「なんだか耳がかゆい…」
「耳から汁が出るのはなぜ?」
“考えられる病気”をお医者さんに聞きました。
ご自身の症状と照らし合わせて、確認してみましょう。
自然に治るのか、病院に行くべきなのかも解説します。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
なぜ?「耳がかゆい・汁がでる」原因
耳にかゆみや汁が出るのは、外耳道に炎症が起こっているためだと考えられます。
炎症は、主に細菌感染によって起こります。
なぜ?「耳汁が…臭い」原因は?
外耳道に生じた傷に細菌が感染すると、耳汁が臭くなる場合があります。
外耳道炎は、生臭いニオイがします。
イヤホンの常用が原因のケースも!
イヤホンを長時間つけていると、外耳道でイヤホンが常に擦れている状態となり、皮膚が刺激を受けて外耳道炎を発症することがあります。
また、
イヤホンを清潔にしていないことで、傷ついた外耳道に
細菌感染を起こす原因となる場合もあります。
放置しておいても、自然に治る?
軽症であれば、自然治癒する場合もあります。
外耳道の炎症を早く良くするには、
- 耳かきのしすぎ
- イヤホンの長時間着用
- 耳の触りすぎ
などを避ける必要があります。
軽度であれば、上記の刺激を避ければ自然に良くなります。
ただし、これらの行為を続ければ、悪化して膿んだり、出血したりすることもあります。
外耳道炎は再発しやすく、悪化すると治療に時間がかかるケースが多いため、できるだけ早めに耳鼻いんこう科を受診することをおすすめします。
市販薬は使ってもいい?
市販薬の使用はおすすめできません。
耳鼻いんこう科を受診して、症状に合う薬を処方してもらいましょう。
こんな症状は病院へ!
- 1週間以上、耳のかゆみが続いている
- 耳から分泌液(浸出液)が出ている
- 発熱を伴う
- 耳に激痛が起こっている
といった場合は、医療機関を受診しましょう。
乳幼児の場合、耳の痛み・かゆみがあると、ずっと機嫌が悪い、泣き止まない等になりやすいです。
お子さんにそのような状態がみられたら、速やかに受診してください。
病院に行かずに放置すると…
外耳道湿疹、外耳道炎に繋がる可能性があり、放置すると治療期間が長引いてしまいます。
また、悪化しているのに放置していると耳垂れがつまり、聞こえにくいといった難聴の状態を引き起こすこともあります。
さらに、耳掃除等で耳を触り続けて外耳道の奥に傷を付けると、外耳道真珠腫(※)ができて手術が必要になる場合があります。
また、耳の穴の入り口付近を傷付け続けると、悪性外耳道炎(※)を引き起こす恐れもあると考えられています。
<外耳道真珠種>
耳垢がたまって炎症が起こり、外耳道・鼓膜の形に変化させたり、骨を破壊したりする疾病
<悪性外耳道炎>
外耳道に細菌が入り込み、頭蓋骨まで感染が広がる疾病
耳だれが出る「耳の病気」の例
耳にかゆみや汁が出る症状が現れた場合、
- 外耳道湿疹
- アトピー性外耳炎(アレルギー)
- 細菌性外耳炎
- 外耳道真菌症
以上の4つの病気が考えられます。
病気① 外耳道湿疹
外耳道に、かゆみのある湿疹ができている状態です。
これは、耳垢の溜まり過ぎによって発症しやすい病気です。
耳垢のせいで耳に入った水が留まると、皮膚がふやけて細菌等が侵入しやすくなり、外耳道湿疹の発症につながります。
発症を招く行動としては、「耳掃除のしすぎ」が挙げられます。
過剰な耳掃除で皮膚に傷を付けたり、外耳道の自浄作用を妨げたり、耳垢を外耳道の奥へと押し込んでしまったりすると、発症リスクが上昇します。
「外耳道湿疹」かも?どう対処すればいい?
耳掃除を控えて、耳を触らないようにしてください。
といった場合は、早めに耳鼻いんこう科を受診しましょう。
放置すると強いかゆみ、耳垂れを起こし、傷口を触ると細菌感染を起こして外耳道炎を発症する場合もあります。
さらに外耳道湿疹は、何度も繰り返すと外耳道がんを発症するリスクがあります。
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病気② アトピー性外耳炎(アレルギー)
アトピー性皮膚炎の人に起こる、外耳道の炎症です。
皮膚のバリア機能が低下しているために、炎症が起こりやすくなっています。
「アトピー性外耳炎」かも?どう対処すればいい?
