ヘルパンギーナとは、主に夏季に流行する感染症です。
毎年5月頃から患者数が増加しはじめ、7月にピークを迎えます。
ヘルパンギーナはどちらかといえば症状が軽い疾患ですが、ときには発熱に伴う熱性けいれんを起こす場合もあります。
まれに、無菌性髄膜炎や急性心筋炎などを伴うことがあります。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
免疫力が低下していると…大人にもうつる!
ヘルパンギーナは、免疫力が低下している大人が感染する場合もあります。
ヘルパンギーナは、「エンテロウイルス」が原因で発症します。
このウイルスに対する特効薬やワクチンがないので、日頃から手洗い・うがいをこまめに行い、病気にかからないように気を付けることが大切です。
免疫力が低下している大人とは?
大人の場合、
- 過度のストレス・疲労
- 睡眠不足
- 何らかの病気を患っている
といった原因で、免疫力が低下することがあります。
免疫力が下がっていると、ウイルスを排除する機能が弱くなるため、感染症にかかりやすくなります。
ヘルパンギーナの症状
口内に口内炎のような赤い発疹や水疱がプツプツと出るのが特徴です。
多くの場合、急な発熱に続いて口や喉が痛くなり、食欲が低下します。
エンテロウイルスの潜伏期間は2~4日間です。
どれくらいで治る?
ヘルパンギーナは自然治癒することもあります。
適切にケアすると4日ほどで解熱し、1週間ほどで完治することがほとんどです。
大人は“重症化しやすい”ため注意が必要
大人がヘルパンギーナにかかると重症化し、状況によっては
など疾病を誘発することもあります。
早く治すためにできること
重症化を防ぐために
- 水分補給をまめに行う
- 無理をせずしっかり体を休める
- 刺激物やオレンジジュースなどは控える
といったことに気をつけてください。
ヘルパンギーナには特効薬やワクチンがないので、対症療法で回復を待つしかありません。
そのため、重症でなければ自宅療養が基本です。
水分補給をするときは…
水分補給には、「経口補水液」がおすすめです。
口の中が痛くてどうしても水分が摂れないときは、小さい氷を口に含むとよいでしょう。
喉の痛みの対処法
痛み止めを服用するのとよいでしょう。
また、おかゆや豆腐、ゼリーやプリンなど喉越しのよいものを摂取するようにしてください。
こんな飲食物は避けましょう
- 炭酸飲料
- 香辛料が強い食べ物
- 酸味が強いもの
- 塩辛い物
上記は喉の刺激となりやすいので避けましょう。
下痢止め薬は逆効果なので注意!
便と一緒にウイルスを排出する必要があるため、下痢止め薬を服用しないでください。
下痢を無理に止めてしまうと、逆効果になってしまいます。
下痢の対処法
排せつ時には水分も出て行くので、排せつした分の水分・塩分を補給しましょう。
下痢がひどくなると脱水症状を招くこともあり、注意が必要です。
仕事に行っても問題ない?
熱が下がり、日常生活に支障がなければ仕事に行ってもよいでしょう。
休んだ方がよいケース
など、何かしら症状が続いている場合は休んでください。
他の人にうつさないための予防法
- マスクをする
- タオルや食器などの共有を避ける
- 鼻をかんだゴミはすぐに捨てる
などを行い予防してください。
こんな症状がでたら病院へ!
39度以上の高熱が3日以上続いたら、医療機関へ行きましょう。
また、口や喉の痛みで水分や食事が摂れない場合も受診してください。
大人の場合…病院は何科?
内科で受診しましょう。
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2020-06-03
毎年6月から8月にかけて流行する手足口病。
“子どもの病気”と思われがちですが、大人も感染します。
お医者さんに、大人の手足口病を早く治す方法についてお医者さんに聞きました。
「自然に治るの?」「出勤しても大丈夫?」といった疑問にも答えます。
手足口病は大人も感染する?
大人でも手足口病に感染します。
手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスという種類が多く存在するウイルスの感染症です。そのため、一度かかって終わりではなく、何度も感染します。
子どもがから感染するケースが多いです。
手足口病は飛沫(くしゃみ等)や接触、または赤ちゃんの便を処理を介して感染することもあります。
大人の手足口病の症状
大人も子ども同様に、喉の腫れ・口内炎・手のひらや足の裏の発疹・水疱の症状があらわれます。ただし、大人の場合は、発疹が水疱にはならない・発疹が出る箇所が手のひら・足の裏には限られないというケースもあります。
また、大人の場合は免疫力が低下していて感染するケースが多く、子どもよりも発症すると重症化することがあります。
初期症状
風邪の初期症状のような変化(倦怠感、関節痛、頭痛、喉の痛みなど)を感じ、体に発疹が出ます。
症状が悪化すると…
口内炎で食事が取れなくなる人や、発疹がたくさんでて痛がゆい、足の裏に発疹が出て歩きにくくなることもあります。
仕事に行っても大丈夫?
