「耳からドクドク心臓の音がする…」
「もしかして病気?」
耳から心臓の音が聞こえる原因をお医者さんに聞きました。
病院は何科で受診すればいいのかもご紹介します。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
耳から心臓の音が聞こえる…これって大丈夫?
一晩様子を見て、次の日には耳の中から心臓音が聞こえないようであれば、あまり心配はいりません。
ただし、よく体を休ませても、数日〜1週間近く耳の中から心臓音が聞こえ続ける場合や、めまい・吐き気など体調不良をともなっている場合は、病気を発症している可能性があります。
耳鼻いんこう科を受診しましょう。
耳鼻いんこう科を探す
なぜ、耳から心臓の音が聞こえる?
耳の鼓膜の内側には太い血管が通っています。その血管内の血流が雑音として聞こえることがあるからです。この症状を「拍動性耳鳴」といいます。
「拍動性耳鳴」の症状
拍動性耳鳴りを発症している場合、一定のリズムで「ドクドク」「ザーザー」と片耳または両耳に聞こえます。
症状が悪化すると、耳鳴りだけではなく、吐き気・めまい・頭痛などの症状を伴うケースもあります。
通常、耳鳴りは本人だけが聞こえるものですが、拍動性耳鳴の場合、医師が聴診器などを使えば、患者が聞こえている音を他人も聞くことができます。(他覚的耳鳴り)
拍動性耳鳴が起きる2つの原因
「拍動性耳鳴」は
- 病気(動脈硬化・高血圧・不整脈など)
- 薬の副作用
が原因となっているケースが多いです。
原因① 病気(動脈硬化・高血圧・不整脈)
首から頭につながる血管が異常を起こしているため、血管内の血流が聞こえてきます。
暴飲暴食や塩分・糖分・脂質を多く含む食事を好む人が発症やすいと言われています。
こんな症状がでるかも!
◆動脈硬化の場合、耳鳴り以外に太ももやふくらはぎの筋肉に痛みやしびれなどの症状が出ます。
◆高血圧の場合、耳鳴り以外に頭痛・めまい・肩こりなどの症状が出ます。
◆不整脈の場合、耳鳴り以外に心臓の脈の打ち方が乱れ、早くなったり、遅くなったり、不規則になったりします。
どう対処すべき?
動脈硬化・高血圧・不整脈を放置するのは大変危険です。
耳鳴り以外にも急な体調不良を発症する可能性もあります。速やかに医療機関へ行きましょう。
動脈硬化・高血圧・不整脈の疑い、持病がある場合、まずは循環器内科の受診をおすすめします。
病気の治療をしても、耳の心臓音が気になる場合は、耳鼻いんこう科を受診してください。
循環器内科を探す
耳鼻いんこう科を探す
原因② 薬の副作用
医薬品によって耳の中が傷害を受けると、心臓の音が聞こえるケースがあります。
一部の抗生物質や抗がん剤など副作用がある薬を服用している人、腎臓の機能が低下している人は発症しやすいと考えられています。
耳鳴り以外の症状
吐き気・枯渇感・眠気などがあります。
※医薬品によって、また個人によって異なります。
どう対処すべき?
薬のせいだと考え、自己判断で薬を中断してしまうのは危険です。
耳鳴りやめまいなど体調不良が2~3日続いたら、薬を処方された医療機関やかかりつけ医に相談をしてください。
放置はNG!耳の音が続く場合は病院へ
聴覚神経の機能を一度失うと再生が困難になります。
放置して症状が固定化すると、治療が難しくなります。
また、根本にある病気が進行し、重症化や命に関わる状態になる前に、早期受診することが大切です。
お一人で悩まずに、耳鼻いんこう科など医療機関受診をしましょう。
耳鳴りの治療方法
耳鳴りの治療方法にはお薬を使った治療やTRT(耳鳴り再訓練療法)などがあります。
お薬を使った治療
ビダミンB12、循環改善薬、精神安定薬、抗うつ薬などのお薬を飲みます。
TRT(耳鳴り再訓練療法)
補聴器やサウンドジェネレーター(音源治療器)という装置を使用する治療法です。耳鳴りとは異なるタイプのノイズ音を流すことで、脳に耳鳴りの音を気にならなくさせる方法です。
耳鳴りの治療期間は、症状にもよりますが、3カ月〜1、2年程度かかります。
耳鼻いんこう科を探す
合わせて読みたい
2020-06-11
「耳の中でポコポコ音がする…」
音の原因についてお医者さんに聞きました。
自然に治る?放置するとどうなる?