- 頻繁に耳掃除をしない
- 不衛生な耳かきや綿棒を使用しない
- 汚い手や爪で耳に触らない
といった点を心がけましょう。
なお、耳だれが出る場合は、細菌感染を起こしているので耳鼻いんこう科で相談してください。
病気③ 細菌性外耳炎
細菌感染によって、外耳道に炎症が起こっている状態です。
耳掃除で外耳道に傷をつけてしまうことが、主な原因です。
「細菌性外耳炎」かも?どう対処すればいい?
耳掃除を控え、耳を触らないようにしてください。
- 痛みがどんどん悪化する
- 耳だれが出てくる
- 耳が聞こえにくい
といった場合には、耳鼻いんこう科を受診してください。
化膿して重症化したり、湿疹・カビ等による炎症を合併すると、長期間の治療が必要になることがあります。
病気④ 外耳道真菌症
外耳道の中で真菌(カビ)が寄生している状態です。
耳掃除のしすぎ、不衛生な耳掃除などが原因で発症しやすいです。
耳に刺激を与えすぎると、分泌物が出て湿った状態になるため、発症しやすくなります。
「外耳道真菌症」かも?どう対処すればいい?
耳を触らないようにしてください。
- かゆみが我慢できない
- 耳から汁が出ている
- 耳が聞こえにくい
といった場合は、早めに耳鼻いんこう科を受診しましょう。
放置していると耳垂れ、耳垂れの詰まりによる閉塞感などが現れることがあります。
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かゆみ・耳垂れは早めに受診を!
耳垂れやかゆみは、耳の皮膚の異常を示しているサインです。
放置すれば、悪化して耳垂れが詰まり、耳の閉塞感や難聴のようになることもあります。
悪化を防ぐためにも、早期受診を心がけましょう。
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「外耳炎が治らない…」
「どう対処したらいいの?」
外耳炎がなかなか治らない原因と、その対処法をお医者さんに聞きました。
外耳炎が治らない…どう対処したらいい?
耳のかゆみ・赤み・痛み・耳垂れが出るなど外耳炎の症状が出てから1週間以上経っても良くならない・悪化している場合は、耳鼻いんこう科に行きましょう。
軽度の外耳炎は、特別な対処をしなくても数日程度で自然に快方に向かいます。
これより長い期間症状が続いているのは、外耳炎が悪化しているサインです。
外耳道炎が悪化し、耳垂れが詰まると耳の聞こえが一時的に悪くなるといった症状が出ます。
なかなか治らないのはなぜ?
外耳炎が治らないが治らないのは、「①耳に刺激を与えている」「②カビやアレルギー」「③サーファーズイヤー」などが原因になっている可能性があります。
治らない原因① 耳に刺激を与えている
耳をかいてしまうと、皮膚を余計に傷つけるため、外耳炎が長引きます。
強いかゆみがある場合、綿棒・耳かき・爪でかく人が多いです。
耳かきや綿棒などで皮膚をこするのが主な原因です。
かゆみが強く我慢できないと、爪楊枝やシャーペンの先などを使って耳をかく人がいますが、これは皮膚を傷つけるだけでなく細菌感染に繋がるので絶対にやめてください。
外耳炎を発症している時は、なるべく耳掃除をしないでください。
悪化するとどうなる?
耳に刺激を与え続けるとブドウ球菌などの細菌が繁殖し、炎症が生じます。
炎症が生じると「中耳炎」や「鼓膜炎」などとなり、耳鳴りや難聴を引き起こす可能性もあります。
治らない原因② カビやアレルギー
アレルギーや、菌に感染していると、通常よりも皮膚の状態が悪いので、より症状が重くなり、通常よりも治りにくくなります。
頻繁な耳掃除や刺激などの行動が、外耳を傷つけ、そこからカンジタ菌やブドウ球菌など細菌に感染しやすくなります。
外耳炎を発症すると、耳の中の皮膚が弱っているため、カンジタ菌などに感染しやすくなります。
悪化するとどうなる?