発熱や全身症状(倦怠感・関節痛・頭痛)がなく、食事もしっかりとることができれば、仕事に行ってもよいでしょう。
周囲の人にうつさないために
他の人への感染を避けるためにもマスクを着用し、手洗いを十分に行ってください。水疱が潰れるとウイルスが飛び散ることがあるので、発疹はテーピングして保護しましょう。
人にうつる期間はいつまで?
発熱や関節痛、喉の痛みなどがあるときは感染力が強いです。また症状がおさまっても便からウイルスが1ヶ月ほど排出されるので、トイレの後はよく手洗いを行いましょう。
治るまで、どれくらいの期間がかかる?
安静にしていれば、1週間程度で快方に向かうでしょう。
通常は、安静にしていれば自然治癒します。発疹も、無理に触ったりしなければ自然に消失します。
ただし発疹が消えるまでは子どもより長く(数週間〜数ヶ月)かかる人もいます。発疹がひどい場合、数ヶ月症状が残る場合もあります。
病院で治療を行えば、皮膚症状も通常1~2週間程度でよくなるでしょう。
教えて!早く治す方法
安静にして休息を取るのが重要です。
消化に食事をしっかりとり、よく眠りましょう。
また、体を動かすのがつらいときは、入浴するのは控えましょう。無理をして動くと疲労がたまり、ウイルスが増殖して悪化してしまうこともあります。
こんなときは病院へ!
・高熱が出ている
・意識が朦朧としている
・発疹のかゆみ・痛みが我慢できない
・呼吸が苦しい、ゼーゼー息をしている
・水分補給ができず脱水を起こしている
という場合は、病院へ行ったほうがよいでしょう。
目安として、40度以上の熱が2日以上下がらないときは病院に行きましょう。
大人の場合は、内科もしくは皮膚科を受診しましょう。
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参考
NIID国立感染症研究所 手足口病とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.html
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2020-05-21
発熱後に発疹が!
これは一体何?
お医者さんに対処法を聞きました。
受診目安や病院に行く前に気をつけてほしいことも解説します。
何科に行く?仕事は行ってもいい?お風呂は?といった疑問についてもお答えします。
なぜ出る?大人の発熱後の発疹の原因
代表的な原因として、
麻疹(はしか)
水疱瘡
りんご病
デング熱
発疹チフス
が考えられます。
それぞれの「症状の特徴」と「治し方」を解説します。自分に当てはまる症状がないか、確認してくださいね。
原因1.麻疹(はしか)
麻疹ウイルスによる、急性の感染症です。
熱は一回下がりますが、再度発熱し、全身に発疹が現れます。発疹は首・おでこ・耳の後ろから始まり、最終的に全身に生じます。肺炎、脳炎、中耳炎等の合併症を併発する可能性もあるため注意が必要です。
<発疹の特徴>
赤く平らな発疹がでる
その後発疹が盛り上がり、約1mmの白っぽい凸凹状になる
発疹を指で押すと色が退色する
<それ以外の症状>
咳/鼻水/39度以上の高熱/倦怠感/結膜充血等
口の中の粘膜に、斑点(コプリック斑)が現れるケースも
麻疹の治し方は?
発熱や発疹があった場合、麻疹かもと思った場合は病院へ行きましょう。
麻疹に対する特別な治療法がないため対症療法がメインで行われます。
肺炎、中耳炎等の細菌性の合併症を併発した際は、抗菌薬を用いた治療が行われる場合があります。
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原因2.水疱瘡
子どもの病気のイメージが強いですが、大人が感染することもあります。
ウイルス感染後、14日間ほどの潜伏期間ののち、発熱や倦怠感が生じます。
<発疹の特徴>
かゆみを伴う赤い発疹
粘性の液体を含む水疱や膿疱
<それ以外の症状>
発熱/倦怠感
水疱瘡の治し方は?
水疱瘡の疑いがあるときは、皮膚科を受診してください。
原因ウイルスの増殖を抑制するため、抗ウイルス薬での治療や発熱、かゆみの症状を緩和させるための治療が行われます。
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原因3.りんご病(伝染性紅斑)
ヒトパルボウイルスに感染して、発疹や風邪と似た症状が出現します。
稀に脳炎を起こしたり、妊婦の方は流産の恐れがあったりするため、軽視するのは危険です。
<発疹の特徴>
(顔に)蝶々のような形の赤い斑点
(手足に)蕁麻疹のような発疹
<それ以外の症状>
発熱/寒気/筋肉痛/喉の痛み/倦怠感等
りんご病の治し方は?
