「なんだか喉が痛い…もしかして溶連菌感染症?」
大人も溶連菌感染症になるのか、お医者さんに聞きました。
自然治癒する可能性や、悪化した場合のリスクも併せて解説します。
病院に行く目安も確認しましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
大人にもうつる!溶連菌感染症
溶連菌感染症は、溶血連鎖球菌(溶連菌)という細菌が喉に感染して発症します。
子どもに多い感染症ですが、大人にもうつります。
大人が溶連菌に感染しやすいのは、
などで、体力や免疫力が低下しているときです。十分注意してください。
自然治癒する?
大人が溶連菌感染症に感染しても、症状が出ないまま治るケースが多いといわれています。
発症後3週間で抗体がつくられた場合、2週間以内に自然治癒することもあります。
これは子供の頃の感染によって、すでに溶連菌に対する抗体を持ち合わせている場合が多いからです。
ただし、溶連菌感染症はとても感染力が強く、合併症も起こしやすい疾患です。軽視するのは危険です。
溶連菌と気づかずに放置するリスク
大人が溶連菌感染症を発症すると、子どもよりも重症化したり、劇症型溶連菌感染症になったりすることがあります。
近年、溶連菌感染症になったあと急性腎炎を起こすケースが増えています。
そうすると、ショック症状や腎不全などの合併症を起こしやすくなり、命の危機に陥るリスクが高まります。
命の危険がある「劇症型溶連菌感染症」とは
劇症型溶連菌感染は溶連菌が多くの毒素を出すので、発症から24時間以内で症状が急激に悪化します。
敗血症性ショックを起こして腎機能障害や肝障害を合併するリスクがあり、早期に治療を施さないと約30%の人が死亡するような感染症です。
日本では劇症型溶連菌感染症になる人が増加しています。
劇症型溶連菌感染症にかかる人が増えた原因には、
- 溶連菌保菌者の増加
- 免疫力が低い高齢者の増加
- 劇症型感染を引き起こす溶連菌の種類が増えた
などが考えられています。
他にも、診断方法が簡単になり、以前は見抜けなかった感染者を多く発見できるようになったのも、原因の一つと考えられます。
大人の溶連菌感染症の症状
主な症状は、発熱・喉の痛みなどです。
時々、手足や体に発疹が出ます。
溶連菌感染症の症状は、風邪の初期症状に似ています。
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2019-09-27
溶連菌感染症による発疹は顔や全身に広がり、かゆみを伴うことが多いです。
この症状は、いつまで続くのでしょう。もしお子さんが溶連菌による発疹で辛そうにしていたら、早く治してあげたいですよね。
さらに、溶連菌は大人にもうつる可能性のある病気です。大人にも、子どもと同じように発疹が現れるのでしょうか。
医師に詳しく解説してもらいました。
溶連菌の発疹の症状について
発疹の症状はいつからいつまで続くの?
溶連菌感染症による発疹は、喉頭炎や扁桃炎に加えて出現します。赤い小さな発疹が顔や体に現れます。
発疹は全身に広がり5〜6日程度で消えてきます。
発疹とともに現れる症状
溶連菌感染症の主な症状には、喉の痛み、発熱や頭痛、吐き気、腹痛、手足の痛みや関節の炎症などがあります。舌には、赤いぶつぶつが出ることがあります。これは、イチゴ舌とも呼ばれています。
また、溶連菌感染症による発疹は猩紅熱(しょうこうねつ)とよばれ、手足や首や胸に現れて全身に広がり、かゆみで気がつくこともあります。
発疹が出た部分は、色素沈着や角層の一部が剥がれ落ちるという症状が見られることもあります。色素沈着は、消える場合と、体質によっては残る場合があります。もし残った場合、薬で対処したり、時間をかけて経過を観察します。
発疹しか症状が出ないこともある?
溶連菌感染症は、発熱や喉の痛みなどとともに発疹が出現します。症状を上手く伝えられない年齢だと発疹だけ出ているように感じるかもしれません。診察を受ければ、喉の腫れやイチゴ状に赤くなった舌など、他のともなった症状が確認できると思います。
大人が感染した場合
大人の場合は、全身への発疹は、ほとんど見られません。他にもイチゴ舌や顔や手が腫れると言う症状は、子供が感染した際に見られる特徴的な症状といえます。
発疹がかゆいときの対処法
かゆみを軽減する方法
かゆみが辛いときには、かゆみ止めや保湿ローションなどを使います。かゆみの強い部分を冷たいタオルなどで冷やしてもかゆみが楽になることも多いです。
診察を受けるまでに辛ければ少し冷やしてあげましょう。
市販のかゆみ止めや塗り薬は使ってもいい?
