恐れがあるため、注意したいものです。
さらに、重症化して髄膜炎(※)を引き起こすケースも稀にあります。放置しないようにしましょう。
※「髄膜炎」…頭蓋骨と脳の間にある「髄膜」という膜に、細菌・ウイルスなどが感染し、炎症を起こす病気。頭痛や嘔吐、錯乱などの症状が現われ、最悪の場合命に関わることもある。
病院は何科?
副鼻腔炎の症状は、耳鼻いんこう科で相談しましょう。
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副鼻腔炎の治療法
薬の処方、点鼻噴霧ステロイド、鼻洗浄を行います。
処方するお薬には、鼻の中の環境を整える「抗菌薬」、痰を出しやすくする「去痰薬」などがあります。
症状によっても異なりますが、2〜3ヶ月程度で治るケースが多いです。
なお、薬物療法で改善が見られない場合には、内視鏡での手術も検討されます。
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中耳炎の痛み、どうにか緩和したい!
お医者さんに、痛みを和らげる対処法を聞きました。
「市販薬はどんなものを選べばいい?」
「痛みが治まらないときは?」
といった質問にも答えます。
中耳炎の痛みを和らげる方法
中耳炎の「痛みを和らげる方法」を教えてください。
対処法として、
1.鎮痛剤を使う
2.患部を冷やす
の2つがあげられます。
1.鎮痛剤の使用について
痛みがあるときは、鎮痛剤を使用してください。
中耳炎専用の鎮痛剤というものはありませんので、通常の鎮痛剤を使用してください。
アセトアミノフェン・イブプロフェンなどの市販されている鎮痛剤を使用しましょう。発熱をしていなくても、痛み止めとして使用可能です。
※年齢にあったお薬を、用法用量をまもって使用しましょう。
2.患部の冷却について
また、耳を保冷剤などで冷やしてあげても痛みが楽になります。
直接保冷剤を肌には当てずに、ハンカチやタオルなどで保冷剤を巻いて患部に当てるようにしましょう。直接、肌に貼るタイプのシート状の冷却材も使用できます。
応急処置を長く続けても、病気が良くならないこともあります。診察を受け、必要な治療を受けるようなるべく早く病院で診察を受けましょう。
痛み止めが効かない場合
痛み止めが効きません…。なぜでしょうか?
薬が効くまでに時間がかかっているのかもしれません。
鎮痛剤は飲んでもすぐに痛みが引かずに時間がかかる場合もあります。親御さんは、子どもの痛みがおさまるまではそばにいてあげましょう。中耳炎であれば、痛み止めと耳を保冷剤などで冷やしてあげると、ほとんどの場合痛みは徐々に落ち着きます。
それでも痛みがひかないときは病院へ!
それでも痛みが増している、状態が悪化しているなどが見られる場合は、病院を受診しましょう。
痛みが強い
顔色が悪くなってきた
呼吸が荒い
など、他の症状もある際は、中耳炎以外の病気の可能性もあります。病院の診療時間外の場合は、緊急で病院を受診してください。
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中耳炎の「病院の受診目安」
中耳炎で耳に痛みを訴えている場合は、できるだけ早く病院を受診して診察を受けましょう。
病院がやっていない時間は、鎮静剤を与えるか、耳を冷やしてあげると楽になります。薬を飲む・冷やしても痛みが取れない場合は、救急病院を受診してください。
中耳炎は、風邪を引いた後に発症しやすいですが、一概に耳の痛み全てが中耳炎とは言い切れません。何か別の病気の可能性もありますので、放置しないようにしましょう。
病院での治療法
病院での治療は、鎮痛剤を用いて痛みを和らげます。抗生剤を使用する場合もあります。また、鼓膜が破れている場合は膿を吸い出します。鼻のつまりがあれば、鼻水を吸い出す治療も行います。
痛みがなくなれば、膿・鼻の状態を確認しながら経過観察を続けます。膿がなくなり、耳の聞こえが通常に戻れば終了となります。
中耳炎を放置すると「難聴」のリスクも
中耳炎は、治療や観察を医師が行わずに放置すると慢性化して難聴を引き起こす場合もあります。
難聴は、日常生活に支障が出ます。コミュニケーションがとれなくなる・勉強に支障が出るなどといったことが起きます。
中耳炎は、子どもによっては、何度もかかる病気です。できるだけ早く耳鼻いんこう科で薬をもらいましょう。
参考
一般社団法人大阪府医師会
https://www.osaka.med.or.jp/citizen/tv16.html