通常は自然治癒します。
高熱(38度以上)でつらい
妊娠している
という場合は、内科を受診してください。
病院では、症状に合わせた対症療法が行われます。
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原因4.デング熱
発症後、3~4日程度たってから発疹が出始めます。
稀に重症化すると、デング出血熱、デングショック症候群を起こす場合があるため、早期発見、早期治療開始が重要です。
<発疹の特徴>
赤い発疹
体の中心(体幹・胸部)から手足や顔へと広がる
<それ以外の症状>
発熱/頭痛/吐き気/嘔吐/関節痛等
デング熱は治し方は?
病院で早期治療を行いましょう。
出現している症状に合わせた対症療法が行われます。
発熱や痛みがある場合は、アセトアミノフェン等の薬剤を用いた治療が行われる場合があります。
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原因5.発疹チフス(リケッチア症)
発熱から2~5日程度経過した時点で、体幹に発疹が出現します。重症化すると、精神神経障害(うわごと、幻覚、錯覚、意識混濁等)が現れる場合があります。
<発疹の特徴>
腕・足から全身に広がる
初期段階の発疹(ピンク色)は、指で押すと色が消失する。
徐々に指で押しても消失しない暗紫色になる。
<それ以外の症状>
39度以上の高熱/寒気/頭痛/吐き気/嘔吐/脱力感/手足の痛み等
発疹チフスの治し方は?
発疹チフスの疑いがある場合はすぐに病院に行きましょう。
発熱してから2週間程度経過すると、急に熱が下がるという特徴があります。
テトラサイクリン系の抗菌薬を用いた治療が行われるケースが多いです。
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病院へ行くべき?
次のような症状が現れた場合は、早急に病院を受診しましょう。
皮膚の色が蒼白、暗紫色
高熱が続く
倦怠感が続く
激しい嘔吐、腹痛等が続く
水分等が摂れず脱水状態
発疹が化膿した
発疹(水ぶくれ)がどんどん増た
呼吸困難がみられる
発熱がある場合は、水分補給をこまめに行い、脱水症状を起こさないようにしてください。
※“人に感染する発疹”の場合、病院に行く前に事前に電話をして、症状を伝えるようにしてください。
病院は何科?
内科または皮膚科を受診しましょう。
発熱などの全身症状を伴う→内科
発疹など皮膚症状のみ→皮膚科
に行くとよいでしょう。
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お医者さんへ伝えるポイント
いつ頃から発疹が生じているのか
発疹の状態(発疹の色/かゆみの有無/数の増減)
発疹が出現してからの体調の変化
発疹以外の症状の有無
海外渡航歴について把握しておく
症状がでてから毎日検温し、症状を記録しておきましょう。
発疹を写真に撮って、病院へ持参するのもおすすめです。
仕事は行っても大丈夫?
麻疹→解熱後3日間は自宅待機が必要とされています。
水疱瘡→軽症であっても、発疹が全部かさぶた状になるまで安静にして過ごすことをおすすめします。
りんご病→発熱などの症状が治れば、特に他に感染するリスクは低くなります。ご自身の症状が落ち着いたら出勤しましょう。
デング熱・発疹チフス→他の人への感染リスクがあるので、医師の許可が出るまでは自宅待機をしましょう。
お風呂は入っても大丈夫?
熱が続いている
水ぶくれ状の発疹が増えている
等は、症状が落ち着くまでお風呂は控えましょう。
その場合は、短時間のシャワーや濡らしたタオル等で体を優しく拭いてください。
▼参考
厚生労働省 デング熱について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000131101.html
京都府 感染症緊急情報
https://www.pref.kyoto.jp/kentai/260903kansenkinkyuu.html
NIID国立感染症研究所 発しんチフスとは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/517-typhus.html
国立がん情報センター がん情報サービス 発熱
https://ganjoho.jp/public/support/condition/fever.html
NIID国立感染症研究所 麻疹とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html
NIID国立感染症研究所 水痘とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html
NIID 国立感染症研究所 伝染性紅斑とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html
NIID 国立感染症研究所 デング熱とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ta/dengue/392-encyclopedia/238-dengue-info.html
東京都感染症情報センター デング熱
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/dengue/
東北大学病院 デング熱について総合感染症科の具先生に聞きました
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/news/3076.html