溶連菌感染症は、抗生剤で治療を行います。発疹のかゆみが辛い、おさまらないといった場合には、症状の進行を確認する意味でも市販薬は自己判断で使用せずに、医師の診察を受けてください。
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発疹があるときの登校・お風呂…どうする?
発疹があるときの登校・登園
溶連菌感染症の抗生剤服用後24時間を経過し、感染の危険がなくなり、全身の体調もよければ、発疹があっても一応は登校可能です。
しかし、元気がない、食欲が戻っていないという時は体調を戻すことを優先しましょう。
発疹があるとき、お風呂はOK?
熱が下がって、ふらつきなどがなく元気であれば、入浴は可能です。発疹は、熱いお湯では、かゆみが増しますのでぬるめのお湯を使い、温めすぎないようにしましょう。
まとめ
溶連菌感染症は、子供だけではなく大人も感染します。疲れている、ストレスが多い時などは、免疫が低下しているので特に感染に注意しましょう。
溶連菌感染症は、予防するワクチンはありません。基本の予防は、マスクの着用、うがい、手洗いです。家庭に感染者が出た際には、食器やタオルの共有も避けてください。
溶連菌感染症は、稀ですが壊死性筋膜炎や劇症型溶連菌感染症など、重い病気を発症させます。感染の疑いがある場合は、早急に病院を受診しましょう。
<参考>
こどもの病気治療の本当のこと“Dr.365”のこどもの病気相談室 著/白岡亮平
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311410
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2019-10-09
溶連菌に感染すると、少数ですが「咳」を伴う症例もあります。自然治癒するのか、どれくらいで治るのか、お医者さんに聞きました。
※風邪か溶連菌感染症か、判断がつかない場合は、病院を受診して溶連菌感染症の迅速検査を受けましょう。
「咳」症状の対処法
咳がでたときの、症状別の対処法・判断目安を解説します。
咳が長引くとき
ひどい咳が続いています・・・。対処法を教えてください。
喉を加湿しましょう。
水分を飲ませたり、部屋を加湿したり、マスクを着用させましょう。辛ければ、病院で咳止めをもらいましょう。
横になると咳がひどくなったり、息がゼイゼイと苦しくなったりします。そんなときは、上体を起こして壁に寄りかかるなどしてみましょう。
発熱を伴うとき
咳が続き、熱が下がりません。対処法を教えてください。
38度以上の場合は、病院を受診しましょう。
38度以下の場合は、風邪と同じよう、安静にし、脱水にならないよう水分補給をしましょう。
しかし、発熱が38度以上ある場合は、早めに病院を受診してください。早めの受診で重篤化や合併症を防ぎましょう。
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鼻水がでるとき
咳と鼻水が止まりません。どう対処したらいいでしょうか?
鼻はすすらず、出てくる分は排出させましょう。
溶連菌に感染して鼻水が出るのは、少ないケースです。念の為、鼻水をティッシュで拭いた後は、蓋つきのゴミ箱に捨て、手指は石鹸で洗うようこころがけましょう。
あまりに量が出て辛い場合は、耳鼻咽喉科で、診察を受けましょう。
耳鼻いんこう科を探す
いつ治る?自然治癒する?
溶連菌は、自然治癒可能ですが、1週間程度かかります。抗菌薬を飲めば1〜2日で症状は緩和されていきます。
重篤化や合併症も防げるので、早めの病院受診、抗菌薬の内服開始をお勧めします。
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早く治す方法
食欲が出るまでは、ゆっくり休養をとりましょう。
無理をさせると、体調が改善するのに時間がかかる場合もあります。
喉の痛みがよくなり、食欲が出てきたら、おじや、うどんなど消化に良いものを少量ずつ与えてください。
喉に痛みがある場合は、しみるものや酸っぱいものは喉に負担をかけますので避けましょう。
入浴は、熱が下がり体調が良ければ可能です。
咳の原因
咳の症状がでているとき、体の中はどういう状態なのでしょうか?