カンジタ菌やブドウ球菌などの細菌が繁殖し続け、炎症が生じます。
炎症が生じると「耳鳴り」や「耳だれ」などの症状が出て、難聴や耳閉感が強くなって、悪循環になる可能性もあります。
治らない原因③ サーファーズイヤー(外耳道外骨腫)
サーファーズイヤーの人は外耳道が極端に狭くなってしまっているため、治療しても薬が外耳道に届かず、外耳炎が長引くことがあります。
「サーファーズイヤー」とは、外耳道へ冷水・冷風・寒暖差などの刺激が加わることで、外耳道の骨が増殖し、耳の穴が全体的に狭くなる病気です。
サーフィン・水泳・ダイビング・カヤックなどウォータースポーツが主な原因と言われています。
サウナ後に耳まで水風呂に浸かるという行動も、原因の一つとなります。
悪化するとどうなる?
サーファーズイヤーを放置すると、難聴が生じる可能性があります。
鼓膜が見えなくなるほど外耳道が腫れるなど、外耳炎がさらにひどくなり、耳の痛みが増します。
初期段階では耳垢の除去や点耳薬での洗浄などですみますが、重症化すると骨を除去する手術が必要になります。
放置はNG!悪化すると難聴に…
悪化すると耳の痛みが強くなり眠れない・耳周りの炎症・難聴などを発症して、生活に支障が出る場合もあります。
難聴はストレスなど心の健康にもつながるので、速やかに耳鼻いんこう科へ行き、治療を開始しましょう。
糖尿病などの持病がある人・免疫不全の人が、外耳炎を放置すると悪性外耳道炎を発症することがあります。
症状が中耳・内耳・頭蓋骨までに広がり、強い痛み・膿・聴力低下などを引き起こすことがあります。
病院での治療方法
外耳道の耳垢や耳垂れなどを点耳薬で、洗浄と除去を行います。その後、患部にステロイド(合成副腎皮質ホルモン)入りのお薬を塗り、抗生物質などの飲み薬を飲むのが一般的です。
耳の中を乾燥させた状態を保つことが大切なので、耳垂れがなくなるまでは定期的な除去が必要になります。
患部に刺激を加えないことも重要です。どんなにかゆみが強くても、耳かき・綿棒・爪などでかいたり、耳掃除をしたりしないでください。
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▼参考
MSDマニュアル 悪性外耳道炎
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「なんだか耳が痛い…」
「音が聞こえづらいのはなぜ?」
大人の中耳炎の初期症状をお医者さんに聞きました。
病院に行く目安や、放置するリスクもご紹介します。
症状が進行すると完治が難しくなるケースもあるので、最後まで読んで対処しましょう。
大人の中耳炎の初期症状は?
大人の急性中耳炎の初期は、
耳の痛み
耳だれ
耳鳴り
耳が詰まった感じ
といった症状があらわれます。
早期受診をおすすめする理由
初期のうちに治療することで、早期改善が期待できます。
軽症のうちに治療することで、簡単な治療(投薬・服薬など)で済むことも多いです。
慢性化・重症化を予防し、入院・手術による治療避けるためにも、早めに受診することをおすすめします。各種検査を受けることで、発見が難しい重篤な疾患を早期に見つけられることもあります。
初期段階の治療例
抗生物質(内服薬、点鼻薬)で炎症を抑える
鎮痛薬で痛みを緩和
膿が溜まっている場合は、鼓膜切開し、滲出液を排出
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なぜ?大人でも中耳炎になる原因
中耳炎は子どもに多いイメージですが、大人でもなります。
原因1.鼻水がたまっている
風邪、鼻炎、花粉症、副鼻腔炎等の場合、ノドに鼻水が溜まりやすくなります。鼻水に含まれている細菌やウイルスが耳まで送られて炎症が起こり、中耳炎になります。
原因2.よく鼻をすする
鼻をすすると、鼻水を中へと押し戻してしまうため、中耳炎を発症しやすくなると考えられています。
原因3.リンパ組織が大きい
リンパ組織であるアデノイドが大きいと耳管を圧迫したり、付着した菌が耳まで到達して、中耳炎を起こす場合があります。
原因4.気圧の変化
飛行機に乗った際やスキューバダイビング時にうまく耳抜きができないと、中耳に炎症を起こし中耳炎を発症する場合があります。これを航空性中耳炎といいます。
仕事は休むべき?行ってもいい?