病院へ行った方がいい症状まで、解説します。
早期受診のメリットや避けるべきこともご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
耳の中でポコポコ音がする原因
耳の中でポコポコと音がする場合、
滲出性中耳炎
耳管狭窄症
筋肉の痙攣
外リンパ瘻
の可能性があります。
原因1.滲出性中耳炎
耳の中の粘膜から浸出液が漏れ出して、鼓膜の奥(中耳の中)に液体(水や膿)が溜まってしまう病気です。
急性中耳炎を発症後、症状は改善したのに浸出液が残ってしまったり、鼻づまりやノドの炎症等により耳管の機能が低下した場合に発症します。
<ポコポコ音以外の症状>
通常、痛みや発熱はない
耳が詰まったような感覚
耳が聞こえにくい
鼻水
対処法
滲出性中耳炎が疑われる場合、頻繁に鼻をすするのは避けましょう。
また、急性中耳炎が完治していないことで発症するケースも多いです。自己判断で治療を止めるのは避けてください。
原因2.耳管狭窄症
鼻の奥と耳を繋いでいる部分(耳管)が狭くなり、耳の中の空気圧を調整できなくなる病気です。
急激な気圧変化(飛行機など)や、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、風邪の影響でも発症すると考えられています。
他にも、頻繁に鼻水をすする、歯の食いしばりが多い場合にも発症しやすいと考えられています。
<ポコポコ音以外の症状>
耳鳴り
音がこもる
耳が詰まった感覚
自分がどのくらいの大きさで話しているのか分からなくなる
対処法
耳管狭窄症は、鼻をすすることで悪化するケースがあるので、鼻すすりは避けましょう。
耳管狭窄症自体は心配ないことが多いですが、滲出性中耳炎を併発したり、ガン(上咽頭癌)の症状のひとつとして現れることがあります。
耳が詰まった感じが長引くときは、早めに受診をしましょう。
耳鼻いんこう科を探す
原因3.筋肉の痙攣
睡眠不足や疲労、ストレス等により、耳の鼓膜を引き締める筋肉や、耳の周りの筋肉が痙攣を起こす状態です。
大きい音が直に内耳に伝わらないように保護している筋肉に痙攣が起こった場合発症しやすくなります。
<ポコポコ音以外の症状>
ポコポコ以外にも、トコトコといった音がする
対処法
筋肉の痙攣は、睡眠不足や疲労過多によって生じることが多いです。十分な睡眠時間を確保して、疲れをためないようにしてください。
原因4.外リンパ瘻
耳の奥の聴覚をつかさどる部分(蝸牛)に穴があくことで、外リンパ液が内耳に漏れてしまい、耳の機能に異常が生じる病気です。
発症してしまう原因として、
耳かきを耳の奥まで入れてしまう(中耳外傷性リンパ瘻)
頭部打撲(外傷性リンパ瘻)
真珠腫性中耳炎、内耳の奇形、耳の手術の影響(内耳疾患)
鼻をかむ、くしゃみ、せき、力む、管楽器の演奏、重いものを運ぶ作業等(内因性(体圧))
ダイビング、飛行機に乗る、高気圧酸素治療等(外因性(外圧))
が考えられます。
※原因不明の場合もあります。
<ポコポコ音以外の症状>
難聴
めまい
平衡感覚に異常が生じる
耳鳴り(ポコポコ、サーッ等)
耳閉感
吐き気や嘔吐
冷や汗
頭痛
対処法
発症してから2週間以内に治療しましょう。
頭を下げる動作や鼻をかむことで悪化する可能性があるので、避けましょう。
また、力み過ぎたり、無意識に息を止めてしまうことがないよう、リラックスするようにしましょう。
ポコポコ音は自然に治る?