咳は体の免疫反応の一つです。
ウイルスや細菌の感染時だけでなく、ほこりやチリ、タバコの煙などの異物を体外に出すためにいつも出ています。
咳からうつる?
溶連菌は、飛沫感染します。感染者の咳やくしゃみ、鼻水は、感染源になります。
保育園や学校、仕事に行っていい?
症状は「咳だけ」です。外出は大丈夫でしょうか?
一般的には学校や保育園に登校、登園が可能です。
溶連菌の感染症は、抗生剤を投与スタートしてから24〜48時間経過していれば、感染力は弱まっていますので体調が良ければ大丈夫です。
ただし、迅速検査を受けずに自己判断で、調子が悪くないからと登園すると、集団感染を引き起こす場合もあります。
溶連菌に感染している症状がある場合は、病院で検査を受け治療を受けましょう。
登園許可証が必要な学校・保育園もありますので、事前に確認してくださいね。
<参照>
こどもの病気治療の本当のこと“Dr.365”のこどもの病気相談室 著/白岡亮平(小学館)
早く治すためにできること
感染症で病気と闘っている体を動かすと、さらに体力を消耗します。
特に早く溶連菌感染症を良くしたい場合は、しっかり体を休ませましょう。
倦怠感が強い時期は、入浴は控え体を休ませるようにします。
食事は、食べたいと感じるものは食べても構いませんが、できるだけ消化の良いもの、塩分・油分の少ないものにした方が胃腸に負担がかかりません。
食べる場合は、よく煮込んだうどんや、卵を入れたおかゆなどをおすすめします。
下痢や、発熱時は脱水を防ぐために水分をこまめに摂取してください。
仕事に行ってもいい?休むべき?
発熱もなく、体を動かしても問題ないほど軽症であれば仕事に行っても良いでしょう。
仕事にいくときは、感染を防ぐためにマスクを着用してください。
なお、発熱している、下痢や嘔吐が続いている、倦怠感が強いなどの症状がある際は、出勤は見合わせ、休息を取るようにしてください。
人にうつさないための注意点
溶連菌感染症は、咳・くしゃみなどの飛沫(ひまつ)で周囲にうつす可能性があります。
感染防止のために、できるだけ人との接触を控えるようにして、外出時はマスク着用を行いましょう。
なお、抗生剤(抗生物質)服用すると、服用から24時間以内に人にうつす危険性がなくなります。
二次感染のリスクをしっかりと防ぐためには、早めに受診することが大切です。
症状がつらいときは要注意!
症状が悪化すると「中耳炎」や皮膚に感染して「とびひ」(伝染性膿痂疹:でんせんせいのうかしん)を起こすこともあります。
まれに、
- 腎炎(急性糸球体腎炎)
- リウマチ熱
- 壊死(えし)性筋膜炎
といった合併症を起こす場合があるので注意が必要です。
腎炎は、悪化すると腎機能が働かなくなり透析が必要になります。
リウマチ熱は発熱、心炎、関節痛など、壊死性筋膜炎は、敗血症を発症し多くの臓器が機能不全となるリスクがあります。
病院の受診目安
- 嘔吐、下痢が2日以上続いている
- 水分摂取がままならない
- 38度を超える発熱が2日以上続いている
といった場合は、病院で受診をしてください。
治療の方法
溶連菌感染症の治療には、子どもが感染したときと同じで、抗生剤(抗生物質)を投与します。
処方された抗生剤を服用すると、喉にいた菌がほぼ消失します。
服用から24時間以内に、人にうつす危険性もなくなります。
通常、発熱は1〜2日で下がり、喉の痛みや発疹も軽減してきます。
その後、溶連菌が出す毒素に皮膚感染すると指先の皮がむけてきますが、こちらは3週間ほどで治まります。
薬を飲み切ることが大切
溶連菌感染症の治療は、決められた量の抗生剤をしっかり飲み切りましょう。
そして一ヶ月後に尿検査を受け、異常がないかを確認してください。
溶連菌の抗生剤の服用期間は、風邪薬などと比べると若干長くなります。
そのために、いつまで飲み続ければいいのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
服用を途中でやめたら、よくなりかけた症状がまた悪化することもあるため、処方された薬は最後まで飲みきり、しっかり治すようにしてください。
大人の場合…病院は何科?
大人で溶連菌感染症の疑いがある場合は、内科を受診しましょう。
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