中耳炎は、人から人へと感染することはないと考えられているため、仕事に行っても問題はないでしょう。
しかし、発熱している場合や耳だれが多く出るときはお休みするようにしてください。
自然に治ることもある?
軽症の場合、自然治癒するケースがあります。
しかし、以下の症状がある場合、自然治癒は見込めません。
発熱や頭痛がある
鼓膜が赤く腫れている
中耳内に膿が溜まっている
慢性化や重症化を防ぐために、病院を受診し、症状に合った治療を受けることをおすすめします。
自分でできる、中耳炎の対処法
中耳炎による痛みを軽減する方法として、
まめに鼻をかむ(強くかみ過ぎない)
鼻うがいをする
保冷剤等で軽く冷やす
といった対策をすると良いでしょう。
市販薬は?
痛みを和らげるために、市販の鎮痛剤を使ってもいいですか?
症状が軽い場合は、市販の鎮痛薬を使用して一時的に痛みを抑制する方法があります。
しかし、市販薬を使用しても症状が改善しない場合には、使用を中止し、病院を受診してください。
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やってはいけないNG対処法
大人の中耳炎の場合、
耳に水が入る
鼻を強くかむ
鼻をすする
耳掃除をする
プールに入る
といった行為は症状を悪化させる可能性があるので、避けましょう。
病院に行くべき目安
以下のような症状がある場合、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
痛み等の症状が2~3日続く
難聴
耳だれ
吐き気
頭痛
38度以上の発熱
顔面神経麻痺の症状を伴う(顔の片側が動かなくなる)
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放置するとこんなリスクも…
中耳炎の症状を放置することで、治療期間が長引いたり、重症化して難聴を起こす場合があります。
細菌が広範囲に拡がり、内耳炎を併発する可能性があります。炎症が悪化した場合、髄膜炎や顔面神経麻痺等の合併症を起こす恐れもがあります。
耳鳴り、耳閉感等の後遺症が残る恐れもあるので、早めに受診しましょう。
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また、急性中耳炎を放置すると、慢性中耳炎や滲出性中耳炎を引き起こすこともあります。
慢性中耳炎
耳の鼓膜から奥が炎症することによって、3か月以上鼓膜に穴が開いている(急性中耳炎が完治していないまま慢性化する)状態です。
慢性中耳炎の場合、細菌が入り込みやすく感染を繰り返します。
急性中耳炎で生じる耳の痛みや皮膚が赤くなり、腫れる等の症状はないケースが多いです。
<主な症状>
難聴
耳だれ
耳鳴り
めまい
完治するまでの期間
手術療法(鼓膜形成術)を行う場v合、入院期間は4日~2週間程度です。
特に、真珠腫性中耳炎(※)の場合、完治と認められるまで数年かかる場合があります。
滲出性中耳炎
鼓膜の奥にある中耳に、滲出液(水)が溜まる状態です。
急性中耳炎が慢性化すると、中耳に滲出液が溜まってしまい難聴が起こります。
風邪、鼻炎、副鼻腔炎等、鼻やのど周辺に炎症が生じて、耳管機能が衰退することが原因と考えられています。
急性中耳炎とは違い、滲出液に感染が生じない限り、痛みが生じるケースはないと考えられています。
<主な症状>
難聴
耳が詰まった感じ
耳鳴り
治療方法
保存的治療として、抗炎症薬や抗菌薬(マクロライド系)を用いた治療
内服薬を用いた治療のみでは治癒が難しい場合は、鼓膜の切開を行う
完治するまで期間
早くても2週間、長期化すると6か月以上かかる場合もあります。(個人差あり)
また、しっかり治療を行わないと、再発を繰り返し、完治が難しくなる場合があります。
参考
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 滲出性中耳炎
http://www.jibika.or.jp/citizens/kids_entqa/mimi_chujien_shinshutsu.html
一般社団法人 広島県医師会 家庭で知っておきたい耳鼻咽喉科の救急
http://www.hiroshima.med.or.jp/pamphlet/187/2-1.html
一般社団法人 大阪府医師会 急性中耳炎
https://www.osaka.med.or.jp/citizen/tv16.html
慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト 中耳炎
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000227.html
日本耳鼻咽喉科学会広島県地方部会 やさしい耳鼻咽喉科講座
http://hiroshima-jibika.jp/course/manseichujien.html
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。