筋肉の痙攣が原因の場合は、自然治癒するケースが多いです。
しかし、ポコポコと音がする症状が続く場合や、耳が聞こえづらい、鼻水、頭痛等の症状がある場合は、悪化する可能性も高いので、早めに病院に行きましょう。
こんな症状は耳鼻いんこう科を受診しよう
耳の不調が続く場合は(耳鳴り、耳が詰まった感じ、聞こえづらい等)、1週間以内を目安に受診するようにしましょう。
その他、次の症状がある場合も病院に行ってください。
バランス感覚の異常
胃のむかつき感や吐き気、嘔吐等の症状
朝起きた時点から吐き気がある
耳鼻いんこう科を探す
放置すると…
「これくらいなら大丈夫」と自己判断して放置していると、様々なリスクが生じます。
手術が必要になる場合がある
合併症を併発したり、後遺症が残ったりする場合がある
再発を繰り返しやすくなる
重篤な疾患を見逃し、症状が悪化する場合がある
気になる症状がある場合は、できるだけ早く耳鼻いんこう科を受診しましょう。
ポコポコ音がするとき、これはOK?NG?
お風呂に入ってもいいですか?
発熱しているとき、耳から膿が出ている、鼓膜に穴が開いている等の場合には、お風呂は控えるようにしてください。
とはいえ、病気や出現している症状によって入浴の可否が異なるので、担当医師に相談してから決めることをおすすめします。
激しい運動は避けた方がいいですか?
めまい、耳鳴り等の症状が出現している場合は、激しい運動は控えてください。
激しい運動によって症状が悪化する場合もあるため、できるだけ安静にして過ごしましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
参考
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター 外リンパ瘻
一般社団法人 塩筑医師会 外リンパ痩
日本経済新聞 電子版 風邪の季節は耳に注意 詰まったら耳管狭窄症の恐れも
合わせて読みたい
2021-05-13
心臓の鼓動を強く感じる…。これは病気なの?
動悸が起こる原因を、お医者さんに聞きました。
命に関わる危険な症状も含め、詳しく解説します。
心臓の鼓動を強く感じる…これ大丈夫?
「一時的にストレスを感じている」など、動悸の原因が明確で、短時間でただけで症状を繰り返さない・心臓などの病歴もない場合は、一旦様子を見てもよいでしょう。
ただし、その後の症状の経過には、十分注意を払ってください。
鼓動を強く感じることが多い場面
緊張を強いられる苦手な場所や場面にいる
極度の緊張や興奮状態
夜中の音がない静かな場所に一人でいる
精神的に過敏な状況で、通常より心臓の鼓動を大きく感じる
睡眠不足
ストレス過多
こんな鼓動は“病気”が原因かも…
胸が詰まるような鼓動
脈が飛ぶような強い鼓動
強い鼓動が数時間に渡る
強い鼓動が頻繁に起こる
息苦しさ・胸痛・めまい・意識障害などの症状を伴う
以上のような強い鼓動が出ている場合、何らかの病気が原因の可能性があります。
こんな諸症状にも要注意!
鼓動に併せて、次のような症状が出ている場合も、早急に医療機関を受診してください。
息苦しい
息切れ
ドキドキするような鼓動
突然強い動悸を感じる
胸痛
冷や汗
安静な状態で脈拍が1分間に100回以上
めまい
ふらつき
呼吸困難
失神などの意識障害
病院は何科?
心臓の鼓動を強く感じるときは、内科・循環器内科の受診をおすすめします。
強い鼓動を感じても、病気が原因ではない場合もありますが、心臓疾患や甲状腺疾患等の重篤な病気のこともあります。
そのため「動悸くらい大丈夫」と軽視して放置せずに、気になる症状が出たときは、早めに医療機関を受診してください。
内科を探す
「心臓の鼓動が強い」主な3つの原因
心臓の鼓動を強く感じるのは
ストレス
高血圧症
心不全
が原因の可能性があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
原因① ストレス
精神的なストレスが溜まると、ストレスホルモンが増えたり、自律神経のバランスが崩れたりして、心臓の鼓動が強くなるようです。
過剰な緊張・不安・興奮を感じている場合に、動悸が出やすいと考えられています。
ストレスで症状が出やすい人
過度の緊張、不安、興奮をしている
心配症
ストレスを抱え込みやすい
仕事熱心
負けず嫌い
睡眠不足
その他、こんな症状がでることも
めまい
頭痛
便秘
下痢
吐き気
貧血
冷や汗
どう対処すればいい?
まずは気持ちを落ち着かせて、ゆっくり深呼吸をしてください。
ただし、次に当てはまる場合は、精神的な問題ではなく、何らかの病気が原因かもしれません。早めに医療機関を受診してください。
深呼吸をしても症状が改善しない
動悸がなかなか改善しない
動悸とともに冷や汗が出る
胸痛がする
胸が締め付けられる感じがする
気が遠くなる など
注意!自己診断は禁物
心臓の鼓動が強く感じる原因を、精神的なものと判断するには、内臓などの病気が原因でないことを確認する必要があります。
検査などをする前に、自分で精神的なものと判断しないでください。
原因② 高血圧症
高血圧の状態が続いて、心臓に負担を掛けることで、強い鼓動を感じることがあります。
高血圧症の場合は、寒暖差が激しいとき、排便時に強くいきんだとき、アルコールを摂取したときに症状が現れやすいです。
高血圧症になりやすい人
高齢者
ストレスを抱え込みやすい
アルコールを過剰に摂取している
日常的な運動不足
肥満
睡眠不足
塩分の過剰摂取
喫煙者
家族に高血圧症患者がいる
ミネラルやカリウム不足
その他、こんな症状がでることも
息切れ
めまい
ふらつき
頭重感
倦怠感
肩こり
※高血圧症は、症状を自覚しにくいため、注意が必要です。
どう対処すればいい?
高血圧の改善には、減塩する、野菜・果物・魚を多く摂るといった、食事内容の見直しが大切です。
それに加えて、次のような生活改善を行いましょう。
肥満予防のため、ウォーキング等の運動を継続する
アルコールを摂り過ぎない
喫煙者は禁煙する
十分な睡眠時間を確保する など
また、毎日の血圧測定も、血圧のコントロールに大切です。
「高血圧かも」と思ったら…
一度、医療機関を受診するのがおすすめ
医療機関を受診することで、食事内容の改善法や日常生活での注意点等を、詳しく指導してもらえます。
また、受診するときに、毎日測定している血圧の結果を持参すると、治療がスムーズに進められます。
原因③ 心不全
「心不全」になると、心臓のポンプ機能が衰え、全身に血液が送りにくくなって、栄養素や酸素が不足し、動悸が起こると考えられています。
「心不全」の場合、坂道を上るとき、重い物を持つとき、仰向けで横になるとき、夜に寝ているときに症状が現れやすいです。
心不全になりやすい人
高血圧
糖尿病
高脂血症
心筋梗塞
狭心症
心筋症
弁膜症
ストレスを抱え込みやすい
疲労が蓄積している
肥満
運動不足
喫煙者
アルコールを過剰に摂取する
塩分を摂りすぎている
その他、こんな症状がでることも
息苦しい
息切れ
倦怠感
疲労感
足のむくみ
せきやたんが続く
体重が増減する
安静な状態でも動悸を感じる
どう対処すればいい?
心不全は、自分で対処することは困難な病気です。
早急に内科・循環器内科を受診してください。
内科を探す
▼参考
一般社団法人 日本臨床内科医会 自律神経失調症
国立研究開発法人国立循環器病研究センター [7] 心不全
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 高血圧
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット 高血圧
一般社団法人 日本臨床内科医会 高血圧